【サバイバル】生きる力が欲しいから、「本気の火起こし」を学んできた

2019.11.14

【サバイバル】生きる力が欲しいから、「本気の火起こし」を学んできた

自然にあるものを使ってアウトドアを楽しむ「ブッシュクラフト」の手法を、長野県の小川村でインストラクターの梨本利信さんに教わります。メタルマッチを使った火起こし、枝などの材料調達のコツ……そして「ブッシュクラフトは災害時にも役立つ」話も詳しく聞きました。

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    薪割りをしながらこんにちは! ライターのナカノです。

    今年に入ってキャンプにハマっています。身体を動かして、非日常を楽しめる空間がとても楽しい。本能的に身も心も喜んでいる…!

     

    キャンプを楽しむ中で感じたのですが、サバイバル能力って生きる上で大切じゃないですか?

    ある日突然無人島に行き着いたり、世界がゾンビだらけになったり。そんな場面にも対応できるスキルを身に着けたら、単純にかっこいいと思うんです。

    ちなみに私は『7SEEDS』という漫画が大好きなのですが、突然サバイバルな状況下に投げ出された男女がスキルを活かし生き延びていく姿に、めちゃくちゃ憧れを抱いています。

     

    そんな私の「恋人やパートナーは絶対サバイバル能力が高い人がいい! なんなら自分が強くたくましい女性になりたい!」という思いに共感してくれたのが、編集者の木村です。

     

    木村は『ウォーキング・デッド』の世界で生き延びることに憧れているらしい。そんな状況、ある?

     

    ものが溢れるこの時代。ボタンひとつでお米を炊けて、声ひとつで家電を動かせる。手軽に便利な生活が出来てしまうからこそ、いざ何もない場所に放り出された時に絶望してしまうと思うんです。いやだ、生き延びたい!

     

    そんなことばかり考えてたら、サバイバルスピリットを学ぶのにぴったりのものに出合いました。その名もブッシュクラフト」。

     

    ブッシュクラフトとは「自然にあるものを使ってアウトドアを楽しむ手法」のこと。

    例えば……

    ・市販の炭やライターを使わないで火を起こす

    ・拾ってきた枝を使って、テントやタープを作る

    などがあります。

     

    炭やライターを使わない火起こしって?とハテナが浮かぶ人も多いと思うのですが、例えばこんな感じ。

     

    ブオォォォ

     

    と、圧倒的な肺活量で火起こしを行うのが、今回の先生。ブッシュクラフトインストラクターの梨本利信(ナッシー)さんです。

     

    話を聞いた人:梨本利信さん

    2017年に北海道札幌市から家族4人で長野県小川村に移住。小川村の地域おこし協力隊に着任し、村のキャンプ場の整備や、防災士としての知識を生かしたブッシュクラフトの講座を行っている。

     

    ブッシュクラフトとは具体的にどんな方法なの? 強く生き抜くためのサバイバル術って? ナッシーさんに色々聞いていきましょう!

     

    ※今回の取材は、ナッシーさんが整備する小川村大洞高原キャンプ場で行いました。

    身の回りのものを活用するアウトドア

    「野性的な火起こしでの歓迎ありがとうございます! さっそくなのですが私たち、厳しい状況下でも生き延びるためにサバイバル術を身に着けたくて」

    「おお、いい心構えですね! まずは、私が普段行なっているキャンプの様子をご覧いただきましょうか」

     

    「まずこちらのシェルターが、今日の僕の寝床。ビニールシートと、森から拾ってきた枝で作っています

    「え、ビニールシートと枝???」

    「こっちのタープもそうですよ」

     

    「絶妙なバランスだけど、意外としっかりしてる! あれ、よく見たらこれも……」

     

    ご飯を炊いたりお湯を沸かすコッヘル(小型の調理器具)の支えにも枝を駆使

     

    「あっちにあるのも…」

     

    蚊取り線香の台座もお手製。枝に切れ目を入れるだけで簡単につくれる!

     

    「ぜんぶ枝だ!!! 一体どこまで枝を駆使するんですか……ブッシュクラフト=枝職人?」

    なるべく持ち込む道具を減らして、現地調達するのがブッシュクラフトの楽しみ方なんです。これらは全部、現地で拾った枝を使っています」

    「たしかに、市販のアウトドア用品をほとんど使用してないですね。パッと見た感じで調理器具くらい?」

    「今回はお湯を沸かすためにコッヘルを準備しましたが、木からお箸やスプーン、お皿も自分で作っちゃう方もいるんですよ」

    「すごい! さっそくサバイバル力を感じます」

     

    「普段からこの場所でキャンプをされているんですか?」

    「はい。この場所は僕のお気に入りの場所です。自分の秘密基地を持つことも、ブッシュクラフトの上達には大切な要素なんですよ。例えば『この植物、前に来たときは生えていなかったな。ロープ代わりに使ってみよう!』と発見があったりして。来る度に森の変化に気づくんです」

    「森の見え方が変わるんですね。解像度上がるというか。すごいな〜、もっとブッシュクラフトのテクニックを知りたいです!」

    「初歩的なものから、色々とご紹介しますね」

     

    【実践】着火剤・炭は不使用!山の素材を使い火をおこす

    「じゃあまずは火起こしを始めてみましょうか! 今日は自分たちで火を起こし、夕飯をつくることが目標です!」

    「ブッシュクラフト的な火起こしって、木に穴を開けて摩擦で火を付ける方法とか…?」

    「無事にごはんにありつけるかな…」

    「いえいえ! 今回は、いつも僕が行っている『メタルマッチ』を使う方法を教えますね」

     

    「金属の棒が出てきた」

    「このメタルマッチとナイフを使います。見ててくださいね……」

     

    「これをこうして……こう!!!」

     

    「シュボッッッッ!!!」

     

    「えっ、火がついた!!!なんで????」

    「魔法……?」

     

    ナイフでメタルマッチをこすって火花を出し、火種に着火したんです。メタルマッチは可燃性の高い棒状のマグネシウム。硬い金属と勢いよく摩擦すると火花が散るんですね。構造はライターの石の部分と同じだと思ってください」

    「めちゃくちゃ火花を出しながら喋ってる」

    メタルマッチの特徴は、水に濡れても使用でき、使用可能回数が多いことです。普通のマッチとライターのハイブリットですね。例えば、今使っているメタルマッチで約3,000回、火花を散らすことができるんですよ!」

    「孫の代まで使えちゃいそう」

    「さらに大きいと、何万回単位で使用できるものもあるんです。アウトドアシーンではひとつ持っていたらかなり頼もしいシロモノですよ!」

    「火花を散らすためだけに欲しいです」

     

    硬い鉛筆を削るような感覚で、メタルマッチにナイフや付属の「ストライカー」をあてがい、渾身の力でこすり合わせます。

    コツはメタルマッチを手前に勢いよく引くこと。最初はめちゃめちゃ難しかったのですが、慣れると私でも簡単に火花を散らせるようになりました!

     

    続いて、焚き付けに必要な枝を調達! 細いものから太いものまで、4段階ほど準備します。

     

    空気の出入り口を考え、枝をハの字型に組んでいきます。特に集めたいのは「乾燥した杉の葉」。もっさりと組んで焚き付けにつかいます。これがよく燃えるのだとか!

     

    さあ、これで下準備はOK!

     

    「ここからメタルマッチの出番です! 火花を着火させるための火種には、コットンを使います」

    「女子がお化粧するときに使うやつですね」

    「ほかにもティッシュにワセリンを塗ったものを火種に使用することもあります」

    「身近なものが火種になるんだ…!」

     

    「慣れてくると、揉みほぐした葉っぱに点火して火を起こせるようになりますよ。では組んだ枝の中に火種を入れて、そこに点火します」

     

    「うわ〜! 煙がすごいですけど、大丈夫ですか?」

    大量の煙は、枝に含まれる水蒸気が蒸発している証拠。一見乾いているように見えても、枝は水分を含んでいるんです。でも大丈夫。しばらくすると収まりますよ!」

     

    息を吹きかけたり、火の様子を見ながら枝を焚べたりしていくと……

    徐々に炎が安定してきました! だんだんと日が暮れてきたので、ご飯の準備をしなくては。

     

    そして…………

    焚き火で煮込んだ、アツアツのうどんができました!

     

    「やったー!」

    「ぶじに温かいうどんが食べられてよかった…」

    上手に火をつけるためには、空気の通り道を確保することがポイントとなります。枝を組む時に意識してみてくださいね。」

    「大変だったけど、コツさえつかめばひとりでも付けられそうです!」

     

    火起こしのほかには、山の中で迷わない視野の広げ方や、

     

    火起こしの燃料やテントのポール代わりになる材料の探し方などなど、アウトドアシーンで活用したいブッシュクラフトの知恵を授かりました!

    こちらは記事の2ページ目で詳しくご紹介します。

     

    ……ところでブッシュクラフトの考え方は、アウトドアだけでなく災害時の危機管理においても役立つのだとか。

    ブッシュクラフトインストラクターだけでなく防災士としても活動するナッシーさん。いざというとき役に立つ、危機管理の考え方についてもお聞きしました。

     

    サバイバルにおいて食より水より大切なのは「シェルター」

    「今回お二人には、キャンプがより充実するブッシュクラフトの手法を伝授しました。しかし、そもそも『サバイバル』っていう言葉ひとつとっても、聞く人それぞれ考えることがバラバラですよね」

    「そうですね。なんか強そう、みたいなイメージでした」

    「そもそもサバイバルとは『生き延びることが必要な状態』を指し、ブッシュクラフトは『自然の恵みを活かし生活すること』を表しているんです」

    「なるほど。サバイバルとブッシュクラフトは似て非なるもの……?」

    「そうですね。もちろんサバイバルの状況下で、ブッシュクラフトの知識や知恵は役立ちます。しかし、まずは生きるための優先順位を知ることが肝なんです」

    「優先順位?」

    人間が生きていくためには空気、シェルター、水、火、食』の5要素が必要です。シェルターとは寝床やテントのことですね。さあ、このなかで優先順位をつけるとしたら、どんな順番になるのでしょうか?」

     

    「空気、水……食料?」

    「2個足りてないよ!」

    「正解は、『空気>シェルター>水>火>食』です!」

    「え、食の優先順位が一番低いんですね。意外かも」

    空気は言うまでもなく一番重要で、平均で3分ほど空気を吸わないと人間は死んでしまうと言われています」

    「ひいい。シェルターが二番目なんですね」

    「はい。シェルターは外敵から身を守ってくれる役割を持つだけでなく、雨風から身体を守り体温を保持してくれるんです」

    「なるほど!」

    「例え夏でも、身体についた雨や汗が原因となり低体温症で亡くなってしまう可能性は十分にあり得ます。だから今日ここに来た時も、まず最初にテントを張ってもらったのです」

     

    「シェルターの次は水、火、食と続きますね」

    水を飲まずに人間が生きていられるリミットは72時間と言われています。これは災害時によく使われる数字でもあります。72時間を境に生存確率がガクッとさがるため、救出のタイムリミットとして認識されているんですよ」

    「ニュースで見たことがあります」

    「火はなかなか数値で表しづらいのですが、光・熱・そして心のエネルギーを充填できる大切な要素です。そして、最後に食。もちろん置かれる状況下にもよりますが、人は最大3週間から1ヶ月食べずとも命を繋げることができると言われています」

    生きるための優先順位= 空気>シェルター>水>火>食

    「理由を聞くと、優先順位にも納得でした」

     

    災害時こそ、サバイバルの精神を大切に

    「災害時においても、先ほどの優先順位を頭にいれておくことで落ち着いて行動できそうじゃないですか」

    「ふむふむ。えっと、まずは地震や火災で家が倒壊していない限り、シェルター部分はクリアできますよね」

    「そうそう、水はペットボトルで非常用に常備していたらまず焦ることはないです。火はカセットコンロやろうそく、懐中電灯がその役目を担いますね。実は缶詰やレトルト食品のストックがあるにも関わらず、焦って近くのコンビニに行って食料を買い占める、なんて必要もありません」

    「あれ、意外と身の回りにそろってる……?」

    「はい。サバイバルの中で一番大切なのは『新たに得るよりも、今持っているものを使って活かす』という考えなんです」

    「ものであふれている現代へのアンチテーゼだ!」

    「もちろん便利な道具も大切です! ただ、道具の使い方って一種類じゃないんですよね。多面的に道具の使い方を考えることでキャンプも楽しくなるし、もし災害が起こった時に心の余裕につながると思っています」

    「心の余裕、大切ですよね……。普段私たちが持っている道具だと、どんな使い方が考えられますか?」

     

    「例えば、女性なら化粧道具を活用しない手はないです! リップクリームをティッシュに付けたら火種になりますからね。あとは油分の多いスナック菓子やガム、チョコレートもティッシュに包むととても良く燃えます」

    「普段バッグに入っているものばかり! 荷物が多い女子ならではの活用法ですね」

    「もちろん火を起こすシーンに必ず遭遇するとは限りませんが、『有事の際には自分の持っている道具でどうにかできる!』という安心感は大きな効果があります。まずはそこを基本に、余裕があれば少しずつ道具を買ってみるくらいでいいんじゃないでしょうか」

     

    一家に一つあれば安心!とナッシーさんが教えてくださったのは「SAWYER 1Gallon Gravity System」。なんと約38万リットル(家族4人で約54年分)の水をろ過できる浄水器なのだとか

     

    「災害時には避難所でのストレスが原因で心のエネルギーが消耗し、亡くなってしまう『災害関連死』のケースも少なくありません。サバイバルやブッシュクラフトの考えは、こういったリスクを軽減させる効果もあるんですよ」

    「サバイバルなどの知識を持っているだけで、何かあった時の安心感が生まれますね」

    サバイバル、キャンプ、防災と切り分けて考えず、知り得たものを凝縮して日々の生活に活かすことが大切です

    「なるほど! 私も最近キャンプに行き始めたのですが、単なる娯楽にとどまってました」

    「意識するだけで違いますよね。さらに大切なのは、その知恵をどんどん周りの人にも広めることです! 今回の火起こし法も、人に教えるたびに自分の技術も研鑽されていきますからね」

     

    おわりに

    強く生きたい!という気持ちからたどり着いたブッシュクラフトでしたが、災害時に通じるお話まで伺うことが出来ました。

     

    あるものをどう活かすか。

    ナッシーさんの言葉を考えていた折、奇しくも台風19号が発生し、私が住む長野県内にも甚大な被害が出ました。過去稀に見る大型台風ということもあり、台風上陸直前、スーパーやコンビニでの商品の買い占めを目の当たりにすることに。

     

    そんな時によぎったのが、ブッシュクラフトで学んだ優先順位。

    生きるための優先順位= 空気>シェルター>水>火>食

    脳内で優先順位をなぞり、家の設備と備蓄の食料を照らし合わせることで、心に余裕ができ焦ることはありませんでした。

     

    災害時に少しでも不安や焦りを軽減するため、ブッシュクラフトの知識やサバイバルの考え方は役立つと再認識しました。今後強く生きていくためにも、実践を重ねサバイバル能力を高めていくぞー!!

     

    ブッシュクラフトのテクニックをまだまだ紹介!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    ナカノヒトミ
    ナカノヒトミ

    1990年長野県佐久市出身。2017年よりフリーライターとして活動を始めた。どこでも地元メディア「ジモコロ」などウェブメディアを中心に執筆を行う。2018年4月に「やってこ!シンカイ」の店長になり、佐久市から長野市に引っ越す。シンカイで自分の子供を育てることが目下の目標。

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