どんどん植物が枯れていく……これって私のせい? 植物を「再生」させる園芸店に聞いた、観葉植物との向き合い方

2022.05.09

どんどん植物が枯れていく……これって私のせい? 植物を「再生」させる園芸店に聞いた、観葉植物との向き合い方

「観葉植物を枯らせないためにはどうしたらいいの……!?」コロナ以降、おうち時間を充実させようと多くの人が購入した「観葉植物」。東京・三田にある、「弱った植物を再生させる」植物専門店として話題の「REN」代表の川原伸晃さんに、観葉植物を上手に育てるコツを聞きました。

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    こんにちは、ライターの荒田ももです。

     

    新型コロナウイルスが生活を一変させてから、もう2年以上経ちました。自粛生活が長引き、おうち時間が増えたことで、多くの人が購入したものがあります。

     

    気持ちをリフレッシュさせてくれ、インテリアとしてもお部屋を彩ってくれる優れもの。

    そう、観葉植物

     

    東京都中央卸売市場の統計では、2020年6月から2021年5月の中央卸売市場での観葉植物の取扱量は前年に比べて18%増加するなど、コロナ以降の観葉植物の人気は数字にも表れています。

     

    最近わたしも、観葉植物を購入しようか迷っています。

    でも、実はわたし、植物を自分でお世話した記憶がないんです。小学校の「朝顔の観察日記」も、家族にやってもらっていました。

     

    観葉植物のある部屋には憧れるけれど、すぐに枯らせてしまわないか不安だ……。

     

    そんなとき耳にしたのが、「植物を再生させる店」。

    都内にあるそのお店は、弱った植物や枯れかけの植物を、再生させるサービスで話題になっているそう。

     

    こちらが「リボーンプランツ」で生き返った植物。

    葉っぱはもちろん、幹にも水分が渡って、血色(?)がよくなっているのがおわかりでしょうか?

     

    こんなに上手に植物を甦らせるお店なら、植物の育て方のコツも教えてくれるはず!

    ということで、東京都港区三田にある植物専門店「REN」さんに行ってきました!

     

    同行したのは、ジモコロ編集部のきむらいりさん。購入した植物をどんどん弱らせてしまっているのが悩み。「植物を枯らす女」を自称しています

     

    「REN」ってどんなお店?

    ・1919年(大正8年)創業の、いけばな花材専門店が前身の植物専門店

    ・2011年、「REN」ブランドが、植物店としては史上初めてのグッドデザイン賞を受賞

    ・観葉植物をただ売るだけではなく、オンライン診断、旅行時などに預けられるプランツホテルなど、アフターケアサービスが充実している

    ・弱った植物を下取りし、再生する「リボーンプランツ」は、他の植物店では見ることのない、唯一無二のサービス

     

    今回は「REN」を運営する、東京生花の川原伸晃さんにお話を伺いました。

     

    話を聞いた人:川原伸晃さん

    東京生花株式会社代表取締役社長。 2005年に東京生花の新たな旗艦店「REN」を立ち上げ、チーフデザイナーを務める。

     

    ちゃんと管理すれば、観葉植物は半永久的に生きる

    「川原さん、今日はよろしくお願いします!」

    「よろしくお願いします!」

    「店内にたくさん植物がありましたね。どれも青々としてきれいでした」

     

    「私もあんな風に植物を元気に育てたいです。うちにもいくつか観葉植物があるんですけど、最近ぜんぶ枯れかけていて……。それを見ると罪悪感も湧いてきて……」

    「元気のない植物を見るとこちらも落ち込みますよね」

    「今日は、うちの植物についても相談していいですか?」

    「もちろん! 僕がわかることであればお答えします」

     

    「私はコロナになってから観葉植物を購入したんですけど、だんだん弱ってきてしまっていて。なにが原因なのか、自分ではわからないんですよね」

    「ということは、購入してから1、2年くらいですか?」

    「はい。買ってからちょうど2年くらい……。え、年数って関係あるんですか?」

    「植物って、買ったそのままの状態では、2、3年ほどしか生きられないことが多いんです」

    「えっ。でも、店員さんが『お水だけやっておけば大丈夫です』って言ってくれましたよ!」

    「メディアでもそう紹介されるんですけど、実は決定的に間違っていて。理由は土

    「土……?」

     

    「よくあるプラスチックの鉢って、流通上耐えうる最低限の土しか入ってないんです。土の量も、栄養も足りない。肥沃な土に植え変えてあげないと、どれだけ上手な人が育てても弱っていっちゃいますね」

    「そうなんですね……!」

    「逆に言うと、2、3年ならほぼ手をかけなくても育つので、『うまく育てられている』錯覚を起こしてしまいやすい。実は、その間もどんどん弱っていってるんです」

    「ちなみに、私の家の子たち、どれくらい弱ってしまっているんでしょうか?」

    遭難した人が、周りに食べるものが無い状態で1ヶ月くらい生き延びた状態をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれないですね。生きてはいるけど、体も心もボロボロ」

    「それはボロボロだ……」

    「一般的に売られている観葉植物は、植え替えが必要な『素材』の状態だと考えたほうがいいですね。植え替えには他にも意味があって、根に住む病害虫を見つけられたり、絡まった根がほぐれて栄養の吸収率も上がるんですよ。なので、RENでは専門家が植え替えた鉢を販売するようにしています」

     

    「では、丁寧に植え替えすれば2、3年以上生きられるんですね!」

    「そうですね。観葉植物もきちんと管理すれば、半永久的に生きますよ

     

    「半永久的……!?」

     

    「植物の種類にもよりますけど、ほら、盆栽って江戸時代から生きているものもありますよね。園芸学的な知識をちゃんと持って育てれば、原則的には半永久的に生きるんです。半永久的というのは、数百年、長ければ1000年ということなんですけど」

    「じゃあ、植物って、ちゃんとお手入れしたら、子どもどころか孫の世代まで受け継げるもの……?」

    「そうですそうです! ね、人間の寿命と比べると『永久』に近しいでしょ?」

    「100円ショップで買ったような、お安い植物もですか?」

    「ぜんぜんいけます! むしろ園芸学的には普通のことというか。それが植物のポテンシャルです!」

    「めちゃくちゃ失礼ですけど、いままで100円ショップの植物は使い捨て、くらいに思っていました……」

    「そう思ってしまうのも無理はないです。植物ってコスパがよすぎるんですよね。僕は、植物もペットや家族のような存在になり得るんだよ、とみなさんにお話していますね」

    「もしかすると、家族より長い付き合いになるかもしれないですもんね」

    「きむらさんの植物も、持ってきていただければうちで植え替えしますよ。『プランツケア』のサービスで、LINEやテレビ通話でのご相談も承っているので、オンラインで植物の状態を見ることもできます」

     

    「そんなサービスも……! わたしの悩みは、そもそも自分で植物の世話をできるか不安なことです。いつも人に世話を任せてしまっていまして」

    「なるほど。それって、なんで育てたいんですか?

    「SNSでお洒落な部屋を見ていると、必ず観葉植物があって、とても憧れていて……」

    「いまって、すごくすてきな造花があるんですよ。本物と見間違えるくらいのクオリティのものもたくさんあります」

    「あとは、植物くらいちゃんと育てられる人間になりたい、という気持ちもあるんですよね……」

    「同じように『植物を育てられる人になりたい』と悩んでいる知人がいましたけど、人には得手不得手があります。植物を育てられなくてもまったく問題なく生きていけますし、植物を育てる以外でも丁寧な暮らしはできますよ!」

    「ウッ……!」

    園芸は人間の生活を豊かにするもの。枯らせて自己肯定感を下げてしまうのは本末転倒ですよね。でも、暮らしの変化で育てるのが難しくなることもある。だから、うちでは『植物の下取り』も行っているんです」

     

    植物も人間も生き生きとするための「リボーンプランツ」

    「植物の下取り、気になってました!」

    「RENでは、お客さんの要望に答えて、サービスを増やしてきました」

     

    「こんなにたくさんあるんですね」

    「でも、ここには最後の1ピースが揃ってなかったんです。それが、『植物の下取り』でした。仕事や介護、子育てで忙しくなったり、または植物を愛せなくなってしまったり。そういった、『どうしても育てることができなくなった植物』を買い取るサービスなんです」

    「買い取ったあとはどうするんでしょうか?」

    「プランツケアの職人が、弱った植物を再生させ、二次流通という形で販売します。これは園芸業界では初の試みなんですよ」

     

    手放したい人から植物を買い取り、RENで再生。仕立て直したものがお店で販売される(※再生不可能なほどに弱った植物や、種類によっては買い取れない場合があります。お持ち込みの前に、相談することをおすすめします)

     

    「でも、この二次流通が、なかなかハードルが高かったんですよ」

    「どういうことですか?」

    「二次流通のためには古本屋、古道具店などと同じく『古物商許可』が必要なんです」

     

    「植物でも『古物』になるんですね」

    「しかも、古物商許可は警察署の管轄なんですよね。警察の方ってただでさえ忙しそうなのに、前例のない植物の古物商許可申請なんかをして来る謎の男……最初はまともに取り合ってくれなかったですね」

    「確かに、それだけで無理ゲーな感じがしますね……」

    「『明日枯れるかもしれないのに、下取りしてどうすんの?』と首を傾げられたり。でも、僕も一生懸命『実は持続可能なんですよ』と説得して」

    「そこから説明するんですね。すごく時間がかかりそう」

    「けっきょく、許可してもらうまでに2年もかかってしまいました」

     

    「2年!」

    「ようやく体勢が整い、『リボーンプランツ』をはじめてみたら、これがとても好評で。そして、リボーンプランツによって再生された植物がこちらです」

     

    「かっこいい!!! 根っこがラピュタみたいになってる……!」

    「すごく個性的じゃないですか?」

    「いままで見たことがない形で、すごい魅力的です……!」

     

    「いま、あえて新品じゃないものを推す時代の流れになってきていますよね。リボーンプランツは、古着が好きな方、アンティーク家具が好きな方にも注目していただいていて」

    「確かに、個性的なものが好きな方に人気が出そう!」

    「『こんなにかっこよくしてくれるのであれば、私のこの子もぜひ』と、下取りにいらっしゃるお客さんも増えました。この間も30年かけて育てたものを売ってくださった方がいました。僕らも『お宝だ!』って興奮して」

    「お客さんもお店も嬉しい。win-winのサービスなんですね」

    「でも、古い観葉植物は取り扱いにくかったりしませんか?」

    「他のアンティーク商品は限界があると思うんです。たとえば、古すぎたり、クセが強すぎたりする椅子には座れないですよね。でも、園芸はそこが青天井なんです。植物は時間が経つことにネガティブな要素はまったくない。クセが強くても、全部味にできる。すごくおもしろいですね」

     

     

    観葉植物は人間の生活を豊かにする「文化」

    「それにしても、今までの園芸店では聞いたことない話がたくさん出てきます。半永久的に生きるとか、弱った植物を再生させるとか」

    「同じことに気がついたとしても、大きな業界にいると声をあげにくい側面もあると思います」

    「声をあげにくい?」

    「たとえば、いまの園芸業界は、観葉植物が枯れたら新しいものを買ってもらうことで儲かっている側面も大きいです。そこで『植物は半永久的に生きますよ』とお客さんに伝えるのって、これまでのやり方を否定することにもなっちゃいますよね」

    「本質的な問題提起をしちゃっているというか」

    「そうなんです。業界の大きな仕組みに対して、疑問を投げかけてしまっているので」

    「例えば洋服の場合は、新品だけでなく古着の市場もあって、そこでもお金が回ってますよね。植物もそんな風になればいいなあと思いました」

    「そうなるといいですね。現状、なかなか業界でも浮いてしまっています(笑)」

    「そこまでして、なぜ川原さんはプランツケアに取り組むんでしょう?」

     

    「さっきもお話しましたが、植物はペットや家族のような存在になりうるもの。人間や、犬、猫の病院がない世界って、想像できないですよね。僕らのやっている『プランツケア』は、本来はなくてはならないものなんです」

    「これから観葉植物を購入しようと思っている人間からすると、とても気が引き締まる言葉です。枯らせないよう努力しなきゃ」

    「いや、万が一枯らせてしまっても、そこまで気に病まなくてもいいんじゃないでしょうか。植物を育てるのにも『得手不得手』がありますし、プランツケアを受けられるところはまだまだ少ないですし」

    「でも、植物を枯らせてしまうのって、地球に申し訳ないというか。環境には悪いことですよね……?」

    「よくそうおっしゃる方がいるんですけど、家庭用の観葉植物=環境によいかというと、実際そんなこともないんです。観葉植物は立派な工業製品。暖かいところの生き物なので、大体温室で育てて出荷します。その温室を加熱するのって、なんだと思いますか?」

    「電気とか、燃料……?」

    「そうですね。多くのところは化石燃料なんです」

    「一概には環境にいい商品だと言えないんですね。じゃあ、逆に、植物を育てないほうが環境にいいんでしょうか……?」

     

    「一番よくないのは、園芸と環境問題を混同すること。僕は、園芸は人間の生活を豊かにするための『文化』だと思っています。植物を育てて少しでも心が救われたり、植物に合わせて部屋の模様替えを頑張ってみたり。園芸の役目はそれで充分なんです」

    「観葉植物という存在から、もっと大きな『自然』や『環境』を透かして見ていた気がしていたけど、気のせいだったんですね……」

    「そうですね。だから植物を枯らせてしまって『自然に悪いことをした』『わたしは環境に貢献できない』と思うのも、ある種、自意識過剰というか」

    「環境によいかではなく、自分の生活を豊かにしてくれるかどうか、で判断していいんですね」

    「そうそう。必要以上に神経質にならなくてもいい。難しく考えすぎなくていいんです。僕たちは、観葉植物を枯らさないために生きている訳じゃないので」

    「いまのお話で、とても気持ちが楽になったような気がします」

    「でも、まあ、せっかく一緒に過ごすなら、元気なほうがいい。植物も生き物なので、弱ってくるとサインを出すんですよ。僕もお店の植物が弱っていると負のオーラに当てられて、ちょっと気持ちが沈みます。こういう怪しげなことはあまり言いたくないんですけどね(笑)。逆に、植物が元気だと、やっぱりとても気持ちがいいですね」

     

    植物を育てるうえで一番大事なのは「気づかい」の心

    「いろいろお話しを伺ってきましたが、改めて、植物を育てるのに大事なことってなんでしょうか?」

    「植物が元気よく育つには、よい土に植えかえることと、日当たり、風通しがよい場所に置いてあげること。あと、一番大事なことは『気づかい』ですね」

    「『気づかい』?」

    「『プランツケア』の診断に寄せられる相談のうち、約3割は、まったく問題のない元気な植物なんですよ。季節の変わり目で葉が落ちたのを不安に思って、連絡をくださる方もいます」

    「心配性な方なんですね」

    「いえいえ、そういったご相談はすごく嬉しいんですよ。小さな変化って、日々ちゃんと植物を見ているから気づくことですから。週1回、水をやるときにしか観察をしない人だと、些細な変化には気がつきませんよね」

    「確かに……。『水やり』という作業になっちゃっている」

    「そうですね。毎日チラッと見て今日も元気だね、と思ったり、思わず挨拶しちゃたり。そういった『ケア』の感覚はとっても大事だと思っています」

    「植物は言葉を発しないから気持ちがわからないよ! と思っていたんですけど、人間側から能動的に気づく姿勢が大切なんですね」

     

    「気づかう存在がいるって、手間はかかるけれど、すごく豊かなことだと思うんです。なにより、気づかいは『世界を広げる』行為だと思っていて」

    「どういうことですか?」

    「たとえば、最近では、レンタルやシェアのサービスが多くなってきていますよね。合理的でスマートですし、僕も利用していますけど、いつか返却するものを丁寧にケアしたり、愛着を持つのはなかなか難しい。やりすぎると、気づかう存在が自分の周りから消えてしまうんです。それってちょっと寂しいですよね」

    「愛を注げるものがなにもないと、『なんのために生きてるんだっけ?』となりそうですね」

    「そうなんですよ。ものを気づかうことによって、視野がぐっと広くなり、世界が開ける。大げさに聞こえるかもしれないけど、世界に意味を与えるのは小さなケアの積み重ねでしかないと思っています」

    「なるほど……!」

    「僕は、植物がその鍵を握っている気もしているんです。代わりがないものだし、こちらからの気づかいがぜったいに必要な生き物ですから」

    「観葉植物が自分の世界を広げるきっかけになるなんて思ってもみませんでした。自分の部屋に置く植物、少し時間をかけて選んでみようと思います」

     

    おわりに

    川原さんのお話を聴くまでは、わたしは観葉植物のことをインテリアのアイテムのひとつ、くらいに捉えていました。手間がかからないほうがいいな。飽きたらさよならしてしまえばいいか。

     

    しかし、今回の取材で、観葉植物は、どんなときも側にいて、静かに一生懸命、私のことを見つめていてくれる、生涯のパートナーにもなることを知りました。

     

    そんな風に考えるだけで、植物に対して「よくしてあげたい」と思う気持ちが芽生えて来るような気がします。あれ、なんか今日元気ないじゃない。どうしたの? わたしもちょっと落ち込んでいてさ。これからも、お互いによい影響を与え合っていこうね。なんて。

     

    そんな「気づかい」の心は、川原さんの言うように、世界に意味を与えるきっかけになりそう。

     

    でもやっぱり、私たち人間は植物の言語を知らないので、コミュニケーションがうまくいかないこともあるかもしれません。

    そんなときは、園芸のプロ・RENのみなさんに相談をしに行ってみたらいかがでしょうか。

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    荒田もも
    荒田もも

    1990年生まれ。印刷会社、青果店を経て、現在はHuuuuのアシスタントをしています。間違えたり、遠回りをしちゃう人が出てくる作品に興味があります。いま好きな漫画は『フールナイト』。

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