こんにちは。ジモコロ編集長のだんごです。突然ですが、僕は「グラニフ」というアパレルブランドが好きで、いつもよく服を買っています。

特にグラニフの中でも、白い犬が光速で宇宙空間を移動している「ギャラクシードッグ」シリーズの大ファン。めちゃくちゃ可愛くないですか? このデザイン。犬と宇宙が好きな僕にとってはカツカレーみたいな組み合わせですし、シュールで最高。

ギャラクシードッグが好きすぎて、これまでにTシャツ3着とスウェット、猫バージョンのTシャツを購入。よくジモコロの記事にも着て出ています。

今日も今日とて着ています

この「ギャラクシードッグ」以外にも、グラニフの服は思わずニヤッと笑ってしまうようなユニークなデザインとキャラクターが印象的。

グラニフにはいろんなオリジナルのキャラクターたちがいます

自分の好きなデザインの洋服を着るのはテンションも上がるし、ユニークな柄だと「それどこで買ったの?」と会話の糸口にも。仕事柄、はじめて会った人との会話でのアイスブレイクにもグラニフの服にとても助けられているんです。

しかも最近、グラニフのお店に行くと洋服だけじゃなく雑貨もめちゃくちゃ増えていて。「Tシャツのブランド」ってイメージだったんですが、どうも変身を遂げているよう。

グラニフのユニークなデザインはどうやって生まれてるの?

そもそも一体、グラニフってなんの会社?

そんな気になる疑問を引っ提げて、原宿にあるグラニフの旗艦店「グラニフ東京」へ取材にやってきました。グラニフで働くデザイナーであり、「ギャラクシードッグ」の生みの親でもある西 冬樹さんにインタビューします!

グラニフのデザイナー・西 冬樹さん

 

SNSでも人気な「銀河犬」

「ギャラクシードッグの生みの親に会えて感動してます。めちゃくちゃ着てます!」

「ありがとうございます。嬉しいですね」

「最初にギャラクシードッグを知ったのはX(旧Twitter)で、数年前にTシャツの写真をあげてる一般の方の投稿がバズってたんです。もう一目で心を射抜かれて、すぐにグラニフのECでTシャツを買ってました」

「僕はSNSをほとんど見ないので、会社の人から話題になってるよと聞いて驚きました」

「その後も何度かバズってるイメージがあります。街でも着てる人をよく見かけますし、着てると『面白いTシャツだね』と言われることも多いですね」

「以前からグラニフ内で『何かインパクトのあるものを作りたい!』と思い、見た人が笑顔になるようなアイデアを探してたんですよね。社内のデザイン会議でも好評だったんですが、これだけ人気が出るとは予想外です」

「最初はTシャツだけでしたけど、その後、スウェットやシャツになったり、猫バージョンも出ていったじゃないですか。その度に欲しくなって買っちゃうので『グラニフの手のひらで転がされてる〜!』と思ってました。いい意味ですよ」

「ギャラクシードッグのようなキャラクターを社内では『コンテンツ』と呼んでいますが、いろんな洋服や雑貨にコンテンツを展開していくのが現在のグラニフの特徴ですね

「原宿店には今日初めて来たんですけど、『グラニフ、こんなに雑貨もあったんだ!』と驚きました。僕の持ってた昔のイメージとだいぶ変わってて、『なんの会社なんですか?』というのを今日は聞きたかったんです!」

 

スタートはTシャツストア。ブランドの軸に「デザイン」がある

「僕がグラニフを初めて知ったのは15年くらい前、大学生だった頃で。下北沢にある小さなお店で、セットプライス1枚2500円、2枚で4,000円のTシャツをよく買ってました。なので、グラニフはTシャツ専門店のイメージだったんですよね」

グラニフは2000年にデザイン・アートに造詣のある人たちが始めたブランドです。自分たちの好きなタイポグラフィやグラフィックをTシャツにして販売するデザインTシャツストアとしてスタートしました」

「デザイン・アート好きの方たちが作った会社なんですね! そういえば以前のブランド名も『Design Tshirts Store graniph』でしたよね。『デザイン』が軸にある会社だったんだ」

旧ロゴ(左)と現在のロゴ(右)

「デザイナーは社内に僕含め7名いて、オリジナルのキャラクターと、外部とのコラボ商品のデザインも行っています」

「グラニフはコラボ商品も多いですよね」

「コラボの場合にも、お借りしたイラストをそのまま貼り付けて使うようなことは、基本的にしていません。『こういう柄にしたら面白そう』『こういう服があるといいよね』とデザインチームで考えながら、いろんなデザインに落とし込んでいます」

「ちゃんとデザインの工夫を入れていくんですね」

「例えば漫画作品をアニメ化する場合、元の漫画の世界観は大事にしながら、アニメーションに適した演出や表現を加えますよね。それと同じように、コラボしたイラストやキャラクターをどういう風にグラニフのキャンバスに定着させることができるかを、デザイナーとしてすごく考えていますね」

「言われてみるとグラニフの洋服って、いい意味でひと癖あるんですよね。遊び心があるので着たくなります」

「おこがましいですけど、デザイナーの一人ひとりにオリジナルデザインをつくるアーティストの部分もあって、そのクリエイティビティのようなものがコラボデザインの中に現れているんだと思います」

「クリエイティブを常に忘れないと」

「もちろんコラボ元の作品へのリスペクトがあって、『作品で表現されている大事な部分』をグラニフのキャンバスの中に落とし込めるよう、デザインのバランスは、すごく意識していますね」

「遊び心で言うと、Tシャツの表裏でストーリーが感じられるようなデザインも多いですよね」

「メインの1枚絵があって、背面にオチがあるようなデザインは多いです(笑)。キャラクターごとに『この子はこんな子』って世界観があるので、それを活かしながら1枚の洋服の中で物語を作るようなイメージですね」

 

デザインで豊かな暮らしを作る

「デザインがすごく軸にある会社だとわかったんですが、最初はTシャツから始まって、今のようにすごく商品の幅が広がったのはいつからなんでしょう?」

「創業20周年を迎えたのを機に、2021年にリブランディングを行い、ブランドイメージを一新しようとなったんです。その流れで、社歴も職域も関係なく多様なスタッフを集めて、グラニフのこれからについてのワークショップを開いたんですね」

「そこではどんなお話が?」

Tシャツはあくまで表現手段であり、グラフィックこそがグラニフの個性だと。そしてただTシャツを販売するのではなく、人々の豊かな暮らしのために良いグラフィックを作る。そんな理念で商品を作っていこうと決めたんです」

「ファッションではなく、豊かな暮らしを作る」

「例えば、だんごさんもギャラクシードッグの服を着ていると『面白いTシャツですね』と話しかけられる、とおっしゃってましたよね。そんな風に、グラフィックを通して人間関係の新しい絆やコミュニケーションを生み出すのも『豊かな暮らしを作る』の一つだと思います」

「たしかに! 僕が『これいいな』と思って買うグラニフの服は、そういう会話を生み出してくれるものが多いかも」

「好きなデザインを着て自分の個性を出したり、親子や友だち同志でお揃いを着て楽しんだり、身に着けるだけで普段の暮らしが少し変わるのも、グラフィックの力だと思いますね」

「洋服以外の商品展開も、リブランディング以降に増えているんですか?」

「そうですね。僕はグラフィックのデザインチームですけど、社内にアパレルのデザイナーや、雑貨のデザイナーもいます。普通のアパレルブランドでは珍しいんですが、例えば僕が作ったキャラクターを、アパレルや雑貨のデザイナーが、いろんな商品に落とし込んでいってくれるんです」

「それぞれの分野にデザイナーさんが。じゃあ、商品会議で『こんなデザインはどう?』と提案しあったり」

「キャラクターごとの世界観はイメージボードや文章で共有しているので、『こんな風に配置するのはどう?』とか『帽子にするならこんなデザインに』とか、ニュアンスを汲み取りながら面白く膨らませ合う感じですね。僕自身、『なるほど!!』と思うことも多くて」

「デザイナーさん同士で、アーティスト魂を発揮し合えるのはめちゃいいですね。デザイナー冥利につきそう」

「僕自身、元々は普通にグラフィックデザイナーをやってたんです。でも、向いてないなと思ったのが転職のきっかけで」

「それはなぜ?」

「グラフィックデザイナーって、基本的にクライアントのやりたいことにデザインで答える仕事なわけですけど、クライアントのほうだけを向いてやることがあんまり得意じゃないなと(笑)」

「西さん、どことなく自由の香りがしますからね(笑)」

「でも、今の仕事ではグラニフというまあまあ大きなフィールドがあって、デザイナー個々がそれぞれの個性を発揮したグラフィックを作り出して、、それを面白がってもらえる土壌があるんですよね」

「コラボ商品でもデザイナーさんの遊び心を入れるって話もそうですね。デザイナーのクリエイティビティもちゃんと発揮できるのは、仕事としてのやりがいもありそうだなあ」

 

広がり続けるキャラクターたち

「これだけオリジナルのキャラクターがいるアパレルのブランドも珍しいと思うんですが、かなり昔からのキャラクターもいますよね?」

「15年前に生まれた『ビューティフルシャドー』はかなり古株ですね。黒い妖精なんですけど、ハンバーガーになったり、海の生物になったり、アイテムによって七変化しています」

誕生15周年を記念したTシャツ。影になっているのが初代のデザイン

バッグやキャップなど、洋服以外にも展開

「すごい広がりよう!」

「ビューティフルシャドーが面白いのは、顔だけでもキャラクターとして成立するところなんですよね。そこが15年も続いている秘密の一つかもしれません。最近だと、絵本にもなっていますね」

グラニフのキャラクターの絵本。現在までに4冊が刊行されている

「絵本まで! もはや立派なキャラクターの会社じゃないですか。それぞれのキャラクターに世界観がちゃんとあるから、いくらでも展開できそうですね。ちなみに西さんの担当キャラクターは?」

「先日デビューした『シティーボーイペンギン』は、僕がデザインしました。この子は10年以上前から考えてたんですけど

「めちゃくちゃ寝かせましたね!」

「そういうアイデアも多いですよ。デザイン会議に出したのも忘れた頃にメンバーから『このキャラあるじゃん!』と日の目を見ることになりました(笑)」

10年間でのデザインの変遷。途中に食パン(!)への変身も挟みつつ、目やサングラスの形に微妙な変化が

「こういうキャラクターのコンセプトって、どんな風に思いつくんですか?」

「彼の場合、グラフィックは作っていたんですけどキャラクターの設定は決まっていなくて。そんな中、コロナ禍のときに食事をしていて、自分の子どもの口元が妙に白いことに気づいたんです。何かと思ったら『マスク焼け』で」

「あ〜、夏でもマスクを外せなかったですもんね」

「そこからサングラスなら健康的かもな、と。それで、日焼けしやすい体質で、サングラスを外すと日焼け跡があるペンギンの『サニー』として作り上げていきました」

シティーボーイペンギンの「サニー」。目元はサングラス焼けで、レモネードが好物

「日常から生まれたキャラクターですね! 面白いなあ」

「この夏、サニーと一緒に外へお出かけして欲しいなと。だんごさんにとってのギャラクシードッグみたいに、サニーも誰かにとってのお気に入りになって欲しいですね」

「これからも誰かにとっての特別なデザインを生み出していって下さい!」

 

まとめ

見た目にもなんだかシンパシーを感じる西さんの話からは、グラニフについてはもちろん、デザイナーという仕事の魅力まで伝わってきました。遊び心があるから、グラニフの服が好きだったんだな〜。

そして取材後、「編集長ドッグです」と西さんからメールで1枚の画像が。

嬉しすぎる! 西さん、ありがとうございます〜! 。これからもグラニフを着続けます!

 

構成:吉野舞
撮影:番正しおり