
いやぁ、映画って本当にいいもんですね。
はじめまして、ライターのISO(イソ)と申します! いつもは映画について執筆している僕がどうしても取材に行きたかった場所。
それは、映画館!
映画館って変な空間ですよね。真っ暗な中、何も喋らず、スマホもいじらず、知らない人たちとじっと前を向いて同じものを共有する場所。なんだか一種の聖域みたい。
そんな映画館の中でも格別なのがミニシアター。大型映画館ではやらないような、小粒だけど心に響く名篇や馴染みのない国の作品、驚きの実験映画まで、自分の世界を拡張してくれる素晴らしい作品を日夜上映してくれています。僕はそんなミニシアターが大好き!
しかし昨年、そんなミニシアターを対象とした恐ろしいアンケートが発表されました。
>(全体の傾向として)ミニシアターの置かれたとても厳しい状況が浮き彫りとなった。現在の経営状況についての設問については、「とても悪い」が5.1%、「悪い」が26.9%、「やや悪い」が35.9%で、以上のネガティブな回答は計67.9%、約7割にのぼった。
もともと映画人口が減りつつあった中、さらにはパンデミックでの打撃、公的支援の欠如など、さまざまな要因で全国各地のミニシアターが危機的状況に陥っているのです。
ですがそんな状況下でも連日お客さんで賑わい、上映作品を度々ヒットさせたりと、小規模映画の台風の目として踏ん張りまくっているミニシアターがあります。
それがJR東中野駅すぐ近くにある、ポレポレ東中野(以下、ポレポレ)。
JR東中野のホームから見える距離にあるポレポレ東中野。ポレポレでしか観られないドキュメンタリーも多いため「ドキュメンタリーの聖地」と呼ばれることも
ポレポレはスクリーンが1つしかない正真正銘のミニシアター。
特徴としては扱う作品の大半が日本の映画で、かつドキュメンタリーを多く上映しているということ。同時にキャリアの浅い監督の映画も継続的に上映する、という新人監督に優しい側面も。小規模な映画も多いことから、ポレポレでしか観られない作品も多々あります。
また上映後には監督をはじめ、関係者や文化人のトークショーを頻繁に行なっているのも大きな特徴として挙げられます。
ポレポレ東中野の支配人・大槻貴宏さん。下北沢にあるミニシアター・下北沢トリウッドの支配人でもあります
なぜ全国のミニシアターの経営不振が叫ばれている中でも、ポレポレは満席を続出させ、次々とヒットを飛ばすことができるのか。
その秘訣をポレポレ東中野の支配人・大槻貴宏さんに伺いました。
「雑多な映画」を手分けして探す
「ポレポレって作品も硬派な印象があるので、もっといかつい人が出てくると思っていました」
「ただのおじさんですよ」
「緊張していたのでよかったです! 僕が2022年に上京してから一番通っている映画館がポレポレなので、お話を伺えて本当に嬉しくて」
「ありがとうございます」
「さっそくですが、大槻さんが考えるポレポレ東中野とはズバリどんな映画館ですか?」
「うーん……逆にどういう映画館だと思います?」
「やっぱり『ドキュメンタリーの聖地』というイメージです」
「イメージはそうですよね。でもあくまでドキュメンタリー中心というだけで、フィクションもやってますし、一言で表現するなら『雑多なものをやってる映画館』ですね。何かを専門にするとイメージは付きやすいけど、固執するとクオリティが落ちると考えているので」
「新人監督の映画も積極的に上映していますよね」
「すでに有名な人の映画は他でも上映するから、他ではやらない映画をやりたいなと。あとターミナル駅ならともかく、各停しか止まらない東中野だし、来てもらうために差別化しようというのも意識しています」
「そんな上映作品をどうやって見つけてくるんですか?」
「付き合いの長い、信頼できる配給会社さんや映画監督さんがいます。その上で、ウチには小原さん、石川さんという社員がいて、それぞれざっくりフィクション担当・ドキュメンタリー担当と分かれてるんです。それぞれ担当ジャンルしか見ないわけでもないんですが。彼らが面白い映画を持ってきてくれる。おかげで僕の視野も広がってます」
「へぇ、チームで映画を見つけてるんですね」
「あとは持ち込みもすごくあります。映画が届くと社員の誰かが観て、彼らが面白いと感じたり、気になると思ったものを僕も観て、みんなで上映するかを決めています」
「てっきり大槻さんが一人で全部決めているのかと」
「今ウチが上映してる作品はかなりバリエーションがあると思っているんです。流石にそれを一人で決めるのは難しいし、僕だけでやると作品の幅が狭まるかもしれない。だからみんなで決めるというのは大事にしてますね」
「だからいつもあんなに種類に富んだ作品を上映しているんですね!」
映画館にとって、配信は敵じゃない
「大槻さんはどういう経緯でポレポレの支配人になったんですか?」
「どこから話せばいいんだろう……まず僕は高校の時に8mmフィルムで映画を撮ってて、それが『ぴあフィルムフェスティバル』で上映されたりしてたんです」
「えっ、すごい。映画監督を目指してたんですか」
「それが監督になりたいとは全然思ってなくて、普通の大学に進学したんです。当時はバブルでどこの会社もいける時代だったんだけど、どうせなら映画で食っていきたいと思って映画産業が盛んなアメリカに行きました」
「フッ軽だ」
「バブル世代あるあるだね。それで大学の映画学部のプロデューサー学科に編入して、2年半ぐらい勉強したんです」
「プロデュース学科って……?」
「あまり日本では聞かないよね。何を教わるかというと、基本的に撮影から脚本、演出まで全部。一番最後に予算について学ぶんです。映画の全部がある程度分かっていれば、管理も交渉もできる。すごくロジカルでした」
「現場を分かっていないと予算の割り振りもできないですもんね」
「その後はアフリカのモザンビークで友達と映画を作ったりして。流石に働かなきゃなと思って帰国したのが27歳。専門学校の講師として映画制作を教えて、32歳の時に下北沢にあるトリウッドを建てた。それが1999年」
「そっか、下北沢トリウッドの支配人でもあるんですよね」
下北沢トリウッドは座席数45席と小規模ながら、自主制作時代の新海誠監督をいち早く見出すなど、映画好きに広く知られているミニシアター(撮影:編集部)
「あっちは自分と妻が100%のオーナー。で、2003年4月にポレポレ東中野の前身となるBOX東中野が閉館になって、ここのビルのオーナーが施設のマネジメントする人を募集していたんです。オーナーと共通の友人がいたこともあって、僕に声をかけてくれて」
「トリウッドをやってたのに?」
「はい、だからトリウッドと兼任でもよければ、とお返事しました。それがOKだったので、僕が36歳の時、2003年9月6日にポレポレ東中野をオープンしました」
2018年から、ポレポレ東中野もトリウッドと同じく大槻さん夫妻がオーナーを務める形で運営している
「若くしてすごいなぁ。先ほどプロデュース学科で学んだとお話していましたが、映画をプロデュースすることもあるんですか?」
「去年は『リバー、流れないでよ』って映画をプロデュースしました」
京都・貴船を舞台に、2分間のタイムループから抜け出せなくなってしまった老舗料理旅館の人々の混乱を描く群像劇
「えっ、超話題作だ!」
「あの作品、実は海外でも売れてるんです。アメリカでは今年2月に小さく公開しつつ、配信で観られるようにしたんです。そしたら『今観るべきSF映画』としてニューヨーク・タイムズでも取り上げられて」
「なんと」
「だから海外にも日本映画のマーケットはあるんですよね。配信でそうやって広がっていくこともあるから、映画館でやることがすべてじゃないなと改めて思いました」
「日本だと映画の地方格差もあるので、地方出身者としては都内でしかやらないような映画を配信してくれるとすごくありがたいです。でも配信をよく思っていない業界関係者もいますよね」
「配信はまったく敵じゃないと僕は思ってます。2011年公開の『ロックンロールは鳴り止まないっ』って映画をプロデュースしたんですけど、東日本大震災で公開が延期になったんです。それで僕は『どうしても配信したい』って制作委員会にお願いしたこともあって」
『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』……バンド『神聖かまってちゃん』の名曲群をモチーフに、プロ棋士を目指す女子高生の姿を描く青春映画。二階堂ふみの初主演作品
「その時の周りの反応はどうだったんですか」
「『映画館をやってるのに?』とは言われたんですけど、関係者がみなさん良い人だったので了承してくれました。もちろん配信の後に上映する映画館とも、きちんとお話させてもらいましたよ。実際、配信のおかげで観てくれた人もいたし。だから僕は映画館と配信は絶対共存できると思ってる」
「同感です。映画を配信で観ることと映画館で観ることは体験として全然違いますもんね」
「配信に好感を持ってない人と話してると『あなた方はそんなに全部を映画館で観てきたの?』と思うんです。僕は最初、テレビで映画を観てたし、そこから映画館でも観るようになった。だからこそ色んな世界が知れたし、映画館にひたすらお金払ってたらあれだけの数は観られなかった。今の人だって配信で映画が面白いと思ったら、映画館に行くよ」
「僕もテレビで観た『日曜洋画劇場』が入り口でした」
「みんなそんなもんなんですよ。映画館が映画を観るのに一番良い環境というのは変わらない。だから努力さえすれば、ミニシアターはなくならないと思うんです」
映画の内容だけでなく、「見せ方」で満席を目指す
上映前のロビーに詰めかけるお客さん。この回は満席!
「直近の上映回のチケットが完売したという連絡が」
「ありがたいですね」
「さすが。いやらしい話、さぞかし儲かっているのでは……」
「儲かりたいなぁ。満席といえど、スクリーン1つだと限界があるんですよね」
「スクリーンを増やすという選択肢はないんですか?」
「今から設備投資をやるのは大変かなと思っていて……。あと1つのスクリーンでやってると、一日に観られるお客さんの数も限られてきますよね。だからこそ、ヒットした時には長期間上映するようにしています。それでこの作品は人気作なんだなと印象付けられる」
「ポレポレでロングヒットして話題になり、全国に広がっていった作品もいろいろありますよね」
「うちで最初に上映させてもらってる作品も多いですから。でもその分の責任はありますよ。コケたら地方のミニシアターにも広がっていかないので」
「責任重大だ」
「そんなにプレッシャーは感じてないけど、そのくらいの責任は持たないと」
「でもポレポレっていつも賑わっているイメージがあります。先日公開された『◯月◯日、区長になる女。』(以下、『区長になる女』)はずっと満席でしたよね」
生活を守りたい住民たちによる草の根活動が、やがて予想だにしない奇跡を巻き起こす。歴史を変えた2022年6月の杉並区長選挙の一部始終を捉えたドキュメンタリー
「あの映画はうちだけで7000人近く入ったね。宣伝担当もいない小さな作品だったので、不安もあったのと、熱を分散させないようにあえて一日一回にして満席近くを狙ったら、13日間連続の満席になって。その後、一日二回上映にしてもしばらく満席が続きました」
「そういう戦略もあるんですね」
「『あの映画は面白かった』って口コミも大事なんですけど、僕は『あの映画は満席だった』『入れなかった』って方がニュースバリューとして高いんじゃないかと思っているんです。もちろん、入れなかった人には本当に申し訳ないと思いつつ、そうやって映画の評価を上げることも仕事だと感じています」
「たしかにずっと満席の映画は気になりますよね。逆に人が入らない作品はあるんですか?」
「もちろん! でもそれは作品どうこうじゃなく、こちらの力不足ですよね。上映作品を選ぶときに『クオリティはあるけど、ポピュラリティが少し弱いね』と思うことは確かにあって。でもそれをどう『見せ方』でカバーするかが大事なので。その上で人が入らなかったら、うちのやり方がハマらなかったんだろうなと」
「作品ではなく、戦略の当たり外れで増減があるということですね」
「『ポレポレには固定のファンが付いているから』って言われたりもするんだけど、ファンも全部観てくれる訳じゃないんですよね。でも全部の映画に同じように入っているより、波がある方が健全ですよね。フェアネスの象徴なので、僕はそれで良いと思っています」
「上映スケジュールも戦略的に考えているんですか?」
「それはめちゃくちゃ考えています。以前は一ヶ月分の上映カレンダーを作っていたこともあったんですよ。でもそれは自分たちの足を引っ張るなと思って止めました。人の入り方を見ながら考えると、一ヶ月先は読めない。読めて二週間先まで」
「二週間でも結構長めの読みですよね」
「シネコンは週末の数字を見て、月曜に会議を経て火曜に上映スケジュールを発表するんですよね。うちはその期間を伸ばした感じ。あとは客層や話題性も踏まえ、より広げるにはどうしたらいいかを考えながら組んでます」
「客層というのはドキュメンタリー映画でも作品ごとに変わってくるんですか?」
「変わりますね。今上映している『戦雲 (いくさふむ)』はシニアの人が多いです。それをどうやれば若い人に観てもらえるのかは常に考えているんですけど。一方で上映中の『区長になる女』や、少し前の『ヤジと民主主義』は30、40代の人も観てくれてたね」
『戦雲(いくさふむ)』……急速に軍事要塞化する沖縄・南西諸島の現状と、そこに暮らす人々の伝統的な営みを映し出す。本当の「国防」とは何かを問うドキュメンタリー
「どちらもエンタメ性に優れた映画ですもんね」
「でも自分が30歳の時に観るかな、と考えた時に、多分観ないであろう作品もあるんです。40〜50代になって面白さがわかるような。そういうのは若い人に無理強いせず、ハマりそうな年齢の人に観てもらえればとは思いますね」
「そういえば『ヤジと民主主義』には劇中にポレポレが出てきましたね」
『ヤジと民主主義 劇場拡大版』……安倍元首相の演説時にヤジを飛ばした人々を北海道警がその場から排除した。メディアの眼前で行われた異様な言論弾圧に迫るドキュメンタリー
「僕も何も知らず観たから笑ったよ」
「劇中にポレポレの映画をきっかけに政治に興味を持ち始めたという若者が登場しましたけど、そういう人は他にもいるんじゃないですか?」
「増えてると思います。それが政治批評にならず、政治参加になると一番いいですよね。特に若い方が映画を機に政治的アクションを起こす側になってくれれば……というのはわりと考えてます」
「それで継続的に政治ドキュメンタリーを上映してるんですか?」
「お客さんの繋がりとして意識してますね。例えば去年の『シン・ちむどんどん』から『国葬の日』といったように、政治ドキュメンタリーを繋いでいったり。それが今ロングラン上映している『区長になる女』まで続いてる」
「『区長になる女』みたいな前向きな作品があるのがいいですよね」
「あれは気持ち良い映画だからお正月公開にしました。いい映画をやるのも大事だけど、それをいつやれば面白いのかもすごく重要だと思っています」
映画と、作り手のファンになってもらいたい
「ポレポレの大きな特徴の一つが、頻繁に開催されている上映後のトークショーですよね」
「ゲストを呼びやすい都心の利点ですよね。あれをやっている理由はいろいろあるんですけど、一つはライブ性を高めること」
「ライブ性とは」
「映画は演劇と違って結局は毎度同じのコピーなんです。でもほとんどのお客さんにとって観る体験は一回きりな訳で。トークショーでその一回の体験の質を高めることができたらなと」
「たしかにトークショーがある上映は特別感があります」
「あとは映画の理解を深めてほしいんです。一回観ただけで腑に落ちれば良いんですけど、中々そうはいかないじゃないですか。そこで感じた疑問やモヤモヤを解決する機会になってくれれば嬉しいです」
「映画と観客を繋げるとても重要な役割を果たしていますよね」
「さらにサイン会もやるんです。トークショーのQ&Aだと緊張して質問できない人も、サイン会なら1対1になるので、聞きたいことを聞けるじゃないですか。理解を深める機会が何段階かあることで、その映画や作り手のファンになってほしいんです」
「ゲストの選出はどのように考えているんですか?」
「ポイントは誰に話してもらえばより映画が広がるかですね。映画畑の人だけでなく、小説家や音楽家、政治家とか、どんな角度からその映画を語ってもらえると、より広がりが大きくなるかなど考えていますね」
まずは打率3割を目指し、しなやかに変化していく
「昨年、全国のミニシアターを対象に『映画館の経営状況と今後についてのアンケート』が集計されましたが、過半数がネガティブな回答をしていて衝撃を受けました。このミニシアターを取り巻く状況についてどう思われますか」
「クリティカルな質問だね……。ウチに関して言えば、今のやり方が続けられるのであれば大丈夫かなと思っています。決して安泰ではないですけどね。人が入ってないくらいであればなんとかなる。一番困るのは上映する映画がない時。そうなったらピンチ」
「そもそも売り物がないと商売にならないですもんね」
「どの映画館も時間や作品によっては観客が全然いない時もあると思うけど、僕自身小さい頃から映画館でガラガラの状況も体験してきてるし、そういうものだと思ってるのでそんなに怖くないんです。もちろん困りはするけど」
「前向きでいいですね! ポレポレ東中野として、どれだけ観客が入れば安泰といった目安はあるんですか?」
「自分で作った映画館の損益分岐点があるんですけど、3割いけばギリギリやっていける。シネコンは合理的にやってるのでもっと低いと思います。でも全体をならして3割って、平日の昼間も含めるとすごく難しいんですよ」
「3割と聞くと寂しい気もしますが」
「だからこそ、攻めた作品や新人監督の作品も上映しやすいんです。とはいえギリギリの採算ラインなので、10割を目指そうとはいつも言ってるよ。この3割っていう数字は、おそらく他のミニシアターでも共通すると思いますね」
1階にあるカフェ『Space&Cafe ポレポレ坐』も人気。当日のチケット半券で100円引きになるサービスも
「そんな全国的に厳しい状況が続くミニシアターを、今後も存続していくためにはどうしたらいいんでしょうか?」
「ポレポレに関して言えば、継続しつつ変わっていくことですね。例えば歌舞伎って、いろんなものを吸収して変わっていっているんです。古典もあるけど、最近だったらワンピースも題材にしたり。それでも歌舞伎ですよね。そうやってしなやかにやっていきたいと思います」
「確かに宝塚歌劇も、インド映画の『RRR』を上演したりと客層を広げてますね」
「あくまでウチの話ですけど、同じものをやるよさはあるし、同時に新しいことをやるよさもある。その両方をちゃんと続けていきたいな」
「大槻さんの考えるミニシアターの役割ってなんだと思います?」
「ウチに関して言えば、映画を売っているお店だと思ってます。本屋さんとかパン屋さんとかと同じような身近なもの。あとはターミナル駅ではやらない映画が観られる場所。上映してほしいって依頼が来て、それで僕たちが観て、作品を決めて、そこにお客さんが入ってっていう循環が今のずっと続けばいいなと」
「東中野にとってもポレポレは必要不可欠な存在になっていますよね」
「それなら嬉しいね。でもポレポレは幸いにして、遠くからも来てもらえる場所になったのかなと思います。ある程度若い人であればみんなGoogleマップで調べて来るんだけれど、『ポレポレへの行き方を教えて』って電話が来ると、これは映画がヒットしてるなって」
「最後に、ポレポレの今後の展望をお聞かせください」
「やはり継続していくこと。とはいえ、たとえ自分1人になっても必死にかじり付いてやりたい、とかではないんですよ。やっぱり今のいろんな面を持つスタッフがいてのポレポレだから。そういう人たちとこの先も一緒に、この規模でやっていきたい……なんか湿っぽくなっちゃった」
「素晴らしいエンディング、ありがとうございます!」
おわりに
パンデミックを経て、苦境に立たされている全国各地のミニシアター。ここ数年だけでも慣れ親しまれた老舗劇場が閉館する、という悲しいニュースを相次いで耳にしました。
「ミニシアターには絶対になくなってほしくない……!」
そんな想いで望んだ取材でしたが、「継続しつつ、時代とともに変化していこう」という大槻さんのポジティブで建設的な言葉に、ミニシアターの明るい未来を見た気がします。
とはいえミニシアター文化の継続を劇場任せにする訳にもいきません。僕も観た映画の口コミを広げたり、劇場に足を運んだり……もっと積極的に応援していこうと改めて思いました。
大型映画館では観られないような作品を上映するミニシアターは、政治や歴史の裏側、知られざる文化についてなど、時にさまざまな学びの入り口になります。たった一本の映画が人生を左右することだってあるかもしれない。そんな大きな可能性を秘めたミニシアターがこの先もずっと続いていきますように。
皆さんもぜひ、お近くのミニシアターに足を運んでくれたら幸いです。かつてない体験がそこで待ち受けているかもしれませんよ。
取材協力:ポレポレ東中野
撮影:本永創太
ミニシアターをもっと知りたくなったあなたへ
この記事を書いたライター
奈良県出身。メインジャンルは映画。雑誌やWEBメディア、劇場パンフレットなどで映画評やインタビューなどを執筆。時折ラジオにも出没。映画以外には風呂、旅行、猫、アメリカ、音楽、デカ盛りも好き。経費でアメリカに行きたい。 note:https://note.com/iso_zin_