古着好きライターの神田(こうだ)です。

私は大学生の頃に京都でふらっと立ち寄った古着屋で古着のかっこよさにハマり、そこから10年以上ずっと古着のトリコです。

おかげでもう部屋は古着でパンパン。私は丈夫でかっこよくて機能的なミリタリーやアウトドアウェアが好きなので、そういった服を買い集めています。イチオシのものをいくつか紹介させてください

 

こちらのプルオーバー式のM-43 フィールドパーカー1940年代にアメリカ陸軍の山岳部隊が着用していたもので、無骨でボテッとした感じが好きなんです。セットのもこもこのパイルライナーを中に着込むことで寒さもなんのその。あと紐に付いてる木の球がかわいいね。

 

こちらはChampionのリバースウィーブ(※)です。アメリカのノースショアの空手連盟のスウェットで、背中に「初心」と書かれていて少しダサいのもいいです。タグを見れば年代がわかるのですがこちらは90年代のもの。海外でも空手がんばってたんだな〜。

※  肉厚で動きやすいスウェット。アスリートを中心に古くから愛されるアイテムで古着市場でも人気。現在も新作が販売されている

 

こちらはよく着ているアメリカの消防士の服。特殊な繊維が使われているので風も通さず水も弾いて、もし燃えても大丈夫。いつの年代かは不明ですが、消防服は黒色や黄色のものが多い中、青色が珍しくて気に入っています。

こういうふうに、何十年も前に使われていた異国の衣服がめぐりめぐって私のところに来るのもロマンだし、ポケットの位置や素材など、どうしてそのデザインになったのかなど背景を想像するのも楽しいです

それに、なんか昔のものって使い古された得も言われぬ迫力があってかっこいいんですよね。私はそうしたいわゆる「ヴィンテージ」(※)と呼ばれる古着が好きなんです。

※ヴィンテージの区切りは人それぞれですが、この記事では90年代以前とします

しかし、古着はよく買うけど、その古着を売っている古着屋のことって実はあまりよく知らない……。

 

ということで、何度かお店を訪れてずっとお話を聞いてみたかった東京渋谷区・富ヶ谷の古着屋Mr.Clean(ミスタークリーン)」を訪れました。もうドッキドキです。

古着屋さんに取材するのに何を着ていくか迷ったのですが、フリースにリバースウィーブにワークパンツと、お気に入りの古着で来ました!

 

お話を伺ったのは「Mr.Clean」店主の栗原道彦さん。

<プロフィール>

1977年生まれ。1995年から2010年まで原宿にあった古着屋にてバイイングを担当し、2011年に独立。古着の卸売りや、ECサイトを立ち上げ、2018年に実店舗「Mr. Clean Yokohama」をオープン。2020年より渋谷区富ヶ谷にお店を移転し営業。
Instagram:@michihikokurihara

古着のバイヤーになって約30年という古着界のレジェンドです。1年の半分をアメリカに1人で買い付けに出かけ、いつもめちゃくちゃいいものを持って帰ってきてくれます(本当にありがとうございます)。

 

今回は、

・お店にはどんな商品があるの?
・古着がお店に並ぶまでにどんな流れがあるの?
・今までの買付の中で、印象的な出来事やアイテムは?
・古着屋になるためにはどうしたらいい?

など古着にまつわるアレコレを本当にたっぷりお伺いしました。後半では栗原さんが今までの買い付けで一番印象深かったアイテムも教えてもらっています

まずはお店で商品を見ながら気になったことを聞いていくぞ!

 

なお、今回は古着好きなジモコロ編集長、ギャラクシーにも同行してもらいました。私のいつも着てる服とは系統が全然違うな……。同じ古着好きでも色んな好みがあるから楽しいですね。

 

 

「Mr.Clean」の店内楽しすぎ!

うわ~~~!!!

 

 

ずら〜っと古着が並んでいてめちゃかっこいい!!

 

何度もお店には来ているんですが、何度来ても「これは…!」となるアイテムが多くてすごいです。レディースコーナーも充実しています。

 

完全に最高じゃないですか?

空間に質の良さが漂ってる

古着屋ってオーナーの趣味やセンスがお店に出ると思うんですが、「Mr.Clean」はどんなコンセプトのお店なんでしょう

いい意味で普通の古着屋ですね。強いて言えば僕がお客さんとして行きたいような空間にしています。特別ヴィンテージ専門というわけでもなく、アウトドア、ミリタリーなど1920年代〜2000年代以降と古いものから新しいものまで置いてます

 

私の好きなリバースウィーブがたくさん! いつもきれいに正方形に畳まれてるから取るの緊張するんだよな〜

全然気にしなくて大丈夫なので、好きに広げて見てください!

 

ミリタリーもめちゃくちゃある……! おっ、これは……

 

40年代のアメリカ陸軍山岳部隊のスノーパーカーだ。プルオーバータイプは持ってるけど前開きもあるんだな〜

これはリバーシブルで、裏面は白色なんです。裏返すと雪の中に溶け込むようなカモフラージュになっています。このモデルだけでも4〜5型あるんですがボタン型は比較的珍しいと思います

せっかくだから試着させてもらったら?

いや、私はいったんお店の商品を全部見てから試着したいタイプなので

めんどくさっ

 

アウトドアコーナーもすごい! めちゃくちゃいいのたくさんある!

 

この「Columbia」のアノラックかわいい! 古着市場だとColumbiaは「patagonia」とか「THE NORTH FACE」に比べるとマイナーなイメージあるけど、色使いも独特でかわいいし細かいギミックがたくさんあるんだよな〜

急にすげーしゃべるじゃん

他のアウトドアブランドと比べるとまだ安価に買えるのでおすすめですね。機能性も文句なしです

 

うわ〜〜 このデニムカバーオールも味があってかっこいい……

これは1920年代初頭から労働者向けに展開された「PAYDAY」というブランドのものです。デニム系は色が濃いほど値段が高くなる傾向なんですが、これも30-40年代とかなり古いわりに色が残ってていい雰囲気です

デニムはまだ集めてないけどハマると止まらなくなりそう……

ちょっと着てみたら?

いえ、お店の商品を全部見てから試着します

気軽に試着してよ! 記事なんだから!!!!

 

このブルーの革ジャンめっちゃかわいいですね

これは60〜70年代くらいのシングルライダースジャケットですね。作りは文句なしに上質なんですがノーブランド品なのでお安めです

 

シングルライダース(ノーブランド)38500円

 

嘘だろってくらいサイズぴったりなんだが

ギャラクシーさんルイスレザー(※)買ってたしレザー系好きですよね

※1892年にイギリスで創業したライダースジャケットの名門。20万円以上してなかなか手が出ないが品質はピカイチ

レザーは袖丈とかサイズが難しいんですがめちゃくちゃぴったりですね。グリーンのパンツにも合ってますよ

え~どうしよっかな。さすがにパッと買える値段じゃないしな~~~ でもな~……

 

買っちゃった

 

ライターほったらかしで自分の服を買わないでください

いいでしょ自腹なんだから!! 神田くんも気になる服があったらもっと見たり試着したりガンガンしてください

全部気になるんだよなぁ……これも良いし……あっちも好きだな~

 

patagoniaのベビーレトロカーディガン、かわいくてほし〜〜〜〜〜

 

医学系大学でよく見る2匹の蛇が絡み合ったデザインのリバースウィーブもほしい……

 

記事なのに試着も購入もしないまま永遠に服見るじゃん

あ、取材だってこと忘れてた。このままだと無限に悩んでしまうので……栗原さん!僕に似合いそうな服、どれかおすすめしてくれないですか?

 

そうですね。リバースウィーブがお好きならこれなんかどうでしょう? リブラインのものでプリント入りはかなり珍しいですよ

 

めっちゃ良い!!

胸のロゴもそこまで主張しなくて着やすいしリブラインのやつは持ってないし……

 

というわけで私は栗原さんがおすすめしてくれたリバースウィーブ(19800円)を購入しました。大切にします!

 

取材なのを忘れて普通に買い物を楽しんでましたが、でもさあ、古着屋って店主さんに解説してもらいながら商品の背景を聞いたりするともっと楽しいから……。

 

次はお店の陳列の工夫や商品が並ぶまでの流れなどのお話を伺います!

 

 

商品陳列の工夫や値段の付け方を聞いた

陳列の工夫って?

古着屋って店内が薄暗かったり店員がだるそうで怖かったり、店主とその友達が店前でタバコ吸ってたりで入りにくいイメージがあるんですが、「Mr.Clean」はそんなことなくて入りやすいですよね

まあ今話されたような要素も店の味ではあるんですが……。僕のお店に関しては、極力お客さんがストレスなく服を選べるように工夫していますね。たとえば照明とか

間接照明とか暖色系の明かりのところもありますけど、ここは白色で明るいですね

僕がアメリカで買い付ける倉庫とかって間接照明で薄暗くてよく見えないことがあるんです。その中で商品を買って太陽光で見ると、思ってたより汚れがあったり、ブラックだと言われて買ったものがネイビーだったり、がっかりすることが多くて

色味めっちゃいい!と思って買ったものが、外で着てみるとあんまり…みたいなことよくありますよね

薄暗いほうが店としては雰囲気出てかっこいいんですけど、お客さんに同じ思いはしてほしくないので見せ方は工夫していますね。どこにダメージがあるかも1点ずつ手書きで値札に書いています

 

確かに、値札にキズや汚れ、リペア跡などが書いてある

並べ方も、ジャンルと種類で細かく並べています。そのほうが自分の目当てのものにすぐ出会えますからね。お店もお客さんから「〇〇あります?」って聞かれたときにスムーズに対応できますし

色で分けてるところもおしゃれなんだけど、私もそっちのほうが助かりますね

 

あとは個人的に2段ラックが嫌いなので、取り出しやすいように1段に並べていますね。2段だと誰か前にいたら見れないし、ギュウギュウに並んでると取り出せないしで

そんな細部にホスピタリティが込められていたとは……。他にもお店に並べる商品で気をつけていることってありますか?

これは当たり前ですけど、デッドストックやレザーなど洗えないごく一部のものを除いては、お店に出す前にしっかり洗濯をして汚れや臭いを取り除きます。穴が開いたものやボタンが欠けたものも丁寧にリペアしています

 


こちらの服は買付け時には欠損していたチェンジボタンを付け直している

 

ちなみにこちら、1920年代の希少なデニムカバーオールということでお値段は44万円でした

 

買い付けてそのまま売って終わりではなく、お客さんがすぐ着れる状態で買えるのはありがたいですよね

やっぱり古着だから汚いとか臭いとか思われるのはイヤですからね。それなりに値段がするものを買っていただくわけなので満足行く状態でお届けするべきだと思います

 

 

古着の値段はどう付けている?

L.L.Beanのビーンブーツ履いてみたいよな〜

 

古着の値付けについて聞いてみたいです。私は数万円のヴィンテージも買うので「こんなかっこよくて●万は安い」と感覚が麻痺してるんですが、値段の基準ってなんなんでしょう

やはり需要と供給ですね。まったく数がない希少なものはその分高くなりますし、ブランドや状態、サイズによっても価格は増減します。たとえばデニムは昔安い時期もあったんですが、現在は国内国外の需要もあって高騰していますね

デニムは今めちゃくちゃ高くなってると聞きますね

通称「セカンド」と呼ばれる貴重なGジャン ※写真提供:栗原さん

 

ジーンズで有名な「LEVI’S」(リーバイス)が1950年代に発売したGジャン「Lot.507XX」、通称セカンドはわかりやすいかもしれません。90年代に色が濃く状態がいいものが30万〜40万くらいだったものが、2000年代には10万円程度に落ち込みました。それが今だと100万円超えになっています

すごい値動きだ……

ちなみにLEVI’SのGジャンでもとりわけ希少なものとして第2次世界大戦中の「S506XX」、ファーストと呼ばれる型があります。この通称大戦モデルは戦争中で資源を節約するためにボタンを減らしたりステッチをペイントにしていたりと、そういう背景もあって人気がありますね。ウチでは275万円をつけています

そんなに!!?

 

こちらが275万円のGジャン、普通にかかってたからびっくりした

 

昔は日本国内を中心に盛り上がっていた古着が、今では若者からミドル世代まで世界的に需要があるようになったからですね。だから日本で人気がなくなったとしても、もう基本的に値段が下がることはないと思います

なるほど。どんな服でも年代が古いほど値段が高い傾向にあると思うんですがどうでしょう?

たしかにそういう傾向はあります。普通に考えても50年以上前の服が捨てられずに残っているのも珍しいことですし、昔の服は今みたいに大量生産ではなく一点ずつ人の手がかかっているぶん、品質も今のものより良かったりします。全部がそうではないですけどね

古着はどんどん数が出なくなるから今買うのが一番安いってよく言われますね。あながち間違いではない……?

高騰するものもあるので、それは正直そうかもしれないですね。あと古着全体で言うならば、一部のヴィンテージを除けば相対的に古着はまだ安いです。今は円安などで新品の服もかなり高くなっていますし

 

例を挙げると、ヴィンテージのChampionで、80年代、90年代のリバースウィーブは数年前は7800円〜9800円でした。しかし今では平均1万5000円くらいに高騰しています。だけど新品で現行販売されているものも1万〜3万はするので、新品のほうがヴィンテージよりも安いとも言えないですね

たしかに。品質がいいものを幅広く選べて比較的安価で楽しめるのが古着のいいところですよね

そうですね。素材に着目するとよりお得にいいものを楽しめるかもしれません。それこそ古着ではカシミヤのコートは2〜3万円で買えることがありますが、新品で買おうとすると20〜30万はしますし……

 

こういうパンパンに羽毛が詰まったダウンジャケットも、新品で買おうとすると3万〜4万円はしますよね。古着で1万円くらいで買えるのってすごいかも……

機能面でもお買い得ですね。ちなみに最近では、ビッグサイズのトレンドの影響か、同じ服でも大きいサイズのほうが値段が高くなっている傾向があります。昔は体にフィットするようなものを選ぶ傾向があったので、大きなサイズはまったく需要がなかったんですが

たしかに昔はジャストサイズかピチピチしか買わなかったな……

 

 

アメリカ買い付けの話をじっくり聞いた

栗原さんはすごい頻度でアメリカ買い付けに行ってますよね

そうですね。僕たち古着のバイヤーの多くはアメリカに商品を買い付けに行くのですが、僕は1年のうちトータルで6ヶ月くらい出張しています。ただビザの滞在日数の関係もあるので、今は一度の仕入れで2ヶ月アメリカに行って、3ヶ月半日本に戻ってというサイクルの繰り返しですね

それって車で回るんですか?

そうですね。自分1人で運転して、7週間で2万kmは走るので基本的にずっと移動しています。移動のない日はだいたい朝6時に起きて荷物をパッキング、出荷をして、その後9時から21時の間に仕入れをしてっていうスケジュールで動いています

すごいサイクルだ……。買い付けのことは全然知らないんですが、そういう古着ってアメリカではどこでどう買うんでしょう?

大きく分けると、スリフトショップラグハウスと呼ばれる古着の処理場と、現地の古着ディーラーから買い付ける形です

スリフトショップ?

 

スリフトショップの店内、広すぎる ※写真提供:栗原さん

スリフトショップは日本で言うリサイクルショップに近い存在ですね。古着や家電、雑貨など寄付されたものが雑多に売られています。貴重なヴィンテージ衣類が非常に安価に買えることもあります。「bin」と呼ばれる量り売りで買えるアウトレットショップも有名です

 

壁一面に衣類がパンパンに詰まったラグハウス  ※写真提供:栗原さん

 

ラグハウスはいわゆる古着の最終処理場のようなところで、衣類を選り分けて工場などで使うウェス(ボロ布)にするためや、衣類を海外に輸出する場所です。そこで業者が選り分けたものから衣類を探したり、1トンくらい積まれた服の山を掘ったりすることもあります

まるで宝探しだ。スリフトショップやラグハウスの衣類の中で、価値あるヴィンテージを見つけ出すコツって何なんでしょう?

う〜ん、よく聞かれるのですが経験と知識によるものが大きいですね。僕はスリフトだと1日に30軒近くお店を回ることもあるので、1点ずつ見ていると時間が足りなくなります。そのため、早歩きでラックに並んだ服を見ながら手触りで「これカシミヤだ」とか、「この襟の形なら70年代」「襟元のリブがこの高さだから2000年より古いもの」など見た目でパッと見分けています

そんなに一瞬でわかるんだ! 頭の中の知識だけじゃなくて経験が大事ということがわかった気がします

他にも「ボタンを擦って臭いがしたらベークライト素材なので40年代」「縫い糸に火を点け、溶けるんじゃなく燃えたらこの年代」という鑑定方法もありますね。

『名探偵コナン』とか『科捜研の女』がやりそうな鑑定

先ほどディーラーから買い付けると聞きましたが、海外にも栗原さんと同じような卸のバイヤーがいるわけですよね。素人からするとスリフトショップを回るよりディーラーから買うほうが珍しい気がします

 

ディーラーは90年代から存在してましたね。ローズボウルなどのフリマで出店していたり、スリフトで声をかけられたり自宅や倉庫に連れて行ってもらったり。

僕が初めてアメリカに行ったのは1996年なんですけど、その頃は初めて行く街に着いたら最初にガソリンスタンドに行って、紙の地図を買って、公衆電話の下にある電話帳からスリフトやラグハウスを探して車で向かうって感じでした。今はネットも普及したのでもうそんなアナログな形ではないですけどね

そんなRPGみたいな買い付け方法だったとは。ちなみに今はどうやってディーラーと知り合ってるんですか?

今でもスリフトショップで声をかけられたり、こちらから声をかけたりすることもありますが、ここ最近はInstagramを活用していますね

 

 
 
 
 
 
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栗原さんは30年近くアメリカ買い付けをしており、英語は独学で学んだそう

 

僕はアメリカ買い付け中にInstagramのストーリーとかにけっこう風景の写真をアップしてるんです。そうすると、現地のディーラーが「この近くの街に住んでるからおいでよ」みたいに声かけてくれることがあって

仕入れた商品をお客さんに紹介しつつ、一方で古着のディーラーを探すような感じですね。SNSをフル活用している……

そうですね。Instagramをダブルの営業ツールとして使っている形です。だからInstagramは外国人にもわかりやすいようけっこう英語で書いていますね

そんなつながりが生まれるって古着ってすごい!

 

 

日本だと見つからないヴィンテージもアメリカだと見つかるの?

今までのお話を聞くと、アメリカにはまだザクザクお宝が眠っているように思いました。日本だと見つかりにくいレア物がアメリカだとまだ見つかるんですかね……?

そう思ってる人も多いんですが、実際はそんなことはないです

えっ! スリフトショップ行ったらレアなジーンズやスウェットがゴロゴロ見つかるんじゃないんですか??? ねえ!!!

うるせー

むしろ見つかりにくくなってると思いますね。4〜5年前だと、スリフトやフリマなどで5〜20ドルくらいで仕入れて5万円〜30万円、高額で売れる品物が年間数十点は見つかったんですけど、今だと年間5点取れるか取れないかです

そんなに減ってるの!? それってどうしてなんでしょう

やはり新型コロナの蔓延でアメリカで大規模な失業が起きたことが大きいと思います。失業したアメリカ人がお金稼ぎのために、スリフトショップでヴィンテージを仕入れて売るという流れがここ3年ですごく増えました

コロナ禍は古着市場にも大きな影響を与えていたんですね

 

L.L.Beanのヴィンテージトートバッグ、色がかわいいので集めたくなる

 

だから現地にいるアメリカ人がお店から先にいいものを持っていくので数も見つからないし、その古着を彼らから買わなきゃいけない状況なので必然的に日本での販売価格も上がってきます

アメリカの若者がInstagramで戦利品をアップしてるのをよく見ますがそういうことだったんだ

コロナ前は一部のマニアを除いて、転売目的で古着を探しているアメリカ人ってほぼいなかった印象です。いてもバンドTシャツ好きなどがほとんどでした。今だと古い廃墟に入ってヴィンテージを探してる若者もいるようですね

いよいよ世紀末めいてきましたね

だからアメリカに行けばヴィンテージが見つかるわけでは必ずしもないんです。しかしながらそういう事情もあってヴィンテージが掘り出される数は増えてるので、90年代よりはモノが増えてる実感はあります

今の買い付けの話に関連してずっと聞いてみたかったんですが、今まで栗原さんが買い付けの中で一番印象深いアイテムってなんでしょう?

そうですね……当時買い付けに苦労した思い出も含めると……

 

わざわざ事務所に移動して思い出のアイテムを出していただきました

 

こちらは1940年代、囚人に着せていたいわゆる「プリズナージャケット」と呼ばれるものです。「STIFEL(スタイフェル)」というワークウェアで有名な生地メーカーの生地を使っているものなんですが、柄が織りじゃなくプリントなのがおもしろいでしょ?

 

ほんとだ! 触ってみるとデコボコしてない……こういう柄のプリントなんだ

80年以上昔のものと思えないほどしっかりした作りですね。2024年冬の新作と言われても違和感ないほど状態が良い!

 

もうひとつ、これも同じ場所で掘り出したアイテムです。同じく1940年代で、米軍がヨーロッパ戦線で捕虜に着せていたものだと思います

うわー! これめちゃめちゃかっこいいですね!! 超好き

 

背中にはアメリカ軍の「US」のステンシルが入ってておそらく海軍のディテールですね。それに裏地がさっきのプリズナージャケットと一緒で。まだ詳細がわかってないアイテムです。

これはどこで見つかったんでしょう?

テキサスの小さな街にあった(アメリカ軍などからの放出品を販売する店)ですね。2007年の買い付けで、LAの軍物ディーラーからその街に相当でかい店があると聞いて向かったんです。実際行ったらビル一棟全部に在庫が詰まっていて、1着数万から数十万円するアイテムが何百点単位で見つかりました

 

現在は閉業したそうだが、当時ストアが入っていたビル ※写真提供:栗原さん

 

宝の山じゃないですか!

今ってミリタリーものってすごく高騰していますし

 

今では1着10万を超えるものもあるミリタリーデニムが箱いっぱいに ※写真提供:栗原さん

 

でも何十年もずっと放置されてたんでとにかく汚いんですよ。オーナーは倉庫内も勝手に見ていいっていうんで乗り込んだんですけど……

 


※写真提供:栗原さん

 

湿地帯にある倉庫はあちこちからゴキブリが出てくるし、足はダニやノミに噛まれまくってブツブツだらけになるし……

ヒッ

 


※写真提供:栗原さん

 

落ちたら骨折するくらいの高さのラックの上をヘッドライトを着けて動き回ったりしましたね。箱を開けるとよくわからない虫がワーっと出てきて……

これ本当に古着の買い付けの話?

僕は虫が苦手なので最悪だったんですが背に腹は代えられないのでやりきりました

もう古着屋じゃなくてトレジャーハンターの域だ

もちろん洗濯はしていますよね?

当たり前です! そこからオーナーが店を閉めるまで8年くらい通いました。最終的にはオーナーよりも店に詳しくなりましたね。それが今までの買い付けでも過去一番の大ヒットでした。そういう場所から最初に掘り出したということもあって思い出深いアイテムです

 

今の話を聞くとこの2つのジャケットはとんでもない苦労をして日本に持って帰ってきてるんだと実感しますね……。古着屋ってすごい!

このジャケットは前職時代に販売したんですが、たぶん僕が見つけたものしか世の中に出回ってないので、今ショップで売られているものは99%そこで発掘されたものと言っていいと思います

まさに生みの親だ

 

 

古着屋になるための心構えとは

めちゃくちゃ貴重な50-60年代のリバースウィーブ後付けパーカー

 

最後にお聞きしますが、今の時代に古着屋になるためにはどうしたらいいんでしょうか?

今はWebで簡単にECサイトを作って商品を売れるし、フリマアプリなどもあるので、開業してお店を持つ苦労をしなくてもいい時代になっています。それでもやはりちゃんとした古着屋になりたいのであれば、どこかの古着屋に入って商流を学んで知識を付けて独立するのが王道の流れですね

いくら服が好きでも仕事にするとなったら違うアプローチが必要ですもんね

古着屋ってただ服を売るだけじゃなくて、この店や、この人から買いたいという信用と信頼が一番大事だと思うんです。自分の価値観や考え方を伝えて、職業として長く古着屋をやりたいのであれば、やはり店舗での経験は大事だと思います

ちなみに古着屋に向いてる人っていうのはどんな人ですか?

 

う〜ん、良い面も悪い面も合わせて本当に服が好きな人ですかね。お客さんに「仕事辞めて古着屋になろうと思うんです」って相談されたこともありますけど、絶対に辞めたほうがいいって言ってます

そりゃまたどうしてですか?

普通に企業で働いて稼いだお金で古着買ったほうが、苦労しないし楽しいですからね。海外に買い付けに行くのならある程度の英語力や知識も必要ですし、コストもそれなりにかかるので単純に好きなだけでは難しい。為替の変動や海外での需要の増減などによる影響もあるので、自分がなぜ古着屋になりたいのかを一度見つめなおす必要があると思います

ゴキブリとダニだらけの倉庫をかいくぐった栗原さんが言うと重みが違う……。今日はありがとうございました!

 

 

まとめ

古着屋のお仕事から買い付けの裏話から、もう本当にたっぷりお話を伺いました

古着屋って自分が思っている以上に大変な苦労をして商品を仕入れているんですね……。全国の古着屋さんに感謝!

 

ご協力いただいた「Mr.Clean」さん、栗原さんありがとうございました! 絶対また行きます!!

この記事を読んで古着っておもしろいんだとか、古着屋ってすごいんだと少しでも思ってくれたら私もうれしいです。これからもどんどん古着を買うぞ〜〜〜〜〜〜〜!!!

 

それではこのへんで!!!!

<店舗情報>

Mr.Clean

住所:〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1丁目35−4
営業時間:12時〜19時
定休日:月曜
Instagramhttps://www.instagram.com/mrcleantomigaya/

※情報は記事公開当時のものです