サンリオ好きライターの神田(こうだ)です。

私はサンリオのキャラクターやコンテンツすべてが好きなんですが、中でも「ご当地キティ」が特にお気に入りです

 

ご当地キティとは、各都道府県の特産品や名所をモチーフとしたハローキティグッズ」のこと。1998年にスタートし、全国47都道府県に展開しているので、旅行先のお土産屋さんでキーホルダーやストラップなどを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

例えば、私の出身県の山口県だと、山口の特産品のふぐの格好をしたキティちゃん

 

高知県の土佐は、幕末の英雄、坂本龍馬に扮したキティちゃん。あまりに堂々として凛々しく、かわいさとかっこよさのギャップが少しおかしくもあります。

 

長良川の鵜飼いで有名な岐阜県ではなんと、キティちゃんが鵜(う)に扮して魚を捕り、一方では鵜を操る漁師に扮していますサンリオの人気キャラクターのキティちゃんがこんなことしてくれるのか!? と驚きました。

 

ちなみにデザインが違うのは、それぞれ作られた年代が異なるためです。左が2002年製、右が2004年製。作られた時代によってもデザインが少し変わっていて見ごたえがあります

 

私はそんなこんなでご当地キティのプチタオルを集め続け、もう100枚を超えました

私はプチタオルを中心に集めましたが、根付ストラップやボールペンなどラインナップは多岐に渡ります。

 

ご当地キティの魅力はさまざまですが、

・地方の特産品や名所とハローキティがコラボした唯一無二のデザイン

・本家サンリオには見かけないような攻めたデザインがある

・全国展開しているので自分の地元のハローキティグッズが見つかる

・なによりめちゃくちゃかわいい

 

私が思うに、上記が今まで愛されてきた理由だと推測しています。

 

サンリオ好き、ひいてはご当地キティ好きとしてはなんとしても製造元を訪ねてアレコレ聞いてみたい…。

 

ということで、今回は、ご当地キティの企画・販売を行うあすなろ舎さんに伺いました。

 

ショールームも兼ねた会議室は、今まで制作されたご当地キティグッズがずらり! 壁には全国津々浦々のご当地キティストラップが。初めて見るやつもある…。

 

ご対応いただいたのは左から、あすなろ舎代表取締役社長の石川浩三さん、広報の松山圭子さんです。

ご当地キティはどのようにして生まれたのか、サンリオとの関係は? またデザインの基準はあるの? などたっぷりお伺いしました!

 

【記事の登場人物】

 ご当地キティの立ち上げや企画に携わる。好きなサンリオのキャラクターはシナモロール

 ご当地キティの広報活動に携わる。好きなキャラクターはスヌーピー

 サンリオが好きなライター。好きなサンリオのキャラクターはKIRIMIちゃん.

 

ご当地キティシリーズはいつから始まった?

「ずっと集めていたご当地キティの総本山に来れて感動しています。まず基本的なことから伺うのですが、あすなろ舎さんはどのような会社なのでしょう?

「私たちはご当地キティをメインに、キャラクター関連グッズの企画製造販売を手がけている会社です。1973年に民芸品を扱う会社として創業して、2023年で50周年を迎えました

「実はご当地キティだけではなく、例えばX JAPANのYOSHIKIとコラボしたyoshikitty』のグッズなども弊社がお手伝いしているものになります。地方、人、場所などをサンリオのキャラクターを通じてつなぐお手伝いをしているんです

 

「yoshikitty」。サンリオキャラクター大賞では人気が高くファンも多い

 

あすなろ舎さんは地方、人、場所などをサンリオのキャラクターを通じてつなぐお手伝いをしている

「なんで繰り返したんですか?」

「いや、あまりにすばらしくて…。それではご当地キティが生まれた経緯について教えてください

「もともと弊社は民芸品を企画制作して地方のお土産屋さんに卸していたんですが、80年代か90年代ごろにオリジナルキャラクターを自社で作って商品化したんです。するとそれが当たって、キャラクターものが売れるぞ、という手応えがありました」

「キャラクターはなんであれ、やっぱかわいいし見ててうれしい気持ちになるからな〜」

「キャラクターものを展開したものの、やるたび他社に真似されてイタチごっこになってしまう…。そこで、真似されないためには何か強力なキャラクターが必要だと

そこでサンリオさんとタッグを組んだんですね

「結論としてはそうです。もともと製造メーカーとしてサンリオさんとお付き合いがあった中で、90年代にサンリオさんが本格的にライセンスビジネス(※)を手がけて『あすなろ舎さんはお土産屋さんに流通販路があるからどう?』と声かけをいただき、弊社もそこに加わりました」

※メーカーに対してライセンスを許諾して、メーカーにも製造販売をしてもらうというもの

 

「プロジェクトがスタートした1997年当時は、バブル崩壊後でお店も一番大変な時期だったんです。サンリオさんも新しいビジネスで販路を広げたい意向があったようで…

「最初の展開地域として選ばれたのは国内旅行先として人気のある北海道でした

「ですが、会社としてはどう売ったらいいかわからなかった。商品作りは金型で行うので、いちいち金型を起こすと莫大なコストがかかってしまうんです。それに、もし作ったとしてもお土産屋さんがコストの関係で扱ってくれるかの不安もありました」

 

製造時の様子がわかる資料

 

「金型で作っていたんですね! じゃあ多品種を展開するのは大変だ…」

「そのため、少ない金型を使いながらも、北海道らしさを出すにはどうしたらいいか…と考えて、北海道で有名なラベンダー畑をモチーフに、ラベンダー色のデザイングッズを作ることにしたんです

「なるほど! 金型は一緒だけど、色だけ変えちゃえばその土地のオリジナル商品ですからね」

「もし失敗しても金型は元からあるものなので償却しているし、と(笑) 正直、うちは不安だったんですが、お客さんに紹介したらすごく興味を持ってくれて。『自分の家を担保にして銀行の借り入れをするから、一緒にやろう!』とまで言ってくれたんです」

「ものすごいガッツだ…!」

 

「そうして1998年に生まれたのが、ご当地キティの第1号である北海道のラベンダーキティです。もともとあった金型を使い、服や髪飾りをラベンダーテイストにしました」

「第1号はこんなにシンプルだったんですね。売れ行きはどうだったんでしょうか…?」

「それが…」

 

ありえないくらい売れました

「すげぇ」

「お客さんが空港で販売するラベンダーキティの飾り付けをしていて、そのときからすでに人だかりができていたそうなんです。全て納品する前に追加オーダーが入るほどでした。当時はガラケー全盛期でしたから、ストラップの需要も大きかったんです」

1週間で3000個ほど出るヒット商品に。ほかの商品が1週間で30個売れれば…くらいでしたから、驚異的な売れ行きでした」

「他の100倍も!? ハローキティさまさまだ…」

 

「ラベンダーキティで手応えがあり、次に出したのが第2弾の信州限定のペパーミントグリーンのご当地キティです。これもとにかく売れて…。それからご当地キティが全国に広がっていきました」

「最初から全国を目指していたのだと思っていましたが、北海道で爆発的に売れたのをきっかけに全国へ波及していったんですね…」

「その通りです。1998年から今まで25年間展開して、4000種類以上は世の中に出ています。もっとも、多すぎて2000種から数えるのをやめたので実際はもっと多いかもしれません…」

「1年で100個出すだけでもすごいのに、ペースがすごすぎる」

「あまりにも多くて…。ご当地キティのヒットをきっかけに、他メーカーも後追いでマンガやアニメのキャラクターのご当地商品を増やしはじめました。その中でも、弊社のご当地キティは全年齢に愛される定番になってくれていると思います」

「ご当地キティは通信販売はしておらず、一部店舗やイベントなどを除いて基本的にその地域でしか買えません。ですのでみなさんには、ぜひ自分の地元のご当地キティをチェックしてもらいたいですね」

 

限定キティ保存会がまとめた『ご当地キティ完全カタログ』。各地域のハローキティが網羅されている

 

ご当地キティのデザインはどう生まれる?

「ご当地キティは4000種以上出ていると伺いましたが、各デザインはどのように決まっているのでしょうか?

基本的に自社で企画・デザインをして、地方のお客さまに営業をかけている形です。京都だったら舞妓さん、大阪だったらたこ焼き…といったように、地域の名物や名所などを反映しています」

「逆に、お客さまから『こういうテーマでやりたい』と持ち込みをいただいて、そこに合わせてデザインを作っていくという形もありますね」

「なるほど。ご当地キティってサンリオ本家では絶対やらないだろうというデザインがあるのが魅力だと思うんです。例えば…」

 

美脚すぎる渋谷限定キティ根付、ハチ公を抱いている(2004年発売)

 

「この渋谷限定のご当地キティなんかは普段のキティちゃんからは想像できないスタイルですし…」

 

京野菜・加茂ナスを模したハローキティは手足がなんかすごいことに(2008年発売)

 

京都限定の加茂ナスデザインのキティは、足がボールチェーンになっててなんかおもしろいし…」

 

全部そうだった

「この加茂ナスだけかと思ったら京野菜シリーズ全部そうだし……」

 

これって、本当にサンリオさんのOK出てます…?

「安心してください。もちろんすべてきちんと許可をとっています」

「ここまで攻めてるものは、ご当地キティ以外で見たことなかったので…」

 

激レアキティはいる?

「これだけ数が多かったら、珍しいご当地キティなんかもありそうですね」

「ありますよ。ご当地キティファンが『幻の黒たまご』と呼んでいて、たまに会社に問い合わせがあるものが…」

「ぜひ教えてください!」

 

「2000年に発売した、箱根・大涌谷のご当地キティです。大涌谷は温泉で茹でた黒たまごが有名なので、キティちゃんも黒たまごのデザインにしているんですが、諸事情で生産数が少なく、他の商品と比べて圧倒的に数が少ないんです

「今でもキティファンの方から「在庫がないか」と会社に連絡が来ますが、弊社にも残っていないので相当珍しいです」

 

キティが黒たまごになるまでのマンガが付属

 

「私は持っていたので、めちゃめちゃ大切にしたいと思います…。ちなみに今の箱根・大涌谷のご当地キティはどのようなデザインになっているのでしょう?

 

あすなろ舎公式サイトより

 

「今ではキティちゃんが黒たまごから顔を出しているデザインに変更になっています。大涌谷のショップには黒たまごキティの像があるので、箱根を訪れたときはぜひ観てほしいですね」

「これは生で観たい…。ほかに何かご当地キティにまつわるエピソードはありますか?」

「兵庫県豊岡市の『但馬限定こうのとりキティ』は有名ですね。なんでも『くちばしが折れると子宝に恵まれる』というジンクスがあるらしく…」

 

こうのとりが子どもキティを運んできている

 

「くちばしが折れると、人間のホルモンがどうにかなってしまう工夫がある?」

「まったくそんなことはありません! ですがWebサイトに『おかげで子宝に恵まれました』なんてコメントが多数ついたり、メディアで紹介されたりと私たちも驚いていますね

「願掛けのようなものなんですね。ファンの間で製造側も想定していない価値が生まれるとは…」

「おかげさまで、10年以上変わらずに売れているロングセラー商品になっています」

作るのが難しかった! みたいなご当地キティもいるんですか?」

「う〜ん、金型で製造しているので、何か物を持っていたりと複雑な造形のものは難しいですね。別々に抜いたものを組み合わせて彩色するので、そのぶんコストもかかります」

 

細かい造形の難しさを教えてもらっている

 

「製造面としては、みんな同じ形にしたほうが安くカンタンに仕上がるわけですよね」

「そうですね。ですが単純化しただけのものだとつまらないので、見栄えを少し変えていかに面白みを出すか…は常に意識しています」

「ちなみにご当地キティは地方のお客さまからの注文が多いですが、個人でも申し込むことができます。金型から起こすのでやや値段は張りますが…」

「そんなことが…! いつか作ってみたいな…」

 

これからどうなる

2020年の函館ご当地キティ。イカになっている

 

「近年ですと、コロナ禍でお土産業界も厳しく、販売を取りやめる商品も多かったのですが、ご当地キティだけは変わらず健在でした。2023年現在も新しい商品が出ていますし、地方の観光施設とのコラボグッズも多く展開しています」

 

近年の展開商品

 

「近年はハンギョドンやクロミなど、ほかのサンリオのキャラクターの商品も人気です。最近はクロミが一番勢いがありますね

 

 

「2023年からはクロミのアニメも始まっていますし、勢いがすごいですよね。ハローキティ以外のご当地ものも人気、と」

「そうですね。一部地域ではハローキティ以外のキャラクターのご当地商品も展開していて、これからどんどん全国に広げていこうとしています

 

仙台のお土産売り場で発見。みんな伊達政宗にちなんで眼帯をしている(筆者撮影)

 

「先日仙台に旅行したときに、お土産売り場に伊達政宗のカッコをしたサンリオのキャラクターたちがいて驚きました。今後は全国でいろんなキャラクターのご当地コラボが見られるかもしれない…?」

「サンリオさんにはたくさんのキャラクターがいて、時代を経るにつれてそれぞれ愛し方も変わってきています。これからもお客さまが地域とキャラクターに愛着を持てるような商品を作っていくつもりです」

「やはり自分の出身地にちなんだキティグッズだと、それだけ愛着が持てますからね。お話伺えてよかったです!」

「今後もサンリオキャラクターたちと一緒に、みなさまに喜んでもらえるようなグッズをお届けしていきます!」

「広報としてもSNSや記事コンテンツで、もっとみなさまにご当地キティのことを知ってもらえるようどんどん発信していくつもりです!」

「楽しみにしています!!!」

 

まとめ

以上、あすなろ舎さんにご当地キティについて伺いました。

誕生の経緯から、制作の貴重なエピソード、また今後の展開についてたっぷりインタビューさせていただいて、サンリオ好き、ご当地キティ好きの身としては感無量…。

 

もしみなさんが旅行に出かけて、お土産売り場を訪れることがあったら、ご当地キティのことを探してみてください。自分の好きなご当地キティがきっと見つかるし、旅行もより楽しくなるはず!!

 

▼読者プレゼント!▼

あすなろ舎さんから頂いたグッズを1名様にプレゼントします!

山口県、北海道のご当地キティストラップ、東日本ご当地キティタオルの3点です。

 

▼応募方法

ジモコロのTwitterアカウント(@jimocoro)をフォローして、この記事のツイートをハッシュタグ「#ジモコロご当地キティプレゼント」をつけて引用RTしてください。

当選はDMにてご連絡します。

※応募期間2023年6月30日まで

 

 2023 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L640111

取材協力:あすなろ舎