こんにちは、佐藤エイと申します。

私はアイドルが好きです。推しのライブには足繁く通い、元気をもらいながら日々を生きています(いつも本当にありがとうございます)

アイドルを好きな理由はたくさんあって、文字に起こすとこの記事をゆうに超えるテキスト量になってしまうのですが、そのひとつが……キラキラで可愛い衣装!

 

かわいい〜〜

 

ファンの間でも衣装のことは結構話題に上がりますが、誰がどんな作り方をしているのか案外知らないのでは? う〜ん……気になる!

そんなわけで今回は、モーニング娘。とかアンジュルムとかつばきファクトリーとか……とにかく「アイドル衣装といえばこの人!」というくらい多数の衣装を手掛けてきた衣装デザイナー・宇佐美政樹さんにお話を伺ってきました!

 

宇佐美政樹

スタイリスト、衣装デザイナー。ハロー!プロジェクトのグループやAKB48グループなど、数多くのアーティストの衣装デザイン・スタイリングを手掛ける。

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・衣装ってどうやって作ってるの?

・アイドル側から注文とか要望とかあるの?

・普通の服と違ってアイドルの衣装ならではの苦労ってある?

気になっていたことを聞いてきました!

 

 

お仕事の流れを見せてもらおう!

「本日はよろしくお願いします!」

「はい、お願いします」

「今日はアイドルの衣装がどう作られているのか知りたくて来たんです……が」

 

 

米村姫良々さんが動画で着用した、『【推しの子】』星野アイの衣装が待ち構えていました。

 

部屋の中に当たり前のようにアイドル衣装がある風景……不思議ですね」

「まあ、そういうお仕事なので(笑) では衣装作りの大まかな流れを紹介しますね。まずはそのアイドルや企画に合うデザインをイラストにしたデザイン画というのを描いていきます。こんな感じですね」

 

「絵ーうまっ!」

「いやいや全然ですよ。美術の成績2とかでしたし」

「そして記事上では紹介しませんが、めちゃくちゃ枚数ありますね……! こんなに案を考えるんだ……」

 

これが……

 

こう! 素敵~~~!!!

 

「デザイン画から衣装完成まではどのくらいの期間で仕上がるんですか?」

「ものによりますが……デザイン自体は1〜2日で固まることもありますね。現物ができあがるのはおおよそ1週間くらいかな」

「1週間!? 1ヶ月くらいかかるものかと思ってました! 私、文字を打つだけの記事1本に1ヶ月以上かかってるのに……(この記事に関しては2ヶ月近くかかっています)」

「クライアントさんの欲しいものが決まっていれば早いです。例えるなら、『お寿司が食べたい』『ステーキが食べたい』と決まってたら『じゃあこの店で』って早く決まるけど、漠然と『美味しいものが食べたい』っていうオーダーだと時間がかかる、みたいな感じです」

「なるほど!」

「デザインが通ったらパタンナーにお渡ししてパーツを作っていきます」

 

「パタンナー…聞き慣れない単語だ…」

服の設計をする人ですね。衣装の各パーツのサイズや長さなどを数字に起こして、パターン(型紙)にするのが仕事です」

「えーっと、ガンダムのメカデザインをするのが宇佐美さん(デザイナー)で、それをガンプラに変換するのがパタンナーってことですか?」

「たぶん違います」

 

こちらの女性がパタンナーさん。宇佐美さんが描いたデザイン画をもとに型紙を作り、イメージを具現化する方です。

 

これが型紙。この通りに切った布が衣装のパーツになっていくわけですね!

 

「型紙ができたら、それに沿って布地を切り、縫い合わせて衣装を作ります」

「うわぁ、水色のドレスきれい……でもドレスってくしゅくしゅの袖とかフワッとした裾とか、めちゃめちゃ難しそうですよね」

 

「あ、これがドレスの布ですか?」

「はい、試作した生地です。この衣装は『卒業ドレス』として作っているので、華やかに光らせたかったんです。どうすればより良く見えるかを試行錯誤しました」

 

数種類の生地を重ねることで、複雑な色彩やキラキラ感を表現したのだそう。

 

「この布を型紙通りに切って縫い合わせることで、イメージが形になっていきます」

 

「すごいすごい!!めっちゃきれい!!!」

 

スカートの内側にはパニエが入っていました(※パニエ=スカートをふわっと見せるためのアンダースカート)

 

「これでやっと完成なんですね……あれ? でもまだ針とか色々刺さった状態ですね?」

 

「この衣装はフィッティングがまだだからですね。実際に着てもらう前に全部縫っちゃうと修正が大変なので。着てもらってからキツいところを調整したり、ボリュームを足したり、絞ったり、最終調整します」

 

 

実際に使われたのがこちら。STU48の瀧野由美子さん卒業コンサートの衣装だったんですね!

 

「靴はパフォーマンスのことも考えてヒールの高さを変えたりしますね」

ダンス力でヒールの高さが変わるアレですね……!」

「そうそう、よくご存知で」

 

ヒールのある靴って歩くだけでも大変なのに、それで踊れるアイドルすごいな……

 

「°C-uteさんとか、上手い人はピンヒールでも踊れちゃったりしますからね。逆に、加入したばかりの子はペタンコの靴にしたりとか色々考えます。経験を積むにつれて高さを上げるとスタイルもよく見えますし、本人たちにも喜んでもらえますね」

「ヒールの高さに成長を感じるの、オタクあるあるです」

 

「アクセサリーなども宇佐美さんが決められるんですか?」

「はい。アクセ、帽子、靴なんかは、スタイリスト視点で衣装に合ったものを選んでます。小物や衣装に使うパーツとかは海外に買い付けに行ったりもするんですよ」

「海外まで!? 華やかなお仕事で羨ましい~!」

「いえいえ、観光する暇なんかないエッグいスケジュールで行くんですけどね」

 

「これはどこに使うパーツなんですか?」

「胸元とか肩とかですね。擦れたら痛いので、踊っても摩擦が起こらなくて、かつちゃんと揺れて目立つところに使います」

 

実際にハロプロのグループ、OCHA NORMA(オチャノーマ) の衣装に使われたそうです。

 

「あぁ! 確かにこういうの付いてるの見たことあるかも……!」

「よく知ってますね~」

 

「じゃあ、これは何か分かります?」

「うわ〜! アンジュルムの為永幸音ちゃんのバースデーイベント衣装ですよね!」

「いやほんとに詳しいな。持ってみます?

「え゛っ、も、持っていいものなんですか…?」

 

「めちゃくちゃ恐れ多い……」

「えーっと、じゃあこれは誰のかわかります?」

 

「これは元モーニング娘。の加賀楓ちゃんの衣装…! ひえ〜〜! 宝の山すぎて変な汗出てきた……」

「僕がデザインした衣装を覚えてくれてて嬉しいです。どれも苦労して作った思い出深い衣装ですね……」

 

他にもたくさん貴重な衣装を見せていただいたのですが…

 

あまりにも興奮しすぎて記憶がすっぽり抜け落ちているため割愛します。

 

申し訳ありません。

※宇佐美さんから写真を頂いたので後ほど紹介しますね

 

 

どうやって作り始めるの?

「ここからは衣装デザイナーというお仕事についてもう少し詳しく聞かせてください。まず、衣装はアイドルの事務所から発注を受けて作るんですよね?」

「そうですね、基本的には事務所から『誰それの新曲の衣装』『このグループが今度のライブで使う衣装』などの依頼があります。そして、打ち合わせやメールのやりとりなどで曲や歌詞、企画の方向性を共有させてもらい、イメージを膨らませるんです」

「どういう衣装にするかは、宇佐美さんが自由に考える感じなんでしょうか?」

「完全に自由ってことはないですね。事務所さんによって個別に条件もあったりするので」

「個別の条件というと、具体的にどんなものがありますか?」

「ガッツリ踊るグループならそれに耐えうる作りにするとか、ツアーで長く使うから洗っても問題ないものにするとか、あとは予算の問題とか……中には1回しか着ない場合もあって、そういう時は制約がゆるいのでかなり自由に考えられますけどね」

「1回しか着ないこともあるんですか!?……あ、でも紅白歌合戦で大物歌手が1回きりのド派手豪華衣装で登場とか聞くもんな……」

 

「あと、衣装って会場のキャパによって全然見え方が違うんですよ。ほら、普段の日常メイクと、舞台で演劇する時のメイク(遠くからでも顔立ちがわかる)って全然違うじゃないですか。最初の頃はベテランマネージャーさんに『ここもっと足さないと映えないよ』とか教えてもらって、勉強になりました」

「考えなきゃいけない要素がめちゃくちゃ多いですね……!」

「そうなんです。アイドルや企画のイメージを大事にしつつ、さらに条件をクリアできる案を考えるのが、衣装作りのスタートラインですね。なのでデザイン画は数パターン用意してプレゼンをして、それが通ったらメンバーひとりひとりに合わせて細かく考えていきます」

 

「大人数にひとつの衣装を着せるというのは、やっぱり難しいものですか?」

「難しいですね〜。全員が100点満点で似合う服はないですから、最大公約数的に考える必要があります。統一感を出しつつその子が魅力的に見えるようにスカート丈やラインの比率を変えたり……」

「グループの中には背が低い人もいれば高身長の人もいるし、顔の形、体型だって千差万別なわけで……難しいですよね。というか、30人グループの場合、30通り作ったらダメなんですか?」

予算があれば作れます

「急に現実的」

 

 

クライアントとの関わり方は?

「どうやってそれぞれのアイドルに合った衣装を考えるんですか?」

「『この体型にこのテーマだとこの形が合うな』みたいな方程式に当てはめて考えてますね。感情に従って作るとゴチャゴチャしてしまうので」

「なるほど。ロジックを作っているんですね」

「あとはなるべく修正がちょっとで済むように作ったりとかですかね。この仕事、やろうと思えばいくらでもできるけど、予算も納期もあるわけで……どこかで折り合いをつけてできる範囲で最高のものを作るのが大事だと思います」

「夢のような衣装を作るためには、想像以上にビジネス的な考えが必要なんですね……!」

 

「先程『ひとりひとりに合わせて衣装を考えていく』とおっしゃっていましたが、依頼を受けたアイドルさんのことはしっかり調べるんですか?」

「はい。これまでの楽曲やMVを全部視聴して、材料を集めた上で自分のアイデアと掛け合わせます」

「アイドルさん本人から注文が入ることもありますか?『ここをもっとこうしてほしい』みたいな」

「あります。コンプレックスを隠したいとか、そのあたりの意思疎通がちゃんとできた方が仕事としてもやりやすいので、コミュニケーションは特に大事にしていますね」

「コンプレックス……気になるパーツを隠したいとかスタイルよく見せたいとか、色々ありそうですね」

「そうですね。あと本人も自覚していない体型の特徴とかも考慮して作っていくんですが、うちのパタンナーはそこを汲み取って魅力的にするのが上手いんです」

「具体的にはどのような?」

「例えば、バスト80の人でも胸が大きいのと胸板が厚いのでは全然違うんですよね。でも数字の上では同じになってしまう」

「なるほど確かに……でもそれは写真で見ただけでは分からないですよね?」

「はい。なので必ず本人に会って採寸させてもらっています。うちのパタンナーの女性は、実際に見ればその人の体のことが大体分かると言っていたので……かなり変態なのかもしれません

「さっきお会いした時は優しげな女性という印象でしたが……私の情報もスキャンされていたのかも……」

 

「今までトラブルってあったりしましたか?」

「あ〜〜、ありますね。メンバーから直接来た要望と、事務所の要望が相反するものだったりすると、ややこしいことになったり。そういう時はメンバーと事務所でちゃんと話をしてもらうようにするようにしています。じゃないとこっちが大変なので……」

「そこを円滑にするのも大事な仕事なんですね」

「そうですね。演者さんの幸せとクライアントさんが求めているものが必ずしも一致するわけではないので、どちらにも満足してもらえるように頭を使うのが僕らの役目というか、課題です」

 

 

この仕事を始めたきっかけは?

「元々アイドルがお好きでこのお仕事を始められたんですか?」

「特にそうではなかったですね。僕が学生の頃はモーニング娘。の黄金期だったのでもちろん好きではありましたが、よくいる”にわか”でした。こういうお仕事をいただくようになってから色々知りましたね」

「では何がきっかけだったんでしょう?」

「母親が舞台役者だったんです。なので部屋に衣装がたくさんあって、それに影響を受けて服飾の仕事を目指しました」

 

「最初は雑誌のお仕事をしている先生のアシスタントをしていました。レディースのモードファッションとか。そんな時ちょっとしたきっかけである俳優さんの専属になりまして。その俳優さんのマネージャーがアイドルを担当することになった時に衣装を頼まれたんです。それが初めてのアイドル仕事でした」

「巡り合わせだったんですね!」

「その仕事が気に入っていただけたようで、アイドル仕事がどんどん来るようになりましたね」

「今や宇佐美さんのお名前はかなり有名ですが、何か心がけていることはありますか?」

「この業界、やはり女性の衣装家さんが多いので、男の自分が同じようなことをしてもただの真似になっちゃうんです。なので多数のファンの方と同じ男性の目線で、ときめくもの、小さい頃に好きだったおもちゃ箱のようなキラキラ感をモードファッションと混ぜていきました」

「ときめくものと混ぜるって素敵ですね……!だからあんなに魅力的な衣装が生まれるんでしょうね。本日は楽しいお話を聞かせていただいてありがとうございました! お宝衣装をたくさん見られて幸せでした……!!」

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

 

おわりに

衣装作りにかける情熱はもちろんのこと、宇佐美さんのアイドルたちに対する愛が感じられる、本当に素敵な現場でした。

魅力的な衣装を纏って歌い踊るアイドルたちとそれを支える素晴らしい裏方さんたちのことを、いちファンとしてこれからもますます応援していきたいと思います!