こんにちは、ライターの佐藤エイです。

皆さんのお家には、ぬいぐるみってありますか? 私の家には長年大事にしている子がいます。

 

それがこちらのペンギンの抱き枕です。

上京したての大学1年生当時……部活の先輩にいただいた思い出の品で、かれこれ6~7年の付き合いになります。

 

現在の姿がこちら。

 

毎日のように一緒に寝たり、クッション代わりにしているので、だいぶくたびれた姿に……

自分で洗ったりもしているのですが、上手く汚れが落ちなかったり、中の綿が偏ってしまったりしてキレイにするのが難しいんですよね。

 

どうにかあの頃のようなキレイさを取り戻せないものか……

 

というわけで今回は山梨県にあるクリーニング403』さんに、プロのぬいぐるみクリーニングをお願いしてきました!

 

▼クリーニング403

山梨県を中心に約30店舗を展開するクリーニング店。クリーニングの様子を発信しているアカウント『ネットで洗濯.com』の投稿がSNS上で度々話題になっており、注目を集めている。

 

クリーニング403 公式HP

ネットで洗濯.com 公式HP

公式X

公式Instagram

 

 

早速カウンターへ!

本日ガイドしていただく株式会社ヨンマルサンの森さんです!

 

「早速なんですが、今日キレイにしていただきたいのはこの子でして」

「ペンギンの抱き枕ですか。全体的に汚れが付着してますね~。特にこの……」

 

おなかの部分がかなり汚れてますね。抱き枕として使用しているのでしたら、汚れの種類としては主に皮脂汚れだと思います」

わーーっ!! 自分の皮脂による汚れを世界に向けて公開する日が来るなんて……モザイクかけたい……」

「あとは日焼けもしてるかな? なかなか頑固そうなので新品同様に綺麗になるかは分かりませんが、頑張って落としますね!」

「はい! よろしくお願いします!」

「あとはここ。小さい穴が空いてますね」

「え? どこですか?」

 

「ほら、ここです」

「え? え???」

 

「ほんとだ! 全然気づかなかった!

「ここに持ち込んで初めて汚れやほつれに気づくお客さま、案外いらっしゃるんですよ」

「会社の同僚が髪切ったのに気づかなかったみたいな気分」

 

「あと、手の部分に全然綿がないですね」

「そうなんです! 最初はしっかり入ってたんですけど、いつの間にかペラペラになっちゃって

「使っていくうちに胴体の方に綿がかたよっちゃうこと、よくあるんですよ。今回はクリーニングがメインとのことでしたが、オプションで穴の修理や綿詰めも可能ですよ

「ほんとですか!? どうしよう……スタンダードなコースだけにするか、この子に必要なオプションを全部つけるか……」

「ちなみに全部やると料金はこんな感じになります」

 

▼料金

ぬいぐるみクリーニング|スタンダードコース(もっとも標準的なコース)

└3800円

オプション|特殊しみ抜き(皮脂汚れがエグかったので)

└2200円

オプション|綿入れ(手の綿が無くなっててペラペラだったので)

└5700円

オプション|穴の補修

└2000円

=合計13700円

※ぬいぐるみの大きさや汚れによって料金は変わります。詳しくは公式HPの料金表をご確認ください

 

「13700円か……………………………………」

 

 

全部お願いします!! 上京してからずっと一緒にいる大事な子なので……できるだけキレイにしてあげたい……!」

「承知しました! では今からキレイに元気にしていきますね!」

 

 

クリーニング工場に潜入

状態確認を終え、クリーニング工場へ移動! ペンギンがキレイになる過程を見学させていただきます!

 

「わあ! 広〜〜〜い! そして見慣れない機械と配管がたくさん!」

 

服や布団もたくさん!」

「クリーニング屋なので、普通にスーツやお布団、ブランド物衣料やキャンプ用品、ベビーカーまで、日々さまざまなご依頼品をお預かりしています」

「これらの依頼品はみんな店舗に持ち込まれたものなんですか?」

「店舗(山梨県)に持ち込んでいただいてもOKですし、全国から配送していただくことも可能です」

「めちゃくちゃ便利だ!」

 

クリーニングの国家資格を持つ職人・志村さんにペンギンを託します。

 

「よろしくお願いします!」

「はい、お預かりしますね!……ほう、結構おなかの部分が汚れてますね。この汚れは皮脂かな」

「私の皮脂についてはもう何も言わないで……」

 

「まずは水に浸けたりするのかと思ってましたが……何か吹きかけてますね?

「これは何種類かの洗剤を調合したものです。こうしてどんな汚れなのか、どんな洗剤が有効なのかを判断していきます

「なんか謎解きみたい!」

「こうした洗剤の組み合わせなどは、長年の経験に基づくものでマニュアル化が難しいので、まさに職人の仕事なんですよ」

 

「ふむ、これはなかなか手強そうですね

「百戦錬磨の職人さんが手強そうと言っている……! き、キレイになるでしょうか?」

そうですね……

「ごくり……」

 

やりがいがありますよ……ふふふ

「も、燃えてる……!」

 

続いてはこちらの洗い場に移動。本格的に汚れを落とす工程に入っていきます

 

「ここも手作業なんですね!」

「はい。細かい部分や特に汚れがひどいところを重点的に洗っていきます

 

「道具がたくさん……絵筆とかもある!色んなものを駆使するんですね」

「様々な道具を使ってきた経験から、取捨選択された道具たちですね」

「すごいなぁ、確かにマニュアル化するのは難しそう」

 

「続いて、洗剤に浸けて、ぬいぐるみの中までしっかり染み込ませていきます」

「水面から顔出してるのかわいい!」

 

真剣な表情の職人さんとぬいぐるみのギャップ、なんか良いですね」

「SNS投稿でみなさんにウケてる要素の一つなんですよね〜」

「バズる理由が分かる気がします!」

 

「あれ!?なんかラップみたいなのがかけられてる!」

落とし蓋のような役割で、薬剤の揮発を防ぎながらしっかり浸透させるんです」

「なるほど! プロのアイデアがいっぱいだ……!」

 

しばらく浸け置きし……ついに洗濯機の出番!

 

「この洗濯機は、水の温度や回転数などを細かく決めることができる業務用のものです。ここの設定は企業秘密なので詳しくお話しできないんですが……ぬいぐるみの状態を見ながらリアルタイムで設定を変えていきます」

「コインランドリーみたいに、洗濯物を放り込んだらあとはスマホでゲームしてればいいってわけじゃないんですね」

 

ペンギンが洗濯機の中へ……行ってらっしゃ〜い!

 

水が注入され、洗濯機の中でゆらゆら……

 

「なんか、ペンギンだからなのか……」

泳いでるみたいで可愛いですね(笑)」

「ですよね!ずっと眺めてられるな……」

 

などとのんきな事を言っている間も、細かくボタンを操作して調整を行われていました。

 

「あ、機械が止まりましたよ!」

「ついに出てくる!?なんかドキドキ……」

 

おお〜!!

「どうでしょうか」

「すごい!この時点で青色が明るくなってる!そして当たり前だけど形が全然崩れてない!職人技!」

「恐縮です」

「このあとは乾燥の工程になります。本来は丸一日乾燥機にかけるんですが、今回は取材ということで特別に!特急で乾かしていきましょう!」

「はい!よろしくお願いします!」

 

「お待たせしました! 乾燥が終わったようですよ!」

「ついに!」

 

え!?!?!?!?

 

めちゃくちゃキレイになってる〜〜〜!!!

「今日イチのテンション」

「だってすごいですよ本当に!お腹真っ白!あんなに汚れてたのに!」

「完全に落とすのは難しかったですが……かなりきれいになったのではないでしょうか!」

「ピッカピカですよ! こんなにキレイになるなんて……! 正直びっくりしました。プロってすごい!」

 

本当にありがとうございます!

「いえいえ。喜んでいただけて良かったです」

 

 

最後の仕上げへ!

「さて、最後にオプションでつけていただいた修繕をしていきましょう! 修繕に関しては私がやっていきますね」

「よろしくお願いします!」

 

まずは綿詰めから!

 

「ぬいぐるみって、どこか一箇所に必ず糸が簡単に外せる所があるんですけど、分かります?」

「え、そんな所があるんですか!?」

「はい、ぬいぐるみによって場所はそれぞれですが、どこか一箇所に必ずあります

「ええ〜〜どこだろう……」

「正解は……」

 

「ここです! ここ、数センチだけ他よりちょっと縫い目の間隔が広いのが分かりますか?」

「あっほんとだ! 縫い目がちょっと大きい!」

「ぬいぐるみを縫う時、この数センチだけ閉じずに“穴”を残しておいて、その穴から綿をつめるんです。で、その穴は機械ではなく手縫いで閉じるので、他よりちょっと縫い目の間隔が広くります。ここの糸をチョキンと切ると……」

 

「おお〜!糸がスルスル外れた!

「こうしたぬいぐるみの造りを利用して、綿を追加するときもここから入れていきます」

「おもしろ〜い!」

 

「このぬいぐるみなら追加する綿はこれくらいかな……あんまりパンパンにすると抱き心地が変わっちゃうので

「えっ、そんなことまで考えてくださってるんですか?」

「毎日使う抱き枕だとそういうの気になっちゃいますからね! 綿の偏りも、お客さまの体にフィットする形に偏っていったと思うので、それを活かして詰めていきます」

「思いやりがすごすぎるな」

 

「で、おなかに追加した綿を、ペラペラだった手の部分に少しずつ移動させて、最後に閉じれば…………はい、できました!」

「わ!すごい!」

 

手っ…………手が!!ある!!

「手は最初からありましたよ」

「いやそうなんですけど……手に存在感がある姿を久しぶりに見た……良かったね……」

「胴体の方にも綿を入れてふっくらさせてみましたよ! おそらく購入なさった時はこれくらいの感触だったんじゃないかと」

「おいしいもの食べさせてもらったんだね……良かったね……」

「どういう立場の感想……?」

 

さらに小さな穴の修理もしてもらい……

 

すべての工程が終了!

 

「本当に見違えるほどキレイになりました……!ありがとうございます!」

「いえいえ!喜んでいただけて何よりです!」

 

 

森さんにインタビュー

最後に、ぬいぐるみクリーニングやSNSの運用についてお伺いしてみましょう!

 

「私がクリーニング403さんを知ったのはSNS投稿からでして、めちゃくちゃバズっていたと思うんですが、反響などはどうですか?」

 

 

ネットで大きな話題を呼んだ『脱出ポッドから救出されているように見える”ちいかわ”のうさぎのぬいぐるみ』。なんと9.6万いいね!

 

「いや〜、ありがたいことに、同じようにSNSを見てクリーニングを依頼してくださる方が本当に増えました。日本全国から日々色んなぬいぐるみがやってきていますね」

「クリーニングの様子がこんなに話題になるのも珍しいことだと思いますが、そもそもSNS投稿を始められたきっかけは何だったんですか?」

 

「ぬいぐるみって服とか布団と違って家族の一員じゃないですか。大切な家族を預けるわけですから、やはり寂しいとか心配とかあると思うんですね。だから『今こんな感じですよ』『こんな風に綺麗になってますよ』というのを発信して、少しでも安心していただけたらなと思って投稿を始めたんです」

「そんなハートフルな理由が……! めちゃくちゃ素敵ですね!」

「バズろうと思って投稿したわけではないのですが、結果的に多くの方に注目していただけて嬉しいです。たくさんのご依頼をいただいているので、すべての子の様子を発信することは難しいんですが、できる範囲でやっていこうと思ってます」

 

「今までで『このご依頼難しかったな〜』っていうのはありますか?」

「やっぱり、長年大事にされているぬいぐるみはクリーニングも修理も難しいですね。素材に年季が入っているのでかなり慎重にやらないと壊れてしまったり、修繕するにも合う布を探すのが大変だったり……」

「確かに。だいぶ繊細な作業になりそうですね」

「あとは、『この汚れは落とさないで!』っていうご依頼もあります」

「え!クリーニングなのにですか?」

思い出の汚れという感じですかね。例えば、お子さんが小さいときに書いちゃった落書きとか……それも含めてこのぬいぐるみと過ごした時間、というのを尊重して、あえてそのままにするんです」

「これまた素敵な理由……!でもそれだと全体を洗剤液に浸けたり機械にかけたりするのって難しいですよね」

「そうなんです。なので洗わない部分の情報をしっかりと共有しながら、そこを避けつつクリーニングします」

「ぬいぐるみならではの工夫や心配りがたくさんあって面白いですね!」

 

「せっかくこんなにキレイにしていただいたので、この状態をなるべく保ちたいなと思うんですが、何かお家でできるお手入れはありますか?

「もちろんありますよ! まず、洗う時にあまり強い洗剤を使わないことです

「え、そうなんですか?それだと汚れが落ちないんじゃ?」

「そう思われがちなんですが、生地が傷んでしまうのでおすすめしないです。うちでも強力なものはあまり使っていません。弱めのものでもしっかり浸けて洗えば綺麗にできますよ!

「そうだったんですね……勉強になります!」

「それから乾燥させるときは、風通しの良い日陰で中の綿までしっかり乾かしてあげてください。ちょっと時間はかかりますが大事です。置いたり保管したりする場所も湿気の少ない日陰がおすすめですね!」

「ふむふむ」

「あと保管する時にビニール袋に入れたりすることもあると思うんですけど、湿気がこもってしまいます! ビニールではなく不織布にしたりとか……それだけでも結構変わると思います!」

「保管のことまで! 家にいるほかのぬいぐるみの置き場所も見直してみよう」

「お家ケアでもどうにもならなそうなときは、プロにお任せすることも検討してみてくださいね。誠心誠意キレイにさせていただきます!」

「本当に、ほかの子もお願いしたくなるくらいでした!そのときはまたよろしくお願いします!」

「ぜひ!いつでもお待ちしています!」

 

 

終わりに

プロの技術とぬいぐるみへの愛情に溢れた、本当に素敵な職場を見学させていただきました!

みなさんもキレイにしたいものがあれば、ぜひお願いしてみてはいかがでしょうか。大満足な結果になること間違いなしですよ!