地方で暮らすフリーランス夫婦が「親」になるまでの280日|ローカル子育て奮闘記

2020.07.16

地方で暮らすフリーランス夫婦が「親」になるまでの280日|ローカル子育て奮闘記

長野で夫婦ともにフリーランスとして活動し、今年1月に第一子を授かったナカノヒトミさん一家。地方での暮らしぶりや一年目の子育てについて、振り返ってもらいました。

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    こんにちは、ライターのナカノヒトミです。

    私は今、長野県長野市でフリーランスのライターとして活動しています。地元の長野県を拠点に取材、執筆を行いつつ、長野市のお土産屋「シンカイ」の店長を約1年半務めました。

    そして、今年1月に第一子を出産し、まもなく半年。つい最近、仕事に復帰しました。

     

    また、夫である優くんは大学院を卒業するやいなや、埼玉から長野へ移住。フリーで建築・設計の仕事を受け2年目になりました。また、私の妊娠を機にシンカイの店長を引き継ぎ、今に至ります。

     

    そう、私達は夫婦揃ってフリーランスとして働いています。

     

    子供が生まれてからは、特にフリーランスの良さをひしひしと感じています。

    例えば、基本的に在宅での仕事かつ時間の自由が利きやすいので、夫婦揃って子供の成長を見届けることができます。つい最近は、初めての寝返りに立ち会えました!なんて尊い瞬間……。

     

    そうしたフリーランスのメリットを享受する一方、経済面では少し不安を感じています。現在の夫婦2人の月収を平均すると、同年代の社会人の5〜7割ほど。固定給の会社員と違い、月の収入には変動があります。

    現在3DKで4.5万円の団地に住み、車は2台持ち。稼いだお金はほぼ生活費で消えてしまうため、なかなか貯金が貯まりません。


    ……しかし、私たち夫婦はこの状況に悲観していません「なんとかするぞ!」の精神でやりくりしつつ、日々楽しみながら育児に励んでいます。

     

    とはいえ、妊娠当初、「地方で働くフリーランス夫婦はどんな暮らしをしているんだろう?」とネットで調べてみたものの、なかなか見つからず。

     

    そこで、この記事では、地方で働く(働こうと思っている)フリーランスご夫婦の参考になればと思い、

    ・出産にまつわる金銭面

    ・妊娠中の仕事の仕方

    ・地方の子育て環境

    を軸に、私たち子育て1年目・地方在住フリーランス夫婦の暮らしを振り返りたいと思います。

    フリーランス夫婦の味方!補助金制度は忘れずにチェックするべし

    私たち夫婦が入籍したのは昨年5月のことで、入籍した同月に妊娠が発覚しました

     

    結婚前から家庭を築くことに興味があったので、妊娠が分かった時は胸にこみ上げる喜びがありました。子供は授かりものなので「うおおおおお、我が家にも子供が来てくれた〜!!」という驚きの気持ちでいっぱい。急いでネットで調べまくり、翌日産院に駆け込みました。

     

    「優くんは私が妊娠した時どう思った?」

    「『俺、父親になるのか…!』ってびっくりした記憶がある(笑)」
    「えっ、それはいい意味で?」

    「もちろんいい意味だよ。子供は望んでいたから、すごく嬉しかったな。」

     

    妊娠の確定後、まっさきによぎったのが「お金」のこと。冒頭にも書いたとおり、金銭的余裕はありません。貯金はほぼ0。経済力のない夫婦ですが「こりゃ力を合わせてなんとかするしかないな!」と前向きに考えることにしました。

     

    お互いの両親に妊娠の報告をした時にめちゃくちゃ喜んでもらえたこともポジティブに捉えられた理由です。給料から先取り貯金をはじめたり、食費を削ったりと三人の生活に向けて意識が変わったのは妊娠後の大きな変化かもしれません。

     

    また、国や市には夫婦ともにフリーランスで働く家庭に向けた出産と育児に関する補助制度があり、とても助けられました。我が家では以下の3つの補助・制度を受けました。

     

    ●妊婦一般健康診査助成制度
    検診にかかる費用の一部助成が下りる
    (我が家の場合、補助で80,140円分がまかなわれました)

    ●児童手当(生まれた翌月から中学校3年生修了時まで支給)
    1人につき10,000円/月〜15,000円/月

    ●出産育児一時金
     42万円
    ※分娩費と分娩後の入院費の給付。42万円を超えた分は自費
    (我が家の場合、約15万円自費でした)

     

    2019年4月1日からは産前産後期間(出産予定日・出産日の前月から4ヶ月間)の国民年金保険料が免除され、同年10月には幼稚園・保育園の無償化がスタート。

    これはお金がないフリーランスにとってありがたい限り……。ほとんどの制度が届け出が必要になるので、忘れずにチェックすることが大切です!

     

    「出産後、母子は約1週間の入院だったから、出生届はじめ補助金関係の手続きをやってもらえてめちゃくちゃ助かったよ……」
    「書類を揃えて置いてもらえたから、意外とスムーズに手続きできたよ」
    「めんどくさがらず、事前の準備やっといてよかった!」
    「手続きをした時に市役所で可燃ゴミの袋を3年分もらったよね(※)。あの時は『なぜゴミ袋……?』って思ったけど、1日に捨てる紙おむつの量を考えると納得!」
    「1日に10回近くおむつを変える日がほとんどだもんね。子供が生まれてからゴミの量が爆増したからゴミ袋の補助はかなりありがたい!」

    ※長野市では子供を出産すると、最大3年分(90枚)の可燃ゴミの補助があります。

    ありがたいご近所ネットワーク!いただき物に助けられたベビー用品

    妊娠・出産にかかる費用の中には、洋服やおむつ、おもちゃにベビーカーなどなど細々した買い物も含まれます。第一子ということもあり、妊娠中にベビー用品を一から揃える必要がありました。

    『たまひよnet』の調査によると、新生児期に買い揃えるベビー用品の平均額は約13万円。SNSで子育て情報を集めてみると、どうやら「場合によっては買う必要がなかったもの」もあることがわかりました。

     

    そこで出費を少しでも減らすために、急を要する消耗品以外は必要に応じて買い足すことにしました。例えば、ベビーカーは生まれてすぐには買わず、外に出られるようになった生後3ヶ月で購入。メルカリで定価5万円近いものを1万円ほどで手に入れることができました。

     

    お食い初めで使った羽織はかまは近所の子のお下がり

     

    また、妊娠・出産にあたってはご近所さんの存在にも助けられました。お腹が膨らみはじめた頃、「もしよかったら使ってね」と紙袋に溢れんばかりの赤ちゃん服を持ってきてくださった近所のご夫婦。

    どうやら私の住む長野市の善光寺周辺(善光寺門前と呼ばれています)では、代々子供が生まれる度に、ご近所で赤ちゃんの服を回しているのだとか。

     

    あれもこれもと買いだしたらきりのない赤ちゃん服。短肌着や2WAY肌着、カバーオールなど特有のラインナップゆえ、何を何枚買えばいいのか分からない状態でした。生後1、2ヶ月の服は一瞬でサイズアウトしてしまうので、大量のベビー服はとても助かりました。

     

    譲っていただいた服の一部

    ご近所さんとの距離が近い、地方ならではの繋がりはたくさんあるよね
    「うん、洋服を譲ってもらえたのはすごく嬉しかったなー! 出産時の男性側の心構えを聞けたのも助かった……」
    「これからも子供を通して交流したいね。私は子供きっかけで仲を深めて、緊急時に助け合う近所付き合いをつくっていくのが理想だな」
    「子供がいるとグッと距離が近づくよね。『赤ちゃん、何ヶ月なの?』って近所のじいちゃんばあちゃんに声がけしてもらったのが印象的だった」
    「じいちゃんばあちゃんにとっても孫みたいな存在が増えるのは嬉しいだろうな〜」

    母体の安全第一! 無理をしない働き方が大切

    着々と子育ての準備は進んでいきました。

    当初は「働けるのは生まれる二ヶ月前くらいまでかな?」と考えていましたが、予想以上に健康状態がよく、結局2週間前まで働くことができました。

     

    お腹が少し大きくなってきた頃、シンカイの店頭に立つ私

     

    体調に合わせて仕事量を調節しやすいのはフリーランスのメリット。しかし、時には睡眠時間を削りオーバーワークぎみになることも。妊娠してからはなるべく日付が変わる前には寝るようにしました。

    妊娠中に辛かったのは、取材時の移動でした。妊娠発覚から二週間後につわりが始まり、何もしていないときでも車酔いのような気持ち悪さに襲われ、最悪のコンディション。

    そして、交通費は取材経費で落ちるといえど、取材が重なると「建て替え経費貧乏」になってしまうこともしばしば。

    取材を伴うフリーライターの方は経験があるのではないでしょうか。妊娠前と同じでテンションで移動手段に高速バスを使ったのですが、これが大間違い。車酔いとつわりのダブルパンチで死ぬかと思った……。

     

    イベントは常に夫婦で出店したので、体調の変化にも無理せず対応しやすかったです

     

    幸い、その後の定期検診で問題はなかったのですが、この一件から「自分の体調と相談して絶対に無理をしない」と肝に銘じました。

     

    妊娠は病気・ケガじゃないのに身体がつらい不思議な状態。一人の体に、もうひとりが間借りして栄養を送り込んでいるんだから、そりゃただ事じゃない!

    妊娠初期は、つわりに加えて常に熱っぽい状態が続いており、お店を手伝ってくれていた大学生に店番を任せることもありました。

     

    つわりを乗り越え、その後も問題なく過ごした妊娠中期。仕事の一部を夫に託し、出産の準備へ。「初産なので、子育て経験者の母と祖母がそばにいたら安心」という理由で里帰りでの出産を決めました。

    チームで子育てを楽しむ

    里帰り中は充実した毎日を過ごし、ついに迎えた出産!

    予定日の1日前に陣痛が始まり病院へ。子供が生まれた瞬間は、「ついに生まれた……!」という安堵とお腹の重さから解放された清々しさでいっぱいでした。陣痛から出産までの16時間、つきっきりで腰をさすって応援してくれた夫に感謝です。

    「立ち会い出産を経験してみてどうだった?」
    「生まれた瞬間、あまりの感動に自然と涙が出てきた!」
    「意外と私の方がさっぱりした反応だったんだよね(笑)。子供と対面した時はどう感じた?
    生命力の強さに驚いたなぁ。だって、指を差し出すと強い力で握り返してくるからさ。生まれたばかりとは思えないパワーだったよね

    「わかる! こんなに小さくても生きているんだと、愛おしさで胸が苦しくなったよ……」

     

    そして、産褥期(体が妊娠前の状態に戻ろうとする期間)を終えた3月頃から仕事について考えるように。「1月に出産だからきっと4月には働けるかな?」と仕事復帰のあたりをつけていましたが、そううまくはいかず。

     

    授乳中に遊び始めて1時間近く乳を吸わせたり、夜になってもなかなか寝ようとしなかったり、はたまたせっかく寝かしつけてもものの数分で起きたり……。思い通りにいかない子育ての大変さに、出産以前と全く同じように働くのは難しいと感じました。

     

    今まではフットワーク軽く全国各地に赴いて取材をしたり、突発的な飲み会に二つ返事で参加して仕事につなげたり、と当たり前にやってきたけれど、母となった今、それはもう無理……。

     

    とはいえ、夫との協力プレーで少しずつ気持ちと時間に余裕もでてきました。「子育ては一人で抱えるものではない! 夫婦ともに働くにはチームワークが不可欠」だとひしひしと感じています。

    たまに夫と衝突しそうになった時は、頭の中で「私たちはチーム」と唱えています。落ち着きを取り戻せるし、危機回避方法になるのでおすすめです。

    出産で変わった街の見え方

    子供が生まれてから、住んでいる街の見え方がガラッと変わりました

    外食の回数が減り、自炊メインに。夕方にサクッと足を運べる近場のスーパーのバリエーションに価値を感じるようになりました。

     

    散歩をすると大体眠るので、なかなか外の景色を見せられない

     

    私たちが生活するのは長野市の中心部。歩いて国宝・善光寺まで散歩に行き、その足で帰り道にスーパーで買い物ができるありがたさ……。

    今まで近所のどこにあるかすら知らなかった公園も、子供が生まれてからは定番のお散歩コースになりました。

     

    気軽にキャンプ場や森までドライブできるのも、長野に住んでいるからこその楽しみ方。30分もあれば行ける自然の遊び場がたくさんあります。家から車で15分走らせれば温泉でリフレッシュできるのも嬉しい。

     

    ようやく首が座りはじめた子供とアウトドアを楽しめる日も近いはず! 子供が生まれてから今まで不便さを感じたことはなく、総じて今の長野での暮らしに満足しています。

     

    今年度に入り運良く市民農園を借りることができたので、子供と一緒に野菜づくりが楽しめる!

    家族は「孫・ひ孫」についてどう思ってる?

    満足度の高さは実家との距離感にもあります。自宅から実家までは車で1時間半ほど。思い立ったらドライブがてら顔を見せにいける距離がちょうどいい!

    孫に会うとじじばばがはちゃめちゃに喜ぶのはやっぱり嬉しいものです。

    今回、私の家族にも子供が生まれて感じることを聞いてみました。

     

    <父親の場合>

    以前ジモコロで取材した「ヨガきこり」こと私の父。今の時期は炭焼きで忙しい

     

    わたしのパパはヨガきこり

    「おとうさんは孫ができてからどんな感じ?」
    「まずは無事に生まれてきてくれてなにより! 人間はいずれみな死ぬから、一族の血が次の代に繋がっていくのは嬉しいね。
    「戦国武将みたいな感想。でもわかるな〜。お父さんは孫とどんなことしたい?」
    「アウトドアがしたいね。焚き火や伐採も一緒にできたらいいな。ハッハッハ」
    「ヨガきこりの後継者!」
    「バブルが崩壊した時みたいに、新型コロナの影響で世の中が変わりそうだからだなぁ。孫にはサラリーマンじゃなくて、自分の力で稼げるようになってもらえたら最高だ!」
    「まだだいぶ先の話だけどね(笑)」

     

    <祖母の場合>

    85歳の祖母。里帰り中はいつも子供を子守唄であやしてくれた

    「ばあちゃんはひ孫が生まれた時どう思った?」
    「そりゃあもう嬉しくて飛び跳ねたよ! 生まれるまでは心配でしょうがなかったけど、無事に生まれてよかったねえ。もう顔を見るだけで嬉しい!」
    「いつも子守唄歌って寝かせてくれるもんね。ばあちゃんがあやすと一番喜ぶんだよね(笑)」
    「早く歩けるようになったら一緒に遊びたいね。積み木で遊んだり、散歩したりしてさ。ばあちゃんは自然が好きだから、虫や植物を採るのもいいね」
    「遊んでもらうためにも、ばあちゃんにはまだまだ長生きしてもらわなきゃ!」
    「そりゃそうさ。今年86になるけど、ひ孫と遊ぶまでは死ねないからねえ!

    仕事と育児の両立の難しさ。現在の葛藤と将来の展望

    「少しの成長も逃すまい!」とカメラを構えて子育てを堪能する一方で、産後半年が経っても、なかなか完全な仕事復帰ができない状況にはどうしてももどかしさがあります。

    深夜の授乳中にSNSを眺めればライター仲間の新着記事。新しい企画や記事を目にすると不安と焦りがドッと押し寄せてくる、なんて焦りもありました……。

    保育園や幼稚園に預けて仕事時間を増やすのも一つの手ですが、子供の成長を間近で見届けたい気持ちの方が上回っているのが正直なところ。

    きっとこれからも、子育てに慣れることはないのでは? それくらい毎日新しい壁にぶつかっています。

    でも 「ならば、この大変さを楽しむしかない」といい意味で腹をくくれようになりました。しばらくは夫婦で時間のやりくりをしながら、今の生活を続けていくつもりです。

    夜泣きする子供を二人で一生懸命あやすことも、外出の度に大量の着替えとオムツでかばんがパンパンになることも、子供が成人する頃には、夫と二人で遠い目で懐かしむことができるといいな。

    畑でつくった新鮮な野菜を食べさせて、健やかに育てていくぞ〜!

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    ナカノヒトミ
    ナカノヒトミ

    1990年長野県佐久市出身。2017年よりフリーライターとして活動を始めた。どこでも地元メディア「ジモコロ」などウェブメディアを中心に執筆を行う。2018年4月に「やってこ!シンカイ」の店長になり、佐久市から長野市に引っ越す。シンカイで自分の子供を育てることが目下の目標。

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