旅の醍醐味の一つが、ローカル商品たちに出会うことだ。しかし現在は、旅をしづらい状況の方もいると思う。

ならば、幾多のローカルソウルフードたちを近くのお店で探してみてはどうか。

 

実は今、かつてのローカル商品が、全国へ販路を広げている真っ最中なのだ。

 

たとえば、こんな名物商品たちも。

・ブラックモンブラン

・金ちゃんヌードル

・しそわかめ(ソフトふりかけ)

・ミレービスケット

 

今回は「インスタント麺・カップ麺」「ごはんのおとも」「お菓子」の3ブロックに分けて紹介する。いずれもスーパーやコンビニで手に入るものをセレクトした。

 

過去に『秘密のケンミンSHOW』や『もしもツアーズ』などのテレビ番組でリサーチャーとしてご当地ネタを集めていた筆者としても、ワクワクする企画だ。

さあ、日本一周スーパーの旅へ出かけよう!

 

サッポロ一番“ごま味ラーメン”を知っているか

袋麺の定番であるサンヨー食品の「サッポロ一番」。なかでも最古の1966年に誕生した「サッポロ一番しょうゆ味」は、最近まで長らく地域限定商品だったことはご存じだろうか。

 

「サッポロ一番風味」としか言いようがないクセになる味

 

もとは全国発売の商品だったものの、その後、中四国・九州(沖縄を含む)エリアでは販売されない期間が長かった。そのため「しょうゆ味なんて知らない!」という人もいるはずだ。

 

同じく最初は全国販売されたが、しょうゆ味とは逆に中国地方より西の地域のみで愛されていたのが、1972年登場の「サッポロ一番ごま味ラーメン」

 

この「しょうゆ味」「ごま味」だが、実は2020年1月に全国販売されたばかりなのである。

 

最寄りのスーパー・ライフで見つけた「サッポロ一番ごま味ラーメン」

 

ごま味と初遭遇。うまい

 

関東人にはなじみのないごま味。食べてみると、ごまのちょっとリッチな香ばしさを楽しみながらも、あのサッポロ一番の麺とスープの風味はそのまま味わえる。

 

ほかのシリーズ商品と地続きのおいしさで、サッポロ一番が好きな人なら難なく好きになれるはず。逆に「しょうゆ味」を食べたことがない人は、ぜひ一度食べてみてほしい。

 

東日本大震災が契機に? 全国に伸びゆく金ちゃんヌードル

ドン・キホーテで発見

 

ここ最近、筆者の住む東京で見かけるのが徳島製粉の「金ちゃんヌードル」だ。西日本や静岡などでの勢力が強いカップめんで、見つけるとつい買ってしまう。

 

この金ちゃんヌードルだが、徳島製粉さんの担当者によれば関東での躍進を遂げたのは東日本大震災がきっかけだったそう。

当時、東日本の会社のカップめんに風評被害が発生。代わりにということで、西の会社のカップめんが関東に進出し、そのまま販路を獲得したのだとか。

 

現在では、北海道以外のエリアで販売されている。もともと熱愛されている四国や沖縄、静岡などでの消費が多いそうだが、日本各地でひそかに根強い人気があるようだ。

 

ミニストップやナチュラルローソンにも店舗によっては置いてあるそうなので、金ちゃんファンは足を運ぼう。

 

う~ん、うまい。ラーメン屋さんのラーメンを目指すのではなく、カップラーメンならではのおいしさに注力している感じ。ヤミツキになる

 

さらに、全国販売→北海道中心のローカル販売→再び全国販売と、数奇な運命を辿ってきたのが東洋水産の「激めん」だ。

 

1978年に「ボリュームのあるワンタンが入った、感“激”するうまさ」として登場。その後は“静岡県以東”と言いつつ、実質は北海道が中心の販売網だった模様で、関東ではほぼ見かけなくなった。

 

しかし、晴れて2018年10月に全国商品への返り咲きを果たし、関東でも再び目にできるようになった。

 

筆者はこの「激めん」がとても好きだ。ワンタンと存在感のある太いメンマという、カップラーメンとしては大変に充実したダブル具材を楽しめる。

ヤマザキショップや中小スーパーなど、ちょっと渋いところで見かけることが多い印象なので、探す時の参考にしてほしい。

 

また最近、東京でよく見るカップラーメンがサンポー食品のベストセラー「焼豚ラーメン」だ。九州出身者が熱愛するも長らく東京では入手困難だった商品が、ついにやってきた。

 

本場の豚骨ラーメンらしく、ちゃんと”臭み”のあるスープがたまらない。ハート型の焼豚は味もなかなか

 

サンポー食品は2017年に東京オフィスを開設し、関東方面への拡販に注力している。そのため、販売店も増えてきているそうだ。

「激めん」も「焼豚ラーメン」も、ぜひ全国で愛されるようになってほしい。

 

全国販売→再びローカル商品に? 「アラビヤン焼そば」

全国への販路拡大の流れが落ち着きつつある商品も存在する。それがサンヨー食品の「アラビヤン焼そば」だ。

 

発売当初は全国販売されるも、ほどなく販売エリアが狭まり、千葉と茨城のソウルフードと言われてきた。

 

筆者の実家がある千葉県松戸市の東側では「たまに見かけるな」くらいの印象だったが、どうやら県内でも銚子あたりで愛されているらしい。九十九里浜を北上するにつれ、よく見られるようになるという説もある

 

筆者が千葉・館山に行った際にも、複数のスーパーで見られた

 

その後、再び2009年に全国販売になった際は、一部のローカル麺ファンの間で話題となった。しかし今回、東京近郊で探したものの一向に見つからない。

 

発売元のサンヨー食品に電話したところ、実際には大々的な全国発売というよりも、要望を受けて全国ベースで出荷対応するようになった形らしい。しかし売り上げがそれほど伸びず、置いている店が少ないのが現状のようだ。

 

横浜に「ふだんは取り扱っている」とのお店があったが、コロナ禍で入荷のメドが立たず、そこですら在庫切れだった。

 

そんな中、アラビヤン焼そばを買えた貴重なお店が、浦安にある「URAYASUmarkets」だ(結局、千葉に来ないと手に入れられなかった)。

 

おお~~、あるある!

 

夢にまでみた、アラビヤン焼そばの平積み。しかもバラ売りだ。5袋パックで売っているところしか見たことがないので、これは助かる。3袋購入した。

 

アラビヤン焼そばが大好きな、店主の市川さん

 

浦安出身の店主・市川さんは、子どものころからよく「アラビヤン焼そば」を食べて馴染みすぎていたため、千葉のローカルフードとは思っていなかったとか。

 

この「アラビヤン焼そば」、さっそく家で作ってみた。

モチモチで柔らかめの麺と、スパイシーすぎないソース味。初めて食べるのに、ふるさとに帰ってきたような味だった。

 

ちなみにサンヨー食品によると、お店からの注文はいつでも歓迎だそう。「アラビヤン焼そば」に興味のある全国のバイヤーさんは声をかけて欲しい。

 

ごはんの秘密兵器「ソフトふりかけ」

さて、次は白飯に合う「ごはんのおとも」。まずお見せしたいのは井上商品の「しそわかめ」である。筆者も巣ごもり生活でちょっとハマった一品だ。

 

もともと山口県にはワカメをごはんと一緒に食べる習慣があり、それを食べやすく1980年に商品化したのがこの商品。県民のソウルフードの一つとして愛されてきた。

 

しそわかめは、具材がやわらかい「ソフトふりかけ」の先駆けだとか。実は東南アジアやヨーロッパにも商品が流通している

 

山口県以外は中国地方、福岡などで愛されているが、最近、好調なのが東京だという。1993年に東京に事務所を構えてから、着実に取扱店を拡大していき、ここ10年ほどでしっかり根付いたとのこと。

 

乾燥ふりかけばかりでマンネリ化している人は、ぜひ食卓に取り入れてほしい。しっとりとした「生感」が、いつものごはんを、ちょっと上等なものに押し上げてくれる。

 

そして、もう一つ紹介したいのが、広島・田中食品の超ロングセラーふりかけ「旅行の友」だ。

ふりかけに「栄養補給」としての色合いが強かった1916年に、広島で日本軍向けに作られたものが前身。その後、「旅行の友」の名で一般向けに発売された。

 

一部では「ふりかけの元祖」説もあるほどの超ロングセラー商品で、地元・広島を中心に中国・四国・九州で愛されてきた。

 

現在は全国で販売しており、東京のスーパーで見かけることも多くなった。魚の風味が味わえる、香ばしいふりかけだ。

ごはんの話が出たところで、ごはんによく合う「鍋の素」も紹介しよう。石川県民のソウルフード、まつやの「とり野菜みそ」だ。

こちらは2015年の北陸新幹線開通をきっかけに、全国へ広まってきているという。

 

製造元のまつやに電話するも、「まだまだ東京では置いていないお店も多いので……」とのことでお話は聞けなかった。しかし、筆者の目で東京のスーパーにもよく置いてあることは確認したし、電車内でのCMも見かけるため、運が良ければ出合えるはず。

 

この「とり野菜みそ」だが、とにかく鍋に白菜や肉と一緒に入れて煮れば、いい味になる。初夏の陽気でも美味いんだから、冬に食べたときのうまさはひとしおだろう。

 

味はクドすぎず、ちょうどいい濃さ。ゴクンと飲み込んだときの後味もいい。ファミリーだけでなく、哀愁漂う男の1人鍋にもピッタリだ。

 

ブラックモンブラン、ルマンドアイス……お菓子部門へ