100のアスレチックを社員がDIY。千葉県民の聖地「清水公園」はコロナ禍でも元気です

2021.05.31

100のアスレチックを社員がDIY。千葉県民の聖地「清水公園」はコロナ禍でも元気です

千葉県野田市にある「清水公園」は、日本最大級のフィールドアスレチックやキャンプ場、バーベキュー場やフラワーガーデンなどを備えた盛り沢山のスポット。地元出身のライター辰井裕紀さんが、公園を運営する株式会社千秋社の門井真純さんにさまざまな疑問を取材しました。

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    千葉県民は、県民としてのアイデンティティが薄い。

    たとえば全県的なご当地ネタが少ない。ローカルチェーンも局地的なものが多く、埼玉県民の山田うどん、神奈川県民の崎陽軒のような、全県民的に愛される存在がない

     

    とくに、僕の地元である千葉県北西部は、これといったローカルフードや習慣、方言がほぼない。しかも東京ほど垢抜けてすらいない。

    じつはコンプレックスだらけの僕ら千葉県北西部民だが、数少ない共通体験がある。それが、よく遠足や家族で行った野田市の「清水公園」だ。

     

    東京ドーム6個分の敷地に、野外で楽しめることを思いっきり集めましたという気概を感じるスポットで、主なものを列挙するだけでも……

     

    ・日本最大級、100ものフィールドアスレチック
    ・もはや懐かしの大迷路(休業中/2022年春リニューアル予定)
    ・キャンプ場
    ・最大1000人を収容するバーベキュー場
    ・ポニー牧場
    ・花ファンタジア(フラワーガーデン)
    ・2,000尾を超えるマス釣り場
    ・ボート池

    これだけある。千葉県民の「どこ行く?」にこたえてくれる場所で、ここのアスレチックは日本一だとひそかに思っていたし、大迷路も好きだった。

     

     

    少年時代インドア派だった筆者ですら、幾度となく行った清水公園。千葉の北西部民に愛されながらも、あまり知られていない清水公園の楽しさを全国に知ってもらいたい。

    その魅力を全身で伝えてもらおうと、ジモコロの記事を作っているHuuuuの若手・キョウノオウタ、日向コイケにも来てもらった。

     

    キョウノオウタ(写真左)、日向コイケ(写真右)。「若手らしく」との強引な要求に精いっぱい応えてくれたポーズ

     

    彼らとともにやってきた清水公園は、千葉県民にとってもどことなく不思議な存在だ。

    ・誰がなぜ作ったの? 

    ・100のアスレチックは誰がどう組み立てるの?

    ・なつかしの「大迷路」はなぜあるの?

    ・水上コースの池の底には何が落ちているの?

    ・新型コロナウイルス流行の影響は?

    あふれ出る疑問の数々。清水公園を運営する、株式会社千秋社の門井真純さんにお答えいただいた。

     

    ※新型コロナウイルスの影響により、2020年3月に取材した内容を元に、2021年5月に追加取材した内容を加えて記事化しました。画像・動画の多くは20年3月当時のものです。

     

    清水公園も野田市も、キッコーマンがつくった!?

    千秋社総務課主任の門井真純(かどい・ますみ)さん

     

    辰井「『清水公園』は、千葉県民からすると”楽しくてちょっと謎の場所”なんですよね。いつ、どうやってできたんですか?」

    門井「1894年(明治27年)に市民の方たちが集える憩いの場を作ろうと、『遊園地』として生まれました。ただし遊園地といっても観覧車やジェットコースターがあるわけではなくて本当にただの広場だったんですけど、そこから徐々に広げていって、いまの形になりました」

    辰井「遊園地という名前で、単なる広場……!?」

    門井「昔は遊具などがなくても人々が憩える広場を遊園地と呼んでいました」

     

    その広場はいま「第1公園広場」となり、「日本さくら名所100選」の園内でもお花見スポットとなっている(写真は2019年以前の様子)

     

    門井「そして清水公園を作ったのがキッコーマンの創設者のひとり、柏家五代目当主・茂木柏衛翁です。彼が金乗院というお寺の土地5千5百坪を、賃借料1千円(※当時の金額)で50年間の賃借契約をして、一般市民に開放したんですね」

    辰井「市民のためにそこまでしてくれるのか、茂木さんすごい……」

    門井「ほかにもキッコーマンは野田市のまちづくりに深く関わっておりまして。たとえば1923年に千葉県下では最初の水道施設をキッコーマンがはじめて、1975年まで野田市の水道事業を保有していました」

    辰井「企業が水道事業を運営していたとは」

    門井「あと東武野田線も、主に千葉県に醤油を輸送する鉄道として生まれました。さらにキッコーマン総合病院やキッコーマン文化体育館もありますよ」

    辰井「もはや野田市はキッコーマンと二人三脚ですね」

     

    野田商誘銀行旧本社(現在は清水公園を運営する千秋社がある。photo by Wiiii

     

    門井「ちなみに、千葉銀行の前身にもなった野田商誘銀行もありました。ちなみに『商誘(しょうゆう)』は『しょうゆ』をもじったようです

    辰井「…………」

     

    100のアスレチックはぜんぶ自社製

    辰井「清水公園といえばやっぱり、日本最大クラスのフィールドアスレチックですよね」

    門井「ええ、毎年アスレチックの利用者はだいたい30万人ぐらいです。コロナが流行している現在は完全予約制ですが、千葉はもちろん、埼玉や東京からもいらっしゃいますね。100種類の遊具があります

    辰井「なにがきっかけで生まれたんですか?」

    門井「子どもたちが自然の中で思いきり遊べる施設があればと、1976年にできました。日本フィールドアスレチック協会に助言を受けつつ、各所を視察した上で遊具を作っていまの形になっています」

     

    辰井「それまで、日本にこういう所はなかったんですか?」

    門井「おそらく、フィールドアスレチックのできはじめではあると思います」

    辰井「日本のフィールドアスレチックの祖なのか。遊具はどこかの会社に作ってもらうんですか?」

    門井「実はうちのスタッフがぜんぶ手作りします

    辰井「まさかの自前でDIY!!」

     

    門井「外注ではなく、ぜんぶウチのスタッフが手作りします。会社に入ると、男性社員はアスレチックの技術を学ぶのが常ですね

    辰井「確かに外注だと、メンテナンスにもお金がかかりますもんね。それにしてもぜんぶ自社での製造とは、力技にも程がありますよ」

    門井「そう、だから社内で修繕もしていますね。あとは木の面を丸くしたり、角を取って面取りをしたりと、ケガが少なくなるように気をつけます」

    辰井「僕も運動オンチだったので人のことは言えませんが、最近の子どもは運動能力があまり良くないとも聞きます。何か対策はしていますか?」

    門井「はい、実はすり鉢状の中を走って上にのぼる『アリ地獄』は、昔はもっと傾斜があって、底がもっと低いところにありました」

    辰井「たしかに言われてみると昔はもっと急だった気がする」

    門井「ええ。底上げをして少しカンタンにしています」

     

    ベスト3に入る人気の遊具「アリ地獄」を若者2人が回る

     

    辰井「そのほか、アスレチックの安全面で気をつけているところはなんですか?」

    門井「丸太やロープは濡れるとすごく滑りやすいので、雨のあとで遊具が乾いていない時は休場にします

    辰井「儲けがゼロになるわけだから、営業したくなりそうですが」

    門井「安全のためだから、しょうがないですね。あとは巡回の監視員がずっと見回っています。さらにアリ地獄や水上コースなど、高難度のところには張り付きでスタッフがいますし、最近は全体的に監視員を増やしています」

    辰井「監視に人件費を使ってくれると、親は安心ですね」

    門井「ええ。あとは未就学児のお子さまが遊べないポイントを全体の7割に増やしました。代わりに小さいお子さんでも遊べるポニー牧場のミニアスレチックもオススメしています」

     

    ドボン必死の「水上コース」

    辰井「さあ、ついに挑戦者たちの大部分が水に落ちる、水上コースの話です。千葉県民はここを『クリアした』『落ちた』が語り草ですが……そもそもなんでこれができたんですか?」

    門井「もともと水辺があったので、そこを利用する形で作りました」

     

    落ちないように踏ん張る日向コイケ

     

    辰井「めちゃくちゃむずかしい印象があります。僕は『水へ落ちる』絶対の自信があったので、ほとんどトライしませんでした」

    門井「ダメな自信ですね……。そう、水上コースはホントに『SASUKE』みたいで難しいです。全体が水の上なので、とくに大人はかなりの確率で落ちますね

    辰井「大人のほうが落ちやすいんですか?」

    門井「たとえばいかだの上を走り抜ける『水面走り』だと、子どもは体重が軽いので沈まずに行けるんですよ。でも大人は体重があるから、スピードがないと沈んじゃうんですよね」

    辰井「だから、娘の前でパパが水に落ちる悲劇も生まれるわけですね……」

     

    難関「水面走り」をクリアする(当時)15歳

     

    門井「あと『水上ターザン』といって、ロープ一本で向こう岸に渡り、向こうのネットにつかまる遊具の2カ所が、かなりの落水ポイントです」

    辰井「僕みたいな運動不足の大人には危険だ」

    門井「でも、この2つがずっと大人気なんですよね」

     

    GWには大行列ができ、一人2回までの制限もかかる「水上ターザン」。『マツコ&有吉の怒り新党』では「成功率30%」とも言われた

     

    門井「ちなみに人気YouTuberのフィッシャーズさんも以前来てくれて、その動画を見て来ましたっていう小中学生のお子さんがすごく多かったですね」

    辰井「すごい宣伝効果だろうなあ。清水公園ファンの世代交代も進んでいますね」

     

    辰井「ちなみに水上へ落ちている子は、あの後どうするんですか?」

    門井「売店でTシャツやズボンや下着を売っていますし、シャワー室とコインランドリーを用意しています。万が一、陸に上がれない場合は、すぐ近くにいる監視員が助けますよ」

    辰井「もう『落ちる』が前提のバックアップ体制ですね」

     

    池の水をぜんぶ抜いてメンテナンスを行なった。外来種の魚や亀、お客さんが落とした時計やメガネが見つかったとか

     

    2022年春に帰ってくる「巨大迷路」

    いまは無き旧・大迷路。2022年に帰ってくる

     

    辰井「名物アトラクションだった『巨大迷路』を擁するアクアベンチャーですが、2020年6月末で閉鎖してしまいましたね……!」

    門井「ええ。終わるときは惜しむように大人の方もいらっしゃってくださいました」

    辰井「バブル期の大迷路ブームの名残で、何度も行った大好きなスポットだったんですが……」

    門井「ええ。ただ、2022年春にリニューアルオープン予定です」

    辰井「おお!!」

    門井「また木材をベースにした巨大迷路を作って、いろんな種類が出る噴水と、色とりどりの遊具を置きます。遠足のためにテントが張れる場所やベンチも増やしますよ」

    辰井「期待がふくらむなあ。迷路が復活するなんて情報知らなかった……!」

    門井「まだ大々的には発表していないですから。周辺に住宅地が増えましたし、やはり子どものための施設を残そうと思いまして」

     

    辰井「うれしい。画像では去年の取材時(2020年3月)の、旧迷路の貴重な姿を見てもらうことにして、最初にこちらができたのはいつ頃だったんでしょう?」

    門井「巨大迷路ブームがあった1987年です。ちなみに当時は人気がありすぎて、スタートからゴールまで、ぜんぶただの行列になっていたそうです」

    辰井「……もはや迷路の意味がありませんね。そのブームが終わり、全国にあった迷路もほとんど消滅したと聞きますが、清水公園ではなぜ残したんですか?」

    門井狭いスペースでも楽しみやすいですし、年齢制限であまりアスレチックができない小さなお子さんでも遊べますから」

     

    迷路の平均クリア時間は20~30分で、筆者は1時間かかった。門井さんも研修時代、出られなくなったことがあるそう

     

    少子化でググッと「大人向けシフト」

    辰井「そうやって子どもたちに人気を博してきた清水公園ですが、いまはコロナ禍ですよね……。お客さんの入りに影響は出ていますか……?」

    門井「コロナの流行で、完全予約制にしたアスレチックの入場者は例年の5割に落ち込みました。ただし、予約のいらないポニー牧場や『花ファンタジア』というフラワーガーデンは同8~9割程度には戻ってきています」

    辰井「持ち直してはきていると。そもそもその前から大変な少子化でしたが、お客さんの入りは大丈夫でしたか?」

    門井ええ、コロナ前までは横ばいにはキープできていました。最近では、大人も楽しめる施設を増やしていて、花ファンタジアやマス釣りの施設を作りましたね」

     

    花ファンタジアは総面積7万㎡。季節の草花が約700種類楽しめる

     

    辰井「子ども向け施設から、全年齢型になってきましたね」

    門井「ええ。ちなみに花ファンタジアは、花の咲き具合で入園料が変動しまして。たとえば花が多い5月と6月は800円で、逆に花が少なめの3月や9月は300円です」

    辰井「『花が少ないときに行って損した』ってならないんですね」

     

    最近はソロキャンプ需要も増えている。冬の稼働率は、ここ数年で約2倍に

     

    辰井「ちなみに千葉県民にとって清水公園は”遠足の聖地”なんですが、なぜここが選ばれるんですか?」

    門井校外学習って、遊びと勉強と両方なきゃいけないみたいです。たとえば清水公園だとアスレチック(遊び)に加えて、飯ごう炊さんのカレー作り(勉強)などを入れれば、成立しますので」

     

    辰井「遊びと勉強を兼ね備えた、貴重な施設だからかぁ」

    門井「あとうれしいのが、遠足で来た子がもう一度、今度は家族や友達と一緒に来てくれるんです。おそらくお子さんが『もう少しでクリアできたし、また行きたい』と親にお願いするのでは……」

    辰井「100面を遠足でぜんぶやるのは至難ですもんね」

    門井「ええ、遠足では遊ぶ時間が短いですから」

     

    2年越しでみんなに見てもらった花

    辰井「ちなみに2020年の4~5月は緊急事態宣言で休業中でしたよね?」

    門井「ええ、一年で一番お客さんが来る時期にいっさい営業できませんでした」

    辰井「いまもコロナ前まではお客さんが戻り切れていないですよね。経営、大変なのでは?」

    門井そうですね……

    辰井「いやいや、千葉のソウルスポットとして、お願いですからがんばってください……!」

    門井「でも以前よりお店のテイクアウトが売れていて。園内のベンチや、芝生でレジャーシートを広げて食べていらっしゃる方もいます」

     

    テイクアウトしやすいピタパンサンド

     

    辰井「ピクニック気分でいいですねぇ! ちなみに4~5月って花ファンタジアが一番華やぐ時期だったと聞くのですが……」

    門井「やっぱり、その時期に見てもらえるためにスタッフは手入れをしていたので。去年はネモフィラもボタンもバラも全然誰にも見られずに終わっちゃって

    辰井「『私が一番きれいだったとき』を見てもらえなかったのか……」

    門井「写真だけでもSNSにアップしていたんですけれども……。だから、今年見てもらえたのはすごくうれしかったですね」

     

    2021年、満開になったネモフィラ

     

     

    コロナ禍で自然公園の価値に気づけた

    辰井「ところで……千葉の北西部って、ローカルチェーン店とかその土地ならではのものがあまりないんです。だからみんなで語れる共通の思い出って本当に少なくって、清水公園がすごく貴重な存在で」

    門井「私たちとしても、かつて遠足で来てくれた地元の方が、親になって子どもを連れてきていただけるのはうれしいんですよ」

    辰井「千葉北西部民にとっての貴重な共通体験が、親から子へ受け継がれていくんだなあ」

     

    千葉県民の自虐を体現したようなスナック菓子

     

    辰井「最後に、清水公園って門井さんにとってどんな存在ですか?」

    門井守るべき存在です。2020年4~5月のコロナ禍の緊急事態宣言中にも、近所の方から『公園に行きたい』とのご意見をたくさんいただいて」

    辰井「当時は、本当に息が詰まりそうな感じでしたからね」

    門井「そのとき無料のエリアは閉めなかったので、お散歩する姿も見かけましたし、コロナの時期でも人は緑があって自然がある場所を大事にしていると知りました」

    辰井「ずっと家にいたら、外に出るだけでうれしかったですから」

     

    門井「それで緑を大事にしているお客様はいつでもいて、憩える場所は存在し続けないといけないと思えたんです。変えるべきところと変えないところを見つめて、そんな自然と施設を守っていければと思いますね」

    辰井「ここは千葉のプライドのひとつです。50年後もまた里帰りさせてください!」

     

     

    ※5月現在でフィールドアスレチック・キャンプ場・ポニー牧場が公式サイトからの事前予約が必要です

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    この記事を書いた人

    辰井裕紀
    辰井裕紀

    卓球と競馬と旅先のホテルで観る地方局のテレビ番組が好きなライター、番組リサーチャー。過去には『秘密のケンミンSHOW』を7年担当。

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