日本最古級の映画館が長野にあった!「相生座・ロキシー」の愛され続けた130年

2022.08.22

日本最古級の映画館が長野にあった!「相生座・ロキシー」の愛され続けた130年

長野県にある日本最古級の映画館「長野相生座・ロキシー」。約130年近く前に建てられた建物でいまもなお、多くの人に映画と感動を届け続けています。100年以上の長きに渡り、映画館が愛され続けてきた理由と、映画館が見てきた街の歴史を伺いました。

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    こんにちは! 長野市在住のライターのナカノです。

     

    みなさんは、劇場で最初に観た映画のことを覚えていますか?

     

    私は、3歳の時に父と一緒に観にいった『劇場版美少女戦士セーラームーンR』が映画館デビューでした!

     

    作品を観た映画館はすでに閉館し、取り壊されていますが、当時の記憶は強烈に覚えているんです。私のように、思い出の映画館が潰れてしまった経験をした人は多いのではないでしょうか?

     

    長野県内では、昭和22年に34館あった映画館が2017年には14館まで減っています。動画配信サービスが台頭し、近年では、最新映画をウェブ上で封切りするケースも。

     

    そんな変化の多い映画業界の中、長野市でなんと約100年以上も営業を続けている映画館があります。

     

    それが長野相生座・ロキシー(以下、相生座)です。

    相生座は善光寺からほど近い権堂商店街にある木造建築の映画館で、「長野相生座」「長野ロキシー1」「長野ロキシー2」の3つのスクリーンがあります。

     

    上映館数の少ないミニシアター系の映画を上映したり、過去の名作を上映するイベントをやったり。映画好きにはたまらないラインナップに、遠方から足を運ぶ方も多いのだとか。

     

    券売機がスタンダードになった今、タイムスリップしたかのような古き良き雰囲気のチケット売り場にも気分が高鳴ります。

     

    作品を観たあと、ひとりで余韻に浸るのに最高な空間!

     

    劇場とお客さんとの近さも、シネコンでは感じられない地元の映画館ならではの魅力です。そんな雰囲気抜群な相生座は、130年の歴史を持つ日本最古級の映画館

     

    私と同じ30代の人はもちろん、親世代や祖父母世代ももしかしたらこの相生座で映画館デビューをしたのかもしれません。

     

    めまぐるしく時代の流れが変わる中で、100年以上続く映画館ってどんな場所なんだろう? そんな興味を抱き、相生座に関わる方々を訪ねました。

     

    「長野相生座・ロキシー」の愛され具合を支配人に聞いてみた

    最初にお話を伺ったのは、長野相生座・ロキシーの支配人である田上真里さん。

     

    田上真里さん/長野相生座・ロキシー支配人

    長野市出身。長野市内の劇場で映写技師を経験後、2007年に長野相生座・ロキシーを運営する長野映画興行株式会社に入社。広報を経て、2009年から支配人を務めている。

     「こんにちは! 今日はよろしくお願いします。映画を観たくなると相生座によく足を運ぶので、お話を伺えるのが嬉しいです」

     「ありがとうございます、こちらこそ劇場に足を運んでいただけて嬉しいです!」

    「さっそく色々お聞きしたいのですが、相生座は普段、どんな客層の方がいらっしゃるんですか?」

    「ざっくりした割合で言えば、常連さんが30%くらいで、作品きっかけでいらっしゃる新規の方が70%くらいですね」

    「へえ! なんとなく常連さんの多いイメージがありましたが、新規の方が7割も占めているんですね」

    「そうなんです。今だとカンヌ国際映画祭で話題を集めた『PLAN 75』を観にきてくださる方が多いかな」

     

    映画賞を受賞した作品や話題作も上映しているので、新規のお客さんも足を運びやすい。取材に訪れた7月中旬には、『PLAN75』『FLEE』、『光復』などが上映されていた

     

    「『この映画は話題だし、見てみようかな』っていう人も、ロキシーに来てくださるんですね! 上映する映画をセレクトする基準についても知りたいです」

    「上映作品を選ぶときは私の好みは一旦置いておいて、まずは『当たるかも!』って作品を必ず押さえるようにしています。映画館の運営はやはり”興行”ですし、お客さんが劇場に来てくれるかどうかは、作品によるところが大きいと思っていて」

     

    相生座にはメンバーズ会員とプレミアム会員の2つの会員制度があり、どちらも割引価格で映画を鑑賞できる。年会費と入会金を支払うと1100円の特別料金で鑑賞できるプレミアム会員は500名ほどいるそう

    「最近、相生座で上映して『当たった!』と感じた作品はありますか?」

    「やはり、2022年のアカデミー賞で外国作品賞を受賞した濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』はたくさんの方が観にきてくださいましたね」

    「おお! 私の知り合いも、相生座で何度も観たと言ってました」

    「同時期に濱口監督の過去作品も上映しましたが、『ハッピーアワー』は上映時間5時間以上にも関わらず、100人近くの方が来てくださいました。これはすごいムーブメントだなと感じましたね!」

     

    「上映作品のセレクトって、リサーチ力とセンスが問われそうです。失礼な話、読みがハズレちゃうこともあるんですか?」

    「それはもちろんいくらでもありますよ! 日々、成功と失敗を繰り返しています(笑)。おもしろい映画が必ずしも動員に結びつくわけではないので、難しいところなんですけどね」

    「私だったら自分の好きな作品ばかり上映したくなっちゃうなぁ」

    「私はお客さんに来てもらいやすいよう、バランスを考えていますね。例えばマニアックな作品だったら、作品の熱量が届くように監督をお呼びして舞台挨拶をしていただいたり、キャストの方のトークイベントをおこなったり、大きな集客に結びつく企画を考えるんです」

    「たしかに、キャストや監督の舞台挨拶のある上映って惹かれます!」

    「昨年公開の長野市出身の岨手由貴子監督作品『あのこは貴族』の舞台挨拶回が満席になったのは印象的でした。やっぱり、地元出身者が関わる作品が『いい映画だったね』と口コミで広がっていくのは嬉しいですよね」

     

    「地元の話が出ましたが、普段から地元の方や常連さんとの関わりは多いですか?」

    「多いかもしれませんね。お客さんの話でいうと、昔からの常連さんが100周年のタイミングにオリジナルのポストカードをつくってきてくれて」

    「オリジナルのポストカードを!?」

    「劇場の写真をプロの方が撮ってくれて、『つくったので、よかったらこちらで販売してください。利益もどうぞ』と持ってきてくださったんです(笑)。その後、当館で正式グッズとして販売をはじめました」

     

    映画館の外観や、内部の姿を写したポストカード

     

    「映画鑑賞だけではない部分でも常連さんが関わってくれるのは嬉しいですね」

    「ええ! 常連さんとの距離は当館が大切にしている要素のひとつです」

     

    毎月の上映作品をまとめた小冊子も発行しているロキシー

     

    「映画館好きのお客さんたちがいる一方で、いまは『配信サービスで見ようかな』という人も多いですよね。時代や文化の変化も、劇場の経営にかなり影響しそうだなって思います」

    「思い返してみると、映画がフィルム上映からデジタル上映に移行するときにはかなり苦しかったですね。デジタルが普及した今、フィルムで映画をつくる方は巨匠クラスの監督がほとんど。映画の上映を続けるためには、1台800万円ほどする機械を導入しないといけなかったんです」

    「ええ!? ロキシーには3スクリーンあるから……全部で約2400万円!?」

    「はい(笑)。デジタルに移行するタイミングで閉める映画館もたくさんあったはずです」

    「ぶっちゃけ、どうして耐えられたんですか……?」

    「いろんな理由があるけど、家主が劇場を運営していて、家賃がかからないことは大きかったと思います。もし家賃の支払いが残っていたら、とてもじゃないけど続けていけなかったんじゃないかな」

    「そういった条件も揃って、今の相生座が続いてるんだ……!」

     

    「相生座について、まだまだいろんなエピソードがありそうだなぁ。なんていったって130年続いている劇場ですもんね」

    「相生座と街の移り変わりについては、長野市の郷土研究をしている小林竜太郎さんに聞いてみるのがいいかもしれません。この街の映画館事情を書籍にまとめているくらい、とても詳しい方ですよ!」

    「書籍に! それはかなり詳しそうですね」

    「小林さんが言うには、権堂の街が『長野県の北部から来る人を迎える長野市の玄関口』だったのだとか」

    「へー! それは知らなかったです! 早速、聞きに行ってみますね!」

     

     

    映画館と繁華街・権堂の歴史

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    ナカノヒトミ
    ナカノヒトミ

    1990年長野県佐久市出身。2017年よりフリーライターとして活動を始めた。どこでも地元メディア「ジモコロ」などウェブメディアを中心に執筆を行う。2018年4月に「やってこ!シンカイ」の店長になり、佐久市から長野市に引っ越す。2020年に出産し子育て&仕事の日々。

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