日本一キケンな動物園「ノースサファリサッポロ」は、完全自己責任だからこそおもしろい!

2020.09.24

日本一キケンな動物園「ノースサファリサッポロ」は、完全自己責任だからこそおもしろい!

北海道札幌市にある体験型ふれあい動物園「ノースサファリサッポロ」は、「日本一キケンな動物園」としても知られています。誓約書を書かないと入場できないデンジャラスゾーンなどがあり、たくさんのかわいい動物たちと触れ合うことができる一方で、園内には「自己責任」の看板が立てられています。代表の星野和生さんに話を聞きました。

人気記事

    ノースサファリは動物園であって、動物園でない

    「そもそも、どうして動物園をつくろうと思ったんですか?」

    「ここからほど近いところに、定山渓(じょうざんけい)温泉という北海道有数の温泉街があるんです。前までは熊牧場があったんですが、そこが潰れてしまったのを知って、温泉街の近くに新しいレジャー施設を作ろうと思ったんです」

    「それで動物園にしたのは、ご自身が動物好きだから……?」

    「もちろん動物は好きなんですが、自分で建設会社をやっていたのもあって『作れるな』という感覚が大きかったですね」

    「いやいやいや、動物園って『作れるな』と思って作れるものじゃないですよ(笑)」

    「そんなことないですよ! 遊園地を作るってなると遊具を作ったりなんだりで大変ですけど、動物園は柵作って動物入れるだけですから(笑)。まずは牧場よりちょっと充実した施設になればいいな、と思ってはじめたんです」

     

    本業が建設業だった星野さんの「手作り」は、完全にプロクオリティ

    「イチから作りはじめて、どのくらいで完成したんですか?」

    「森の開拓からはじめて、一年くらいでメインスペースは完成した感じですかね。そもそも無計画で始めてるもんだから、土地が虫食い状態になってるんですよね。

    すこしずつ周囲の土地を買い取っては新しい施設を増設していて。だからデンジャラスの森やフードコートは、すこし離れたところにあるんです」

     

    「デンジャラスの森」は、メインゲートから2〜3分歩いた場所に

    「昔から動物園にはよく行ってたんですけど、いつも『遠くからみてるだけでつまんないなー』と思ってたんですよね。猛禽類やライオンも好きだけど、檻のなかでダラダラするライオンや羽ばたかない猛禽類を見て、なにがおもしろいんだろう?と。

    どっちかというと野生動物のほうが好きで、あんまり動物園は好きじゃないんですよね」

    「それなのに動物園をつくっちゃったんですか!? たしかにノースサファリは、一般的な『動物園』のイメージとはだいぶ違いますけど……。サファリパークと動物園の間、的な」

    「そうですそうです。いわゆる動物園というよりも、動物のテーマパークのようなものを目指してます。動物園のもつ役割っていくつかあって、なかでも『種の保存・繁殖』が主にあるんです。希少な動物を保護して、後世に残していく役割」

    「パンダとかはまさにそういうイメージですね」

    「でも僕は繁殖を目的にこの施設をやっている訳じゃなくって、動物のかわいさや、仲良くなったり触れ合ったりするたのしさを知ってほしいんです。人間の飼育下にいても動物のもつ本能は失われないし、飛び方ひとつ、鳴き方ひとつでその動物の生態を知ることはできるので」

     

    プレミアム体験のひとつ「ライオン空中フィーディング(※餌やり)」は、ライオンの運動不足解消に役立つうえ、狩りの様子が見られると人気のコンテンツ

    「よく『動物園で飼われている動物は幸せなのか?』という議論が起こりますよね。個人的には、さきほど星野さんがおっしゃったように動物園にも役割がある以上、白黒付けられない問題だとは思っているんですけど」

    「そうですね。野生動物の生活環境がいきなり変わったら、たしかにストレスが大きいと思います。でも正直、動物園で生活する動物たちはもう『野生』とは言えないでしょう。

    生まれた時から人間の手で育てられている彼らにとっては、人と一緒にいることが『普通』になっている。それに動物は人間と違って嘘をつかないので、もし触られたくなかったり機嫌が悪かったりすれば、ハッキリ態度で示してくれます」

     

    星野さんが名前を呼ぶと擦り寄ってきた雄ライオン。気持ちよさそうに撫でられていました(※一般のお客さんはマネしないでね!)

    「そのぶん、飼育環境やエサはできるだけ本来食べているものに近づけるようにしていますよ。大型の肉食獣なら内臓そのままの血肉を与えたり、ミーアキャットにはペレットフードだけじゃなく虫を食べさせたり……。

    動物たちの成長や免疫力にも繋がるので、半分は飼育用のエサを、半分は本来食べているものをあげるようにしています

    「今日、園内を案内してもらっていてすごく印象的だったのが、多くの動物たちが星野さんが名前を呼ぶと反応したり、撫でてもらいに近寄ってくることでした。動物たちと『信頼関係』ができているというか」

    「彼らは野生ではないとはいえ、本能は失っていないので『信用』はしていないですよ。動物の世界では弱肉強食が常、こちらが対応を間違えばいつだって本能が勝るものだと思って過ごしています」

    「小さい頃から一緒に過ごしている星野さんでも、危険な目に遭うことはあるんですか!?」

    「ありますあります(笑)。

    昔、ティガー(トラ)が今の半分くらいの大きさの頃にリードを付けて散歩させてたんですよ。森の中を散歩してたら、それが相当うれしかったみたいでゴロゴロしながらじゃれてきて。だけどもうその時には、テンション上がりまくって歯止めが効かなくなってるんで、爪が出てるんですよね。それで手をガリーッとやられたことがあります」

     

    よくみると傷跡だらけの手。ほかにもニシキヘビに噛まれたりライオンに噛まれたりと、わりとちゃんとケガしてました

    「この指はうちに来たばっかりのアザラシがガブーッて。指、ほぼもげましたからね(笑)。縫ってくっつけたけど(笑)」

    「(全然笑えない・・・!)」

     

    「大事なのは、いかに彼らの本能を刺激しないかだと思っています。信頼関係はあるけれど、いつどんなきっかけで本能スイッチが入るかはわからないので。

    だから、触れ合う前に必ず名前を呼んでその日の機嫌を見るようにしているんです。ティガーでいえば、『グーグー』と返事をすれば触ってOKなサイン。逆に返事がなかったりウロウロと落ち着かないようであれば絶対に檻には入りません」

     

    この日のティガーはご機嫌で、返事をするとすぐに寄ってきてくれた

    「最初に『強そうですね』なんて言いましたけど、その理由がわかった気がします……。ちゃんと危ない目に遭ってたんですね」

    「そうですね(笑)。動物たちには反復動作で人間との触れ合いを習慣化して覚えてもらってるだけなので、常に『動物は安全ではない』という意識は持ってますよ」

    「ち、ちなみに動物たちが脱走したことってあるんですか?」

    「ほとんどないんですけど、一回アザラシが池から逃げたことがあって。川伝いに上流にある釣り堀まで行っちゃって、もうバイキングですよね。ニジマス食べ放題(笑)。しっかり300匹ぶん弁償しましたもん」

    「エピソードが豪快だなあ〜〜」

     

    新しい生活様式で、動物園のあり方は変わる?

    フクロウの活動時間帯は瞳を見ればわかるらしく、この子は黄色なのでお日さま降り注ぐ昼行性。黒い瞳は夜行性、オレンジは朝焼け夕焼けの時間帯に狩りをするとのこと

    「まだまだ大変な状況ではありますが、ようやく『新しい生活様式』で経済も回していきましょうというフェーズにきましたよね。今までのように気軽に移動ができない状況が続く中で、動物園の役割も変わっていくと思いますか?

    「もちろん変わっていくと思います。デジタル化が一気に進んで、便利になる一方で窮屈さを覚える人も増えてるんじゃないでしょうか。ペットを飼う人が増加傾向にあるのも、人が『癒し』を求めている結果なのかなと」

    「癒し効果がハンパじゃないってことは、さきほど身を以て実感しました……! キンカジューに母性を根こそぎ持っていかれましたもん」

     

    小さな手でキュッとされた瞬間、「これが……母性!?」と心が大爆発。このあと洋服の中に入ってこようとして、さらにギュン!と心を鷲掴みにされました

    「動物園には、さきほど話した『種の保存』のほかに『教育』『調査・研究』『レクリエーション』の4つの役割があります。中でもうちは『レクリエーション』の要素が強くて、動物と触れ合って一緒に遊ぶたのしさを知ってほしいんですね。

    このままデジタル化が進んで5Gが導入されて、ホログラムで動物たちが目の前に現れたとしても、やっぱりリアルな体験でしか得られない感情の高ぶりってあると思うんです」

    「わかります。触って初めてわかる感触とか温度とか、その機微は映像だけじゃ絶対に伝わってこないですもんね」

    「とはいえ、デジタルとリアルを両立していかないと、もう厳しい時代だとも思っていて。ノースサファリとしてはYoutubeなどでの発信も積極的にやっていこうと思っていて」

    「他になにか考えている仕掛けはあるんですか?」

     

    「数百円でもいいから、月額の会員数を増やしたいとは考えていますね」

    「動物園のサブスクリプション的な?」

    「そうですそうです。たとえば月300円で毎月なにかしらのコンテンツを提供しつつ、会員さんはノースサファリ通い放題とか。

    通い放題という考え方だと年間パスポートもあるのですが、それだと有効期限が切れるタイミングで関係性も終わってしまうと思っていて」

    「もう1年更新するかどうかは、冷静に考えちゃいますもんね」

    「そうですよね。だけど、毎月満足いくサービスが提供されて、なおかついつでも無料で入園できるのであれば、解約する理由はないと思うんです。

    そうすると、年間パスポートを買ってもらうよりも、関係性が継続しますよね」

    「月300円で1年だと3600円ですよね。今の入園料が1800円なので、年2回来ればお得なのに、さらに毎月なにかしらのコンテンツが届くとなれば、動物好きやノースサファリファンにとってはたまらないですね……!」

    「ノースサファリに来ても来れなくても満足できる価値をデジタルで届けつつ、でもやっぱり動物たちと触れ合ってほしい。リアルの体験にこそ価値があると思っているので、現地に来たくなるようなコンテンツをデジタルを通して届けていくのが、今後の動物園の生き残り方な気がします

     

    さいごに

    「今はスペースの関係で難しいけれど、ゆくゆくは敷地を拡大して自然保護区のような環境で、動物たちがのびのびと過ごせるようにしたい」と話してくれた代表の星野さん。

     

    動物園のあり方に関しては、動物愛護的な視点や希少種保護、調査・研究の視点などがあるため、一概にその是非を問えるものだとは思いません。さまざまな意見があって当然です。

     

    ただ、ノースサファリで多くの動物たちと直接触れ合い、動物たちの愛らしさや人懐っこさを肌で感じることができたのは、本当によかったです。わたしはこんなに愛おしい動物たちが生きる自然環境を、もっと大切にしたいという気持ちが強くなりました。

    純粋に、とにかくたのしいしね!!!!

     

    まだまだ油断が許されない状況ではありますが、気分がどうにもアガらなくって、日常に窮屈さを感じたら、スマホを手放して動物たちと触れ合うことをオススメします。

     

    スーパー癒されること間違いし!ただし、母性がダダ漏れになる可能性があるので、それだけは注意してくださいね!

     

    それでは、また!

     

     

    撮影|原田啓介

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    きむらいり
    きむらいり

    1990年生まれの編集者/ライター。北海道函館市出身。実家はちいさなパン屋です。動物が好きで、この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。

    きむらいりの記事をもっと見る

    オススメ記事

      こちらの記事もオススメ