日本一キケンな動物園「ノースサファリサッポロ」は、完全自己責任だからこそおもしろい!

2020.09.24

日本一キケンな動物園「ノースサファリサッポロ」は、完全自己責任だからこそおもしろい!

北海道札幌市にある体験型ふれあい動物園「ノースサファリサッポロ」は、「日本一キケンな動物園」としても知られています。誓約書を書かないと入場できないデンジャラスゾーンなどがあり、たくさんのかわいい動物たちと触れ合うことができる一方で、園内には「自己責任」の看板が立てられています。代表の星野和生さんに話を聞きました。

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    グルルルゥ…

     

    「はい、あーん!」

     

    いきなり猛獣のドアップから始まってすみません。今日わたしが訪れているのは、北海道札幌市にある体験型ふれあい動物園『ノースサファリサッポロ』です。

    ふれあい動物園ったって、まさかこの距離でトラと触れ合えるだなんて思っていなかったですよ、わたしだって。

     

    ノースサファリサッポロは「体験型ふれあい動物園」を名乗っているだけあり、

     

    とにかく!

     

    動物との距離が!!

     

    近い!!!

     

    近い!!!!!!

     

    いろんな動物たちが足下をうろうろするなかで歩き回っていると、完全に「お寛ぎのところ、失礼します」といった感覚になってきます。

     

    実はこのノースサファリサッポロ、一部の人たちには「日本一危険な動物園」として知られた存在でもあります。

     

    バリバリの警告色で書かれた「完全自己責任」の文字

     

    なにかと「責任」を問われる現代においては、特に企業側や施設などはさまざまなことに敏感にならざるを得なくなっています。そんな中でここまで堂々と「自己責任」を前面に打ち出せるのはなぜなのでしょう?

     

    最近では、「コロナの影響で存続の危機!」と題したクラウドファンディングを実施し、「ヘビの抜け殻ピアス」や「ビーバーがかじった木でつくったコースター」など、そのリターン品のユニークさが話題になりました。

     

     

    尖った企画と攻めた方針で知る人ぞ知る、唯一無二の動物園となったノースサファリサッポロ。今回は代表取締役・星野和生(ほしの・かずお)さんに、お話を伺いました。

     

    ※撮影のため、特別に触れ合いを許可してもらった動物もいます。柵や檻の中には決して入らず、ルールを守ったうえでたのしく過ごしましょう!

     

    動物はそもそも噛むし、どつくもの

    「今日はよろしくお願いします! 突然失礼ですが、星野さん、めちゃくちゃ強そうですね」

    「だって、いざとなったら(動物たちを)捕まえなきゃなんないからねぇ。動物たちと本気で向き合ってきた結果です」

    「ノースサファリの特徴って、動物たちとお客さんの距離がかなり近いことだと思うんですが、トラブルはないんでしょうか?」

    「昔はありましたよ。それこそ『自己責任』の看板を付けていなかった7〜8年前は『〇〇に噛まれた、どうしてくれるんですか』って意見もありました。だけど、そもそも100%安全な動物園ってありえないんですよ

     

    なぜなら、動物たちが決して『安全』な存在ではないので。

    「どういうことでしょう?」

    「もちろんお客さまの安全は第一ですし、対策も十分考慮しています。だけど、みんなが安心安全に過ごせる場所を目指すとなると、監視の人をたくさんつけなきゃなんないか、つまらない状態にするかの二通りしかなくなってしまうんですよ」

    「つまらない状態、ですか?」

    「以前、とある動物園でヤギが子どもをツノで突いてしまう事故があったんです。その結果、そこにいるヤギのツノは全部切られてしまい、触れ合いも禁止になりました。だったら、入り口に『ヤギはどつくよ』って書いてあったほうがいいと思うんですよね。どつかれたくない方は入らないでください、って」

    「そう書いてあったら、ケガするリスクを考えたうえで、入るかどうか慎重に判断しますよね。入るんだったら最大限の注意を払いますし」

    「そうですよね。しかもその動物園では、もうヤギ本来のツノの生えた姿は見られなくなってしまう訳です。そうなってしまうと、子どもたちの教育の場でもある動物園として、本当に見せたい姿なのかな?と思いますよね。それこそ人間のエゴを押し付ける形になってしまう。ヤギは(習性として)どつくものですから」

     

    「犬だって腹が立ったり機嫌が悪かったりすれば噛むし、動物のコミュニケーションには甘噛みなどの『噛む』ことが含まれているんですよね。なので、当園では『ケガをするしないは遊び方次第』だと考えています

    「来園者側の遊び方次第で、安全にも危険にもなる、と?」

    「そうです。実は、うちで一番ケガが多いのはウサギなんです。だけどウサギってどこか『安全な動物』だと思い込んでませんか?」

    「たしかに、お子さんでも触れ合える安全なイメージがあるかもです」

    「だけど、安全そうに見えるウサギでも無理に抱っこしたり、エサをやっていて指を噛まれたりすることはあります。だから『うちの動物園は危ないよ、自分で責任持って遊べる人以外は入れませんよ』と事前にお知らせしているんです。その方針で今まで危険な事故は起きていないし、そのほうが来ていただいた人たちのたのしさが増えると思っています」

     

    「さっき実際に園内を回ってみましたが、あれだけ動物たちがウロウロしていると、自然と『動物との適切な距離感』を図るようになった気がします。キリンにエサをあげながら、ここまで近づくとヨダレが飛んでくるんだな、という学びがありました(笑)」

    「触れ合える動物は小さい頃から一緒に暮らしていて、人に慣れている子たちですが、それでもリスクはゼロじゃない。そうやってどんどんケガのリスクを排除して安全性を追求していくと、結果としてすべての動物を檻に閉じ込めるしかなくなるんです」

    「ある意味『自己責任』の看板を立てることで、来るお客さんを選んでいるというか。それでいうとデンジャラスゾーンに至っては入場前に誓約書を書きますよね

     

    「そうですね。デンジャラスゾーンに関しては、これでもかってくらいに警告を出してます」

    「『落ちたら死にます』という看板のインパクトはすごかったです(笑)。しかも手すりがロープ一本!」

     

    おどろおどろしい文字で書かれた「落ちたら死にます」の文字

     

    足下ではシャムワニがくつろいでいる

    「みなさん大体あの看板を見ると、ニヤッとしてから登っていかれますね(笑)。あの看板にしても、『なんで落ちたら死ぬんだよ!』と言う方はいませんし、『落ちたら死にます』って書いてあるところで、わざわざ危険な行為をする人っていないんですよ。その心理を利用して、ノースサファリでは危険な場所ほどふざけさせないような工夫をしています

    「その工夫が『手すりをロープのみにすること』なんですか?」

    「そうですね。以前、一本橋の下にカエルがうじゃうじゃいる展示を作ったのですが、その時も柵はあえてすこしグラつくように設置しました。だって頑丈に作っちゃうと、柵につかまって『イエーイ!』って身を乗り出したりして、ふざけた写真を撮りたくなっちゃうでしょう?」

    「人は安全が保証されているほど、ふざけたくなる生き物……! ちょっとしたスリルを残すことで、逆に安全を確保しているというか。でも、今の時代ってその真逆というか、『いかに安全を守るか』に神経を使ったり技術を駆使したりしていますよね」

    「そうですね。とはいえ『自己責任』を謳っているものの、まったくルールがない訳ではありません。柵をつけたり注意書きがあるところは、そのルールに従っていただきながら、思いっきりたのしんでもらえればと思ってます」

     

    デンジャラスゾーンにも、「通路に動物がいる場合は入らないでください」などの注意書きがしっかりあります!

     

    コロナの大打撃を救ったのも動物たちだった

    「ノースサファリといえば、『クラウドファンディングのリターン品がユニークだ』とTwitterで話題になっていましたよね」

    「ああ、ありがとうございます。あのツイートをきっかけに、国内外問わず多くのメディアに取り上げてもらって。おかげさまで5,733名の方々に支援いただきました

    「時期的にコロナの影響を受けたさまざまな人や施設、お店などのクラウドファンディングが乱立していた中で、このプロジェクトはかなり突出した印象でした」

    「ダメ元ではじめたプロジェクトだったので、予想以上の反応をいただいて驚きました」

    「こういった企画も星野さんが考えられているんですか?」

    「そうですね。ほかにもいろんな支援系のプロジェクトが立ち上がる中で、困ってるから助けてくださいと訴えるだけでは、広まらないと思って。いかに返礼品がおもしろいか、それ単品で見ても魅力的かは意識しました」

    「どのリターンもおもしろかったですが、やはり『ライオンの爪や牙で引っかいたダメージジーンズ(7万円)』のインパクトが強かったです」

     

    ダメージ度合いはライオンの気分次第なので、同じダメージは二度とつくれない(画像提供:ノースサファリサッポロ)

    「ああ……(笑)。あれは本当に……作るのが大変なんですよ」

    「素人ながら、そんな気はしていました」

    「最初にいくつか試作品を作ったんですが、もうベリッベリで。履けたもんじゃないんですよ。成功率が低いうえにジーンズは原価が高いので……」

    「それも含めて、あの値段だったんですね(笑)」

    「でも、ダメージジーンズはもともと商品化しようと進めてた企画だったんですよ。海外セレブたちに履いてほしくて、あの値段にしているところもあります。

    本当はトラやクロコダイルでも作りたいんですけど、トラは難しいですね……執着心が強すぎて。一晩寝床に放り入れてみたら、翌朝ショートパンツになってましたもん」

     

    小さい頃から育ててきた星野さんにかかれば、トラにも素手で餌付けできる!(※素人には到底マネできません)

    「実際、コロナの影響はどうでしたか?」

    「自粛要請を受けて、4月下旬から5月末まで約1ヶ月半営業を停止しました。ゴールデンウィークの期間だけで年間売上の4分の1を占めるので、かなりの打撃でしたね。ぶっちゃけ、5月だけで1億円の赤字です」

    「1億円!?!? それはかなりの痛手ですね……」

    「最近だと週末は8割ほど人が戻ってきてますが、遠方からのお客さんが多い平日はまだ5割程度ですね。

    実際、営業をしていてもいなくても動物たちのエサ代で月に約300万円、空調光熱費などで約250万円、人件費が約1200万円、医療費、その他雑費で約350万円の出費がかかります。『動物たちのエサ代だけでもなんとかしないと』と企画したのがクラウドファンディングだったんです」

     

    動物園にいる動物は幸せ?不幸せ?
    動物たちの本能とどう向き合うか

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    きむらいり
    きむらいり

    1990年生まれの編集者/ライター。北海道函館市出身。実家はちいさなパン屋です。動物が好きで、この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。

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