叔父の決断と、兄弟の覚悟。一族総出でいきかえった宿「瀧波」の物語

2018.12.06

叔父の決断と、兄弟の覚悟。一族総出でいきかえった宿「瀧波」の物語

山形県・赤湯温泉にある旅館「山形座 瀧波」。創業から100年を超える宿を襲ったのは、東日本大震災による経営難でした。立て直しのために発案された「いきかえりプロジェクト」によって、大きな変貌を遂げた老舗旅館。その裏側には家族の物語がありました。

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    「わぁー、なにこの絶景・・・」

     

    「義経焼き(ジンギスカン)は、おいしすぎるし」

     

    「この素敵にもほどがある温泉宿はなんなの!」

     

     

    こんにちは、ライターのきむらいりです。

    「ジモコロ取材に行くよ!」と言われて、山形県のJR赤湯駅に連れて来られました。人生初の山形。東京駅から新幹線に乗り込んで約2時間20分。車窓からのどかな田園風景を眺めているうち、思ってたよりも気軽に来られたのですが……。

     

    冒頭でご紹介した通り、予想以上に山形の魅力を浴びてしまったせいで、すでにもうメロメロです。

     

    絶景はもちろん、おいしいグルメは山形の強い武器!

    【漫画】杏耶が教える山形グルメの本当のすごさ〜置賜編〜

     

    ただ、今回ご紹介したいのは、赤湯駅からほど近くにある老舗の温泉旅館『山形座 瀧波(やまがたざ たきなみ)』です。

     

    「山形座 瀧波」があるのは、山形県南陽市にある温泉街、赤湯。

    山形といえば、さくらんぼやぶどうといった果物の産地として有名ですが、日本で唯一、県内の市町村すべてに温泉が湧出している温泉天国でもあります。

     

    瀧波の素晴らしさについては冒頭でもチラ見せしましたが、

     

    このお宿、とにかく、めちゃくちゃ、素敵なんです……!!

     

    すべての客室に源泉掛け流しの露天風呂がついていて、しかも一階のお部屋はすべて蔵王石をくり抜いた浴槽! こだわりがはんぱじゃありません。

     

    浴室に備え付けられたオーガニックのシャンプーセットも、用意されている館内着もすべて瀧波のオリジナル!

    館内のどこを見ても、細部にまでこだわりや美意識が感じられます。

     

    この床板を見ておもわず裸足でスリスリしてしまったのですが、めちゃくちゃなめらかで気持ちいい〜! 

     

    築350年の上杉藩大庄屋の曲り家を移築しているだけあり、館内全体に歴史の重厚感や趣を感じられる落ち着いた空気が流れています。一方で家具や照明などはモダンでスタイリッシュなものがセレクトされていて、それらが見事に融合しているのです。

    引き算の美学たるや……!

     

    ※「曲り家」とは、母屋と馬屋が一体となったL字型の伝統的な農家建築のこと。

    さらに驚くべきは、そのお値段。

     

    一泊二食付きでも、なんと2万円代から泊まれちゃうんです……!

    このクオリティで?

    地元食材にこだわったお料理が二回も楽しめて!?

    飲泉可能で効能豊かな温泉も堪能できて!?!?

     

    東京だったら倍以上のお値段でもおかしくないはず。

     

    山形の物価、どうなってるの〜〜〜〜????

     

    そんなハイクオリティなお宿の現場を取りまとめているのが、わたしの右に座っている須藤宏介(すとう・こうすけ)さん。瀧波の次世代を担う若きリーダーです。

     

    そして、館内のイケてる家具や備品のセレクトを手がけているのが、須藤修(すとう・おさむ)さん。普段は家具の修復やデザインの仕事をされています。

     

    そう、みなさんお気付きかもしれませんが、このお二人はご兄弟。双子の次男である宏介さんと三男で末っ子の修さん、この須藤兄弟こそが今回のキーパーソンです。

     

    創業100年を超える老舗旅館「いきかえりの宿 瀧波」は、2017年8月にフルリニューアルして、現在の姿に生まれ変わりました。しかし、そこに至るまでに「瀧波」は一度、財政破綻しています。須藤兄弟は、その立て直しを図る「いきかえりプロジェクト」における重要人物なのです。

     

    「いきかえりプロジェクト」をざっくり説明するとこんな感じ!

     

    というわけで今回は「家族で温泉宿の再生プロジェクトに立ち向かう生き様」、そしてなによりも「瀧波の素晴らしさ」をお伝えできればと思います。

     

    お宿の存続をかけた「いきかえりプロジェクト」がはじまる

    2011年、100年もの歴史をもつ老舗旅館にピンチが訪れます。東日本大震災をきっかけに観光客の足は遠のき、売り上げは低迷。2014年には、民事再生法を申請することに。

     

    そんな状況をなんとかしようと立ち上がったのが、現在の社長である叔父の南浩史さん。社長を務めていた造船会社を離れ、実家の旅館を立て直すために、山形に戻ってきたのだとか。(決断力&行動力、すごい……!)

    その後「いきかえりプロジェクト」は、新潟県の「里山十帖」を手がけた岩佐十良(いわさ・とおる)さんをクリエイティブディレクターに迎えることで、一気に加速します。

     
     
     
     
     
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    岩佐さんディレクションのもと、もともとの古民家や蔵の良さを残しつつ客室数は半分に。デザイン性の高い家具を配置するなどして、洗練された空間づくりが徹底して行われました。

     

     

    その結果、めちゃくちゃ素敵なお宿に生まれ変わった訳ですが……

     

    みなさん、この大変さ想像できますか?

     

    家業を継ぐってだけでも絶対大変なはずなのに、親・叔父・兄弟を巻き込んだ一族総出のフルリニューアルプロジェクト。しかも従来の路線から180度方向転換して、なにからなにまでこだわり抜いた空間づくりを行うって……!!

     

    実はわたしの両親、地元・北海道でパン屋を営んでいます。毎朝早起きして一生懸命パンを作っても、たかが知れている小売の利益。わたし自身、家業を手伝っていた時期もあるので、その大変さや厳しさを目の当たりにしました。

     

    そんななかでも、娘三人を一人前に育ててくれた両親には頭が上がりません。ほんと、親ってすごい。

    だからこそ、実家のパン屋を簡単に「継ぐ」という選択はできませんでした。

     

    この「いきかえりプロジェクト」を実家でやることを想像しただけで、その大変さにめまいがしそうになります。

    とはいえ、実際のところはご本人たちに聞いてみないとわかりません。さきほどご紹介した宏介さん(兄)と修さん(弟)に再びご登場いただき、直接お話を聞いてみることにします。

     

    親・叔父・兄弟、血のつながりがあるからこその葛藤

    「〜という経緯だと伺っているのですが、実際のところどうなんですか……? 葛藤とか、ありませんでした?」

     

    「いやあ〜、まあ、生々しい話はたくさんありますけど……(チラッ)。日々の業務はみんなどんどん経験を重ねてきていますが、もっと深い根っこの部分というか、そういう大変さはありますよねぇ……(ソワソワ)」

    「(なんだか落ち着かなさそうだなぁ・・・)」

     

    「修さんも、家具や備品のセレクトや施主側としてもリニューアルに関わったんですよね! 家具のセレクトには相当こだわったのでは?」

    「そうですねえ……(ボーッ)」

    「もしかして、ここだと落ち着かないですか…? それなら夜にお酒でも飲みながら話しましょう!」

     

     

    ということで、やってきたのは「マルシチ遠藤鮮魚店」。
    鮮魚の小売・卸しスペースと、それらのお魚とおいしいお酒のペアリングを提案してくれる飲食スペースが併設した、珍しいスタイルのお店です。

     

    こちらが店主で5代目の遠藤文人さん(写真左)と、それを支える遠藤壮太さん(写真右)です。

    そう、みなさんお気付きかもしれませんが、こちらのお二人もご兄弟。もう山形は「いい男兄弟」を名物にしてもいいんじゃないでしょうか。

     

    ちなみに「マルシチ遠藤鮮魚店」の内装やデザインを手がけているのも、修さんなんです。どうりでめちゃくちゃイケてるわけだ……!

     

    しかも、わたしたちがお邪魔した日は「マルシチ遠藤鮮魚店」のグランドオープン当日という、すごい偶然。

     

    各所から届いたお祝いのお花に囲まれながら、あらためて須藤兄弟にじっくりお話を聞いていきましょう。

    「瀧波」再建の裏側にあった真実とは?

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    きむらいり
    きむらいり

    1990年生まれの編集者/ライター。北海道函館市出身。実家はちいさなパン屋です。動物が好きで、この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。

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