お寿司好きなそこのあなた!こんにちは!

 

(株)バーグハンバーグバーグという会社でウェブディレクターをしている、かんちと申します。趣味はお寿司を握ることです。

 

昨年、出来るだけ自宅で過ごすことを推奨する「おうち時間」が広まっていた頃、私は悩んでいました。

「大好きなお寿司をいっぱい食べたいのに、外食できない!」

と。

 

そこで閃いたのがこれ。

 

「お寿司なんてご飯に刺し身乗っけるだけだし、誰でも簡単に握れるでしょ?」と思い、スーパーでまぐろの柵を買って包丁で切り、初めてお寿司を握ってみました。

 

それがこちらの写真です。

は?

 

自分が握りたかった寿司と全然違う!なんだこれは!?悔しい!!もっともっと上手くなりたい!!!

 

と、この日をキッカケにお寿司を自分で握ることに目覚めました。

 

YouTubeにアップされている、プロが教える寿司ネタの切り方や握り方の動画を見て学び、月に数回、多いときには週2でお寿司を握ることも。

 

我が家のエンゲル係数が一時期のビットコイン並に爆上がりした甲斐もあってか、まぁまぁな仕上がりになったのではないでしょうか。

 

家族も「美味しい美味しい」と喜んで食べてくれ、お寿司を握ることの喜びに満たされています。そして最近では、

 

とまで思うようになりました。

 

しかし寿司職人といえば、10年以上かかる長く厳しい修行が必要なイメージ。

 

脱サラしてゼロから寿司職人の修行を始めるには相当な覚悟が必要です。

 

だからといって今のようにYouTubeを見て独学で職人レベルになれるのかといえば、プロゴルファーのスイングを見ただけではプロにはなれないのと一緒で、きっと無理でしょう……。

 

魚の目利きもできないし、魚介類を素早く捌くこともできず、接客だって自信はありません。

 

じゃあどうすればいいのか!? そのヒントはいつも私が寿司の握り方の参考にしていた動画にありました。

 

 

それがこちら。東京すしアカデミーという寿司職人の養成学校が公開している動画で、この学校では寿司職人が修行で習得する内容を、学校の授業という形で学ぶことができるそうなのです。

 

東京すしアカデミー公式HP

 

寿司職人へのショートカットじゃん!めちゃくちゃ興味ある!

ということで、自分の将来の選択肢に寿司職人を加えるために、詳しいお話を聞かせてもらうことにしました!

 

素人の握り方とプロの握り方、どれくらい違う?

やって来たのは東京西新宿にある東京すしアカデミー新宿校舎。

まず始めに講師の杉田さんに、ど素人の私が握ったお寿司を見てもらいましょう。

 

「こんにちは! 最近自宅でお寿司握りにハマってまして、御校のYouTube動画も参考にさせていただいております」

「それは嬉しいですね。ありがとうございます!」

「よかったら独学の成果を見ていただきたく、もしダメなところがあればご指導頂けないでしょうか」

「分かりました。拝見しましょう」

 

講師の前で独学の寿司を握るって、めちゃくちゃ緊張する

 

私が過去にTwitterにアップした写真を杉田さんに見せる広報の方。意地悪かよ。

 

「えーっと、まずは寿司ネタを右手に取って……左手でシャリを丸く整えて、と……」

 

「シャリにくぼみをつけて、こうして、こうしてこうしてっと……」

 

「へい、おまち!」

 

デロンッ

 

「……これは、ご自身の中ではうまく握れた感じでしょうか?」

「緊張して全然うまく握れませんでした……」

 

「あと最初に手酢をつけ忘れて、手がえらいことになっています」

※手酢…酢を水で割ったもの。手にすり込むことで、ご飯粒が手につきにくくなる

「いくつか気になったところがあるので、まずは私がお手本を見せますね」

 

 

一手 シャリ玉に左手の親指でくぼみをつける
二手 右手人差し指で軽くシャリ玉を押さえて左手を軽く握る
三手 左手を開いて寿司を右手中指でひっくり返し、元の位置に戻して両サイドをしめる
四手 左手親指をネタの下に潜り込ませ、右手人差し指で上部を押さえて左手を握る
五手 180度向きを変える
六手 両サイドをしめる
七手 ネタの下に左手親指を潜り込ませ、右手人差し指で上部を押さえて左手を握る

 

違いは歴然。キレイ……

 

「お寿司の裏を見てもらうとわかるんですが、かんちさんのは縦に細長くなってますよね」

 

「確かに……」

「形の良い寿司を作るには、四手目と七手目で左手親指をネタの下に潜らせ、シャリをおさえる必要があります」

 

 

「これがうまく出来ていないと、握ったときにシャリが押し出されて細長くなってしまいます」

 

「また力加減も重要です。実はお寿司を握る際、力はほとんど要りません。美味しいお寿司は、口の中でシャリがふわりとほどけます。そういったお寿司を握るために、一手目でシャリに空気穴を作るんですね」

「それは欠かさずやってます!が、口の中でほどける、っていう感覚がよくわからずにやっていました……」

「握る際に力を入れすぎるとシャリが圧縮されてしまい、せっかく作った空気穴が潰れておにぎりのような固い塊になってしまいます。私が握った寿司の裏側を見てもらうとわかると思うのですが、」

 

「このように最初に作った空気穴のあとが縦にうっすら線として残ります。力加減が強すぎるとこの空気穴が無くなってしまうんです。かんちさんは握るときにもう少し力を抜いたほうがよさそうですね」

「確かにシャリに手形がつくくらい握ってましたね……。動画で見て頭では分かってるつもりなんですが、握り込むときについついギュッとしてしまうので、もっと練習が必要だ……」

 

その後もたまごや軍艦の握り方を教わるかんち

 

美しさが全然違う

 

「うぐぐ……まぁ、見た目は確かに悪いかもしれません。でも材料が全く同じなので味の違いは無いはずです! 自分の握った寿司と、先生が握った寿司を食べ比べていいでしょうか?」

「はい、どうぞ!」

「まずは自分で握ったやつから……」

 

うんうん、いつもどおりの味だ。普通においしいんだけど?

続いて先生が握ったやつも食べてみるかな……

 

!!!

 

「確かに違う! 口の中でシャリがほどけるという感覚、いま完全に分かりました! ほどけたシャリがネタと渾然一体となって……これが寿司だ! 今まで自分が握ってたのは、刺身を乗せたおにぎりだったんじゃないかってくらい違う」

「違いが分かってもらえてよかったです」

「実は、独学でもちゃんと寿司が握れる!自分結構すごいのでは!?と思ってたのですが、正解が分からなかっただけでしたね……。こうして目の前でわかりやすく教えてもらえるのはかなり助かります!」

 

 

ここからは校長の後藤さんにも加わってもらい、東京すしアカデミーについて詳しくお話を伺います。

寿司職人養成学校を開校した理由とは?

「はじめまして、校長の後藤です」

「はじめまして! 御校の動画でいつもお世話になっております」

「ありがとうございます(笑)あの動画をきっかけに当校を知っていただいた方も少なくないようで、かんちさんも参考にしていただいているとのことで嬉しいです」

「最近、寿司職人の道もアリかな……と考えはじめて、この寿司職人養成学校にも興味が出てきまして。この学校ができたキッカケって何かあるのでしょうか?」

「はい。創立者の福江誠は、もともとは経営コンサルタントで、寿司屋を中心に経営指導をしていました。そんな中でわかったのは、町のお寿司屋さんが次々と経営不振に陥っていて、大きな原因の一つに人材不足があるということ。業界を活性化するには人材育成が急務だ!と考えたそうです」

「どこの世界も人材不足ですね。特に寿司職人は技術の鍛錬が必要で、難しそうな職種。気軽に“なりたい”と思う人は少ないのかも」

「そうですね。寿司職人の世界は『飯炊き3年握り8年』とも言われ、修行の期間が長く厳しいものとされていました。そういった世界に若い人がどんどん入ってくるかといえば、なかなか難しいと思います」

「『飯炊き3年』は、さすがに昔の話ですよね? 今そんなことしてたら、そりゃあ人材不足になるのが当たり前というか」

「私も講師になる前は20年ほど寿司職人をしていましたが、やはり最初の1年目は寿司の握り方なんて教えてもらえませんでしたね」

「やっぱり厳しい世界なんだなぁ。そもそも寿司職人はお寿司を握るプロであって、教えるプロではないですよね。昔は『仕事は教わるのではなく、見て盗むもの』なんて言われてたそうですし」

「そうですね。だからこそ、学校という形で技術を効率よく教える環境を用意すれば、人材を業界に送り込めると考えてこの学校を作ったそうです。それが今から20年前ですね。ちなみに私もここの卒業生です

「成り上がりストーリー!」

 

どんな人が入学するの?

「この学校に入学する方は、全員寿司職人を目指しているんでしょうか?」

 

「実際、寿司職人として開業を目指したり、寿司業界に就職を目指す方がほとんどですが、それ以外にも実は皆さんいろんな理由で入ってきています」

「例えばどんな……?」

「息子が寿司を食べ過ぎるから、自分で握れるようになって食費を浮かせたいとか」

「よくわかる」

人生の最後に寿司を握れるようになりたいという79歳の方とか」

「すごい!」

寿司を握って人気者になりたいというインフルエンサーの方や、海外で着物の着付けや語学といった日本文化を教える仕事をしている方など本当に様々です」

「日本人だけでなく外国人にもお寿司好きは多いですし、『お寿司を握れる』スキルは目立てますね」

「話のネタとしてワインや日本酒の知識を身につける方は多いですが、『お寿司が握れる』という人はまだ少ないですからね。仲間同士のホームパーティや留学先等で披露したら、男女問わずモテると思います」

「読者のみなさん、モテたいなら寿司ですよ。ウンチク語るんじゃなく、自分で握るんです」

「ちなみに入学する生徒は男女比7:3で、年齢層は10代から先ほど例に出した79歳の方まで様々ですが、多いのは30~40代ですね。外国語のクラスもあるので、コロナ禍前は海外から本場の寿司の技術を学びにくる料理人の方も沢山いらっしゃいました」

 

調理場のホワイトボードには寿司の握り方が日本語と英語で書かれている

 

「入学してくる日本の方も、6~7割は機会があれば海外に行きたいと答えています」

「校舎のエントランスに卒業生が働いている場所が印された世界地図がありましたね」

 

赤い丸は卒業生が活躍してる国

 

「本校の卒業生は現在50カ国以上で活躍されています。今やお寿司は世界に通用する料理ですから海外の需要も高く、寿司職人は世界中で食べていける職業だと思います。実際、本校を修了すると就労ビザが下りやすいですからね」

「スシポリスに怒られない本物の寿司を握れる職人か……。確かに海外では『寿司を握れる』って、他のどんな技術より職に困らない気がするな。その基本スキルを最短2ヶ月で学べると考えるとすごい」

「寿司の技術は奥は深く、極め出したら終わりはありませんが、当校では未経験者でも最短2ヶ月現場で3年修行した程度の技術を習得できるカリキュラムを組んでいます」

「ゼロから修行して途中で挫折する可能性を考えると、最初の3年を短期間で学べるというのは効率がいいですね」

「ただポイントポイントに技術のテストがありますので、卒業するにはその試練を全て乗り越える必要があります。絶妙な合格ラインを設けていますので、適度なプレッシャーが生徒の皆さんを追い込みますが、そのテストによってスピードも技術も向上していきますね」

「授業を受けて、はい終わり、みたいな楽な感じではないんですね」

「講師は全員優しいですし、生徒同士で仲間も沢山できますが、卒業生に話を聞くと『途中何度も心が折れかけて、本当に卒業できるのかなと不安になった』と言う方は多いです。でも皆さん、その苦労も笑い話として清々しい顔で卒業していきますので、ご安心ください(笑)」

 

「寿司屋での修行」と「学校で学ぶこと」の違い

「『寿司屋での修行』に対して、『学校で学ぶこと』は時間的メリットがかなり大きいのは分かりました。ただ学校で学ぶ上で気をつけるべきことはあるのでしょうか?」

 

短期間で覚えたことは、継続しないと忘れてしまうというのはありますね。修行で何年もかけて寿司の技術を習得すれば、それが体に染み付いて忘れることはありません。しかし学校では寿司のノウハウを短期間でギュッと覚えさせますので、卒業後に何もしなければ少しずつ忘れてしまうと思います」

「頻繁に車を運転する人と、ペーパードライバーではスタートが一緒でも運転技術に大きな差が出ますもんね。納得。学べるコースや授業料についても知りたいのですが」

「大きく3つのコースがあり、『2ヶ月の集中コース』『週1回の週末コース』が入学金・授業料合わせて税込82万5千円です」

「ワオ!まぁ、でも3年分の修行スキルが習得できると考えれば納得の金額かも」

「そして、中級~高級寿司店で即戦力レベルの技術が学べる『6ヶ月の寿司職人養成コース』が入学金・授業料合わせて税込148万5千円です」

「ワオワオ!……いや、でも専門学校の入学金・授業料と比較したらそんなもんですよね」

「決して安くない投資金額にはなりますが、授業はただ単に寿司の握り方を教えるだけではありません。多種多様な魚の捌き方からシャリの扱い方、寿司以外の和食料理の調理技術やカウンターでの立ち居振る舞いまで、独学では学べないようなことを懇切丁寧に教えますので、授業料に見合った技術が学べると自負しています」

 

6ヶ月の寿司職人養成コースで習得できる料理の一例。包丁を触ったこともないような未経験者でも、これが作れるようになるんだとか。すごい!

 

「この学校に来る方はみなさん志が高く、人生を思う存分楽しみたいといったモチベーション高い方ばかりで、途中で辞める人はほとんどいないですね」

「逆に考えると、お店での修行ならお給料をもらいながら学ぶことができます。どちらが良い悪いではなく、選択肢があるって大事なことだと思います」

「私はメンタルが激弱い効率厨なので、厳しい世界で長い期間修行するよりは、優しい講師に効率よく教えてもらうのが向いてると思いました。将来、本気で寿司職人を目指した暁にはぜひ入学させてください」

「お待ちしております(笑)」

「女性は体温が高いから寿司職人になれない」って本当?

「ところで、どこ情報か忘れましたが『女性は体温が高いから、寿司ネタが温まって鮮度が落ちて美味しい寿司が握れない』という話を聞いたことがあります。あれってどう思いますか?」

 

「それは無いですね。体温が高い男性だっていますし、体温が低い女性だっています。ネタが温まるというのは握るスピードが遅いという技術の問題ですし、寿司職人に性別は全く関係ないです」

「やっぱり!」

「ただ寿司業界は伝統ある店も多く、昔から男性が調理場に立ってきたという風習から、女性を入れたがらないというのはあるかもしれません。おそらく女性の体温が~という説も、そういった保守的な考えから生まれたのではないでしょうか」

 

学校で技術を習得し、寿司職人として活躍する女性は沢山いるそう

 

「最近では女性の板前さんも徐々に増えてはきていますが、海外に目を向ければ、シェフの数が男女同数で、女性がシェフをやることがが当たり前の国もたくさんあります。本校に入学する女性の中には、日本の狭い業界を分け入っていくよりは、女性が料理人として働く地ならしが出来ている国で働くことを希望する方もいらっしゃいますね」

「なるほど。日本に見切りをつけて海外で働くというのも一つの考えですが、日本も今以上に女性の板前さんが活躍出来る場が増えて、板前を希望する方の選択肢が増えるといいなと思いました!」

 

ハンバーグ寿司について

「最後にこれだけ聞いて帰りたいのですが、職人歴20年の杉田さんはハンバーグ寿司についてどう思われますか?」

「それ聞きます?」

 

「ぜひ」

「う~ん、個人的には『寿司ではない』と思いますが、そういうのがあっていいかなとも思います。私が長年やってきた江戸前寿司というカテゴリでいえば、大きく外れたものになりますが、魚介が苦手な人やお子様が、ハンバーグ寿司キッカケでお寿司が大好きになるなら大歓迎ですよ」

「ハンバーグ寿司のことめちゃくちゃ貶したらどうしよう……と思って質問したので、安心しました!!よかった~!お寿司は自由!」

「ちなみにかんちさん、さっきお寿司食べる時、醤油をシャリにつけてましたよね」

 

「あれだとシャリが醤油をたっぷり吸ってしまい、素材の味がかき消されてしまうので、ネタに醤油をちょんとつけて食べたほうがいいですよ」

「そこは厳しいんだ」

 

(おわり)