
全国各地にある、センスが光る独立書店。土地に根付いた本屋さんは、きっと街の「いい楽しみ方」を知っているはず。そこで、全国の本屋さんに「この土地で読むのにぴったりの本」と「買った本を携えて訪れるのにぴったりの場所」を教えてもらった。

今回お話を伺ったのは、兵庫県神戸市にある「本の栞」の田邉栞さん。
「本の栞」は、新刊や、リトルプレス(自主制作本)の他、古書やレコード、カセットテープなどを、形式やジャンル問わず広く取り扱っている。
関西を楽しむライフスタイルマガジン「SAVVVY」での連載「栞の栞」では、田邉さんの日記を通じて、その興味関心の広さを窺い知ることができる。
今回は、そんな本の栞の田邉さんに、神戸で読むのにぴったりの本と、本を携えて出かけるのにぴったりのスポットを教えてもらった。
生活、文化、自然が入り混じる神戸市元町エリア

本の栞があるのは、神戸市のなかでも元町と呼ばれるエリア。人通りが多い三宮と、歴史が古いお店が軒を連ねる西側エリアの、ちょうど中間にある元町。昔ながらの個人店も、流行に乗った新しいお店も混ぜこぜになっている、おもしろい地域だ。
「街の中心に映画館があったり、新刊書店や古本屋さんがあったり。文化的な楽しみがありつつ、海や山が近くにあるところも魅力ですね。百貨店の大丸も、出口の表記が『山側』『海側』なんです。本当に、街の延長線上に海と山がある。私もよく歩いて海を見に行きます。
それと、このエリアの住民の視点で言うと、ちょっと西側の西元町のあたりは個人商店が豊富なんです。お肉屋さんでお肉を買って、魚屋さんで魚を買って、『スイミー牛乳店』ではヨーグルトを買う。今って便利だから、大型スーパーですべて事足りてしまうんですけど、そんなふうにお店をハシゴして日々の買い物を楽しんでいます」
本の栞がすすめる、神戸市のおすすめスポット
「元町映画館」

元町には、約1.2kmにも及ぶ、長いアーケードの商店街がある。その商店街のなかにあるワンスクリーンのミニシアターが「元町映画館」だ。
本の栞からは徒歩30秒。映画がはじまるまでの待ち時間に、本を見に来てくれるお客さんも多いのだとか。
「インディペンデントな作品を中心に上映していて、いつもおもしろい企画が組まれています。私、旅先で映画を見るのがけっこう好きなんですよね。時間の制約は生まれるけれど、旅の合間に映画館で過ごす時間は豊かだなと思っています」
漫画や詩集が原作の映画を上映する際は、田邉さんがそれに合わせた選書コーナーを手がけることも。
元町映画館
神戸市中央区元町通4丁目1-12
https://www.motoei.com/
「ポルトパニーノ」

2015年にオープンした、イタリアのホットサンド・パニーノの専門店「ポルトパニーノ」。イタリア・フィレンツェで、マンマから料理を学んだ店主の地本さんがおいしい料理とコーヒーを提供してくれる。パニーノの種類は約20種類。トッピングを足したり、チーズやパンを変更して自分好みにアレンジすることもできる。
「私は、『気まぐれ』という名前の日替わりメニューが好きです。店内でも食べられるんですが、テイクアウトもできるので、ちょっと歩いて神戸港に面した公園『メリケンパーク』に行ったり、街を散歩しながら食べるのもおすすめです」
ポルトパニーノ
兵庫県神戸市中央区元町通5-8-15
https://www.instagram.com/portopanino/?locale=ja_JP
「プロローグ」

本の栞の周辺は、昔ながらの喫茶店から新しくできたカフェまで、ちょっと一息つける飲食店が多いという。
「『ヒュッテ』という、山の看板が目印のレストラン喫茶店や、昔ながらの純喫茶を若い店主が継いだ『ポエム』など。時間がゆったりと流れているお店がたくさんあって、とてもいいんですよね」
田邉さんはその時の気分によってお店を使い分けているそうだが、映画をみたあとや、本を片手によく入るのは喫茶「プロローグ」。落ち着くレトロな店内で、ゆっくり読書や考え事をしてみては。田邉さんが好きなメニューは、ホットレモン。

プロローグ
兵庫県神戸市中央区栄町通3-6-14
神戸市で読むのにおすすめの本
『神戸のまちぎょうざ』

神戸の豊かな食文化の一つに餃子がある(と思っている)。そんな個性豊かな餃子たちを、餃子のお味はもちろんのこと、店構えもお店の人もその位置する場所も含めて、神戸のまち餃子と勝手に呼びたい。ランキングをつけるわけでなく、すべての神戸のまち餃子に対する解像度をあげたい。
そんな思いから「神戸餃子クラブ」が刊行した神戸の餃子愛あふれるZINEです。
「神戸市には、日本三大中華街のひとつ『南京町』があるんですけど、餃子がおいしいお店も本当に多いんですよね。なかには、神戸ならではの味噌ダレをつけて食べるものも。そんな神戸餃子への愛が溢れてZINEをつくってしまったのが、神戸餃子クラブとして活動する川瀬さんと枝川さん。
内容は、神戸餃子について綴ったエッセイ集。そして、この帯、実は開くと神戸市の餃子店のマップになっているので、エッセイとマップを見ながら、その日のごはんを食べるお店を決めるのも楽しいと思います」
『神戸のまちぎょうざ』
神戸餃子クラブ/自主制作
https://honnosiori.buyshop.jp/items/79519077
『神戸、書いてどうなるのか』

神戸。海と山に挟まれたその街には、食堂、酒場、喫茶店、レコード店、書店、映画館、商店街、銭湯など人々に愛される場所があり、その街についての素晴らしい本や歌があり、著者の大切な思い出がある。108のエッセイで語る、ひとつの街の暮らしと記憶。「私が愛した神戸の多くのものは姿を消したけれど、神戸が面白くなくなったとは言わない」。写真・イラストマップも収録。(版元HPより)
「ロック漫筆家として活動する安田謙一さんが、地元神戸について書いたエッセイが108編収録されています。神戸ガイドとしても楽しめるんですが、この本のおもしろいところは、閉業してしまったお店もたくさん出てくるところだと思っていて。『海文堂書店』という、2013年に閉店した神戸では伝説的な書店や、高架下にあった台湾料理店『丸玉食堂』。
街って、常に変わっていて、古いお店がなくなり、新しいお店が出来る。なくなってしまうと悲しいけれど、けっこうすぐに記憶が塗り変わってしまうなという実感があって。
この本には、今はもうない場所の空気が記録されている。以前、確かに神戸のどこかに存在した光景に思いを馳せながら街を歩くのも、また違った趣があっていいと思います」
『神戸、書いてどうなるのか』
安田謙一 著/筑摩書房
本の栞で本を買い、ミニシアターで映画を見たり、パニーノを食べたり、喫茶店でもの思いにふけったり。夜は中華街で神戸餃子を頬張る。神戸で、そんな心もお腹も満たされる休日を過ごしてみてはいかがだろうか。

【書店情報】

本の栞
神戸市中央区元町通4丁目6-26 元村ビル1F北
https://honnosiori.buyshop.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/honnosiori/
イラスト:ayaverb





















































