どうも、地方を旅する編集者、藤本智士です。

唐突ですが、「たぬきケーキ」ってご存知ですか?

これです、これ。

本当に俺たちを食べる気か?! と、集団で圧をかけてくる、この子たち。

そもそもたぬきケーキとは、生クリームがまだ高価だった昭和40〜50年代に、保存がきくバタークリームを使ったケーキとして全国の洋菓子店に一気に広まったもの。

スポンジケーキを土台に、バタークリームで顔を形作り、チョコレートで全体をコーティング。そこにクリームを使って目を描いたものが一般的です。ショーケースを前に、当時の子どもたちが「買って!買って!」とせがむ姿が浮かんできますよね。

さて、そんなたぬきケーキ界隈がいまにわかに盛り上がっているんです。というのも、最近、カプセルトイでこんなものを見つけたんですね。

 
 
 
 
 
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なんと、たぬきケーキ!

いまのカプセルトイって「ニッチだけど強えぇファンコミュニティ獲得してるモノ図鑑」みたいになってるじゃないですか。ガチャデビューするだけならまだしも、すでに第三弾となれば、間違いない人気コンテンツ。

地方旅が多いぼくも、一時は消えかけていたたぬきケーキを最近また見かけるようになったなあと実感していました。

 

そこで、このカプセルトイ監修者でもある、たぬきケーキ研究家の松本よしふみさんにインタビューすることに。たぬきケーキ界隈がいまどうなってるのか? そもそもたぬきケーキの魅力とは?などをぜひ聞いてみたい!

じつはぼく、松本さんと知り合ったのは15年くらい前なんです。旧知の仲ということで、普段はメディアで顔出しNGな松本さんですが、マスクありならと撮影させてもらえることに。

やってきたのは、たぬきケーキの聖地、岩手県の岩泉町にある菓子店「志たあめや」。2022年に創業190周年を迎えたというから、老舗が過ぎる!

てか松本さん、なんでギャルピースなんだ。

話を聞いた人:松本よしふみ

自称「たぬきケーキ研究家」。幼少期に近所のケーキ屋でたぬきケーキと出会い、その姿と甘さの虜になる。大学時代にほかの和洋菓子店にも生息していることを知ると調査範囲を全国に広げ、以来四半世紀以上に渡って調査・捕獲・研究・摂食を続けている。

 

志たあめやで購入したたぬきケーキを持ち込めるという、近くのカフェで松本さんにお話を伺います。

 

たぬきケーキ観察は、まず「地層」から

藤本 たぬきケーキを食べるときのお作法ってあるんですか?

松本 いやあ、何もないですよ。

藤本 と言いつつ、何か出てきましたけど。

松本 これでケーキを切って、中の構造を見るんです。

藤本 作法どころか、オリジナルの道具までありますやん。

松本 お店のひとの解釈によって、たぬきの顔や形などの外観が違いますし、中に何をどう使っているかも違います。中の構造をしっかり確認したいので、これを。

藤本 たぬきケーキの条件みたいなものはあるんですか?

松本 基本的には、お店がたぬきとして売っていれば、たぬきケーキです。

藤本 お店のひとがたぬきって言い張れば、なんでもたぬきケーキ。

松本 たとえば「だるま種」と呼んでいる、信楽焼のたぬきみたいな形のもの。ホールケーキから切り出したような、三角形のものロールケーキの上にたぬきの顔を絞っているもの。いろんなタイプがあります。

左上から時計回りに、ロールケーキの上にたぬきタイプ、三角形タイプ、だるま種タイプ

藤本 僕がケーキ屋で見かけるのは、だるま種が多い印象です。

松本 一番多いのはその種類だと思います。

藤本 そのたぬきの中の構造を見るべく、その竹ベラを使うんですね。

松本 はい。お店でケーキを買ったら、近くの公園の東屋を探したり、ベンチを探したり、車の荷台に腰かけたりして食べるんです。こういうのを敷いて。

藤本 敷くものまである。

松本 次に写真を撮りながら、カップなり、ホイルなりを脱がしていきます。

藤本 お召し物で隠れているところがあらわになった姿を愛でるんですね。

松本 この脱げた姿がいいんです。このチョコだれがエロくて最高です。

志たあめやさんは土台部分にチョコクランチをつけていますね、と松本さん

松本 この状態からわかる情報がいろいろあって、たとえば耳。これはアーモンドスライスを刺した上からチョコをつけているんですが、チョコをつけてからアーモンドスライスを刺す場合もあるんです。

藤本 チョコってかけるんじゃなくて、つける?

松本 お店によります。志たあめやさんはドブンとつけています。

チョコにつける前のたぬき

藤本 そういうのも見たらだいたいわかるんですね。

松本 はい。ある程度愛でたら、木のヘラを突き立てるわけですが、場合によってはチョコが固すぎてメッキメキになっちゃうこともあります。今回はどうでしょう。いいですか。いきますよ。

松本 こんな感じで割ります。これで中がわかるんです。

藤本 うわー、すごい! たぬきケーキの地層が! こんなにきれいに割れるとは思わなかった。

松本 形を保てるのはバタークリームゆえですね。生クリームなどの柔らかいものでつくっている店もあります。ここで中身に、何がどう詰まっているかを見ます。

藤本 ほかにも何か入れているお店もあるってことですか?

松本 ジャムやチョコチップ、栗がまるごと1個入っているお店もあります。

藤本 じゃあ次はぼくが。かわいくて仕方ないこいつを、脳天からぶった切るのか。

なぜ「りす」のケーキ……?というのは2ページ目にて!

松本 あくまでもケーキです。生物じゃなくてケーキ。どう食べようが残酷も何もないですからね。

くそっ、そんな顔でみてくんなよ

そうか、このハートがいけないんだ。このハートさえ取ってしまえば

よし、取ったぞ。これで、かわいいと愛でる気持ちを取りのぞいたも同然。もうなんてことはない。こいつはただのケーキだ!

いくぞ!

ごめん!!!!

グサッ!

お前の地層を見せてくれ!

おらあぁああ!!!

松本 ちっちゃいときに、こうやって遊びながら食べていたんです。幼心に若干の罪悪感を抱きながら。

藤本 ぼくの葛藤をよそに、なんて冷静なんだ。けど、子どもゆえの残酷さみたいなものが、たぬきケーキにはあるかもですね。

松本 そうなんです。よく親に食べ物で遊ぶなって怒られるじゃないですか。食べ物だからこそ、別に問題ないじゃないかって思いながら、なんだろうこの罪悪感は……って。

そういう気持ちを子どもに植え付けるために、たぬきケーキはあるのかもしれません。

藤本 なんだか真髄を得たような気がする。

松本 次に、特に意味はないですけど、頭だけちょっとかじります。

藤本 こうも食べにくい食べ物って、なかなかないですね。

松本 たぬきケーキは、美味しさや食べやすさよりも、まずかわいさですから。
チョコのコーティングのせいで、うまく割れないし。固いし、食べようとするとこっちを見てくるし。どうかしています。

藤本 しかも一度に何個も食べられない。1店舗に何種類かあったりするじゃないですか。松本さんは何個食べるんですか?

松本 いまは1日に3個が限界です。先週3連休を取って福井・滋賀・三重・岐阜に行きましたが、1日3か所で9か所めぐりました。もう年なので、こればっかり食べていたらいろんな意味でダメなんですけどね。

昔は1日5個でした。1日でいろんな場所をめぐるため、時間の制約もあって、それが最大。

藤本 すご! 1日に最大5か所回るってことでしょ。

松本 そうです。ケーキ屋さんをタイムアタックで。しかも夜は割と早く閉まるので、日中の日が出ているうちに回っていました。あとは、3個以上食べると味がわからなくなるんですよね。なので抑えるようになったというのもあります。

藤本 たしかに食べ過ぎてもわからなくなりそう。

 

「マップに載せたからには」の使命感で、全国めぐりがスタート

藤本 松本さんが、たぬきケーキめぐりをするようになったきっかけは?

松本 わたしは青森県七戸町の生まれなんですけど、家の近所のケーキ屋さんが、たぬきケーキをつくっていたんです。ちっちゃいときからそれが好きで、そのお店のオリジナル商品だとずっと思っていたんですけど、青森市の大学に入ってこの話をしたら「うちの近所でもつくってる」ってやつがいて。そこで2個目のたぬきに出会ったんです。

それが、十和田市にいまもある大竹菓子舗さんです。そこはバタークリームじゃなくて生クリームでつくられていて、違う種類のたぬきがあると知りました。ならば、ほかにももっといるんじゃないかと探し始めたのがきっかけですね。

藤本 そこからどういう行動に。

松本 当時はまだ学生で、そこまでネットも発達していなかったので、まずは近場のケーキ屋さんを回りました。

いまはもうやめちゃったんですが、栄作堂ってお店で偶然たぬきを見つけて、食べて。次に東京へ行った折に、神楽坂のプチ・アポロンと、下赤塚のフランス製菓のたぬきを。

藤本 それも偶然見つけたんですか?

松本 東京のたぬきは検索したら出てきたんです。東京に行ったついでに食べるので、年に1、2回のことだったんですけど、2007年にGoogleマップのマイマップ機能がリリースされて、大きく変わりました。

藤本 Googleマップ上に自分の地図をつくって、保存や共有ができる機能ですね。

松本 その機能で、これまで食べたりネットで見つけたりしたたぬきを全部マッピングしていこうと思ったんです。

まずは2ちゃんねるというネットの掲示板に、たぬきケーキのスレッドがあったので、みなさんの情報をまとめていいかって書き込みをして、そこに載っていたたぬきを全部マイマップに載せていきました。そしたら、そうやってまとめた以上はわたしが実際に回らなきゃダメかもって使命感が湧いて(笑)。

藤本 自分ではまだ行ってないけど、マップに載せたからには。

松本 行かなきゃならない。

藤本 その真面目さもあって、スレッドから拾った情報を自分の足で確かめていくことになったんですね。

松本 そうです。同じタイミングでブログも始めたので、行ったお店をブログにも載せていきました。

さらに2009年あたりでTwitterの利用者がバンと増えたときに、東京で食べたたぬきをTwitterにアップしたら、文筆家の木村衣有子さんからコンタクトがあって初めて取材を受けたんです。『のんべえ春秋』の第2号(2013年発行)に掲載されて、そんな感じで徐々に広まっていきました。

藤本 木村衣有子さんのような著名な文筆家さんとか、ある種の説得力を持つひとが松本さんのアクションに目を向けて、フックアップしてもらったんですね。ご自身のミニコミ『たぬきケーキめぐり』をつくり始めたのは?

松本 2012年に盛岡の「Cyg art gallery」でZINEのイベントが始まったんです。それを見に行って、ZINEやミニコミの世界が面白いなと思って。

わたしがつくるとしたら、内容はたぬきケーキだろうと思ったので、ZINEをどうつくったらいいのかまったくわからないまま、Macのフリーソフトを使って第1号をつくりました。

藤本 2013年発行の、青森・岩手編ですね。

松本 とりあえず本ができればいいやと思って何も考えずにつくったこれを、Cygさんの2回目のZINEイベントに出したら、盛岡の本好き界隈でとても盛り上がって。取材も結構してもらいました。

藤本 反響が大きかったんですね。

松本 そのイベントのなかでたぶん一番売れました。めちゃくちゃうれしかったです。

藤本 すごい。最初から反響があるって、めちゃくちゃうれしいですよね。それで、2号目を翌年の2014年に。南は静岡まで。だいぶ範囲が広がりましたね。

松本 青森と岩手は全部回ったと思っていたのに、調べてみたらまだあることがわかって。あとから情報が出てくることもあるから、地域で区切ったらダメだと思いました。

藤本 インターネットの時代感がありますね。インターネットの広がり、インターネットのポジティブな知の集合のような。

松本 ネットがなきゃここまでやっていないので、ネットとスマホ様々です。

藤本 逆に言うと、ネットで完結できそうですけど。

松本 そう。基本的にネットに載せている情報とほぼ変わらないんです。だけど一方で、本にしなかったらここまで広がらなかったとも思いますね。本があるからお店のひとにも本を渡せますし。ネットだけだと、いまみたいな盛り上がりになってないかもしれないです。

藤本 新しいたぬきケーキのお店に行ったときの松本さんの所作も知りたいです。

松本 全国を回ってこういう本をつくっていますって、本を渡して。まったく興味を持ってくれないひともいるので、ただ買って帰って食べて美味しいな、で終わることもあります。

興味を持ってくれたら、お店の方が一時間しゃべりっぱなしってことがよくあります。

藤本 何をしゃべるんですか?

松本 うちを見つけてくれてありがたい、という感じのことを話されますね。地域のお菓子屋さんって、いまでこそ昭和レトロの流れもあってか注目されていますけど、基本的には地元メディアがたまに取り上げるか、もしくは宣伝してあげますからお金くださいっていうパターンもあったりするので。

そんななか、自主的に訪ねていって、興味を持って話を聞いてくれるひとが来たって、テンションが上がってくれているのを感じます。

藤本 そう思うと、たぬきケーキをつくっているお店のひとに共通しているものがある気がします。極端に言うと、たぬきケーキなんてなくてもいいのにつくっているひとたちには何かがありそう。いまのように人気が再燃する前はあんまり売れてなかったわけですよね。

松本 売れてなかったですね。正直、惰性でつくっているお店も結構あります。いまいる志たあめやさんだって、わたしが行った2012年は、たぬきを辞める寸前でした。1列しか並ばないケーキのトレイにたぬきが4個だけ並んでいるような存在だったんです。

藤本 それが、いまや看板メニューにまでなって。さっき、たぬきケーキを7つ買って帰ったおじさんの姿を見たときは衝撃でした。

松本 ケーキ屋さんって意外におじさんも来るんですよ。トラックの運ちゃんが乗りつけてケーキを買って帰ることもあります。ケーキ屋さんとしゃべると、こういうものを子ども向けの価格帯で、ちゃんと残していこうって使命感を持って続けているところもあります。

藤本 子ども向けであることがベースだから、「商品を守りたい」って感覚が、みなさんに共通していることなのかな。

松本 逆に言うと、子どもが買える値段をキープしなきゃいけないから、材質は落とさざるを得ないこともあるんです。バタークリームのなかでも安価なものを使って、味よりも価格とかわいさを優先したお店も多かった。

さすがに最近は原価も上がっていますし、子どもじゃなく大人がなつかしんで買っているので、値段も平均で400円を超えますし、500円、600円で売られているものもある。もはや子どものものではない気がしますけどね。

藤本 とは言え、それは生き残る術でもある。

松本 そうですね。お店のひとから単価の相談を受けたときは、いまはたぬきケーキってだけで買いに来るひとがいるので、上げていいと思いますよって言っています。

 

あえてマップに載せていないお店もある

藤本 ぼくは旅が多い仕事をしているので、各地で松本さんのたぬきケーキマップを見て、載っているお店にわざわざ行っちゃうんです。

逆に旅をしていてふらっと入ったケーキ屋さんに、たまたまたぬきケーキがあったときは、マップに載っているかどうかをすぐに調べる。いつか松本さんが知らないお店を見つけて教えたいって欲望があるから。

松本 わざとマップに載せていないお店も結構ありますよ。載せてほしくないってお店もあるので。

藤本 じゃあ、逆にいうと、載せてるお店はちゃんと許可を取っている?

松本 お店に行ったときに聞いたり、お店がHPやSNSをやっていれば載せます。お店としての発信が一切ないところは、聞いてみたらダメなところが何か所かあって。そういうところは載せていないです。

藤本 丁寧な仕事。松本さんが自分のマイマップをシェアしてくれている感覚なので、許可云々じゃないものと思っていました。

松本 一応、気は使っています。あと、お店はあるけど、たぬきはもうつくっていないケースもあるので、そういうところは消していきます。ただ最近は編集が追いついていないので、直さなきゃならないところもあるんです。

藤本 マップに載っていないお店を見つけたと思っても、あえて載っていない場合もある。ということは、松本さんはもうコンプリートしてるんじゃないですか?

松本 全然できてないです。沖縄本島と石垣島に1個ずつあるんですけど、そのために沖縄に行かなきゃって思うと、なかなか。

平日は普段会社員をしているので、東京発だと1日で回ることになって、石垣島に滞在できるのは3時間ぐらい。それはもったいなすぎる。でも、やらなきゃとは思っています。先週もやっと初めて福井に行って、3軒回りました。

藤本 じゃあいまはネットの情報を先に調べて、マップに載せているんですか?

松本 すでに出されている情報であれば載せています。それから実際に行って、食べてからブログなどを書いています。

松本さんのブログより https://tanukicake.gzf.me/2000/

藤本 じゃあいまも、たぬきケーキ情報を求めている。

松本 一応フォームは設けていますけど、だいたいもう知っている情報です。

藤本 やっぱり、ほぼコンプリートしてる。実際に足を運んでいるかは別として、いまもたぬきケーキをつくっているお店をどれくらい把握できていると思いますか?

松本 実際にいまもやっているかどうか、わからないところもありますけど、老舗はだいたい把握しています。

ただ、新規のお店も出てくるので。情報をいただいて調べたら、1か月ぐらい前につくり始めたっていうような、いまの味でたぬきケーキをつくるお店も増えていますね。

藤本 10年前くらいは絶滅危惧種って言われていたのに、新しく始めるお店があるのがすごい。

松本 そう言われていましたけど、絶滅するわけではないと思います。

藤本 そこからここまで盛り上がるのはすごいですよ。

藤本 いま、たぬきケーキって何種類あるんですか? 松本さんが食べてきた種類だけでも。

松本 わたしが食べてきた種類だと220種くらいで、現存は350~400種ぐらいだと思います。

藤本 そんなにあるんですね! そのなかで、つくりがまったく一緒っていうのもありましたか?

松本 ないですね。一緒だって一瞬思ったものが2か所だけあったんですが、それは、そのお店が別のお店に卸していただけでした。

藤本 ちゃんと気づいたのすごい。

松本 全部、配合も違うので、本当に美味しいものもあるし、ぶっちゃけ美味しくないのもあります。けれどそれすらも、周辺の子どもたちはこれで育ったんだなって思うと感慨深いです。どこのお店の店主も、うちのが一番かわいいって言うので、それも込みでいいなって思います。

藤本 そこまでやることで見えてきた、たぬきケーキの良さってありますか?

松本 お店ごとに顔・姿・形が違うことは先ほどお話ししましたが、お店の中でも指加減で表情が変わるんです。ちょっとのずれが、失敗じゃなくて個性になるんですよね。

そういったところと、なまじ動物の形をしているので感情移入しやすいところが、ほかのケーキにはない魅力です。

藤本 ショートケーキのイチゴがずれているのとは違いますもんね。

松本 2号目に載っている秋田県のお店では、お客さんが撮ったたぬきケーキの写真を店内の壁に飾っていたんですね。これって、きっとたぬきケーキだからありえることで。ふつうのショートケーキだったら、お客さんが撮った写真を壁に飾らないと思ったんです。たぬきだから飾る。

藤本 めっちゃいい。世界に羽ばたかない地元密着型アイドル、たぬき。

松本 絶対に全国区にはならないですね。ネットでたまに、シャトレーゼとかでつくればいいのにって意見を見かけると、たぬきケーキとは何かをわかってくれていない気がするし、面白いものにはならないよって思います。

その土地に根付いてずっとつくり続けられているから、何世代にも渡って子どもが食べてきたものでもあるので。

藤本 どの土地、どのお店、どのひとがつくっているかで個性の違いがあって、さらには同じひとがつくっても、その時々の具合で、変わってくる魅力。深いなあ。

松本 ちょっとした顔の歪みもいいんですよね。人間だって左右対称じゃないので。

藤本 それが自然なんですよね。人工物はあまりにもシンメトリー。

松本 たぬきの顔がちょっと歪んでいて、お店のひとの解釈が独特なもののほうがグッときます。

藤本 いまやたぬきケーキといえば松本さんですがメディアからのオファーもあるんですか?

松本 基本、テレビは断ります。よほど出たい番組だったら別だけど。キー局だと全国放送なので、出れば全国で一気に盛り上がるんですけど、テレビに出ることで、お店のキャパを超えてパニックになっちゃうんです。だから、それはもうやらない。

ただ地方局だと、絶対お店にカメラが行くので、店のひともテレビにどのくらい出るかわかるし、お店が絶対に混むってわかる。なので地方局には情報提供しようかなと思っています。

藤本 キー局に出たほうが一気に広がっていいと思うけど、そうじゃない。

松本 逆ですね。お店側に迷惑をかけちゃう。それで前も大変なことになったので、ローカルばかりやろうという気持ちです。

藤本 この『たぬきケーキめぐり』も8号目まで出てますよね。今後はどうしていくんですか?

松本 いやあもう、あとは健康に気をつけつつ、ダラダラと続けられたら。新しく発見したらそこに行って、食べて、また次なる本をつくる。それを一生繰り返すのかな。

藤本 ライフワークですね。たぬきケーキの深さを再確認しましたし、自分がたぬきケーキの何に惹かれていたのかも明確になりました。ありがとうございました。

 

おわりに

たぬきケーキのよさは個性にある。あらためてそれがわかりました。誰一人同じ人間がいないように、たぬき一つひとつがまったく違う。ケーキという存在が表情を持つことの意味について深く考えさせられました。

結局は食べてしまうのに、愛してしまう悲しさと残酷さ。そういった経験を子どもたちが味わうことの大切さ。松本さんがいてくれてよかった。そのおかげでたぬき

ケーキが未来につながってよかった!

そんな松本よしふみさんが『たぬきケーキめぐり』を携えて、ぼくが企画する仙台のブックイベント「BOOK TURN SENDAI(ブックターンせんだい)」に出店してくれます! たぬきケーキが気になって仕方ないあなた、ぜひ松本さんご本人から『たぬきケーキめぐり』を購入してくださいね!

☆おしらせ

全国各地からZINEの作り手や、ZINEを愛する書店が集結する仙台発のブックマルシェイベント「BOOK TURN SENDAI」が開催!
日時:2025年12月21日(日)11:00〜16:00
会場:宮城県仙台市中小企業活性化センター 多目的ホール(AER5階)
   松本よしふみさんのブースはE-6です!
HP:https://bookturnsendai.com/

構成:山口はるか(Re:S)
写真:松浦奈々

 

おまけ

取材場所としてお借りした「志たあめや」さんは、たぬきケーキのイベントを開催したり、オリジナルのたぬきケーキをつくることができる教室を開いていたり、とにかくたぬきケーキ愛がすごいんです。

今回の取材前に、松本さんとたぬきケーキづくりにチャレンジした模様を2ページ目でお届けします!

 

志たあめやで見つけた数々のたぬきケーキグッズ、そして楽しすぎたケーキ作り