はじめまして。写真をこよなく愛するライターの松浦奈々です。
私は青森県の八戸市出身で、車で10分走れば海が見える場所で育ちました。進学を機に盛岡に引越したのですが、気がつけばこの街に来て10年目に突入していました。
今は岩手をベースに地元との二拠点で、撮ったり書いたりしながらお仕事をしています。
離れたからこそ見えてくる故郷のよさや、移住したからこそわかる盛岡のよさがあると思っていて、自分が住んでいる街の日常を近づいて定点観察してみたり、あるときは遠くから離れて見つめてみたりしながら暮らしています。
10年住んでいるのにかかわらず、今日も相変わらず「盛岡いいなぁ、おもしろい街だなぁ」と思うのは、私が行ったり来たりしているからなのでしょうか。
盛岡はNYタイムズの「2023年に行くべき52カ所」で2番目に選出された街です。
喫茶店、映画、音楽、文学、お酒。盛岡でしか体感できない風物詩や食文化。素敵な工芸品や、街の方々に守られ続ける建物や風景もたくさんある街です。そして車をちょっと走らせれば、広大な湖や温泉街もある。
今回は私目線で、マクロな視点とミクロな視点でおすすめスポットを10カ所選びました。
絞りきれないほどお届けしたい盛岡の魅力があるので、ちょっぴりはみ出しながら地域のなかで昔から愛されている場所と、私の偏愛をハイブリット形式で(?)紹介していきます。
目次
・好きな具材をオーダーして、オリジナルの味を「福田パン長田町本店」
・レトロさに感激。「喫茶パァク」で味わう、カントリートーストとアルペン物語
・100年前の仕込み釜で作られるクラフトビールで盛岡を味わう「ビアフロント ベアレン 盛岡駅前店」
・日本でここだけ? アナログな映写法を今でも「盛岡ルミエール1・2」
・「hina」でわんこそば東家とのコラボ品、「ポケファスのわんこそばブローチ」をゲット
・東北の作家に焦点を当てた「Cyg art gallery」
好きな具材をオーダーして、オリジナルの味を「福田パン長田町本店」
盛岡市民で知らない人はいないであろう、「福田パン」。スーパーの菓子パンコーナーや高速道路のサービスエリアでも目にする、盛岡のソウルフードです。せっかく盛岡に来たならば、本店に行って自分好みにカスタマイズして食べてみてほしい!!(強い眼差し)
だって……
本店ならではのふわふわコッペパンの中に塗るクリームを、カスタムできるのです! まるでサーティーワンのようで、ガラス越しに毎回ワクワクが止まらない……。
金曜日の早朝というのに、開店からものの5分で30人くらいの行列。でもこんなにメニューが豊富なので、優柔不断な私には20分の待ち時間はあっという間……。合いがけカレーのように2種類のクリームを半々に塗ることもでき、そしてレジ横には期間限定商品の誘惑。いったい全部で何通りあるのか……計算ができません!
巨大な黒板にひしめき合うメニューの数々。ガラスの向こうのクリームと何度も往復しては指を折って、ぶつぶつぶつ……。あれもこれもと悩まざるを得ないスポット、No.1だと思います(笑)。
さぁ、今回の選抜メンバーはこちら!
パンは、ふっくら柔らか系
クッキークリーム&バナナ(期間限定品)
サクサクのクッキークリームに甘めなバナナクリームのコンビ。牛乳との相性抜群でした。
かぼちゃとカスタードクリーム風味
「半々オーダー」はこんな感じ。こっくり甘めのかぼちゃクリームには皮の断片もチラホラ。カスタードクリームは、大判焼きのクリームに近い感じ。懐かしさを感じる味でした。
エビカツ
薄皮の衣の中にはプリプリのエビがゴロゴロ。その上にはタルタルソースが。ハンバーガーとSのポテトを注文したとき並みの充足感。どれもこれも全部おいしかった。
そしてこのレジ袋ッ……。このおじさん、かわいくないですか……??? そして絶対に優しい……。
「福田パン」のロゴの「ン」にパンが隠れているのも、ズキュンポイントです
福田パン長田町本店
〒020-0062 岩手県盛岡市長田町12-11
四季を感じながら「モンタン」で啜るスパゲッティを
櫻山(さくらやま)神社のすぐそばにある「モンタン」。
このお店には、地元民から長い間愛される「ア・ラ・モンタン」というトマト味のスープスパゲッティがあります。
ん〜〜。フォントオタクにはたまらない書体。これ、なんてフォントなのかしら
「ア・ラ・モンタンお願いします」というと、「サイズはどうされますか?」と必ず聞かれます。普通盛りのほかに、L、LL、3Lがあるというからおもしろい。そして、麺の量だけでなくスープの大盛りもあるんです。
ピリ辛トマトスープの中に浮かぶ、中細麺。飽きない味わいで、毎回スープを飲み干してしまいます。他のテーブルをみると、空っぽのガラスの器があちらこちらに。スープの大盛りがあることに納得です。
席は1階と2階が。2階からは亀が池が見える。春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は白銀の世界が広がる。四季を感じながら、スパゲッティをいただけるのもモンタンならでは
食べ終わったころに「サービスのコーヒーは、アイスとホットどちらになさいますか?」とスタッフさんが。水と同じコップサイズで提供される甘めのアイスコーヒー。これがまた、本当においしい(お世辞抜きで、食後のコーヒーNo.1)。
店主の小川さんいわく、スープが辛めなのでお口をリセットするために、あえて甘めのコーヒーを提供しているんだとか。一度食べれば、ハマる理由がわかるはず。
東大通りのスパゲッティ屋 モンタン
〒020-0023 岩手県盛岡市内丸6-2
レトロさに感激。「喫茶パァク」で味わう、カントリートーストとアルペン物語
盛岡には古き良き喫茶店のほかにも、おいしい珈琲をいただける個人店のカフェが街に点在しています。おすすめしたい場所がそれはもうたくさんあるのですが、尺が足りない……。本1冊にもまとめられないほどの素敵な場所が、この街にはあるのです。
ということで、レトロマニアでもある私がこよなく愛する喫茶店を、1軒紹介します。
官公庁通りの裏手にある、由緒ある「桜山界隈」。その通りにある「喫茶パァク」。
照明や壁紙の個性に魅せられて、何度行ってもこの空間に吸い込まれてしまいます
お手本のような美しい文字で丁寧に書かれたメニューには、所々に精巧でかわいいメニューのイラストが差し込まれていて、毎回うっとりしてしまいます。
こちらで注文したのは、
アンパンマンのほっぺみたいにキュートな一口サイズのチーズトースト「カントリートースト」。果物と野菜が載せられたサラダに高揚してしまうのは、私だけでしょうか。
そして、三層に重なるバニラのアイスクリームとレアチーズのババロアに抹茶ソースがかけられたミニパフェ「アルペン物語」。前はソフトクリームだったのですが、機械が壊れてしまったようでこの形にアップデート。かつて岩手県で開催されたアルペンスキーの世界大会にちなんで作られたのだとか。
桜山のあたりは舞台のセットのように情緒溢れる空間。喫茶パァクの扉を開けば、さらにタイムスリップしたような気持ちになること間違いなしです。
喫茶パァク
〒020-0023 岩手県盛岡市内丸4-6
100年前の仕込み釜で作られるクラフトビールで盛岡を味わう「ビアフロント ベアレン 盛岡駅前店」
盛岡駅直結、A1出口の目の前にある「ビアフロント ベアレン 盛岡駅前店」。
チャージ料がなくこじんまりとした店内なので、女性お一人でも入りやすい。お昼から1杯決め込むのもよし。旅の最後にサクッと飲んで帰るのもよし。はたまた締めでビールとべアレン特製のラーメンを食べるのもよし(ラーメンおいしかった)。お土産を購入するのに立ち寄るのもよし。
予定がぱんぱんになりがちな旅人にも味方のお店です。
黒ビール「べアレンシュバルツ」は、特有の苦味がなく、後味がすっと引けるさっぱりとした味わい。ビールを日頃飲まない方でもおいしくいただけるような、クセのないビールです。2023年の国際ビールコンクールで世界一に輝き、一時期入手難になったほど。
定番の「ベアレンクラシック」は、「世界に伝えたい日本のクラフトビール」コンテストで初代グランプリを獲得した正統派なラガービール。キリリとした辛味を感じる味わいでした。
駅の売店でもビールは購入できますが、お店ではビールの他にもシードルやワインの取り扱いも。直接ベアレンのスタッフさんにおすすめを伺えるのも◎。
本格的に食事とベアレンビールを楽しみたい方は、同じ建物内の地下にある「ビアベースベアレン盛岡駅前店」や、毎週土曜日の15時10分から駅から10分ほどの材木町で開催される「よ市」(※冬季休業あり)、駅から徒歩20分ほどの「菜園マイクロブルワリー」などもおすすめ。
盛岡が誇る「ベアレンビール」。ぜひ現地で一度、味わっていただきたいです。
ビアフロント ベアレン 盛岡駅前店
〒020-0034 岩手県盛岡市盛岡駅前通8-11 盛岡駅前ビル1階
「ほぼ毎日」営業? 盛岡市民の台所「神子田朝市」
年間300日以上も営業している朝市が盛岡にはあります。どうやら全国的にも珍しいようで、私が行ったのは平日の朝7時頃でしたが、地元の方々のほか、観光客と思われる方々の姿も。
ちなみに朝市って、私は個々人がテントを持参してお店を構えているイメージなのですが……
ここ、「神子田(みこだ)の朝市」では、長屋のような軒下に生産者さんたちが勢揃い。昔の市場を連想させるようなこの佇まいは、神子田ならではの風景。
「盛岡の台所」と称されるこの場所では、野菜や果物のほか、朝ごはんやスイーツのほか、
履き物やお花、あんま屋さんなどの出店もあり、バラエティ豊か。
お店にはイートインスペースがないので、皆さんこちらの休憩所で購入したものを食べます
今回の朝ごはんは「噂のひっつみ」の名で有名な「木偶の坊(でくのぼう)」で決定。
「ひっつみ」とは、旧南部藩の領地だった青森県南東部から、岩手県北中部にかけて伝わる郷土料理。寒冷地でもある南部地方では米づくりが難しく、雑穀や小麦粉、そば粉を使った料理が主流となっていました。
ひっつみは、水でこねた小麦粉を薄くのばした生地を手でちぎって煮たもの。お出汁は醤油ベースで、ごぼうやにんじん、ねぎが入っている優しい味付け。私も小さいとき、八戸でよく食べました。15センチ以上ありそうなもちもち食感のひっつみは、注文を受けてから茹でてくれます。
愛猫家の松浦家は、自宅で帰りを待つ「ちびこ」へもしっかりとお土産を購入。2本で100円ということで、選りすぐりを選ぶも店主さんがいない……。辺りを見渡していると、横からニコニコ笑顔のおじさんが無言で登場。
(カラカラン……)
エーーーーーーーーー5本もいいんですか?! と聞くと、おじさんは満面の笑み
ちなみに袋がなかったので、またたびを握りしめながら会場を闊歩。すると突然、「袋いる?」と野菜を売っているお店のお姉さんに声をかけられ、お言葉に甘えて袋を頂き、その流れで「糠塚きゅうり」(※地きゅうり・昔のきゅうりとも呼ばれる)を購入。
私はこの街の、こういう大きな心意気とあたたかさに生かされているのです。
神子田朝市
〒020-0826 岩手県盛岡市神子田町20-3
※平日は朝5時〜7時30分、土日は朝5時〜8時30分までの営業。バスや電車での移動が厳しいと思うので、タクシーのご利用をおすすめします。(駅から車で10分です)
映画館通りのレトロシアターで
盛岡には映画館通りと呼ばれるストリートがあり、1キロ以内に劇場が4つも並んでいます。
劇場だけでなく、屋上やイベントスペースなどでも特設で上映会が行われることもあり、映画愛に溢れる方々が、盛岡にはたくさんいます。
映画を観ること1つにしても、いろんな楽しみ方のできる盛岡ですが、持ち込み可能、全席自由席、チケットは当日しか購入できない……そんなレトロシアターがあるのでお届けします。
日本でここだけ? アナログな映写法を今でも「盛岡ルミエール1・2」
いまや、映画のチケットはネット予約や会場でモニターを見ながら空席を探して購入するのがノーマル。でも、ルミエールはそうではないんです。
開演20分前から購入できる映画券
副支配人の高橋さんは、こんなふうに教えてくれました。
「あらかじめチケットを購入していても、仕事が長引いたり、子どもが熱で出かけられなかったりする日や、『やっぱり、なんか今日は映画の気分じゃないかも』って日も、時にはあるじゃないですか。
ここは当日券しか販売していないから、そういう心配はないですし、自由席だから『ここ観づらいな』って思ったら、席を移動すればいいんです」
そして劇場の中はこのような感じ。
シアターは3階と5階に1つずつ。3階はグリーン調、5階はピンク調に色分けされているのもおもしろい。ポスターの上映日も、マーカーで手書きしているんだとか。でも、なんで4階がないんだろう?
映画を見終わって、ふと振り返ると……ん?
シアター後部に、斜めに設置された大きなミラー?? そこに反射する自分の姿を見て、豆鉄砲を喰らった鳩状態の私。
実はここに、ルミエールならではの秘密が隠されているのです。
ラッキーなことに、4階の映写室の中に通して頂けることに。すると……驚くことに、4階の映写室から3階と5階のスクリーンに映像を投影していたのです!
(だから劇場が4階になかったのか!)
3階はそのまま映写室から映像を写しているのですが、5階への映写にはミラーを利用。先ほどの大きなミラーと、もう1枚の小さなミラーを使い、4階の映写機からスクリーンに映像が。
少しわかりづらいですが、映写機の先に、小さな鏡が
先人たちが残した知恵に、こんなにも驚かされるのは、便利な世の中に染まってしまった証なのでしょうか?
映画券といい、この上映スタイルといい、シンプルなものにこそ、そこには学ぶことがたくさんあるかもしれないと思ったのでした。
このような方法で映画を流しているところは、いまや日本の中でどうやらここ、ルミエールだけなのだそう。盛岡にお越しの際は、ぜひ行ってみてほしい場所です。
盛岡ルミエール1・2
〒020-0024 岩手県盛岡市菜園2丁目2-2
駅ナカだけじゃない! 街ナカで見つける盛岡みやげ
駅ナカでは珠玉のお土産が購入できますが、盛岡の街で手に入る、お土産や旅のしおり、贈り物にぴったりなおすすめ雑貨や本をご紹介します。
「hina」でわんこそば東家とのコラボ品、「ポケファスのわんこそばブローチ」をゲット
心の準備はいいですか……? もう、言葉を失うほどとんでもなく可愛いブローチが盛岡にあるんです。それがこちら。
ああ、可愛すぎる!!!
わんこそばで有名な「東家」と、雑貨店「hina」のコラボ品。人気キャラクターブランド「ポケファス」のブローチで、東家本店と、ここhinaでしか購入できない超限定品なのです!!
猫が好きなhina店主の竹花さんがこのブローチを作ろうとしたとき、「猫のほかにも、わんこそばの名にちなんでワンコでも作りたいよね」ということで誕生。猫と犬のお給仕さんと、そばを啜るお客さんを模したブローチ4種です。
お給仕さんのお椀からチョロっと滑りゆくそばや、東家のエプロンの表現の精巧さたるや.……。
ということで、満を持して自分へのプレゼントにわんこそばブローチを購入。
犬のお給仕さんバージョンが残り1点と聞いて、思わず唸りました…………が、猫のお給仕さんをお迎えすることにしました。無地のバックやシャツにワンポイントでつけると可愛い!(ペアで欲しくなる気持ちが高まる……)
店内には、盛岡にまつわる雑貨や書籍の販売も。「これ可愛いでしょ!」と思わず自慢したくなるようなものを、竹花さんは集めたのだといいます。
私もわんこそばのブローチ、自慢してまわります!
hina
〒020-0026 岩手県盛岡市開運橋通1-6
https://www.instagram.com/hina_zakka/
https://zakka-hina.com/
東北の作家に焦点を当てた「Cyg art gallery」
菜園にある老舗の百貨店「カワトク」の隣に位置する「パルクアベニュー・カワトク」の地下に佇むギャラリー「Cyg art gallery」。ここは、盛岡にあるデザイン事務所「ホームシックデザイン」が手掛ける場所です。
白を基調としたメインギャラリーでは、東北ゆかりの優れた作家による展示が常時開催されています。
作品は購入可能。今回は5人のイラストレーターたちによる企画展が
併設されたショップでは、作家のオリジナルグッズのほか、東北に関わる方々が個人で制作したZINEやリトルプレスなども手に入れることができます
このギャラリーでは年に1度、「ART BOOK TERMINAL TOHOKU」(通称ABTT)という本の祭典が催されます。ZINE、アートブック、画集、写真集、記録集、絵本など、枠にとらわれない多種多様な表現が勢揃いし、展示・販売されるのです。
東北出身、住んでいたことがある、活動していたことがあるなど、東北にゆかりがある人であればどなたでも応募することができます。
今年のエントリーはすでに締め切られましたが、ABTTの展示・販売の会期は9月1日(日)まで行われていますので、ぜひ! (※水曜・木曜定休)
今年は過去最多で約170冊集まったとのこと
過去私もABTTに友人と参加したことがあったのですが、Cygのように「表現したい」という小さく芽生えた気持ちを後押ししてくれるようなギャラリーが近くにあるということが、本当に心の支えになっていました。
「アートの地産地消」をテーマに、この土地や東北で生きる作家やその才能にスポットライトを当て続ける「Cyg art gallery」。多彩な表現が混ざり合うこの空間で、一期一会のZINEを見つけて持ち帰ってみるのはいかがでしょうか?
Cyg art gallery
〒020-0024 岩手県盛岡市菜園1-8-15
https://cyg-morioka.com/
https://www.instagram.com/cyg_morioka/
北の職人たちの手仕事に触れる「shop+spaceひめくり」
中津川のきらめきとせせらぎを感じられる場所にひっそりとある、「shop+spaceひめくり」。
オーナーの菊池さんによれば、お店の名前である「ひめくり」は、「毎日違った出会いがあるように」と名付けられたそう。
南部鉄器や、漆器、織物や染め物など。中津川に反射する光に照らされて、個性がさらに際立ちます
店内には、菊池さんがセレクトした雑貨が並んでいます。リーズナブルで手が届きやすいものも多く、生活に取り入れやすいのもうれしい。
「ホームスパン」のコースター。家(Home)で紡ぐ(Spun)という言葉通り、自ら糸を紡ぎ、手織りされた織物のこと。地場産業として残っているのは岩手のみとなっている。羊の毛で織られ、軽くてふわふわ
初めての街では、どんな伝統があり、どんな手仕事があり、それらがどのように紡がれてきたのか、なかなかわからないもの。盛岡に10年住んでいる私ですら、知らないことばかりです。
東北の職人たちが織りなす工芸品にゆったりと触れて「これってどうやって作られているのだろう?」「これってなんだろう?」とむくむくっと興味関心が湧き上がってきたとき、菊池さんやスタッフさんに尋ねてみたり、店内に並んでいる書籍を手に取ってみるのもよいかもしれません。
shop+spaceひめくり
〒020-0885 岩手県盛岡市紺屋町4-8
http://himekuri-morioka.com/
https://www.instagram.com/himekurimorioka/
旅のしおりにもおすすめ。盛岡のミニコミ誌『てくり』
盛岡の街には、まもなく20周年を迎える地元発のミニコミ誌『てくり』があります。
『てくり』は、個人で活躍されている地元在住のデザイナーやライターの方々が有志で集まり、「まちの編集室」という市民団体を立ち上げてスタートしたもの(※)。
※現在はLLP(有限責任事業組合)として運営されている
出版社や印刷会社が版元ではなく、前号の売り上げを、次号の制作費用にあてるというミニマムなサイクルが、スタート以来ずっと続けられているというから驚き。
最新号「奏の街にて。」で通算33号になる
誌面の中に広告が一切ないのが特徴で、「伝えたい、残したい、盛岡のふだんを綴る本」のキャッチコピーを掲げ、誌面に登場するのは、この盛岡に住まう「市井の方々」や「盛岡の日常」。
息をのむほど美しく、ストーリー性を感じてしまう写真とともに、この街に生きる人たちの中にある心模様や、今までの歩み、人生のエピソードが丁寧に優しく描かれています。
『てくり』の中には、時代の変化とともに失われた盛岡の姿も残されています。大好きだった心象風景がなくなってしまったとき、その姿が綴られた冊子が手元にある。このことに救われている、支えになっている地元の方々は少なくありません。
盛岡人の奥底にあるものにフォーカスし、早足ではなく、ゆっくりと歩くような速度で伝える『てくり』は、盛岡市民だけではなく全国各地にもファンが。
盛岡では、さわや書店や東山堂などの地元書店のほかに、街中の個人店でも『てくり』を手に入れることができます。
『てくり』の取扱店リストはこちら
https://tekuri.net/shoplist/
旅の予習に、復習に、お土産に。
踏み込んだ盛岡の日常や、この街での暮らしに触れられる冊子です。
次ページでは、『てくり』を編集している木村さんに盛岡の「これまでとこれから」をインタビューしています!
盛岡発のミニコミ誌を手掛ける木村さんに聞く。盛岡の「これまでとこれから」
いろいろな土地の観光10選を読んでみる
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この記事を書いたライター
盛岡市在住。青森県八戸市出身。 広告業界の営業を7年したのち、フリーランスのライターへ転身。 青森や岩手など自分の住む街を中心に、撮ったり書いたりしながら活動中。 趣味はフィルムカメラで写真を撮ること。 人のお話を聴くのが好きで、人オタクだと自負している。