全国各地にある、センスが光る独立系書店。土地に根付いた本屋さんは、きっと街の「いい楽しみ方」を知っているはず。そこで、全国の本屋さんに「この土地で読むのにぴったりの本」と「買った本を携えて訪れるのにぴったりの場所」を教えてもらった。

今回お話を伺ったのは、岡山県玉野市にある451ブックスの根木慶太郎さん。
「451ブックス」は、新刊書籍、ZINE、リトルプレス、古書を取り扱う書店。
まだ書店といえばチェーン店が一般的だった、約20年前にオープン。独立系書店の先駆け的存在だ。

絵本のラインナップも充実しており、「大人こそ絵本を楽しんでほしい!」という思いから、「大人のための絵本講座」というイベントも開催している。

451ブックスを目指して県外から足を運び、付近を観光して帰る方も多いという玉野市。書店を出たあと、本を読みながら訪れるのにぴったりの観光スポットを教えてもらった。

 

魚がおいしい、空が広い、芸術が根付くまち「玉野」

451ブックスへと向かう車窓のなかからは、児島湖を望むことができる。空が広く見晴らしのいい景色が続き、思わず深呼吸してしまう。

3年に1度開催する「瀬戸内国際芸術祭」の玄関口としても機能している玉野市。近年では、「瀬戸芸に行くための通過点ではなく、滞在して、楽しんでほしい」という思いからなのか、ゲストハウスやおいしい飲食店が増えている。

 
 
 
 
 
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東山ビル/HYM HOSTEL(@hym_bldg)がシェアした投稿

なかでも根木さんが「怪しくておもしろい」と思っているのは、現在では、ホステル、飲食店、イベントスペースなどが入った複合施設になっている「東山ビル」。かつてはツバメとネズミだけが暮らす廃屋寸前の建物で、近隣の人たちからは「幽霊ビル」と呼ばれていたそう。

2012年に、若者たちが東山ビルを舞台に岡山芸術祭(2016年より、3年に一度行われる現代美術の国際展)を企画したのを皮切りに、手弁当で企画、運営、補修などが行われ、徐々に再生されてきたという。

また、玉野市はなんといっても魚介がおいしい。道の駅みやま公園のなかには鮮魚売場があり、旬の魚介類を手軽に買うことができる。生魚がちょっと苦手だという根木さんのお気に入りの「魚がおいしいお店」は、焼き魚定食が人気の大阪屋食堂

海が近くて景色がよい。魚介が美味しい。若い世代がお店を開いている。芸術が生活のなかにある……(岡山県は、国内で初めて、文学の分野でユネスコ創造都市ネットワークに加盟したのだという)。そんな空気感が心地よく、移住を決める人も多いのだという。

 

451ブックスがすすめる、玉野市のおすすめスポット

「Grid Kitchen(グリッドキッチン)」

451ブックスから徒歩7分ほどのところにあるカフェ「Grid Kitchen(グリッドキッチン)」。工場として使われていた建物を改装した、天井が高く開放感のあるお店だ。壁一面の大きな窓から見える児島湖を眺めがら、一息ついたり読書するのにぴったりの場所。

「料理好きの店主がつくるごはんがとにかくどれもおいしいんです。サンドイッチやキーマカレーも好きですが、僕がとりわけ気に入っているのは、その時期の旬の野菜を使った『おそうざい定食』。カフェ飯ではない、日本の家庭料理がじんわりと沁みるようにおいしいんです。『ここの味噌汁は絶品』と熱く語るお客さんもいますね」

Grid Kitchen(グリッドキッチン)
岡山県玉野市八浜町見石883-50
https://www.tumblr.com/grid-kitchen

 

「Little on Little(リトル・オン・リトル)」

451ブックスから、今度は車に乗って5分。2015年にオープンした、コーヒー焙煎所が「Little on Little(リトル・オン・リトル)」

「毎朝飲みたくて仕方なくなるような焙煎」を目指して、店主の武田さんが日々試行錯誤を重ねるコーヒー豆は、香り高く、複雑な味わいが絶品。店内でハンドドリップのコーヒーを飲むこともできる。

「以前は一番の繁華街。でも今はお店がほとんど辞めてしまった地域に、突如コーヒー焙煎所ができたので、びっくりしたんですよ。最初は心配だったんですが、いまではまちの馴染みの店になりました。

お正月の三が日には、地域の人が初詣に来る八浜八幡宮のほど近くでLittle on Littleが出張コーヒー店をやっています。最近では、甘酒ではなく、みんなコーヒーを楽しみにして初詣に行っているんです。『あ、コーヒーの香りがしてきた! お正月だね〜』って」

Little on Little
岡山県玉野市八浜町八浜176
https://www.instagram.com/little_on_little/

 

玉野市で読むのにおすすめの、想像力を豊かにする本

『なみにきをつけて、シャーリー』

海に家族で遊びにきたシャーリー。お母さんからいろいろ注意をうけますが、うわの空です。考えることは海賊の冒険物語。左ページはお母さんの言葉、右ページにはシャーリーの空想が描かれています。(版元HPより)

「家族で海にやって来たシャーリーが、大きな海を眺め、想像を膨らませていく物語です。左のページと右のページでぜんぜん状況が違うんですが、右のページにはシャーリーの空想が描かれているんですよ。

海って、人の想像を掻き立てるなにかがあると思う。玉野も海のまちなので、寄せては返す波を眺めながら、シャーリーのように想像や妄想を楽しんでほしいなと思います」

『なみにきをつけて、シャーリー』
ジョン・バーニンガム/ほるぷ出版
https://www.451books.com/SHOP/45105set1.html

 

『旅する練習』

中学入学を前にしたサッカー少女と、小説家の叔父。コロナ禍で予定がなくなった春休み、ふたりは利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。(版元HPより)

「三島由紀夫賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞、芥川賞候補作にもなった作品ですが、2021年には岡山県ゆかりの『坪田譲治文学賞』も受賞しています。

大人から子どもまで誰にでもおすすめできて、旅をしながら読むのにぴったりの本なのではないでしょうか。」

『旅する練習』
乗代雄介 著/講談社

「『旅する練習』の著者・乗代雄介さんは岡山に来てくださることも多くて。文章で風景をスケッチする写生文ワークショップ『風景を綴る』を開催したり、僕も関わっている文学創造都市おかやま発のマガジン『うったて』に寄稿してくれていたりします。

『うったて』はもうすぐ3号が発行されるんですが、乗代さんの連載も引き続き掲載されているので、ぜひ読んでみてほしいですね」

 
 
 
 
 
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『うったて』第1号の表紙は乗代雄介さん

 

『うったて』第2号は、岡山県出身で、451ブックスにもよく来てくれていたという、DIVAであり作詞家のゆっきゅんさんが表紙を飾っている


451ブックスで本を買い、飲食店でゆっくり読書をして過ごしたり、海を眺めに行ったり。岡山県玉野市で、のんびり心癒されるような休日を過ごしてみてはいかがだろうか。

【書店情報】

451ブックス
岡山県玉野市八浜町見石1607-5
https://www.451books.com/
Instagram:https://www.instagram.com/451books/

 

イラスト:ayaverb

 

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