いきなりプロドラマーを呼びつけて、木桶のドラムを叩かせてみた

2019.03.08

いきなりプロドラマーを呼びつけて、木桶のドラムを叩かせてみた

岐阜県中津川市の付知(つけち)地区で、桶の技術を応用して作られている「小池ドラムス」。プロドラマー・鈴木宏紀さんと一緒に、作り手の小池英仁さんに話を聞きました。04 Limited SazabysのKOUHEIさんや元BLANKY JET CITYの中村達也さん、KenKenさんも叩いたという小池ドラムスの魅力とは…?

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    あぁ〜〜いい香り〜! 木の香りに思わず笑みがこぼれている、ライターの友光だんごです。

    手に持っているのは底の抜けた木の風呂桶……ではなく、

     

    ドラムなんです。あ、もうちょっと寄ってもらって……

     

    このドラムの胴の部分です。

    桶に見えたのも当然で、実は桶づくりの技術を応用したドラムらしいんですよね。

     

    たしかにドラムと桶、形はほぼ一緒に見えます。でも、

    「できるの…………????」

    と皆さんの頭にハテナが浮かんでいるのがありありと見えます。

    いや、それでいい音鳴るの? そもそもなんで桶でドラム?と。

     

    この「桶ドラム」を作る職人さんが、「小池ドラムス」の小池英仁さん。

     

    小池さんは中学生の時にドラムを始め、ついには自分でも作り始めてしまった生粋のドラム好き。

    岐阜県中津川市の「付知(つけち)」地区で、地元の木材を使ったドラム作りに4年前から取り組んでいます。

     

    「無垢のドラム」ってキャッチコピー、カッコよくないですか? 天才ドラマーが主人公の漫画タイトルっぽい

     

    小池さんの取り組みは、じわじわと注目を集めているんです。

     

    林業界からは、輸入材の増加や人材不足に苦しむ日本の林業への

    「新しい木材の使い道」の提案として。

    音楽界からは、有名ミュージシャンも注目し人気が高まっている

    「国産材を使った手仕事の楽器」として。

     

    というわけで、小池さんのアトリエにお邪魔して話を聞きました。

     

    餅は餅屋、ドラムのことはドラマーに聞け

    「さっそく小池さんにお話を伺おうと思ったんですけど」

    「はい」

     

    「なんで僕、いきなりドラムに座ってるんでしょう?」

    「いや、うちのドラム音が違うんで。ぜひ叩いて試してほしいなと」

    「本当ですか?」

    「叩けばわかります」

    「そんなに言うなら…」

     

    ドドッ!!!ダンダン!!!

    ………

    ………

    ………

     

    「……『BECK』や『BLUE GIANT』みたいなイメージで叩いたんですけど、うまくいきませんね」

    「全然叩けてませんでした」

    「いや〜難しい。というかWEB記事で音楽の良し悪し伝えるのも超難しくないですか?」

    「それは知りませんけど」

    「そもそも僕、ドラムは素人なので、いい音と言われればいい音な気もしますけど……違いはちょっと。ドラムのプロがいればいいんですけどね……そんな偶然……」

    「あのー」

     

    「誰か来た」

    「今、ドラムのプロ探してました?」

    「ええ、ちょっと叩いていきます?」

     

    「じゃあ失礼して」

    「いや、そんな急に来て叩けるわけ……」

     

     

    「本物のドラマーだー!!!!!」

     

    はい、この方はさすらいのドラマー……もとい、プロドラマーの鈴木宏紀さんです。

    有名ドラムメーカー「カノウプス」と専属契約し、ライブからレコーディングまで幅広く活躍されています。ドミノピザやユニクロのCM音楽のドラムも叩いたことがあるそう。

    ※鈴木さんの契約の都合上、カノウプスのロゴを写真に入れています

     

    「茶番にお付き合いいただいて恐縮です。僕ではドラムの違いがわからないので、今回わざわざ岐阜まで来ていただきました」

    本当は契約の関係でカノウプスのドラム以外叩いちゃダメなんですけど、来ちゃいました」

    「え、大丈夫ですか?」

    「話は通してあるので。あと、国産材のドラムっていうのが気になったんです」

    「その国産材のドラムって」

    「わ!」

     

    「近くで見てもかっこいいっすねこれ。なんの木ですか?」

    「栗ですね。他のも叩きます? ヒノキはどうでしょう」

    「え、いいんですか?」

    「あの」

     

    「あ〜〜〜〜〜〜いいっすねこれ。なるほどなるほど。さっきより音が柔らかい」

    「ヒノキは柔らかい音ですね。栗は重低音がドスッとくる感じです」

    「たしかにたしかに。ほおおお〜〜〜〜〜」

    「あの………」

     

    「いやーなるほど、はいはいはい………」

    「………」

     

     

    「これ…やばいですね」

     

    「やばいでしょ」

     

    「二人で通じ合わないでー! 僕もそろそろ入れてもらっていいですか?」

    「あー幸せ。満足しました」

    「どうぞどうぞ」

     

    人気アーティストも注目する桶ドラム

    「気を取り直して、国産材のドラムって他にあるんですか?」

    「大手だと、3大ドラムメーカーのうちの1社『TAMA』が国産材で作ってますね。あとは外国材が多いんじゃないかなあ」

    「普通は『プライウッド』って薄く切って貼り合わせた合板を使うことが多いんです。でも、うちは桶の技法なので、繊維方向で木を使っています」

     

    「珍しい製法ですね。木目が縦にあるから、ストンって縦に抜ける力強さがあるんです。音が太い。すごいいいっすね」

    「絶賛してる。叩いたら目の色変わってましたね」

    04 Limited SazabysのKOUHEIさんも来て叩いてくれてますね」

    「え、フォーリミ! 若者に人気のバンドだ」

     

     
     
     
     
     
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    KOUHEIさん(@kouhei04ls)がシェアした投稿

    「KOUHEIさんは、東北ライブハウス大作戦のステージでうちのスネアを使ってくれました。元BLANKY JET CITYの中村達也さんや、ROVOの芳垣安洋さんにもご購入いただいてます」

    「レジェンド級まで……なぜそんなに有名なアーティストが?」

    『中津川ソーラー武道館』って100%ソーラーエネルギーを使ったフェスが毎年9月に開催されてるんですが、小池ドラムスもブース出展してるんです。そこで知ってくださった方が多くて」

     

    2019年は9月28〜29日に中津川公園で開催予定

     

    KenKenさんもベーシストですけど、ドラムも好きで叩いてくださって。中津川名産の栗きんとんを食べた後だったので、栗のドラムに『栗きんとんドラムだ!』って反応してくれました」

    「KenKenさんっぽいエピソード……。坂本龍一さんも森林保全に取り組んでますし、エコに取り組んでるミュージシャンって多いですよね。そういうところから国産材の楽器が注目されるのかな」

    「それもあるし、やっぱりこれだけ音がいいんで、実際に叩くとドラマーは持ってかれると思いますよ。あと、大手じゃない小さなメーカーならではの面白さもありますよね。ここみたいにハンドメイドの楽器を作る職人さんは徐々に増えていて」

    『建光(たてみつ)ドラム』っていう、建具屋さんがドラム工房を始めたところもあります。職人出身ってとこは、うちと似てるかもしれませんね」

    「小規模だから自由にやれて、個性のあるドラムが作れるんだと思います」

    「国産ドラムのシーンが徐々に盛り上がってるんですね…!」

     

    木を無駄なく効率よく使える「桶」ドラム

    小池さんの実家の製材所

     

    「小池さんは元々、桶職人だったんですか?」

    「実家は製材屋で、高校を出て桶やヒノキ風呂を作る職人になったんです。ドラムは趣味でずっとやってたので、桶を作ってたら『なんかこれ、ドラムにできそうだな』と思って。丸いですし……それで実家に帰ったタイミングで始めたんです」

    「まあ、形は確かに。でも、やろうと思ってすぐできるもんですか?」

    「木を貼り合わせて削って、底をつけるところまでは桶とほぼ同じなので。そこから先、皮を貼って金具をつけるところからは、地元のおじさんたちに手伝ってもらいました。その一人が早川さんです」

    「どうも。付知で建築の仕事をしてる早川です」

     

    写真右:地元で建築士として活動する早川泰輔さん。早川さんも音楽好きで、小池ドラムスの製造・ブランド企画を一緒に行なっている

     

    「ヒデちゃんが『ドラム作りたい』って言うもんだから、まわりの仲間を誘ってね。ドラムの加工と、ブランド企画のところは私たちが手伝いました。なんせ、ヒデちゃんはこんな小さい頃から知ってるしね」

    「ご近所さんなんですか?」

    「それもあるし、私は建築の仕事をしてて、親父さんから木を買ってるから。ヒデちゃんちは製材屋だから、いい木がゴロゴロある。小池ドラムスに使ってるのも、1立方メートルあたり200〜300万円レベルの銘木ばっかりなんじゃない?」

    「えー!じゃあドラムセット一式ですごい値段になりません…?」

    「桶の技法を使ってるから、そうならないんですよ」

    「ほら、よく見ると木の幅が微妙に違うでしょう?」

     

    幅の違う木のパーツを組み合わせて、輪っかを作っている

     

    「本当だ。同じ幅のパーツを組み合わせるわけじゃないんですね」

    「色んなサイズの木を型に合わせて組んで、削って丸い形を作るのが桶の技法です。小さい木でも使えるから、別の仕事で余った木を使えるんです」

    「いい木だけど、ちょっと余ったみたいなこともあるもんな」

    「ヒノキ風呂を作る仕事が来たら、余った木でドラムのタムが1個作れるなとか(笑)。もちろん端材ばかり使ってるわけじゃなくて、うまく利用してるってことです」

    「木を無駄なく使えるのか。でも、『いい木』の基準ってなんなんでしょう?」

     

    「やっぱり樹齢30〜50年以上の木はいいよね。木は切り倒して製材したあと、乾燥させないと使えないんですよ。で、木が大きいほど乾燥させる時間がかかる。だいたい1寸につき1年かかるから……30cm(10寸)の厚さの板なら、自然乾燥に10年かかるね」

    「ひー、30cmで10年なら、もっと大きい木は数十年…!」

    「だから、最近は機械を使って乾燥させることが多いです。中には強制乾燥させるところもあって、それだと割れやすかったり、変形しやすかったりするんです」

    「電子レンジみたいなので乾かすんだよね。チンって」

    「チンしちゃうんですか?」

    「チンとは言わないですけど(笑)、イメージとしては」

    「だから、自然乾燥させた数十年ものの木は貴重。そういういい木を使って小池ドラムスは作ってあるんです。いい木を貯めてあるのは、この付知地区ならではだね」

     

    小池さんが手がけたヒノキ風呂

     

    ドラムが製材所のBtoBも活性化させる

    「小池ドラムスがある付知地区は、いい木がとれる山に囲まれてるんです。だから昔から林業がさかんで、木に関わる仕事をしている人が多い」

    「うちの実家も、元は下駄も作ってたんです。製材をして、その材で下駄も作るし、木材としても出荷してて。製材だけじゃなく、加工も自分でやるところが多かったので、製材のクオリティも高い」

    「なるほど。今、日本の林業は苦戦してるみたいな話もありますけど、ここではどうですか?」

     

    「右肩下がりとか、後継者不足みたいな状況は一緒ですね。付知の場合は他にこれといった特産もないので、林業をちゃんと盛り上げていかないとって切迫感はありました。木を使った面白いものがあれば、みんなで盛り上げんといかんよなと」

    「そこで小池ドラムスが生まれたと。製材所はBtoBだと思うんですが、BtoCの消費者へ木の魅力を発信することに繋がりますよね」

    「こんなドラムが作れるんだとなれば、高い技術と質のいい木を持っていることを発信できます。すると、製材所のBtoBも活性化できると思ったんです。ただ消費者に届けばいいってわけじゃなくて」

    「あー、なるほど! むしろ木に詳しい人にこそ、『こんな木でこんなドラムを作るとは!』みたいに刺さるってことですね」

    「最初はそこまで考えてなかったですけど(笑)。結果的に、地元の人たちも巻き込んで面白いことができてますね」

    「ミュージシャンの人にも届いてるわけですしね」

     

    「僕もスネアドラムならカノウプス以外を使っていいって言われてるんで、マジで買おうか迷ってます。もうちょい叩いていいですか?」

    「(鈴木さんの存在忘れてたな)」

    「どうぞ! これ新作なんですけど……」

    「うおー!」

     

    「(楽しそうだから放っておこう)」

     

    ちなみに鈴木さんのライブでの演奏動画はこちら。やっぱりプロってすごい!!!

     

     

    おわりに

    小池さんと鈴木さん、僕にはわからないマニアックな話でめちゃくちゃ盛り上がっていました。二人ともドラム愛がすごい。

     

    ドラム好きから始まった小池さんのドラムづくりは、地元の人たちを巻き込んで、地元材を使った新たな可能性を生み出していました。

    きっかけがごくごく個人的な想いだったことが、逆にここまでの動きを生んでいるのかもしれません。

     

    この付知地区を含む一帯の山の歴史については、別の記事で紹介しています。こちらもご覧いただけると、より林業について知るきっかけになると思います。

    江戸時代の林業が山を救う!? 300年続く「山守」に会ってきた

     

    それではまたどこかでー!

     

    写真:小林直博

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    友光だんご
    友光だんご

    編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。

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