そっちはどうだい?の「その後」

「さいきん調子どう?」

「いやあ、ぼちぼちかな」

そんな何気ない会話がずいぶん前に感じる今日このごろ。「新型コロナウィルス」という言葉を耳にするようになってから、もうすぐ一年が経とうとしています。感染拡大の勢いは落ち着くどころか日に日に増す一方で、社会の様子もずいぶんと変わりました。

 

入店前のアルコール消毒もすっかり生活習慣となった


ジモコロでは、コロナの第1波が猛威を奮っていた昨年の4月から6月にかけて、お店同士のゆるやかな連携や情報交換を目的とした「みんなの現状報告 〜そっちはどうだい?〜」というアンケート取材を実施。

地域や業種を問わず、ありのままの声を詰め込んだ記事は、たくさんの方にご協力いただき、予想以上の反響がありました。

しかし、この企画から半年が経った今でも状況は依然厳しく、第3波の影響で昨年以上の局面を迎えているお店があることも、容易に想像がつきます。

 

ジモコロは一メディアとして『彼らを救う』なんて大それたことはなかなか言えません。でも「どうにもならん」と匙を投げずに、今の状況を伝え続けることに意味があると思っています。

 

そう考え、私たちは前回取材した方々に、改めてその後の状況を伺ってみました。

ローカルの声を集めて可視化すること、そしてたった一回きりではなく、その後の経過を定点的に伝えていくこと。それが、この終わりの見えない状況を打破するきっかけになるかもしれません。

そんな希望を胸にもう一度、私たちの大好きなあのお店の声に耳を傾けたいと思います。

 

みんな〜〜〜!!! その後はどうだい???

 

 

【今回、紹介するお店】

・IL LAGO(京都/飲食店)

・ALL YOURS(東京/アパレル)

・やわい屋(岐阜/民藝と本の店)

・ Backpackers’ Japan(東京・京都/宿泊業)

 

【京都】IL LAGO(イルラーゴ)

IL LAGO 堀田 樹さん

業種:飲食業(イタリアンバル)
所在地:京都府京都市中京区恵美須町534−29
SNS:Instagram

■前回アンケートからの変化

テイクアウトから店内飲食が中心となり、若いお客様が急激に増えました。

夕方早めのお客様の利用が減り、逆に21時以降の遅い時間帯にお越しになるお客様が今まで以上に増えたように感じます。売上としては例年通りか、やや少ないくらいまで回復することができました。

 

また「閉店しません。」のポスターの影響に加えて、前回の記事を見て知ってくれた方々の来店もあり、とても嬉しかったです。

 
 
 
 
 
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また夏ごろからは感染予防対策をしながらイベントを増やし、月1回の頻度で他店とのコラボ企画を開催しました。とても盛況で、お客様にも喜んでいただけたように思います。

 
 
 
 
 
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2020年10月には3周年を迎えました

■現在の状況と今後の展望

昨年12月の来店・売上は、第3波の影響で一昨年の12月に比べるとかなり落ちました。京都市もかなり人通りが減り、21時以降になると若い子以外、ほとんど外を出歩いていない状態です。

時短営業の都合上、忘年会や新年会の二次会需要を受けることもできず、年末年始の活気を感じないまま、2020年が終わったという印象でした。

正直、時短要請協力金をもらいながらでも厳しい状況ですが、このタイミングでお店の在り方を再考したり、新しいスタッフの採用をしていく良い機会なのかもしれません。また今は飲食店以外の事業案も考えたいと思っています。

 

【東京】ALL YOURS

ALL YOURS 木村まさしさん

業種:小売業・アパレル
所在地:東京都世田谷区池尻2-15-8
HP:https://store.allyours.jp/

■前回アンケートからの変化

服は体感が重要なプロダクトなので、事前予約制でリアル店舗を再開しました。

短期間で収束することは難しいと想定し、かつ昨年4月のようにみんなが自然と自粛をする雰囲気はなくなっていくと考えていたので、東京都の感染拡大防止ガイドラインを読み込んで、安心して来店&試着できるように店舗運営ポリシーを明確にしました。

 

■現在の状況と今後の展望

今は1時間に1組でご案内していて、お客さんが店内で複数グループにならないように運営しています。

また、まだ具体的にお話しできないのですが、「やさしさ」をブランドに実装していきたいと思っています。

 

【岐阜】やわい屋

やわい屋 朝倉圭一さん

業種:小売業(民藝店・ギャラリー・私設図書館)
所在地:岐阜県高山市国府町宇津江1372−2
HP:https://yawaiya.amebaownd.com/

■前回アンケートからの変化

有り余った時間を利用して、集落の大工と店舗改装を行いました。新しい空間はギャラリーと銘打っていますが、明確な目的はありません。家のど真ん中に無意な空間を今あえて作った理由は、空っぽなものを抱えることが時代の荒波を乗み込まれない為の”ウキ”のような存在になると感じたからです。

 

同時に屋根裏の古本屋を閉じて、私設図書館として開館しました。人と人の距離が問い直される現代において求められているのは、明確な答えではなく、皆が一度きちんと立ち止まることではないかと考えています。ギャラリーも図書館もどちらもこれまでの”わかりやすさ=お金を効率的に稼ぐこと”とは距離を置いた存在です。

民藝の器屋は、以前から景気の良し悪しの影響を受けないと言われていました。昨年はその言葉が偽りでなかったことを身をもって実感する年となりました。扱っているものが日常生活で使う雑器であること、誰かに見せる物でなく自身の生活の豊かさを考えて選ぶお客様が多いことが、困難に時期を乗り越える一因となったのではないかと思っています。

 

「細く長く続けられる」ということは、時代の先行きが見えない今日においてはとても意味のあることです。これからも時間をかけることが許される立場を最大限活用して、ここにあり続ける事の意味を問い続けていきたいと思います。

 

■現在の状況と今後の展望

飛騨高山はここ数年インバウンド観光が一番の集客源でしたので、打撃を受けた業態は大変多い印象です。

バブル期に爆発的に増えたペンションやモーテル、道の駅やテーマパークのほとんどが今日ではその文化ごと衰退してしまったのと同じように、時代の恩恵を預かる仕事は、その逆に時代の悪い影響も強く受けてしまうものですので、致し方ないのかもしれません。

 

最近、街中を歩いてみるとお年寄りが元気なことに目が行きます。しばらくの間、日本人より外国人の観光客がほとんどだった通りには、子供の頃に見ていたような地元の人々がゆったりと”生活している日常”が広がっています。

その景色はかつて多くの人が望郷の念を抱いた”小京都・飛騨高山”の風情と同じものなのかもしれません。つかの間ですがこの街はいつかの当たり前を取り戻したようにも見えます。

 

今はしっかりと立ち止まってここでの暮らしに耳を澄ます時期だと思います。僕らの営みは非常に小さいもので吹けば飛ぶようなものですが、その分、気負いすることなく細く長く続けることができます。この土地で、特別な当たり前を時間をかけ手間をかけて育てていきたいです。

 

【東京・京都】 Backpackers’ Japan

Backpackers’ Japan 石崎嵩人さん

業種:宿泊業(ゲストハウスtoco. / Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE / Len 京都河原町 / CITAN)
所在地:東京台東区蔵前2-14-13(Nui.)
HP:https://backpackersjapan.co.jp/nuihostel/

■前回アンケートからの変化

飲食に関しては想像していたよりも回復が早く、宿泊客数が減少しているにも関わらず、9月時点で売り上げの7割程度を取り戻している店舗もありました。

昨年の緊急事態宣言中から、もともとの常連さんをはじめ、付き合いのある会社の方や友人知人など、多くの方から応援の声をかけていただき、周囲の人々との確かなつながりを認識した次第です。

 

現在も日々変わる情勢のなか店舗ごとにさまざまな対応をし、宿泊部門に関しては海外からのお客様がいないながらも、前年比3割程度の稼働があります。

また昨年の4月時点で「新型コロナウイルスが収束しなくとも活動が可能なかたちへの業態変更、また新規事業立案も視野にいれ話し合いを進めます。」と回答させていただきましたが、5月に全スタッフに呼びかけ、新規事業案を募りました。

 

■現在の状況と今後の展望

感染拡大の抑止への努力は、いまは特に医療体制の観点から肝要かと思います。

難しいのは飲食業態は営業をする中でのジレンマをさまざまに抱えているという点。訪れてくれる方、スタッフ、医療関係者、卸業者、生産者など想像力を働かせる方向を広げた上での判断が必要だと感じています。

 

社内の新しい取り組みとしては、スタッフから集めた新規事業案の中から、ロースタリー(焙煎所)とキャンプ場事業が通り、現在準備を進めています。ロースタリーは錦糸町と押上の間で春頃オープン。キャンプ場は数件の物件を候補に挙げ、視察を重ねつつ事業計画を詰めています。

 

みなさんの現状もお待ちしています

「みんなの現状報告 〜そっちはどうだい?〜」では引き続き記事を公開していきます。

記事を読んだ皆さんも、SNSで「#そっちはどうだい」のハッシュタグをつけて、現状を報告していただけるとうれしいです。

先の見えない、大変な状況だと思います。みんなで現状や取り組みをシェアして、少しでも前向きに日々を過ごしていきましょう。いつかまた、笑って会える日を信じて。

OGPイラスト:小松佑