「さいきん調子どう?」「この間、久しぶりに外食したよ」

長く続いた緊急時事態宣言が解除され、「やっと日常が戻る」と安堵したのもつかの間。都市部では感染者数が再び増加し、未だ心休まらない日々が続いています。

 

全国の人たちが直面している状況や対策についてのリアルな声を集める連載「みんなの現状報告〜そっちはどうだい〜」、今回は漁業の現場で働く人たちの声をお届けします。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの飲食店が営業縮小を余儀なくされました。それによって、魚や野菜の出荷需要が激減。全国の一次生産者に深刻な被害を与えています。

 

しかし一方では、ECサイトの立ち上げや動画配信サービスなど、この状況を打開するための取り組みも始まりつつあります。全国の漁業関係者が、今何を思い、そしてこれからの行く末をどのように考えているのか、話を聞いてみました。

 

それでは……

みんな〜〜〜!!! そっちはどうだい???

 

 

【今回、紹介する人たち】

・藍の匠衆(福岡/漁師)

・石巻魚市場株式会社(宮城/魚市場)

・遠藤鮮魚店(山形/魚屋)

・魚谷屋(東京/海鮮居酒屋)

・フィッシャーマン・ジャパン(宮城/漁師集団)

【福岡】藍の匠衆(漁師)

藍の匠衆 両羽 勝さん

業種:漁師(藍の匠衆)
所在地: 福岡県北九州市小倉北区藍島
HP:http://ainosawara.com/

■現状について

「藍の匠衆」は北九州・藍島を拠点に活動する漁師集団です。

まず、高級魚全般が完全に売れなくなりました。コロナが騒がれはじめた2月ごろから売上が減り始め、緊急事態宣言が出てから完全にアウト。飲食店が休みなため、業界全般的に落ち込んでいます。

 

特に高級魚は中央(大都市)送りが多いので、そこに送る業者が買っていたものが売れなくなりました。スーパーで売れる大衆魚も暴落とまではいきませんでしたが、やっぱり値段は少し下がりました。

 

4月はトラフグを獲りますが、売上は例年の3分の1。北九州は都市への卸業者がほとんどなく地元消費がメインなのでまだいい方で、都市部を中心に取引する市場や漁師の中には、もっとひどいところもあるらしいです。ヒラメが1kg10円というレベルだとか……。

 

売上で言うと、3月は100万くらい、4月は200万円くらい落ちました。給付金ではまったく追いつかないし、漁師は何もしないとまったく収入がない。色々と出ていくお金もあるし、生活もあるので、仕事をやめるわけにはいきません。

飲食店も開けたら悪、みたいな風潮があるけれど、開けるのも閉めるののも立ち止まるのもすべて辛い。みんなそれぞれだから、正解はないと思います。

 

■今後の展望

正直なところをいうと、今後どうなるかは全く見通しがたたない状況です。じきに街に人が戻るというけれど、新しい生活様式も出てきたし、いままで通りになるのは相当な時間がかかると思う。

どこまで続くか読めないといっても魚を獲って売らないと生活できないし、地元の様子をみながら、臨機応変に対応しないといけないかなぁ。

 

コロナもある意味では自然の理で、漁師はそれに対応していくしかないですね。やっぱり自然に人間は敵わない。こういう時こそ若い人たちが先頭に立って、これからの道を作っていければ良いかなと思います。

【宮城】石巻魚市場株式会社(魚市場)

石巻魚市場株式会社 須能 邦雄さん

業種:魚市場
所在地:宮城県石巻市魚町2丁目14番地
HPhttp://isiuo.co.jp/Top/index.php

■現状について

石巻魚市場は漁港と市場が一体となっており、地域の台所としての役割と、他の地域への水産物の供給地点としての役割を担っています。東日本大震災により、当時東洋一と言われた水揚棟が全壊しました。そして平成27年9月1日に新水揚棟が建設され、供用開始となりました。

 

今回の新型コロナウイルスの影響は大きく二つあります。

一つ目は、高級魚ほど値段がつかなくなっていることです。高級魚を取り扱う都市部の飲食店や専門店の休業のため、高級魚の需要が低下しています。スーパーなどの量販店に出荷している場合も、魚価が抑えられる傾向にあります。切り身にする加工費も含め価格を維持するため、魚価は低下せざるをえません。

 

二つ目は、運送業者や資材業者といった関連産業への影響です。都市部への出荷量が減少したため、氷や発泡スチロールといった資材の利用、運送量も減少してしまいました。

 

■今後の展望

緊急事態宣言が解除され、飲食店も徐々に営業再開していますが、客足の戻りは鈍いようです。長期間にわたって外出が自粛されたため、コロナ前の状況に戻るには時間が必要です。そのため、高級魚を中心とした魚価の低下はまだ続くでしょう。

 

ただ、外出が控えられ、時間に余裕がある今だからこそ、できることはあると思っています。私たちは魚市場として、「魚を食べる」だけでなく「魚をさばく、料理する」などの参加する形の魚食体験を普及していきたいと考えています。

これからもより一層、まちを活性化させるため、魅力ある魚を皆さんのもとにお届けしていきます。

【山形】遠藤鮮魚店(魚屋)

遠藤鮮魚店 遠藤 文人さん

業種:魚屋
所在地:山形県南陽市宮内2534
営業状況:営業中
HP:https://www.endousengyoten.com/

■現状について

お取引させていただいている飲食店さんと旅館さんが、ほとんど休業なさったので、卸売りの売り上げが飛んでいきました。同店舗内の飲食部門も予約は全キャンセルで、こちらも売り上げはほぼゼロです。

 

魚屋の本丸である小売りは、常連のお客様に助けられながら営業を続けています。状況は悪くなる一方に思えますが、「ピンチはチャンス」と毎日自己暗示をかけて踏ん張っております。

 

■今後の展望

この昨今の状況を踏まえて、家で取り扱っているお魚や加工品をお取り寄せできるようにしました。

魚をさばいたことのない人でも安心して調理できるよう「easy」「normal」「hard」から難易度を選べるようにしました。また捌き方や調理方なども全力でサポートするので安心です。

 

美味しい食事は体にも良いですし、精神的にも効果があります。美味しく楽しい食卓に貢献出来るように頑張ります。コロナに負けない!!

【東京】魚谷屋(海鮮居酒屋)

魚谷屋 魚谷 浩さん

業種:飲食業(海鮮居酒屋)
所在地:東京都中野区中野2-12-9-B1
営業状況:休業中
HP:http://uotaniya.fishermanjapan.com

■現状について

まさかこのような事態になるやなんて〜〜!! 2020年に入り開業してから4年目、多くの常連様に贔屓していただき、今年は新たな挑戦の年でもあったので、めちゃくちゃ意気込んでいました。

 

魚谷屋は宮城の漁師さんと連携して季節を代表する海産物を名物に、旨い酒(これまた宮城の酒)を味わいながら、素材の持つストーリーを感じていただくお店でした。それを証拠にオープンしてから今までグランドメニューは設けないスタイルでやってきました。そんな中のこの騒動。あ〜〜〜いやになっちゃう!

 

3月に入り、少しずつ危機感が芽生える中、従業員を減らしながら営業をしてたのですが、お客様が途絶えることはなく、前年度比70%を維持していました。その頃は「これまで飲食店として、しっかりとしたメッセージを伝えることができていたからなんや!!」と少し天狗になっていました。

 

でも、3月26日だったかな? 東京都知事が自粛要請の記者会見を行なったのは。それを見て、無期限の休店をすぐに判断しました。その時はまさかこんなに長くなると思っていませんでしたが、とにかく従業員や家族の安全を確保することが第一。3月、天狗になるぐらいお客様の出入りもあったので、ここはと思い自ら鼻を切りました。

 

仕入れも全てストップし、在庫がある限りテイクアウトを実施しましたが、4月1日より従業員はみんなお休みしていただき、再開の時を待つことにしました。

 

■今後の展望

ただただ、じぃ〜〜としていられるわけもなく、「ピンチをチャンスに」の思考で何かやれることがないかと考えると、出てくる出てくる。まず最初にYouTuberに化け、お家で魚介を楽しむコツを配信し始めました。

さらにECサイトでの魚介販売に紐付け、オンラインのお魚さばき教室を実施。飲食店としてできる事の可能性を高めることができたと思います。現在は再開のタイミングを見計らっていますが、従来の営業スタンスで再開できるわけもなく、悶々としています。

 

今は飲食業界そのものが進化するとき。よく先を見据えて対応していきたいと考えています。

【宮城】フィッシャーマン・ジャパン(漁師集団)

フィッシャーマン・ジャパン 長谷川 琢也さん

業種:漁師集団
所在地:宮城県石巻市千石町8-20
HP:https://fishermanjapan.com/

■現状について

フィッシャーマン・ジャパンは宮城県石巻市を本拠地に「漁業をカッコよく 」をコンセプトに掲げて活動する漁師団体です。メンバーは水産業に関わるさまざまな職種によって構成されており、今回のコロナが漁業界全体に影響を与えたことを身をもって感じています。

 

3月26日の緊急事態宣言をきっかけに飲食店が相次いで休業し、その影響は魚屋にも広がりました。突然卸先が無くなってしまったため、多くの魚屋が魚を極端に安くして売り切るか、それでも難しければ余って廃棄する事に。そんな危機的な状況を少しでも解決するために、我々は魚のECサイトとZoomによるオンラインお魚さばき教室を立ち上げました。

 

インターネットでの魚販売にハードルを感じる場面もありましたが、それぞれのノウハウを集中させることで無事実現し、結果としてたくさんの人に利用していただけました。日頃から「海の課題解決」をもとに考え、取り組んできたからこその賜物だと思います。

 

■今後の展望

上記以外でも、石巻の水産加工会社でインターンを経験した学生が運営している「お魚アウトレット便の支援や、コロナの影響で人手不足に悩んでいる会社を中心としたワークシェアサービスの立ち上げなど、日々さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。

 

この4月・5月は「漁師になりたい」という内容の問い合わせ件数が過去最高でした。おそらく今後、一次産業に従事したい若者がもっと増えていくかもしれません。

 

コロナでさまざまな状況が一変しましたが、そんな時だからこそ、今までのノウハウや経験を活用して、新しい人材や魚のまわし方について考えていきたいと思っています。

みなさんの現状もお待ちしています

「みんなの現状報告 〜そっちはどうだい?〜」では引き続き記事を公開していきます。

記事を読んだ皆さんも、SNSで「#そっちはどうだい」のハッシュタグをつけて、現状を報告していただけるとうれしいです。

先の見えない、大変な状況だと思います。みんなで現状や取り組みをシェアして、少しでも前向きに日々を過ごしていきましょう。また笑って会える日を信じて。

 

OGPイラスト:小松佑