海辺によくあるテトラポッド、1個の重さは20トンだった【軽自動車20台分】

2019.07.19

海辺によくあるテトラポッド、1個の重さは20トンだった【軽自動車20台分】

海辺や川辺で見かけるテトラポッド、あれってどうやって作るの? 1個あたりの値段は? 一般人でもカタログを見て買えるの? 歌手のaikoさんはテトラポットと歌っていたけど、正式な商標はあったりするの? その秘密を探るべく、お話を伺いました!

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    こんにちは。ライターのオケモトです。強風の中失礼します。

    画面右には美しい海が広がっていますが、今回見てほしいのは、その手前。

     

    テトラポッド

     

    テトラポッドって、あの丸みを帯びて脚がついているようなフォルムが可愛いし、海辺に雑多に積み上げられている感じも好きなんですよね~。海に行ってもテトラポッドばかり見てしまいます。

     

    それにしても、こんなにたくさんのテトラポッドを誰が作ってるのか。きっと職人が一つ一つ丁寧に作っているに違いない!

     

    というわけで、テトラポッドに詳しいこちらのお二人に話を聞きに来ました。

     

    日本消波根固ブロック協会

    消波ブロック等を使用した土木事業に関する施工技術の調査研究を行う、国内唯一の団体。

    公式HP

     

    株式会社不動テトラ

    テトラポッドを取り扱う建設業者。他にもトンネルや道路、港湾など構造物の築造なども行っている。

    公式HP

     

    テトラポッドってどうやって作るの?

    「よろしくお願いします! 今日はテトラポッドについて聞きに来ました」

    「その前に、おそらくオケモトさんが言っている『テトラポッド』というのは、『消波ブロック』のことですね。本来、『テトラポッド』という名称は、すべての消波ブロックを指すわけではありません

    「ん? 海辺に置いてるあれ、テトラポッドじゃないんですか?」

    「消波ブロックは各社が作ってるんですが、テトラポッドという名称は弊社……不動テトラが作っている↓この形の消波ブロックを指すんです」

     

     

    「あぁ~、なるほど。シャープペンシルとかマジックテープみたいに、商品名が有名になりすぎてジャンルそのものを指すようになった、みたいなことですか」

    「ですね」

    「理解しました。では改めて質問なんですが、そもそも、消波ブロックってなんで必要なんですか?」

    「その名の通り、波のエネルギーを消すことを目的として作られています」

    「一番わかりやすい例ですと、港には船が入ってきたり、荷を下ろしたりしますよね? その時に、強い波があると岸壁にぶつかったりする。そこで、防波堤を作り、さらに消波ブロックを置いて波を弱める必要性があるんです」

    「あ、なるほど」

    「普通の海岸でも、付近の家に波がいかないようにだとか、道路に波がかぶらないように、といった理由があって設置しています。あと砂浜が波に取られて減らないようにとか、理由は色々ありますね」
    消波ブロックがなければ、港には気軽に船が出入りできず、海岸線沿いの道路や家は水浸しになりかねないと。かなり重要な役目があったんですね」

     

    港の様子。防波堤と、その周囲には無数のテトラポッドが設置され、波から港を守っている(長崎県・阿連漁港)

     

    「海辺に行くと何百個も……それこそ無数のテトラポッドを見かけます。どうやって作っているんですか? 職人が手で掘ってる?」

    「いえ、残念ながらテトラポッド職人はいません。我々がテトラポッドの型枠をお貸しして、業者の方がコンクリを流し込んで完成させます」

    もっとも標準的なもので20トンあるし、中には5メートル(80トン!)のものもあります。人間が掘るのは無理ですね」

    「え、ちょっと待ってください。標準的なもので20トン!? 軽自動車の重量が1トンくらいだから……テトラポッド1個と軽自動車20台が同じ重さなの!? 海岸沿いに無数に並んでるあれ、一個一個が、軽自動車20台分あるってこと?

    「我々にとっては当たり前なんですが、知らない人は驚くかもしれませんね」

    「そんな重たいもの、どうやって海まで運んでるんですか? 軽自動車20台で運んでる!?」

    「いえ、まず運ぶという考え方を捨ててください

    「???」

    「何トン・何十トンものテトラポッドを、海辺まで何度も運ぶのはあまりにも効率が悪いというか、ほぼ不可能です。そのため、海辺に『型枠』だけを運び、現地で生コンを流し込んで作ります

    「そういうことか! 運ぶんじゃなく、現地で作るんだ!」

     

    現場に型枠を持ち込み、組み立てて―

     

    コンクリを流し込んで作ります

     

    作業員とのサイズ感の違いに注目してください。確かにこんなの運ぶのは無理だわ……

    「頑張ったら、24時間で何個作れます…?」
    「仮に型枠の個数が無限にあるとして、あとは生コンがどれくらい供給できるか……」

    「生コンの供給量は一日だいたい100立方メートルくらいかな。なので1グループが1日に作れるテトラポッドは、一番小さいので一日50個。一番大きいのだと3個くらい」

    「しかも、コンクリが固まるまでに数日かかるので、実質24時間ではひとつも完成しません」

    「え? え? え? 海辺の、あの何百個ものテトラポッド……そんなに少量ずつ作ってるの!!?? 途方もない話ですね!」

    「人員を増やせるなら、グループを増やすことでもっとたくさん作れますけどね。みなさんが想像してるより少ない数しか作れないんです」

    「個人的にテトラポッドを購入したいんですが、20トンクラスの完成品1個だと、値段はざっくりいくらでしょうか」

    「ざっくりだと、20万円くらいですかね。ただ個人には販売してませんが」

    「えぇ~!? せっかく住んでるマンションに置こうと思ってたのに」

    「大家さんに怒られるので、絶対やめたほうがいいです」

     

    完成したテトラポッドはクレーンで移動させます

     

    防波堤などの場合は船で運びます。これ、一体何トンあるんだ

     

    「先ほど、大きいものだと5メートルあるとおっしゃってましたが、僕の周囲ではあまり見かけた記憶がありません。どこに使うんですか? 巨人の漁港?」
    「防波堤の一番先なんか水深が深いので、波も大きくなるんですね。そういうところに置きます」

    「あとは沖縄とか。台風の常襲コースなので」
    「なるほど! 台風がよく来るところは波も大きいから……」
    「小さなものだとふっとんじゃうんですね。人間にとっては運ぶことすら困難な重さなんですけど、自然はすごいですよ」
    「なので、我々は設置の前にその場所の波を計算します。それに基づいて適切なテトラポッドを選ぶわけです」

    「ちなみにテトラポッドって一度設置したら永遠に使える?」
    「いえいえ、波に洗われ、砂利に洗われ、どんどん削れて行ってしまいます。地盤が柔らかいところですと、沈んでいってしまうこともあります」

     


    頭しか出ていないテトラポッド

    「波に削られるとかさが減ってくるので、そうしたら新しいのを上に積んでいきます。かさ上げっていいます」
    「上に新しいのを積むのか! 重いからどかせないし、海に浸かってるから補修も難しいですもんね」

     

    テトラポッドの歴史

    「テトラポッドってどこで生まれたんですか? 日本?」
    フランスのネールピックという会社1949年に発明しました。フランスの植民地の一つ・モロッコに火力発電所がありまして。その突堤に使われたのが最初だと言われています」

    「フランスが発明したのか! じゃあテトラポッドってフランス語だったんだ」
    「いえ、ギリシャ語です。4本の脚という意味です」
    「そこはギリシャ語なんだ」

    「ちなみに日本では昭和30年(1955年)ごろに使われ始めました」

     

    「最初の最初、一番始めのテトラポッドって、どういう形だったんですか?」

    「その昔、防波堤を作る時はで作ってたんですけど、流されないような大きな石ってあまりないんですね。大きくても10トンくらいまでしかない」

    「確かにそんなにでっかい石、あまりないですよね」

    「そこで、コンクリートで真四角の立方体を作って波消しに使いました。しかし立方体は波に対して安定性があまり良くない」

     

    「というわけで、ネールピック社が、この一番左(黄色いイラスト)の波消しブロックを発案しました。そこからより効果のあるものを突き詰めていって、現代では右のタイプ(赤いイラスト)になったんですね」

    「最初のは脚が丸かったんですね。丸いままだとダメだったんですか?」

    脚は大きいほうが波を消せるんです。なのでどんどん伸ばしていき……かといって尖りすぎると脆くなるので、今のバランスに落ち着いたって感じですね」

    今の形のテトラポッドのほうが、コスパもよくなりました。立方体だと生コンが60トンくらい必要だったんですが、今は20トンくらいで済みます」

    「イメージとしては正方形のほうが防御力が高そうに思えます。だって脚と脚の間はスカスカってことですよね? 住宅の壁だって、隙間でスカスカだったら外気が入ってきちゃうじゃないですか」

    「消波ブロックに関しては、そうではないんです。隙間があるとその中に波が入り込んで、エネルギーが分散され、弱まってくれる

    「ちなみに一般的なテトラポッドは、容積の半分が隙間で、もう半分がコンクリートです。また、脚と脚が絡まり合って動きにくいという特長もある。形にはちゃんと意味があるんですよ

    「へぇぇ~! 意外! 隙間があるほうが良いんだ」

    「とはいえ、隙間は多すぎても少なすぎてもだめで、しかも場所によって、波によって最適な形があります。バランスが一番大事ということですね」

     

    あらゆる場所に対応するため、こんなに色んな形のブロックがあります

     

    「例えばなんですけど、消波ブロックの代わりに二宮金次郎の石像を並べても効果はありますか?」
    「複雑な構造のほうが波は消せるので、面白いとは思いますけどね」

     

    「ありなの?! じゃあ作りましょうよ~」

    「ただ、複雑な形状はコストがかかるから、予算的には厳しいかなあ。廃校になった学校から集めるとか……?」
    強度に不安がありますね。あと、波の高さによっては5~6メートルの巨大な二宮金次郎を作らなきゃいけない。そんなものが無数に海辺に居たら、怖くないですか?」
    「無理か……。ていうか、そもそもの疑問なんですけど、ブロックではなく、巨大な壁を作ったとしたら効果はありますか? 進撃の巨人みたいな」

     

    進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

    「水を防ぐという点では効果はあります。ただ、かなり分厚く作らないとダメなので大変でしょうね」

    「それに、大きな壁を作ると海が見えなくなります

    「あ、それは寂しいですね」
    「あと、壁は波を“消す”のではなく、“反射”しちゃうんですね。そうしたら船が港に近づくのが困難になりますね」

    「反射した波と波がぶつかると、三角波っていうもっと大きな波になるので、その対策も必要になります」

    「う~ん、難しいな。壁の周囲をぐるっと消波ブロックで囲むとか」

    「じゃあ消波ブロックだけで良いのでは?」

    「あ……」

     

    日本を守る消波ブロック

    「消波ブロックって世界中にあるんでしょうか」
    「もちろん海外でも使われています。私は2年くらい前にアフリカに据え付け指導にいきました」

    「ひょっとして、日本の消波ブロックの技術ってめちゃくちゃ進んでます?」

    「かなり進んでいます。海に囲まれた国ですから。しかも台風の常襲コースでもあります。どうしても防災技術が発達しますね」
    「また、波は国土を削るという問題もあります。アメリカなんかは広いから、砂浜がすり減っても別の場所に住めますが……日本は狭いから、ちょっとでも削られるわけにはいかない。ということで消波ブロックの技術が進んできました」
    「島国だからこそ、国土を守るために消波ブロック先進国になったと。ちょっと誇らしい気分ですね。今日は貴重なお話をありがとうございました!」

     

    まとめ

    気軽にテトラポッドの作り方を聞きに行っただけなんですが、海辺の居住区の確保、更には削られる日本の国土を守るためにテトラポッドが大活躍していることがわかりました。

    かっこいいだけじゃなくて、重要な役割を持っていたんですね。

     

    みなさんも海辺に行った時は、海だけではなくテトラポッドにも注目してみてください!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    オケモト
    オケモト

    1992年生まれ。静岡県出身のオモコロライター。街にあるオブジェや変わった遊具のある公園が好き。

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