
日本全国を旅しながら取材している徳谷柿次郎です。
日本酒、好きですか!?
この記事で紹介したいのは東北の日本酒業界のおもしろい動き。
それはズバリッ!!!!
「クラフトサケ」と「自然酒」
です。
特に、秋田県男鹿市の「稲とアガベ」がつくるクラフトサケ、福島県郡山市の「仁井田本家」がつくる自然酒は、僕が本当においしいと思っている日本酒でして。ぜひ、紹介したい。
で、クラフトサケって? 自然酒って?
それってなんなの!?!?
と、思っている方も多いと思うので、ちょっと説明します。
まず、クラフトサケとは、日本酒と同じくお米を原料としながら、「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、新しいジャンルのお酒。
ハーブやフルーツなどの副原料を足したり、もろみを搾らなかったりなど、日本酒の製造工程から何かを足したり引いたりしてつくられます。言ってしまえば、「どぶろく」も、クラフトサケに分類しちゃってもいいんです!
それらは、ほとんど日本酒ではあるけども、厳密には日本酒として販売されるものではない。クラフトサケは、日本酒よりも製造の自由度が高くて、従来の日本酒にはない味や香りが楽しめる、そんなお酒なんです。
稲とアガベのつくるクラフトサケは、無肥料無農薬の自然栽培米を使用して、「田んぼから醸造まで無添加」で醸造しています。
稲とアガベ
そして、自然酒とは、農薬や化学肥料を使わない、自然米(酒米)を醸造してつくられる日本酒のこと。
自然豊かな福島県・郡山市で312年続く「仁井田本家」ではなんと、自然米100%での100%純米造り、さらに、自然派酒母100%という手間のかかる製法で日本酒づくりに長年向き合っています。
仁井田本家
「自然酒」については、以前取材した寺田本家の記事に詳しいのでぜひ!
クラフトサケと自然酒。
どちらも日本酒の裾野を広げる挑戦。
このおもしろい動きをただただ、伝えたい!
そんなわけで、創業2年の稲とアガベを通じて、お酒だけではなく、男鹿の観光の流れまでつくっている代表の岡住修兵さんと、老舗酒造でありながら常に新たな動きを見せる仁井田本家の女将・仁井田真樹さんに対談形式で話を聞きました。
話を聞いた人
岡住修兵さん(おかずみ・しゅうへい)
1988年、福岡県出身。醸造家。秋田に新たな酒蔵を造るプロジェクト「稲とアガベ」の代表。秋田県の新政酒造で4年半勤務、石山農産で自然栽培を学んだ後、「稲とアガベ」を立ち上げる。日本酒の製法にアレンジを加えた「クラフトサケ」というジャンルの酒商品を販売。
仁井田真樹さん(にいだ・まき)
福島県郡山市の1711年創業の仁井田本家18代目蔵元の女将。イベント企画、商品開発、SNSマーケティングなどを担当。農薬・化学肥料不使用の原料を使った手間のかかる製法である「自然酒」を、広く知ってもらうべく、全国各地のPOPUPイベントにも参加。
日本酒の味だけど日本酒じゃない。「クラフトサケ」とは?
「さっそくなんですが、『クラフトサケ』っていったいなんなんですか?」
「……僕は、日本酒が大好きなんですよ」
「(ものすごく笑顔だ……)」
「だから、日本酒を造りたかったんですけど、今って基本的には、日本酒を造るための『清酒製造免許』の新規発行は認められてないんです」
「新しく日本酒を造りたい人がいても、造っちゃいけない? なんでですか?」
「簡単に造れるようになると市場が荒れてしまうから。つまり、酒蔵を守るためですね」
「なので、僕は、日本酒とは名乗れないけど日本酒の味がするお酒を造っています。『その他の醸造酒免許』というのを活用して、日本酒の定義を少しだけ外して造ってるんですね」
「それが『クラフトサケ』?」
「日本酒の定義は『米と麹と水を発酵させて濾したもの』なんですけど、ここに、なにかしら副原料を足しているのが『クラフトサケ』なんです。似たような酒を造っているところが全国に7社くらいあったので、みんなでまとまって『僕らが造っているものは、クラフトサケです!』と言っています」
「稲とアガベのクラフトサケは、味自体はおいしい日本酒なんですよね。日本酒ってなんだっけ? って考えるきっかけにもなる。“厳密には日本酒じゃないもの”を通じて、日本酒を知るきっかけになるという側面もありますよね」
「クラフトサケと言いはじめた理由は、商品を紹介したときに必ず『これは日本酒だよね』と言われるからなんですよね。日本酒には法律上の厳密な定義があるので、『日本酒じゃないんです』という説明をしないといけない。説明が長くなるんですよね。これが、めちゃくちゃ大変なんです!(笑)」
「たしかにそれはちょっと、めんどくさそうですね」
「福島・南相馬の醸造所『haccoba(はっこうば)』は立ち上げ当時から『haccoba -Craft Sake Brewery-|ハッコウバ クラフトサケブリュワリー』という名前を掲げていて」
「なるほど」
「メディアでもクラフトサケという言葉が使われ始めていたから、名前的にもキャッチーだし、名前があれば認知も広まるのではないかと思って。『クラフトサケブリュワリー協会』もつくりました。僕が会長もやらせてもらってます」
「真樹さんは、クラフトサケという新しい流れをどう感じてますか?」
「日本酒の今後って大丈夫なのかなあ、って」
「日本酒の今後?」
「今は人口が減っているし、若い人のなかでお酒は飲まなくていいって人も増えてきている気がするんですよ」
「そうですね。お酒を飲まない人は増えている印象があるし、コロナがあったことで、みんなお酒が弱くなったという印象もありますね」
「そうやってお酒の需要が落ちてるところに、クラフトサケという、若い子にウケそうな新しいジャンルが入ってきたら、ますます日本酒の人気は下がってしまう気がして」
「いやいやっ!!!! それは違うんです!!!! ちょっと説明させてください!(笑)」
「日本酒が好きだからこそ、僕たちはクラフトサケを造っています。日本酒需要が下がらないように、日本酒と差別化したり、新しい客層を掴みたいと思っているんです。なぜなら日本酒を愛しているから。クラフトサケが日本酒の需要を下げてしまうような構造には、絶対に持っていかないです」
「並々ならぬ日本酒愛を感じますね」
「世の中って、おいしいお酒しかないじゃない? 安いお酒でも、それなりにおいしい。その中で、どうやって自分の蔵の特色を出して手に取ってもらうかというのが、今の日本の酒業界、酒業界にも必要なことだと思うんですよね」
「そういう意味では、我々は結構やりやすくて。今まで誰も造っていなかったクラフトサケにはキャッチーさ、ポップさがあるので、最初の1回は試してもらえるんです。そこでお酒の魅力を伝えられるかは、僕たちにかかっているんですけど」
「クラフトサケは、日本酒を飲んでもらうための入り口になっているってことなんだ」
「たぶんね、世の中の酒蔵のみんなは、クラフトサケ羨ましいなって思ってますよ」
「なんでですか?」
「日本酒の価格って、みんな横並びにしないといけないみたいな暗黙の了解があるんだけど、クラフトサケは、強気な価格で勝負しているでしょ」
「日本酒には暗黙値みたいな価格がある?」
「ありますね。飲食店さんは、卸値から3倍の価格で出すんですよ。卸値一升3000円で3倍だと9000円だから、一合で900円。卸値が4000円とかになると、1合が1000円を超えてくる。お店で1000円超えているお酒って、なかなか頼みづらいですよね。だから『一升3000円の壁』みたいなものはあって」
「『一杯1000円』と聞くと、どうしても高いなって印象は持っちゃいますよねえ。そのバランスが簡単には崩せないんだ」
日本酒は一般的に、一升(1.8リットル)で3,000円台の値付けが多い。稲とアガベは、500ミリリットルで約2,500円〜くらいの価格帯だ
「でも、今は資材費も上がっているじゃないですか。価格の壁を超えていかないと、生産の途中で割を食う人たちが必ず出てくるわけなんです。新しく入ってきた僕たちが酒の価値を上げていけば、日本酒の価格も500円上がるかもしれない。それが僕たちの裏の命題だと思っています」
312年続く老舗だけど、いまだに泥臭い。仁井田本家のすごさ
「さっきも、日本酒は法律によって基本的に新規参入ができないから、既存の蔵は守られているという話が出ましたよね。でも、仁井田本家は守られることに甘んじてないという感じがします。僕は仕事で全国各地に行くんですけど、本当にいろいろなところで真樹さんとお会いするんですよ」
「よく会いますね(笑)」
「全国各地のあらゆるイベントでポップアップ出店をしてるって、312年やっている老舗の酒蔵がやることじゃないですよね(笑)。めちゃくちゃ泥臭い動きをしている」
仁井田本家のポップアップ出店。グッズもたくさん
「本当に泥臭いですよね」
「褒められてる?」
「褒めてます!!!!」
「ははは(笑)。やっぱりお客さんと対面で説明して、うちはこんな蔵ですよと伝わりやすいのが、イベントなんですよね」
「仁井田さんは、やっぱり強烈なファンがいるということがすごく印象的で。今って、『ファンマーケティング』とか、そういう言葉が注目されていると思うんですけど、それを昔から地で行っているイメージがあります」
「イベント出店するときって、蔵からは私しか行かないんですよ。そこに仁井田本家のかえるのTシャツを着たサポーターさんたちが待ち構えていてくれて、みんなボランティアでイベントを手伝ってくれるんです」
イベント時の様子。サポーターのみなさまと
感謝祭の様子
「イベントをボランティアで手伝うサポーター!?」
「サポーターさんたちが、すごい愛情を持って『このお酒、本当においしいんですよ』って、他のお客さんたちにおすすめしてくれるんです。『でも私、仁井田のスタッフではないんですけどね』って言うと、お客さんは『えっ!?』って」
「びっくりしますよね。『大好きすぎるからこれをボランティアでおすすめしているんです』なんて、一番説得力がある営業トークですよね」
「そうなんです。サポーターとかファンの子が言ってくれたほうが、蔵の人間が言うより響くの」
「お酒のおいしさももちろんだけど、真樹さんの人柄がサポーターを集めている気もするなあ。角打ちイベントでも、真樹さんはお客さん一人ひとりに話に行ってましたもんね」
全国各地のイベント会場に出向き、お客さんとコミュニケーションを取る真樹さん
「最近だと、パタゴニアとコラボしてましたよね」
「そうなんですよ」
「めちゃくちゃすごい。大ニュースです」
「パタゴニアさんは、『着る』ことで環境を再生していく活動に力を入れていて。着るだけじゃ不十分ということで、『食べる』ことにも力を入れているんですね。そこで、うちの『自然米100%、100%純米造り、自然派酒母100%』というところに注目してくれて。2022年にコラボ商品の『しぜんしゅ-やまもり』が発売されました」
Taro Terasawa(C)2023Patagonia, Inc.
パタゴニアカラーのパッケージの「やまもり」。仁井田本家の酒の特徴である「甘味」を少し引いた、ドライな味わいの自然酒
「パタゴニアが選ぶとしたら、どう考えたって寺田本家か仁井田本家しかないんですよ。それくらいこのふたつの蔵の自然酒はすごいんです。この規模で、すべて無農薬でお酒造りをしているところなんて、そのふたつしかないんですから。福島の誇りだと思いますよ」
「こないだ蔵に行ったら、仁井田本家の敷地内に、テントサウナが設置されていて。入らせてもらったんですけど、これがすごくて」
「サウナ!?!?」
「水風呂がすごくて。自社田の軟水と、自社山の硬水を混ぜた日本酒にも使っている仕込み水をステンタンクに入れてそこに飛び込むんですけど」
「すごい!! 仕込み水の水風呂!!」
「またこれが、井戸水だからキンキンに冷たいんですよね」
「今、いろいろな人がいろいろな手段でサウナをつくっているじゃないですか。本来なら後発って負けるはずなんですけど、312年の歴史のある酒蔵の仕込み水に飛び込めるって、強すぎますね。サウナのあと、体調面も考えながらですけど、お酒を飲んだりして。そんなサウナ、誰にも真似できないですよね」
「それは300年同じ場所でやっている強みだと思います。私も各地のイベントに行くけど、みなさんにもぜひ蔵見学に来て欲しいんだよね。お酒が飲めない人でもぜひ」
「各地で真樹さんと会えるのもいいけど、蔵見学に足を運ぶのもいいなあ〜」
「最近の仁井田本家の商品づくりは、『若い人に手に取ってもらえるようなお酒を造る』を大前提にしていて。『かをるやま』というお酒は、宮城県のファットリア・アル・フィオーレというワイン醸造所が使い終わった赤ワイン樽でうちの日本酒を熟成させた、うっすらピンク色で可愛らしい500ml瓶なんです。日本酒を飲んだことのない若い女性に試してもらおうというコンセプトで造っています」
「あと、仁井田本家の自然酒は、なんとなくですけど、飲んだ次の日も残っていないような印象なんですよね」
「それはよく言われます。大学時代の飲み会とかで日本酒で失敗して、それ以来日本酒がきらいになる人って一定数いると思うんですよね。『日本酒ってそうじゃないよ』って、若い人に伝えたいですね」
「大学生の飲み会に『にいだしぜんしゅ』を入れる活動をしていくのとかいいんじゃないですか?」
「あはは(笑)」
「同じ日本酒でも、どういう味の違いがあって、飲んだあとに、どういう違いがあるのか、それを経験するために仁井田本家のお酒を飲んでみてほしいです。日本酒の入り口が仁井田本家だったら、日本酒の印象って全然変わってくるだろうなと思います」
酒造りのための環境づくり、土地づくりのための酒造り
「仁井田本家としての、最近の新しい動きは他に何かありますか?」
「私の旦那さんは18代目なんですけど、16代目のときに林業も営んでいたんですね。そのとき、植えてくれた杉の木が今ちょうどいい大きさになったので、それを使って3600リッター入る木桶を自分たちでつくったんです」
「日本酒の木桶って、職人さんがもういなくて絶滅寸前だったんですよ」
「へえー!!!!」
「小豆島のヤマロク醤油さんに修行に行って、うちの蔵人と地元の大工さんが木桶をつくれるようになって帰ってきて。自社杉の木桶でつくった第一号のお酒が『にいだぐらんくりゅ』です」
「パッケージがめちゃくちゃカッコいいですよね」
「お米は自社農園の栽培米、蔵つき酵母、16代が植えた杉の木桶、さらにはボトルは19代目候補のうちの子どもたちが自社山に入ってアートワークしたものになってます」
「えっ、これ、お子さんたちが描いたんですか!」
「4世代に渡って造ったお酒で、うちの最高峰。『これぞ仁井田』っていうお酒です」
「素晴らしい!」
「その木桶の端材で養蜂箱をつくったら、ニホンミツバチがやってくるようになって」
「ハチの循環までやってる。とんでもないですね」
「ニホンミツバチって少しでも農薬があると一発で死んでしまうんですよ。ミツバチが死なない環境は、お酒を造るのにも適していると思うから、死なせないぞ、と」
「というか文脈おばけすぎませんか!? 絶対に本とか出したほうがいいですよ。そういう話こないんですか?」
「いやあ。蔵元は本当に酒だけを造っていたいタイプだから、外に出るのは私の役目なんで」
「出さないと伝わらないですよ、その文脈!」
「あと、300年継ぎ足し継ぎ足し増築してきた蔵を、この機会に改築することになりました。酒づくりの時期を外して改築してるから、あと5年くらいはかかるんだけどね」
「5年!」
「娘が、まだ小さいのに、もう仁井田本家を継ぐと言ってくれているから。ミツバチが住めるくらいの環境だったり、酒造りのノウハウを次の世代につなげていかなきゃと思って動いてますね」
「稲とアガベはまだ起業して2年目だと思うんですけど、今後何か新しい展開は考えてますか?」
「私は岡住さんを単なる醸造家とは思ってなくて。経営者としてもすごいよね。酒造り以外に何個やってるの?」
「何個も!?!?」
「酒造りをしながら、『土と風』というレストランを経営しています。2023年には、『SANABURI FACTORY(サナブリファクトリー)』という食品加工所&ショップができました。ここでは酒粕でつくったマヨネーズを売っているんですね。あとは8月に、一風堂さんとコラボしてメニュー監修をしてもらった『おがや』というラーメン店をオープンしました」
「レストランに、食品加工場に、ラーメン店まで!」
稲とアガベの経営するレストラン「土と風」。新進気鋭の若手シェフの料理と、アルコールのペアリングが楽しめる
「ラーメンも、やりたいと言っていたらいろいろとおもしろい話が出てきて、一風堂さんに監修してもらえることになって。あとはパン屋もやりたいですね」
「パン屋?」
「どういう形態かわからないんですけど、パン屋をやりたいのと、あとはオーベルジュをつくるというのが、会社の3年目標なんです」
「オーベルジュも? それを全部3年でやろうとしているってことですか⁉︎」
「岡住くんは、男鹿に観光の流れをつくっている感じがするんだよね」
「よく『なんでそんなに急いでいるの』と言われるんですけど、短期間でやるということがすごく大切だと思っていて」
「短期間でやることが重要?」
「同じコンテンツを長い時間かけてつくっても、どこかの自治体には事例があるから、同じことをやったとしても男鹿半島が突出して注目されることはないじゃないですか。でも、3年というスパンでコンテンツがブワーッと立て続けにできたら『男鹿に何が起きているんだ⁉︎』とざわざわし始めると思うんです」
「ひとつの街とかエリアにいいお店が3つできると、そこは外から見たらいい土地だと捉えられるというのはよく聞く話ですね」
「3つってすごい重要ですよね。そこを4、5つにしていくともっといい。優良な場やモノを多く提供して、来た人に喜んでもらえるようにしたら、男鹿も突出した観光地になる可能性はあるんですよね」
「でも、それは同時多発的に複数人が3つの店をやるって話ですよね。全部自分で3、4つやろうとしているというのは、だいぶ過剰で異常で、でもだからこそ人の心を動かせる。僕も、まだ短い期間なのに2回も足を運んだんです」
「ありがとうございます」
「レストラン『土と風』のコース料理もすごくおいしかったです。おいしいのはもちろんですけど、さらに雇用を生んでいるのがすごいですよね。働いている若い子たちの顔を見ていると、自分の生まれ育った町で家族や友だちと過ごしていくという選択肢を岡住さんが増やしているんだと感じますね」
「そうですね。2年半前に会社を立ち上げたときはひとりだったんですけど、2年経って、メンバーは24人になりました。しかも、秋田にしては給料を渡しているほうなので、こないだの決算では、人件費がすごいことになってしまって(笑)。これをどう黒字にするかって、とても大変だなと思いながらも、もうやるしかないだろ! と思ってますね」
「次の世代の若者に、カッコいい背中を見せてますよね」
「30年後の男鹿の人口を計算すると、1万人を切るんです。そうすると産業も加速度的になくなっていく。僕はこの街を未来に残したいんですよね。そのためにはある程度、極端なことをやらなくちゃ」
「危機感が強くあるからこそできる、と」
「そのためにはもっと仲間を集めなきゃダメだし、地元の人たちの心に火をつけなきゃ。あらゆることを考えていたら、ただ単に酒を造る以外にもチャレンジしないとなと。僕がどれだけおもしろい人たちを男鹿に巻き込み続けられるかが、男鹿の未来の鍵だと思っています」
おわりに
日本酒の文化を残すため、酒造りを通じて山や田などの環境を守る、仁井田本家。
秋田県・男鹿の未来のために、クラフトサケ造りだけではなく、様々な仕掛けでまちづくりをする、稲とアガベ。
歴史やジャンル、視点も全然違うこの2社が、刺激を与え合っている酒業界。
創業312年と2年の会社が影響を与え合える業界やカルチャーって、とっても健全だし、未来があるに決まってる。
なにより、改めて伝えておきたいのは、仁井田本家の日本酒も稲とアガベのクラフトサケも、めちゃくちゃおいしいお酒だということ。
飲めばきっとわかるはず!
お酒に興味がある人も、ない人も、日本で起こっているこのおもしろい動きをぜひ知ってもらいたいです。
お酒の未来を考えることは、自然と、ローカルと、日本の未来を考えることかも知れないから。
構成:荒田もも
編集:くいしん
合わせて読みたい
この記事を書いたライター
株式会社Huuuu代表。8年間に及ぶジモコロ編集長務めを果たして、自然大好きライター編集者に転向。長野の山奥(信濃町)で農家資格をGETし、好奇心の赴くままに苗とタネを植えている。