サウナ&交互浴の領域展開!? 帯広「モール温泉」で太古の植物と溶け合った結果

2021.01.13

サウナ&交互浴の領域展開!? 帯広「モール温泉」で太古の植物と溶け合った結果

家の近くの銭湯が温泉だったら。お風呂好きなら誰もが憧れるそんな夢のような世界が実在する街があります。それが北海道・道東エリアに位置する帯広市。帯広市は街の至るところで温泉が豊富に湧いていて、銭湯のほとんどが温泉なんだとか。そんな帯広市の温泉事情について、帯広在住の野澤一盛が紹介します。

人気記事

    はあ〜

     

    温泉最高……。

     

    いきなりの入浴シーンで失礼しました。ライターの野澤一盛(のざわ・かずしげ)です。

    僕は京都で生まれ育ち、2016年に北海道帯広市に引っ越してきたのですが、地元の人と銭湯の話をすると、こんな会話になることがあります。

     

    「銭湯って、どこ行ったってだいたい温泉だよね?」

    「いや、違います。だいたいは水道水を沸かします」

    「え、源泉かけ流しって普通じゃないの?」

    「いや違います。水道水です」

    「え? 水風呂って地下水じゃないの?」

    「いや、違います。水道水です」

     

    これは北海道の帯広という地域に生まれ育った人の多くが思い込んでいる、ぜいたくな勘違い。帯広にきてから何度この会話をしたことか……。

    さらに、帯広にある銭湯の温泉は質も最高で、かつサウナの環境も個性豊かな施設が点在しているのです。

     

    そんな話をしていると、温泉好きのジモコロ編集長・柿次郎さんが食いついてきました。

     

    「そうそうそう、帯広の温泉がやばいことはもっと知られるべきだよね。俺も2年前に初めて帯広で温泉に入って衝撃を受けて、隙あらば行ってる」

    帯広を『温泉もサウナもすごい街』だと認識している地元の人は、ごくわずかなんですよ。だから外から来た人にもなかなか認知されていないのが実情で。僕も帯広に住むまで全然知らなかったですし、地元で『銭湯すごいんだよ』なんて話は出たことないです」

    「この環境が当たり前すぎるんだろうね。うらやましい!」

    「そうなんですよ。一度でも帯広に来た温泉好きの人は、リピーターになって何度も通う場合も多くて。極めつけは、帯広の温泉に毎日入りたくて移住したなんて人も、結構います

    「そこまで人を惹きつける温泉……!」

    「いまはコロナでなかなか旅も難しいですけど、終息したら真っ先におすすめしたい土地なんです。疲れた体と心を癒してほしい…」

    「帯広の温泉とサウナ、くわしく教えて〜!!!」

     

    ※本記事は2020年10月以前に、感染予防対策を行いながら取材しました

    帯広って知っていますか?

    ということで温泉の前に、まずは帯広市について基本的なお話を。帯広は北海道の右下あたり「十勝エリア」に位置し、そのなかで最も人口の多い都市です。

     

    十勝エリアは農業が基幹産業で、なんと食料自給率が1200%と言われています。

    日本全体の自給率が37%、北海道全体でも198%なので、1200%がどれほどすごいかはなんとなく理解していただけるかと思います。

     

    農業のなかでも特に畑作と酪農がさかんで、

    ・「牛乳」の生産量が日本一

    ・砂糖の原料となる「甜菜(てんさい)」も日本一

    ・日本人が大好きな「小豆」も日本一

    ・パンやお菓子に必須な「小麦」も日本一

    などなど、日本一だらけ。地元の食材だけでケーキやパン、和菓子までつくれちゃう原材料王国が十勝エリアなのです。

     

    1軒あたりの農家さんが所有している敷地面積も、やたらと広くて約40haも。東京ドームが4haなので、東京ドーム10個分もの敷地面積を農家さん1軒が持っているんです。僕も最初に知ったときには「どういうスケール?」と驚きました。

    ※ちなみに日本全体の農家一戸あたりの敷地面積は約2ha、北海道全体の平均が約25haです。十勝すごい。

     

    そんな大規模農家が揃う十勝には、めちゃくちゃ稼いでいる農家さんである「豪農」もたくさん住んでいます。

    最近では農業界隈にもサウナが流行り、自宅にサウナ小屋を建てる人まで出始めてきました(豪農になりたい……)。

     

    他にも世界で唯一の「ばんえい競馬」があったり、街のなかを馬車が走っていたり、マルセイバターサンドで有名な「六花亭」の本社があったり、豚丼があったりと、歴史を紐解いていくとだいたい農業というものに繋がる土地柄なのです。

     

    太古の植物と溶け合える「モール温泉」がすごい

    さてさて、お待たせしました。本題である温泉の話に移ります。

     

    まず帯広で特筆すべきは、住宅街にある銭湯が「温泉」だということ。しかも温泉のほとんどが源泉掛け流し、湧いたそのままの状態でお湯を垂れ流しているのです。

     

    そんな新鮮な温泉が、銭湯価格の450円(北海道の銭湯価格、2020年12月現在)で入れてしまう帯広は、全国的にとても珍しい街なんです。

     

    「俺も『温泉で掛け流し』の銭湯が一番好きだけど、やっぱり山のほうに多いじゃない。地方の街なかで見つけたら『よっしゃ!』ってテンション上がるくらいだけど、帯広じゃそれが当たり前にあるもんなあ」

    「火山性の温泉が多いので、温泉といえば山の近くのイメージが強いですよね。帯広で湧くのはモール温泉といって『植物性』の温泉なんです。だから、平野にある街の銭湯でも温泉なんですよね」

    「そう、モール温泉! たしか大昔に堆積した植物から成分を吸ったお湯が湧き上がってくるんでしょ。植物由来だからか、茶色の土っぽい色した温泉がまたいいんだよなあ」

    「美肌の湯とも呼ばれてるんですが、その理由はモール温泉に含まれてる『フミン質』という成分らしいです。その起源は大昔の植物や微生物なんかの遺骸らしくて」

    「成仏した生物が、俺たちの肌を美しくしてくれるってこと……? ロマンがすごい」

    「帯広の女性が美しいのはモール温泉に入っているから、とも聞いたことがあります」

     

    十勝周辺の地層は、「火山灰土」「植物が堆積した泥炭層」「亜炭層」「岩盤層」が折り重なっている。この中の「泥炭層」が岩盤層で温められた地下水と出合い、生み出されるのがモール温泉。植物エキスと岩石由来のミネラルを両方含んでいるため、「奇跡の温泉」と呼ばれるほどユニークな泉質なんだそう(イラスト:小松佑

     

    さらに、特徴は温泉だけではなく「水風呂」にも。ほとんどの銭湯が水道水ではなく地下水を使っているので、塩素臭がしないんです。しかも帯広市の近くを流れる札内川は「清流日本一」を何度も受賞した新鮮な水脈があるため、きれいで優しい水が水風呂にも使用されています。

    ただし、なかには硫黄の香りがする冷泉水もあるので、自分好みの水風呂探しもおすすめですよ。

     

    そして極め付けは外気浴。帯広市は北海道の中でも冬の最低気温がとても低く、マイナス20度を超えることも。

    マイナス20度とは、外に出た瞬間に鼻毛が凍るくらい。そんなマイナス20度の世界で外気浴ができるんですが、外に出た瞬間に天国が訪れます。早く真冬がきてほしい。

     

    個性豊か!おすすめの温泉をご紹介

    なんとなくすごそうなことはわかっていただけたでしょうか。

    気分や好みに合わせた入浴を楽しんでほしいので、数ある帯広の温泉から選び抜いたおすすめスポットを紹介します!

     

    地中からの直送!新鮮なモール泉を楽しむならココ!
    【アサヒ湯】

    一番いい状態のモール温泉を味わいたいなら、ぜひ「アサヒ湯」に。とにかく湯が濃すぎるので、私は帯広に来る友人全員を連れて行くほどです。

     

    トロンとしたお湯で、すぐに全身がツルツルに。しかも体中に泡が付着して、シュワシュワになります。

     

    お湯はジャブジャブ湧き続けてるし、硫黄の香りも楽しめるし、めちゃくちゃ体は温まるしで、最高以外の表現ができない温泉です。

     

    新鮮な湯が楽しめる理由の一つに、「お湯が浴槽に出てくる仕組みの珍しさ」という点があります。アサヒ湯の湯船を見ると、お湯が出てくるところが見当たりませんが……

    実は、源泉を貯めたお湯を地下からポンプアップしているので、お湯は足元(湯船の底)から湧き出してくるんです。

    すると、お湯が一切空気に触れない状態で出てくるので、新鮮なモール温泉が最大級に味わうことができ、泡も付き放題になるという仕組みです。

     

    さらにアサヒ湯は立地も魅力的! 帯広駅から徒歩10分のところにあるので、観光の方も行きやすいですよ。

     

    「アサヒ湯に行ったことあるけど、化粧水みたいなトロミ、炭酸泉、茶色の湯……地球のお汁だ!って感動したなあ。浸かりすぎて、風呂から上がったあと1時間くらい動けなくなったもん」

    「それくらい湯が濃いんですよね。魂まで吸い取られますので、覚悟して入ってほしいです」

     

    アサヒ湯

    住所:〒080-0803 北海道帯広市東3条南14丁目19

     

    初心者も上級者も満足できるフィンランド式サウナ
    【北海道ホテル】

    「北海道ホテル」は、銭湯ではなくシティホテル内の温浴施設。しかし、なんと言ってもサウナが総合的に最高なため、サウナの玄人にも初心者にもおすすめしたいんです。

     

    ここではセルフロウリュが可能で、モール温泉を石にかける「モーリュ」や壁にも水をかける「ウォーリュ」をして体を温めていきます。水風呂は16.5度設定、外気浴も休憩イスも完備。

     

    このような環境と設備は、北海道ホテルの社長さんがサウナにどハマりして実現したそう。サウナ好きのツボを押さえた部分を日々進化させているのも魅力の一つです。

     

    プライベートサウナがついた客室も用意されており、心も体も徹底して整えたい方にはこの部屋に泊まるのもおすすめ!

     

    朝5時30分から営業しているので、旅行中、朝一でサウナをキメてから行程をスタートするのにもぴったりですよ。

     

    北海道ホテル

    住所:〒080-8511 北海道帯広市西7条南19丁目1番地

    HP:https://www.hokkaidohotel.co.jp/

     

    石鹸のようなツルツル感が体感できる緑色の温泉
    【白樺温泉】

    泉質の良さでいうと、「白樺温泉」もおすすめです。

    ここも植物性なのですが、茶色ではなく緑色のお湯。僕は勝手に「緑茶温泉」と呼んでいるのですが、帯広で一番ツルツル感のある温泉だと思っています。

     

    蛇口から出てくるのも温泉なのですが、シャワーを浴びてる時点で「あれ、石鹸要らなくない?」と思うくらい。とはいえ入浴施設のルールは大切なので、石鹸は使って、体を洗って入りましょう。

     

    扉の前にはやたらと「お尻」を強調するお願いが。シャワーを浴びるだけで石鹸をつけたと勘違いしちゃう人が多いのかも……?

     

    ちなみにシャンプーやボディーソープも置いてないので、持参しましょう!

     

    白樺温泉

    住所:〒080-0051 北海道帯広市白樺16条西12丁目6

    HP:https://www.recruit-hokkaido-jalan.jp/guide/h00478

     

    貸切サウナ&源泉掛け流し温泉
    【ローマの泉】

    サウナはできれば1人で集中したい。そんな夢を叶えられ、貸切にできるサウナが帯広にはあります。それが「ローマの泉」

     

    ここは貸切風呂専用の施設なのですが、その内の3室に「サウナ」「地下水の水風呂」とサウナに最高の環境が整っているのです。そして、お湯ももちろん「掛け流し・100%のモール温泉」です。

     

    強いて言えば、外気浴があったらもっと最高なんですが……外には出れません。それはご愛嬌ということで。扇風機が設置されているので、「ローマの風」と言われる扇風機の風を堪能してください。

     

    そして、なんと貸切料金は「1時間2000円」というコスパの良さ。しかも平日であれば、2000円で1時間30分入れるんです。

    友人たちと同じ環境がある施設を全国で探しまくっているのですが、今のところローマの湯以外、見つけられていません。

     

    ローマの泉

    住所:〒080-0809 北海道帯広市東9南12

    HP:http://ro-ma.jp/

     

    ミネラル豊富な水風呂を求めるならココ!
    【自由ヶ丘温泉】

    「自由ヶ丘温泉」もモール温泉の銭湯なのですが、ここはなんと言っても「水風呂」がすごいんです。

     

    というのも、日本一の水風呂と言われている静岡県「しきじ」の水風呂とも硬度が近い泉質で、硫黄の匂いがしながら、柔らかさも抜群な水なんです。

    外気浴はできませんが、水風呂重視で選ぶならおすすめですよ!

    自由ヶ丘温泉に貼ってあった成分表

     

    ちなみに、4Lまでお持ち帰りが可能。大きめの水筒やペットボトルを持参で行きましょう。

     

    自由ヶ丘温泉

    住所:〒080-2476 北海道帯広市自由が丘4丁目4-19

     

    「自由ヶ丘温泉の水は、ミネラル豊富なんです。ここの水でご飯を炊くとめっちゃ美味しいですよ」

    「生命力湧きまくりじゃん。毎日持ち帰って俺の家に送ってほしい!」

    「帯広に住んでください」

     

    仕事もしたいし、温泉にも入りたい!という方に
    【ひまわり温泉】

    「仕事もしたいし、サウナにも入りたい!」という方は、「ひまわり温泉」で一日過ごすことができます。

     

    まず、モール温泉に入れます。そしてサウナはセルフロウリュができて、水風呂も地下水。おまけに、外気浴もできます。価格はというと……この設備で、もちろん銭湯価格の450円。

    また、お風呂から上がれば、電源とWi-fiが完備されているコワーキングスペースも利用可能。ひまわり温泉の最強ポイントです。

     

    通常、コワーキングスペースを2〜3時間借りるだけで1500円ほどかかっちゃうじゃないですか。でも、ひまわり温泉であれば温泉&サウナ&ワークスペースのセットで450円。脅威の価格破壊です。

     

    施設のオーナーに確認したところ、「風呂→コワーキングスペース→風呂」のコンビも可能とのこと。サウナで目を覚まして、仕事して、サウナに入って帰る。

     

    実質、温泉サウナ付きのコワーキングスペースということなので、この生活に慣れると、帯広以外で生活できなくなりそうです……。

     

    ひまわり温泉

    住所:〒080-0021 北海道帯広市西11条南32丁目7-2

    HP:http://himawari-morinosato.com/

     

    水風呂は冷たいに限る!そんな人には
    【君乃湯温泉】

    もうそろそろお腹いっぱいになりそうなので、最後の一つを!

    この「君乃湯温泉」は、とにかく水風呂が冷たいんです。なんと10度前半!

     

    水風呂は通常16〜18度に設定されていることが多いですが、それを通り越す驚異の水温。この水温は好みが分かれるところですが、冷たい水風呂好きにとっては最高の環境です。

    もちろん、温泉はモール温泉。浴槽も複数あり、洗い場も30人分ほどある大きな銭湯のため、ゆったりくつろぐことができます。

     

    施設の雰囲気もよく、脱衣所では演歌が流れ、休憩室はまるでじいちゃんばあちゃんの家に来たかのような雰囲気。このゆるい感じも、君乃湯温泉のおすすめポイントです。

     

    君乃湯温泉

    住所:〒080-0015 北海道帯広市西5条南32丁目19

     

    「16.5度の水風呂でも貴重なのに、10度の水風呂もあるなんて、帯広どうなってるの……?」

    「なんかすごくてすいません」

    「毎日、どこの銭湯に行くか悩みまくるなあ。住みたくなってくる」

    「ほんとそうなんですよ。帯広に住んでるだけで温泉・サウナ好きは満たされまくるはず」

     

    帯広でサウナ巡りをしながら、酒もスイーツも

    ※2020年2月以前に撮影したものです

     

    ということで皆さん、帯広の温泉、サウナに入りに来たくなりましたか?

    帯広は温泉だけではなく、飲み屋も結構な数があり、ひとっ風呂キメたあとの飲みや「サウナ飯」にも困りませんよ。

     

    北の屋台1番街の「煙陣(えんじん)」。店主が自ら狩猟した鹿肉を楽しめる。写真はおすすめ、蝦夷鹿のたたき。その他、変わり種の薫製料理がたくさん並ぶ

     

    店主が捕らえた鹿肉のジビエ料理だったり……

     

    十勝にはチーズ工房もたくさんあり、地元の様々なナチュラルチーズが楽しめたり……

     

    帯広に本社がある六花亭のカフェといった、昼間のスイーツ巡りもたのしいし……

     

    ばんえい競馬(世界で唯一の挽き馬の競馬)を楽しんだり……

     

    冬は冬でマイナス20度の世界で氷の世界を楽しめたり……。

     

    上の写真は「ジュエリーアイス」といって、冬になると川を覆いつくす氷が海に流れ出し、河口付近の海岸に打ち上げられる氷の塊が広がる自然現象です。どうですか? 意外にも見所満載なんですよ。

     

    とにかく帯広は、美味い飯と酒が飲めて、いい風呂に入れる!

    いまはなかなか旅が難しいご時世ですが、落ち着いたときにはぜひ帯広へ遊びに来てください。最高の温泉&サウナ、そしてお酒やスイーツが待ってますよ!

     

    ☆この記事はエリア特集「北海道大探索」の記事です。

    ジモコロ初のエリア特集『北海道大探索』を始めます

    アイヌ女性が約100年以上受け継ぐ「あずき」、人気菓子「バターのいとこ」で生まれ変わる

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    野澤一盛
    野澤一盛

    1988年生まれ。フリーランス、一般社団法人ドット道東理事。大学まで京都で過ごし、2011年に札幌、2016年から帯広在住。どうせ住むなら楽しみたいという思いから、遊びの延長で、ブログ書いたり、動画撮ったりしています。

    野澤一盛の記事をもっと見る

    オススメ記事

      こちらの記事もオススメ