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「年間200本見ている」は嘘なんですが、今更この画像を変えるのもなあ…と思ってそのままにしている、ただ映画を見るだけの連載8回目です。

 

ザ・フライ(1986 / 監督・デビット・クローネンバーグ)

転送ポッドで人間とハエが融合してしまい、日に日にめちゃくちゃきしょくなる話

 

タイムカードを「出勤」にして、見ます。

 

【勤務時間中に堂々と見る人の紹介】

私。今年はまだ30本ぐらいしか映画を見ていない男

今年は映画を2〜3本しか見てない男

 

ザ・フライ (字幕版)

 

「ちわっす」

「ちわ。今日は『ザ・フライ』。クライマックスだけはいつかテレビで紹介してたのを記憶していて、大まかなストーリーはほぼ知らないです」

「珍しく僕も1回ぐらいしか見てなくてほとんど忘れてしまってるんで、初めてのつもりで楽しめますわ。もちろん、今回も『ザ・フライ』に関する多大なるネタバレがあります。あとグロすぎるシーンについては加工を施していますのでご安心ください

ネタバレありで全部読んだとしても、その映画を見たくなってしまうのが『超有名映画を今さら見る会』のすごいところです

「そういうのは自分で太字にして言わない方がいいですよ」

 

■「ザ・フライ」あらすじ・起

天才科学者セスはとあるパーティーで出会った記者のベロニカをいきなり部屋に招き入れ、世紀の大発明「転送ポッド」を披露する。試しに彼女の脱ぎたてストッキングを転送させることに成功し大スクープとして取り上げたいと奮起するが、セスとしては「まだ無生物でしか成功してないから公表はまっちくり」と二の足を踏んでいた。有機物を転送させるには、まだ何かが足りないのだ。

 

「監督、デビッド・クローネンバーグなんですね」

「マニアックな映画を作り続けた人ですね。『スキャナーズ』とか『裸のランチ』とか、僕ら世代のサブカルキッズは絶対に見たことがあるはず。時代的にもこういうホラーが流行った時期ですね」

「80年代ホラーは特殊メイクがかなり発展した時期だし、今見ても色褪せない良さがありますよね…」

「13日の金曜日、エルム街の悪夢、チャイルド・プレイ……良い」

 

「あ、ジェフ・ゴールドブラム!若い!」

「なんか見たことある…この顔…」

「『ジュラシック・パーク』でカオス理論唱えてた偏屈科学者マルコム博士の人ですよ!」

「あっほんとだ!若い!目がギョロギョロ」

「なんか偏屈な科学者的な役、ここでもおんなじような感じなんですね」

「むしろこれで人気が出てマルコム博士にも起用されたのかも」

 

「さっきの画、もっかい写真撮りたいんでちょっと戻してもいいですか?」

「はいどうぞ」

「…えーっと、あれ?全然早戻しが止まらない!」

「一番最初まで戻っちゃったんですけど」

「家のと違うリモコン、操作しにくいんだが! なんか反応も重いし!」

「我々、自分が思ってるよりジジイですね」

「これはシンプルにリモコンの反応が重くて戻しすぎちゃっただけです」

「も〜。リモコン貸してください」

 

ジジイがジジイにバトンを渡す命のリレー

 

「そんなこんなで、セスはとあるパーティーで出会った女性記者ベロニカをいきなり部屋に招き入れます

「展開が速くて助かるわ」

 

ピアノ「♫ピンポロピン」

「家に入れていきなりピアノ弾くな」

「ナンパが下手過ぎる」

 

ベロニカ「やっぱり帰るわ」

 

「そらそうだろ」

「この白けた顔最高ですね」

「そんな彼女を引き止め、転送ポッドによる実験をしてみせるセスですが……」

「二つのポッドがあって、Aのポッドにモノを入れたらBのポッドから出てくるという分かりやすい構造ですね」

「原理とか特に説明無いのも良いですね」

 

「しかも操作するコンピュータがめちゃくちゃレトロ!」

「ボイス認証で起動するのもこの時代にしてはすごすぎる…」

「『これを記事にしたら大スクープだ!』ということでベロニカは発表しようと提案するんですが、セスに断られてしまいます。現在は無生物しか転送できないため、生き物の転送に成功したら世間に公表したいそうです」

「無生物を転送できる時点で十分すごいと思うけどなあ」

「ね。この時点で公表したらさらに莫大な資金も調達できて、生き物での転送がより成功に近づくような気はします」

「でもこのベロニカという女、スクープのためにセスに近づいてる感じが見え見えであまり好感持てないですね」

「僕も全く同じこと思ってました。許せない!」

「実はこの時の会話を録音していたベロニカ、後日、編集長に録音データを聞かせるも、もちろん信じてくれない

「テレポートなんて絵空事ですから、手品を見せられたんだろうという反応ですね」

 

「ほんでベロニカ、編集長と昔付き合ってて今でも家に勝手に入ってくる関係性なんかい!」

「この編集長もデリカシーが無くて性格最悪で絶対に付き合いたくないタイプ」

「セスの周りの人間、かなり嫌だな」

「基本的に登場人物は科学者セス記者のベロニカ、その元カレの編集長の3人ぐらいしかいなくて、かなりシンプルですよね」

「外国人の顔を覚えるのが苦手な人も安心」

 

■「ザ・フライ」あらすじ・承

セスとベロニカはいきなり恋人関係に発展し、彼女の助言もあって特に説明無くポッドのアップデートに成功してヒヒの転送に成功するのだが、泥酔状態で聞いた元カレとの関係に嫉妬したセスはヤケになってしまい自らが転送ポッドに入って転送してしまう。そしてポッドのドアが閉まる直前、一匹のハエが入り込んでしまった…。

 

「さて、いよいよマントヒヒを使った生物実験ですよ

「でも無生物でしか成功したことないんですよね?果たして…」

 

「ウワーー転送失敗ーー!!」

「おもてたよりぐちゃぐちゃだ!」

「あまりにもグロすぎるのでかわいいねこちゃんでフタをしておきました」

「ねこちゃんは可愛いですからね」

「一度分子レベルまで分解して転送先のポッドで再構成するという仕組みらしいですが、なにかの不具合で戻せなかったみたいです」

「生き物だとまた大きな障壁があるんですね」

「ていうかこのシステム、たとえ成功したとしても“再構成したそれ”って『同じ』なんですかね? Aのポッドに入ってたサルは消滅して、Bで新たに『似た生物』が作られてるだけでは……?」

「そこを突き詰めて考えるとかなり怖くなりますね…」

 

「話変わって、セスはどうやらミニマリストらしく、同じ服を何着も持ってるみたいです。その方が毎日何を着るか悩まなくて済む、と…」

「現代でもこういう考え方の人いますよね。先見性があるな〜」

「まあ…僕は毎日オシャレを楽しみたいですけどね」

「めっちゃ分かりますわ〜それ。この撮影するとき、前回着てた服は着ないようにしてますし」

「あっそれ僕も同じです。毎回同じ角度の写真が多いから」

 

「それでいうと最近買ったこの服、かなり気に入ってるんですよね」

「柄がめっちゃ良いでね。80年代みたい」

「そうそう。このダサ〜い柄が良くって。生地も分厚くて…」

 

「え!?あれ!?服の話に夢中になってたらいつの間にかおっ始め出した!

「なんで!?全然見てなかった…」

「別に惚れ合う描写はほとんど無かったはずなのに、いったいどこでどうなった…???」

 

「ほんで翌朝に男のシャツ着てますわ」

「大したもんだ」

「さて、ここから特に説明無く転送ポッドのアップデートに成功して、ついにサルの転送に成功しました!

「雑談してるとあっという間に置いていかれるほどにテンポ良いな」

 

祝杯をあげていたのに、諸事情あって元カレ(編集長)のもとに行くことになったベロニカにたいして、セスはサルに怒りをぶつけます

「サルはちゃんと聞いていてえらい」

「そして、嫉妬と泥酔も相まって、自分が転送ポッドに入って実験をすることに…!!

「どういう思考の果てにそうなったかは見てたのによく分からんが、自ら実験台になるな!」

「スパイダーマンシリーズとかでも、科学者が自分を実験台にして成功した試しは無いのに」

 

「あ〜! 偶然にもポッドの中にハエが〜〜〜!」

「気づいて〜!!!!」

「一体どうなっちまうんだ…だいたい分かるけど…」

 

 

■「ザ・フライ」あらすじ・転

転送してからというもの、セスの体に異変が起こり、パワーに溢れ性豪になり、性格もかなり豹変してしまった。やがて転送時にハエが入ったことで自身がハエと融合してしまったことに気づくも、とき既に遅し。皮膚はただれ、歯は抜け落ち爪は剥がれ、天井を歩き何でも溶かす酸を吐き、醜い見た目になってしまった…。そしてベロニカの身にもある変化が…。

 

「作品として見せたいのはこれ以降なので、それまでの詳しい説明が大幅に省かれても全く気にならないですね」

「引き算が上手!そして上映時間が85分という簡潔さもまた良い」

 

ハエと融合した主人公はパワーに満ちあふれて家の中で懸垂しまくったり鉄棒で大車輪をしたりし始めました

「性格も饒舌になるわ、コーヒーに砂糖を入れまくるわ、絶倫男になるわ、ハエってすごい」

「ハエと融合しちゃったことに気づいていないセスは、『転送は肉体的精神的に良い影響を与えるもの』と思い込んでます。そしてベロニカを『君も転送して一緒に最高になろうや!!』と無理やり誘ったことで印象が悪くなってしまいました

「ばかもん」

「この頃はまだ背中に少し変な毛が生えてる程度ですが、ここからどんどんひどくなっていくんですね…」

 

「地肌に革ジャンを着込んでバーに入り、店内の男に因縁をつけられて腕相撲対決をすることになってしまった…」

「いやな予感しかしない……」

 

バキッッッッッッッッッ!!!!

 

ぎょえ〜〜〜〜〜!!!!!!

おっさんの腕折っちゃった〜〜〜!!

「よかった、ねこちゃんがいてくれて…」

「ここはかなり痛いシーンですね〜〜変な汁も出てるし…」

「少しずつ変化が始まっているってこと…。そしてそこで知り合った尻軽女を連れ込んでよろしくやってるところに、ベロニカが帰ってきてしまいました

「最悪のタイミングだ」

「ただ、だんだんベロニカがセスの異変を感じとって、献身的にその身を案じ続けるんですよね

「なんか最初はいけすかない女でしたけど、だんだん好感度が高まってきた」

「一途だな〜」

 

「そして体に次々と異変が…!」

歯が抜けた!!!

「きしょい!!!見せるな!!!!!」

爪が剥がれた!!!!

「めちゃめちゃ笑顔で見てる?」

「映画の中のグロシーンはめちゃめちゃ好きです。虚構だから」

「逆に見れないものってあるんですか?」

「スポーツのアクシデントはマジで見れないです。本物だから」

「変なの」

 

「そしてついにスーパーコンピューターの解析で転送時にハエが入り込み、遺伝子レベルで融合してるのに気づいてしまった〜!

「このコンピューター優秀すぎる!!」

「ここまで優秀だとしたら転送前に異物混入のアラート出して中止にして欲しかった」

「そこが映画の面白いところ」

 

ベロニカを呼び出して今の状況を伝える…う〜ん可哀想

「あ〜、顔も変質してるし、口から変な汁もたっぷり吐き出すし、服もその汁でめちゃくちゃ汚くなってる。あわれだ…」

「かわいそすぎ! でもこんな姿を見せつけられたら、もうベロニカも見放すしか……」

 

ギュッッッッ!

 

「え!???!?!!?優しく抱きしめた!!!」

「服にめっちゃきもい汁つきますよ!!!?」

「めちゃくちゃ純愛だ……」

「なぜこれほどまでセスのことを好きになったかの理由はまったくわからないけど、素晴らしい女性ですね」

「ベロニカ最高!!」

「その後、セスもだんだん諦めの念を超えて、ハエとの融合を少しずつ受け入れるようになってきました

「歯が無くなったからって、口から出る酸で食べ物を溶かして摂取するの、あまりにもきもすぎる」

「そして元カレに相談してたら耐えきれなくなってベロニカが泣きながらトイレに駆け込んじゃった。まあそりゃそうなりますよね」

「え? いや、この吐き気……ひょっとしてこれって……」

 

ベロニカ「妊娠したの…。セスの子よ」

 

 

「え〜〜〜!!!」

「これはやばい!!!!」

「ハエと融合してからも異変が出るまでは致しまくっていたから、お腹の子もハエの遺伝子が…!!!」

「あ〜〜〜〜〜!!!」

「ひえ〜〜〜〜〜!!!」

 

「そしていきなり中絶ではなく出産しちゃう!?!?」

「え!?速すぎる!どういう日数計算!?中絶したいって相談段階じゃなかった?」

「なんかシーン見落としたかな? 速すぎるって!」

 

 

ベロニカ「待って!やめて!ああ…いや〜〜〜〜!!」

 

 

「げえええええ〜〜〜〜!!!」

「めちゃくちゃきもいのが産まれた〜〜〜〜!!!!!」

 

 

ハッ!!

 

「夢かい!!」

「あ〜マジでビックリした…」

「現実と夢の境目が曖昧過ぎて全くそう思わず、ほんとに出産したかと思っちゃいました」

「ここまで来ると息をつく暇が無さ過ぎる…」

 

 

■「ザ・フライ」あらすじ・結

ベロニカは彼の身を案じ続けるが、セスは半ば諦めのような感情を顕にし、見てられないぐらい悲しいモンスターに成り下がる。セスは最後の手段としてベロニカと融合することで少しでも人間の姿に戻ろうとわちゃわちゃしていた結果、体が最終形態に進化して巨大なハエのような肉塊となりさがる。果たしてセスの運命はいかに…。

 

ベロニカは妊娠したことをセスに告げようとセスの自宅に向かいましたよ

「大事なことですからね。でもセスの今の状況じゃ、何も考えられないに違いない…」

 

「ああ…もう見る影がない…」

「そして愛する人がこんな姿になってしまったのが辛すぎて、妊娠を伝えられずに出ていってしまう…

「これはセス自身ももちろん辛いけど、ベロニカだって同じぐらい辛い…すっかりベロニカ推しになっちゃいました僕」

「分かります。健気で一途…」

 

「あ〜〜〜〜つれ〜〜〜〜〜」

「切なすぎる…」

 

結局ベロニカは元カレに付き添われて、産婦人科で中絶を行うようです

「セスの身を心配しつつも、ハエ人間は産みたくない…」

「これは現実ですよね?さっきみたいな夢じゃなく」

「さすがに夢オチ2連発は無いでしょう。それにしてもこのガラス窓を移す不自然な構図が気になるな

窓ぶち割って登場してきてほしい

「同じこと思ってました。でも今さらそんな派手なアクションするかな?という気持ちにもなってきます」

「グロテスクなホラーと言いつつ、悲哀も混じってますからそういった要素はもはや必要なくても成立してますもんね」

「でもセスは自宅の下でベロニカと元カレが妊娠についての会話してたのを、聞いてたんですよね…

 

バリーン!!!!

 

「うわあああああ!!!」

「さすがセス!!!我々の期待にバッチリ応えてくれる!!!!!」

「めちゃくちゃ最高!!!」

「気持ちよすぎる!!!」

「そして子どもを産んでくれと言ってそのまま連れ去っちゃった!」

「セスにとって唯一の生きた証…。ただベロニカにしてみたらたまったもんじゃないですよね。たとえ愛しているからといえど…」

「一方、元カレはショットガン片手にセスの自宅兼研究所に忍び込み、転送ポッドをぶち壊してやろうと画策してます」

「セスが来てしまう!」

 

「案の定やってきて、酸を口から吐いて元カレの腕を溶かした〜〜〜!!

「きめすぎる〜〜〜〜〜!!!」

「足も溶かして機動力を奪った〜!」

「やめてくれ〜〜〜!!」

 

「そして、転送ポッドに自分とベロニカ+お腹の子を入れて転送&融合することで、究極の家族になろうとする〜〜〜〜!!!

「ばかやろ〜〜〜〜!!!!!」

「この藁にもすがる思いで生きようとする姿勢、なんとも惨めで哀れで悲しみに満ちている…」

「きもさを超えて、悲しみの方が前に来てしまう…!」

「うわ〜〜〜そして体がボロボロと崩れ落ちて、ハエの最終形態が現れた…!!!

 

「きもすぎる!!!!!」

「ただまだ理性はあるみたいで、融合するためにちゃんとコンピューターを操作できるとは…」

「可哀想過ぎる…」

「あ〜〜〜〜!」

「うわ〜〜〜〜!!!」

 

「……」

「……」

 

「終わった……」

「なんという悲しいストーリー……」

「いや〜でも最高に面白かったです。80年代の特殊メイクが存分に堪能出来るし、でもめちゃきもハエ男のことを悪者とは見れずにとにかく可哀想で…。全面に押し出されたシナリオも秀逸でした

「80〜90年代のホラーって特殊メイクとかでリアルな描写ができるようになったのをきっかけに一気にそういうタイプの映像が増えた中、目先のグロテスクさだけはない内面の悲哀と純愛を表現するクローネンバーグの作家性…。後年まで語り継がれるのも納得。最高!」

「最後にセスが取った行動も、今思い出しても泣けてくる…。唯一のこされた最後の理性って感じでしたね」

「ただ、ベロニカのお腹の子はまだ解決してないんですよね…」

「これが続編『ザ・フライ2 二世誕生』につながるのか…!」

「次回それにします?」

「いや、いいです」

「は〜い」

 

 

THE END

 

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