「面倒くさい会議」をイラストの力でハッピーにした会社員

2019.09.26

「面倒くさい会議」をイラストの力でハッピーにした会社員

近ごろSNSでよく見る「グラフィックレコーディング」。実は会議をクリエイティブにする秘密があるらしいんです。社内外でグラフィックレコーディングを担当する富士通社員のタムラカイさんに、イラストとコミュニケーションの関係について話を聞きました。

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みなさん、会議って言葉を聞くと、どうしても憂鬱な気分になりませんか?

 

それも当然。何かを決めたり、アイデアをイチからひねり出すことはとても難しい。すんなり賛同が得られたり、一発でアイデアが出せたりする方法はないのかなあと、ムシのいい考えが浮かぶ僕のような人も少なくないはず。

 

そんなご時世、ちまたで話題になっているのが「グラフィックレコーディング」と呼ばれるシロモノ。会議やイベントの議事録をイラスト化して描くものなのだそうですが、なんでも会議がとってもクリエイティブになるらしい。

 

実物を探してみると、イベント時に使われたグラフィックレコーディングがザクザクと。その一例がこちら。

 

なんだこれ。かっこいい。しかもイベント中にリアルタイムで描いたものらしいのです。描いてる最中の動画も……

 

できたらめっちゃかっこいいけど、普通の議事録ですらまとめるのに四苦八苦しているのに、こんなの描くなんて無理じゃない?

 

しかし、グラフィックレコーディングなるイケてるシロモノ…みなさんも気になりませんか…?

 

というわけでやってきたのが、日本を代表する大企業・富士通。

なぜこんな大企業に? と思った人、ご安心ください。実は富士通の会社員として働くかたわら、副業として様々なイベントでグラフィックレコーディングをしているスゴい人がいるのです。

 

それがこのタムラカイさん。

「働き方を考えるカンファレンス」や「富士通フォーラム」などの大企業が集うカンファレンスをはじめ、様々なイベントでグラフィックレコーディングを担当しています。先ほどのイラストもこのタムラさんが描いたもの。

 

そして、グラフィックレコーディングの経験を生かして、本業の会社にもイラストをメインとしたワークショップを取り入れるなど、大企業に新たな施策を取り入れている人なのです。

そんなタムラさんに

・グラフィックレコーディングって何?

・そもそもイラストにするメリットってあるの?

・グラフィックレコーディングじゃなくても、会議をうまくいかせる秘訣ってあるの?

などの気になる話を聞いてきました!

悩めるクリエイターはもちろん、組織での立ち回りに悩む会社員の方も必見です!

 

イラストのメリットは、イメージをそのまま伝えられること

「こんにちは。オフィスめちゃお洒落ですね…。全然大企業のイメージと違う…」

「意外とみんな使わないんですけどねー。今回はグラフィックレコーディングの話でしたっけ?」

「はい。グラフィックレコーディングってどういうものなのか、お話を聞きたくてですね」

「なるほど。ざっくり言うと、グラフィックレコーディングは『トークイベントや会議の内容をイラストでまとめたもの』ですね」

 

「おお! あの……疑問だったのですが、内容をイラストでまとめるメリットってあるんですかね? かっこいいけど、言葉で伝わるならそのままでいいような」

「もちろんありますよ。普段の僕らは言語でコミュニケーションをとってるんですけど、その時には『頭の中のイメージを言語に変換して、それを聞いた人がまたイメージに置き換える』作業をしているんです」

 

「なるほど。伝言ゲームみたいな」

「はい。それに対して、イラストを描くことができれば、イメージをそのまま伝えることができる。いわばコミュニケーションのショートカットができるわけですね」

 

「おおっ。確かにいいですね。これができれば、もはや言語はいらない気がしてきました」

「いやいや。言語がないと困ることは多いですよ」

 

「こんな風に、先ほどの画像も文字がないと何のことやらですよね?」

「たしかに…これだと、りんごのことしか考えられないように洗脳している図に見えてしまう…」

「ですよね。イベントや会議においても、現場の写真やイラストだけ見せられてもさっぱりわからない。だから僕らは文字とイラストを組み合わせて状況を描写しているんです」

「じゃあグラフィックレコーディングでも、さっきの画像のようにりんごみたいなイラストを全部丁寧に描いてるんですか?」

「いや、僕の場合、主にイラストとして描くのは人の顔です

「人の顔…?」

 

人間は表情を見てコミュニケーションしている?

会議やイベントにおいて話される内容は、図像化しづらい抽象的なことばかりです。下手に全てをイラスト化してしまうと、先ほどの文字無しの画像のように、よくわからないことになってしまう。だから顔と内容を描くことが多いんです」

「ああ〜、全部がイラストになると、余計な想像を呼んでしまうというか。でも、顔って必要ですか?」

「顔は大事なんですよ。脳科学的にも証明されているんですけど、人って顔を探してしまう特性がある。そして表情があると感情を見つけて、より親近感を感じやすくなるんです。例えばですけど、この比較画像を見てください」

 

「たしかに、顔がある方が頭に入って来やすい気がする…」

「そうなんです。文字だけの情報って、全てにおいて想像を働かせなければいけないので、読むのは結構な重労働。ワクワクするような物語なら想像力を働かせながら読めるけど、難しい抽象的なものだとすぐに放り出したくなってしまいませんか?」

「そうですね。14歳のころ、哲学書を手にとって2ページで放り出した悪しき思い出が頭をよぎりました。今では本棚のインテリアになっています」

「その哲学書が本棚の隅に眠っているように、事務的な内容が多い議事録なども、作られて終わりなんてこともザラに起きてしまうわけです。だからこそ、見やすくまとめられたグラフィックレコーディングが重宝されるわけですね」

 

グラフィックレコーディングは単なるイラスト化ではなかった!


「なるほど。言われてみると、最近SNSでもイラスト付きの投稿をよく見かけますね。やっぱり認識しやすいからなんだろうなあ」
「たしかに認識しやすいイラストを用いてるという点で、SNSのイラスト付きの投稿とグラフィックレコーディングって似ています。だけど、実はちょっとだけ用途が違うんです

「え、そうなんですか?」

「はい。SNSで拡散されがちなイラストって、大抵は何も知らない人のためにわかりやすく説明するものですよね」

「そうですね。パッと見て、誰でもすぐにわかるようなものがシェアされやすいですよね」

「それに対して、グラフィックレコーディングで描くイラストは、イベントや会議の参加者と観客が、より理解を深めて会議を進行しやすくするためのものだと僕は考えているんですよ」

「会議を進行しやすくするためのもの、ですか」

誰かと話をしているとき、全体像を見失ってしまうことがあるじゃないですか。議論が白熱しすぎて、そもそもの目的を忘れてしまったり。あるいはちょっとした雑談がきっかけで話の流れが飛んでしまったり」

「あー。あるあるですね」

「ただ、リアルタイムで状況を図解できれば、常に参加者がどういう状況かを把握しながら議論を進めることができるんです。すると、話が脇道に逸れても軌道修正がしやすい」

【グラフィックレコーディングのメリット その1】

会議の流れが図解で把握できるため、全体の進行がスムーズに!

「だから会議が終わった後に『結局、何を話したんだっけ?』みたいなことが減るんです。全員の理解度が高くなるので、打ち合わせ後の差し戻しや、お互いの主張ばかり話すことも減る印象ですね」

 

ジモコロ編集長・柿次郎が出演するDooo! の特番にて制作されたグラフィックレコーディングの一例。50分の番組で話された内容が一枚の画像にまとめられている

「たしかにプレゼンするとき、自分のことで頭がいっぱいになっちゃうことが多いかも。一目で全体の流れがわかれば、ありがたいなあ」

【グラフィックレコーディングのメリット その2】

会議の参加者全員の理解度が高まるので、差し戻しや行き違いが少なくなる

「あとは振り返りにも有効ですよね。面白いことに、人間って最初と最後の話は覚えてるんですけど、途中の話が頭から抜けがちなんです。でもこうして逐一図解すれば、中盤で話していた重要な話にも目が行きますよね」

「そんな機能もあるのかー!」

【グラフィックレコーディングのメリット その3】

忘れられがちな中盤の議論もきちんと残すことができる

 

人間には感情がある。だからこそ効率的になりすぎてはいけない


「めちゃくちゃグラフィックレコーディングにメリットがあるのはわかったんですけど、ここまで聞いた限りだと、普通のイラストとあまり用途が変わらないような…」

「はい。実はもうひとつ、リアルタイムで描くからこそのメリットがあるんです」

「おおっ。それは一体…?」

「会議では何かを決めるわけですから、必ず採用されない意見がありますよね。こうした本来なら省略されてしまうはずの不採用意見も、全体の図の中にきちんと描けることです」

「え、それって必要なんですか? 内容にはあまり関係がないような」

「実はとても大事なんですよ。なぜなら人間には感情があるから

「感情、ですか? なんか突然哲学的な話に…」

「人間って無駄を恐れる生き物なんです。だから何度意見を出したとしても採用されないとなれば、時間の無駄だと感じて、次第にモチベーションが下がっていきがちなんですよ」

「わかりますけど、この競争社会においては仕方ないことなのでは? 成功するまでやるくらいの意気込みがないと」

「それはたしかに一理あるかもしれません。ただ『いい会議』って、より多くの人が様々な意見を出してぶつけ合うものだと思うんです。ディベートがうまい人やガッツのある人など、一部の意見しか出なくなったら、会議としてはあまり意味がない」

「ふむ…たしかにそうですね。とはいえ、イラストに描くことで、参加者のモチベーションに関係するんですか?」

「やっぱり自分の発言がきちんと記録に残れば、採用されなくても意味があるものと思えるじゃないですか。そうすれば、OKがもらいやすい正解の意見だけを求めなくていいわけですから、次第に発言率も上がってくると思うんです」

【グラフィックレコーディングのメリット その4】

決定事項以外の意見をあえて描くことで、参加者のモチベーションが上がる

「うーん…失敗意見ばかりの会議も無駄が多くて、微妙な気もしますけど」
「そうですか? もし効率だけを求めるなら、データを分析したり、ミスがないように機械にやらせてしまえばいい。わざわざ人間同士が顔をつきあわせて、会議なんてやる必要もなくなってしまいますね」

「たしかに…。ぐうの音も出ない」

「効率化を求め続けた結果、様々なものが頭打ちになっているわけじゃないですか。だからこそ、一見無駄に見えることに改めて目を向けるのが大事だと思うんですよ」

「無駄に思えるものに改めて目を向ける…」

「はい。正直な話、効率だけを考えるなら、結論だけ示した議事録や会議が終わった後に要点だけをまとめたもののほうが、グラフィックレコーディングよりもわかりやすいかもしれない。反対意見なんて本来は載せる必要がないわけです」

「ふむふむ」

「しかし言葉だけで伝えあっていると、結論ばかりに目が向いてしまう。ならコミュニケーションのあり方自体を変えて、言葉だけに頼らずに、絵も使ってみれば良いじゃないかと。だって日本語だけで全てを伝え合える、なんてことは幻想だと思うんですよ」

「伝言ゲームな訳ですもんね。とはいえ、言葉以外のコミュニケーションを探るって発想はすごいと思いました」

「僕の役割って『突破担当』だと思ってるんですよ。この社会にある常識と呼ばれるものを『突破』していきたいなって」

 

「会社の常識」を突破するチームづくりとは?

イーアイデム

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しんたく
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文章を書いたり、映像を作ったりしています。気がつくと青い服ばかり買っているけど、広島東洋カープがすき。

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