こんにちは、ジモコロ編集長の徳谷柿次郎です。

僕は「Huuuu」という会社を経営して5年目になるのですが、よく思うんです。

 

「倒産」が怖い………………。

 

おそらく経営者だけでなく、会社員の皆さんも同様のイメージを持っているのでは。「倒産」の「終わり」感、すごくないですか?

 

資金繰りが行き詰まり、信頼してた社員たちも離れていく。コツコツ積み上げた会社もなくなり、ひとり路頭に迷う……みたいにはなりたくない〜〜!

 

幸いなことに今のところ倒産の気配とかはないのですが、僕自身、いまの会社を死ぬまで続けたい! とは思ってません。自分自身がボロボロになって絶望するぐらい辛くなったら、いっそ自分から会社を解散したい、くらいの精神でいます。

 

そんなとき、とある本を知りました。

 

倒産したときの話をしようか(freee出版)。倒産を経験した「倒産社長」8人へのインタビューをまとめた本です。飲食業からアパレル、商社や建築会社までさまざまな業種の方たちの話が載っています。

 

第1章『倒産しても、人生は終わりじゃない』

CASE1 世界で勝負する飲食事業の仕掛け人 居酒屋チェーン経営 Hさん

CASE2 炭シャンプーが空前絶後の大ヒット 美容商品販売・サロン経営 Sさん

CASE3 バイクレーサーから日本一の住宅販売業者に 住宅販売会社経営 Eさん

 

第2章『倒産を振り返り、周囲に感謝する』

CASE4 LA発のバッグで一世を風靡 アパレルブランド経営 Yさん

CASE5 年商50億円超えの二代目社長 化学工業薬品商社経営 Bさん

CASE6 中国ウェブ広告の黎明期を開拓 広告代理店経営 Mさん

 

第3章『倒産から学び、武器にする』

CASE7 O2Oビジネスの先駆者 デジタルマーケティング企業経営 Yさん

CASE8 複数の領域・事業で面目躍如 バイク買い取り、デジタルサイネージ・コンサル事業、建築会社経営 Nさん

(目次より引用)

 

著者の関根諒介さんは、freee株式会社の社員として働きながら、武蔵野美術大学の大学院に通い、「倒産社長のウェルビーイング」を研究していたんだとか。

 

関根諒介さん。三井住友カードやみずほ銀行を経て、クラウド会計ソフトを柱に統合型経営プラットフォームを提供する会社・freee株式会社へ2016年に入社。武蔵野美術大学大学院造形構想研究科の博士課程修了。倒産社長をはじめとする挫折体験者の精神的回復・ウェルビーイングを促すナラティヴ・デザインについて研究を行っている

 

表紙や帯に並ぶ文章も気になります。倒産のエピソードが、どんな風に挑戦のヒントになるんだろう。 なんだかポジティブな言葉ばかりですが、「倒産」って怖くないんですか???

 

そもそも、僕は「会社」というものに関する疑問もたくさんあるんです。

 

どんどん大きくしないといけないの?

従業員とその家族の人生まで背負うの大変すぎない?

辛くなったら解散しちゃダメ???

 

などなど、うちは従業員10人ほどの小さな会社ですが、それでも社長をやってみて、わからないこと、ぶつかる問題が山盛り。

 

僕も以前は会社員でしたが、社長ってこんなに色々考えてたんだな……と痛感してます。「あのとき社長にめんどくさいことばかり言ってたなぁ」と省みる日々。それぐらい会社、わからなさすぎ。

 

ということで、著者の関根さんに「倒産って怖くないの?」「そもそも会社って何なの?」という疑問をぶつけてきました!

 

倒産社長たちは、みなポジティブだった?

「今日はよろしくお願いします。そもそも関根さんは、どうして『倒産社長のウェルビーイング』について研究するようになったんですか?」

「僕はfreeeの前に大手銀行で働いていたんですが、そのときの挫折経験がきっかけなんです」

「挫折、ですか」

ある時、銀行員として担当していた企業が倒産してしまって。銀行の融資に対して担保として入れてもらっていた社長の自宅を売却することになり、その売買に立ち会ったんです

 

「立派なお宅で、社長と奥さん、他の銀行員の方もずらっと並んで、さあ、これからいよいよサイン……というタイミングで奥さんが泣き崩れてしまって」

「……辛いですね」

「でも僕は、何の言葉もかけられなくて、見ていることしかできなかった。そんな自分への無力感や憤り、情けなさを鮮明に覚えてます」

「その経験が、どのように倒産の研究に?」

『もし当時に戻れるなら、社長と奥さんが倒産後の人生を絶望せず、よりよく生きるためのサポートをしたい』と思ったけれど、そもそも世の中で倒産した社長がどうされていて、何が課題なのかわからなかったんです」

「ふむふむ」

「そこで、その答えを知るために、『倒産社長』の実態を明らかにし、彼ら・彼女らが幸せになれるための方法論を提案する研究をしよう、と思ったんです」

「倒産を経験した人たちの話から、答えを見つけよう、と」

「そうですね。その後freeeへ転職して、会社員と並行して武蔵美の大学院に通いはじめました。そこで倒産社長の方々にインタビューを行なったんですけど、すごく意外なことがあって。皆さん、とてもポジティブだったんですよ」

 

「ポジティブ。正直、倒産の話ってネガティブなイメージがあります」

「もちろん、皆さんの経験自体は、とても大変なものばかりです。自分が育ててきた事業や会社を失ったり、経営者自身が破産したり、生活苦や孤独に苦しむこともあるので。ただ、ハードな経験を語りながらも、最後には、皆さんがこんな風に仰るんです」

 

「倒産というのは、終わりじゃないってことですね。1個の事業は終わるんだけれども、自分は今新しいスタートラインに立っていると言えるわけです。」

 

「振り返ってみて、よかったなと思いました。すごい財産だなーと思えるようになった。お世話になった人たちに感謝というか……何とかなるよ人生って、本気で思った。これからなんかあっても、なんとかなるでしょう」

 

「すごく前向きですね」

「皆さん、インタビューの冒頭は緊張感があります。でも、しゃべっていくうちに明るくなって、最後には『すっきりしました』と笑顔に変わってるんですよ」

「なぜなんでしょうね。しゃべることでポジティブになる?」

倒産という挫折体験を他人に語ることで、自分の人生を振り返って、客観的に捉え直せたのかなぁ、と。当時は辛かった経験でも、一歩引いてみると、今の人生に活きる財産になっているな、と気づけたのではないでしょうか」

「なるほどー! 語り直すことで、失敗の中にある価値に気づける。インタビューというより、カウンセリングみたいですね」

「僕は話を聞いていただけですけどね。でも、すごく社長たちの話に感情移入しましたし、彼らの話をもっと世の中に伝えたい、と思い、この本の執筆にも繋がりました」

 

『倒産』はタブー化されて、語られてこなかった

「海外だと、倒産に対する価値観が日本と違う国も多いんですよ。本にも書いたんですが、こんなエピソードがあって」

 

私にはカナダ国籍の友人がいるんですが、倒産して間もない頃、日本に会いにきてくれたんです。それで彼が「おめでとう」と言うんですよ。私は「こんな時に何がおめでとうなんだ?」と返したのですが、曰く、海外では起業というチャレンジをして、大きく失敗した経験が高く評価されると。だから、「君は成功へのパスポートを手に入れたね」と言われたんです。

(『倒産したときの話をしようか』p35より)

 

「倒産が成功へのパスポート! めちゃくちゃポジティブだ……」

「日本のとある研究で、漢字の二字熟語388語を、ネガティブかポジティブか評定してもらったそうなんです。するとネガティブと評価された119語のうち、『倒産』は上から6番目だったらしくて」

「かなり上ですね」

「それより上位は『焼死』『通夜』『自殺』『死去』でした。つまり、『倒産』は日本において『死』と同じくらいネガティブに思われているってことですよね」

「どうして、日本では『倒産=ネガティブ』ってイメージが強いんでしょうね」

「社内外の人にいろんな影響が及ぶことでもあるので、そうなってしまうのも仕方ないと思うんですが……倒産がタブー化されて、語られてこなかったことも大きいんじゃないんでしょうか」

「当事者も人に言えないし、周りも触れられない。だから、余計にネガティブなイメージをまとってしまうと」

転んだ後に、再チャレンジしたい人を支える仕組みも少ないのかなとも思います。例えば自己破産しちゃうと、一定期間は事業に必要な融資が受けられなくなっちゃうとか。他にもテレビのドラマやノンフィクション番組で、過度に倒産社長をネガティブに描いてきたことも影響があるとは思います」

 

「僕は親父が事業に失敗して、夜逃げを経験してるんですよ。地元が大阪だったんですけど、身近に倒産したり、自己破産した人も多くて。でも、親父が今、不幸かというと、そんなこともないと思うんですよね」

「僕がインタビューした倒産社長たちも自己破産されているケースが多かったですが、前向きな方ばかりでしたね。『どうにかなるよ』と揃っておっしゃってたのは印象的でした」

「関根さんの活動は、そんな風にタブー化されてきた倒産をポジティブに語り直すことでもあるわけですね」

 

倒産の理由は「人間関係」が大きい

「関根さんがこれまで話を聞いていて、『倒産』の代表的な理由って何が多かったですか? 僕も経営者なので気になって」

「新規商品の不発や、取引先とのトラブル、リーマンショックのような大きな経済環境の影響など、理由はさまざまですね。でも、あくまで僕がインタビューしてきた方たちを考えると……結局のところ、人間関係やネットワークがうまくいかなくなってしまうという理由が大きいように思います」

「どんどん周りから孤立しちゃう、みたいな?」

「そうですね。例えば一つの例ですが、業績がガタガタになってると、社長も精神的に追い込まれて、誰かがアドバイスしても『お前に何がわかるんだ』と周りを遠ざけてしまうようなこともあるようです」

「周りが全て敵に見えちゃうというか。しかも社長って、過去の成功体験があるじゃないですか。そこを信じて、他人のアドバイスが聞けなくなってしまうケースもありそう」

「そうですね。また、経営者になると、部下や取引先には弱みを吐いたり、悩みを相談したりしづらい。そうなると、どんどん過去の自分の成功体験に固執してしまい、経営の意思決定を誤ってしまうこともある。従業員と腹を割って、建設的なコミュニケーションがとれない構造上の問題があったりするんですよね」

 

「怖いなー! もっと手前で周りと適切なコミュニケーションができていれば、軌道修正して失敗も防げたはずなのに。でも渦中にいると、自分の偏りにも気づけなくなっちゃうんでしょうね」

「だから、対話がすごく大事なんですよ。組織って、いろんな経験や知識を持つ人間が集まっているわけなので、本当は噛み合わなくて当然なわけです。多様な意見で溢れると、まぁ、カオスになるんですが、そこを避けてはいけないんだろうなぁと」

「『風通しのいい会社』とか言いますけど、社長も社員も健全にコミュニケーションできる組織のほうがそりゃいいですよね」

「対話の前提として、従業員側の意識としても、過度に社長を神格化してもいけないですよね。社長も人間なわけで、完璧なんてありえませんからね。そうなると、社長も下手に喋れない、弱みすら見せられなくなる」

「僕もしんどいときは従業員に『しんどい』って言っちゃいますね。それでよかったのか」

「不完全な人間が集まった組織である以上、『意見の不確実性』が許容されるべきだと思います。もはや100発100中の『正解』はない時代なので、対話の中で当事者の『納得解』を見つけるという意識が大切かもしれませんね」

 

「走り続けないといけない船」への不安がある

「この流れで、ちょっと僕の会社に関する悩みも相談させてもらっていいですか?」

「もちろんです!」

「なんか、みんな『会社』や『会社で働く』ことを無条件に信じすぎちゃってないか? と思うんですよね」

「ふむふむ」

「身近な経営者の壮絶な話を聞いたり、既存のシステムに向き合ったりしてるうちに僕は会社というものを、そんなに信じられなくなりました。昭和の高度経済成長が前提の仕組みじゃないの? と。みんな、いつまでも続くと思わないで……」

「柿次郎さんは会社のどんなところを疑っているんでしょう」

「例えば、『会社は成長し続けなければいけないのか?』と。実際、経営してるとそう思っちゃうんですよね。税金も払わなきゃだし、仕事が増えると社員も増やしたくなる。するとその分、売上げを上げなきゃいけない。成長してないと不安になるけど……」

 

「そうなると全然遊べなくなっちゃうんです」

 

「遊べなくなっちゃう」

「会社のみんなで旅をしたり、キャンプや焚き火をしたり、そういうことです。特に我々みたいな編集の会社は、そういう遊びから企画が生まれると思ってるので。でも、売上を考えると遊ぶより社員にどんどん働いてもらうほうが効率はいいし……」

「なるほどなるほど」

「『遊べない』のが悩みなのも、僕の会社が世間的にはだいぶ特殊な部類に入るからだと思うんですけど……いわゆるWEBベンチャーというか。特徴をまとめるとこんな感じですね」

 

・メインは編集業なので、パソコンとWi-Fiさえあれば仕事ができる

・柿次郎の一人会社から始まって、世間の需要に合わせて少しずつ人を増やしてきた

・長野本社と東京支社に分かれ、それぞれ4~5人ずつ従業員がいる

・柿次郎はよく旅をしてるので、顔を合わせたコミュニケーションは多くはない

・会社として「こうなりたい」ゴールはなく、走り続けてたら5年経ってた

 

「柿次郎さんの先ほど仰っていた悩みは、本来やりたかったことが、『会社の成長』みたいなことに囚われるとできなくなってしまうってことかもしれませんね」

「まさにそうかもしれません」

「それって、会社における『フィクション』の話だなと思いました」

「フィクション?」

「『会社は生き続ける』『会社と従業員は家族であり一心同体、ずっと一緒』……こんな考え方をしてる人、日本に多くないですか?」

「多いですね」

「でも、それって真実ではなくフィクション、つまり思い込みだと思うんですよ」

 

「ここで一旦、会社を『船』と考えてみるのがいいんじゃないでしょうか」

「船、ですか???」

 

「大きい船をつくるのがかっこいい」は本当?

「船には目指す場所、つまり『ゴール』が必要ですよね。例えばルフィたちは、『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』を目指して航海を続けている」

「急にワンピースの例えに。僕も大好きなので続けてください」

「ルフィは強敵と死闘を繰り広げたり、いろんな困難にぶつかる。でもそこで諦めずに、ルフィが挑戦し続けられている理由ってなんでしょう?」

「ワンピースを見つけて、海賊王になるため?」

「そう、ルフィにはワンピースというゴールがある。さらにゾロやサンジ、ナミたちも、ワンピースを見つけるという夢に共感しているから、好きで乗船しているわけですよね」

「たしかに。だから皆、ハードな航海でも頑張れていると」

「そんな風に『ゴール』があるか、が会社でも超大事で、強敵をどれだけ倒すかや船を大きくすること……つまり会社でいうと売上成長や組織を大きくすることが主目的にはならないと思うんですよ」

 

「でも、会社って具体的に『この島』、みたいな目的地があるわけではないですよね?」

「ゴールの形はさまざまだと思います。『こんな世界を実現したい』とか抽象的なことでも、まさしく『遊びたい』でもいいと思います。大事なのは、メンバー全員が同じ方向を向いて、自分の意思で気持ちよく頑張れるかどうか。それと、ゴールに到達したら、解散しちゃってもいいと思うんです」

「いいんですか!?」

「もちろん、何十年、何百年と続く企業はたくさんありますし、『続くこと』にも意味がある。あくまで柿次郎さんの会社のような場合ですが、『続くこと』以外のゴールもあるんじゃないかなと」

 

一生、会社という船に乗り続けることは絶対じゃない。乗りたい人が乗ればいいし、降りるのも自由なはずなのに、何か『乗り続けなきゃいけない』って思い込みが生まれてしまっている気がするんです」

「なるほど。それが会社の『フィクション』ってことですね! 大事なのは『ゴール』のほうなのに、それ以外に会社を動かすいろんなフィクションが生まれている」

「悲惨なのは、ゴールしても大人の事情で船を止められない、解散できないとか。例えば、銀行や投資家からお金を集めて、世界一周するフェリーみたいな大きい船をつくったとします。そしたら、お金を返したり、収益を分配したりするために、一生懸命、ずっとお客さんを乗せ続けなきゃいけない、みたいな」

「それも『大きい船をつくるのが良い』というフィクションが招く悲劇ですね」

「『大きい船をつくり、走り続ける』というゴール自体を全否定するわけではないです。そのゴールに共感できる人が集まって、一緒に目指していけばいいので。フィクションに惑わされずに、自分たちに一番しっくりくるゴールを対話しながら設定するのが大事なんじゃないかなと」

「俺は会社のフィクションに惑わされていたのか……。改めて遊びながら小さな船に乗り続けるのは興味あるけれど、小回りのきかない大きい船は自分の感覚に合わないですね」

「Huuuuをやっているのは柿次郎さんなので、その感覚を第一にするのがいいと思いますよ」

 

「走り続けないといけない船」への不安がある

「もう少し、僕の悩みの話をしてもいいですか。いま、気づいたらオフィスや地方の拠点を合わせて6軒くらい賃貸を借りていて、社員も増えていて」

「船がどんどん大きくなっていると」

「はい。おまけに自宅を購入するために、30年の住宅ローンも最近契約したんです。どんどん会社という船が止まれなくなっている気がして……」

「社員が増えてくると、そのぶん会社も解散しづらくなってきますよね」

 

「まさにそうです。今の社員はほとんど20代ですけど、このまま彼らが30代、40代と年齢が上がっていくと『はい解散!』とは言いづらくなる。給料も上げていきたいし、彼らの家族も増えるだろうし……みたいな」

「なるほど。柿次郎さんは、もっと無責任でもいいんじゃないんですか?

「え???」

『従業員を食べさせないといけない』もフィクションだと思うんですよ。給料を払えないことは非常識かもしれないけれど、船に乗ってたら嵐にも遭うし、宝が見つからない日もある。それって、仕方のないことじゃないですか」

「でも、船長としての責任が……」

「日本の企業って、社長が従業員やその家族を守って、給料を払い続けることにすごく重きを置いてますよね。もちろん、そこに誇りを持ってらっしゃる企業の方々を僕はすごくリスペクトしてます。だけど、Huuuuのようなベンチャーの場合、『船長としての責任』より、『こうしたい』を大事にしてもいいんじゃないかな?と」

 

しんどくなったら、本当に大変なことになる前に、船を解散する無責任さはあっていいと思いますよ。社員の人たちも、同じようにいつでも船を下りていいわけですし」

「……いいんだ! まあ、製造業とかと違って、僕の業種は工場や大きいオフィスがあるわけじゃないし。解散するハードルも低いんですよね」

「合わなかったら、別の船に乗り換えたり、一人で船を漕ぎ出したっていい。転職もかなり当たり前になってきましたよね」

「『今いる船に縛られなくていい』は、社長も社員も同じ、と」

「これだけ予測のできない時代ですから、柔軟に考えていいと思うんですよ。船のゴール自体、状況に応じて変わっていくはずですし、乗っている側も同じなはず」

「どんどん呪いが解かれていってる感じがします。泣きそう」

 

「そうめん」と「法人の葬式」を作りたい

「いや〜、かなり頭がクリアになりました。こうやって悩みを吐き出すのって大事ですね」

「僕自身、こんな風に社長が自分の失敗や悩みを語れるきっかけや、場所を増やしていきたいんですよ。その一環として、『そうめん』を作ろうと思っていまして

「そうめん!?」

「失敗もそうめんも水に流せるから、相性がいいじゃないですか」

「面白いですね、いいダジャレになってる(笑)」

「ちょっと失敗して凹んじゃっている人の肩をポンと叩いて、そうめんをサッと渡すんです。それで少し場が和むことで、ゆるい雰囲気で自分の失敗を吐き出すきっかけになるんじゃないかなぁって」

「『まあ水に流しましょうよ、そうめんみたいに』ってことですね。ちょっと笑っちゃってポジティブになれそうだし、ちゃんとビジネス的な機能もある」

「そうめん業界も右肩下がりなので、そこも応援したくて。あとは、『倒産』のような『会社の終わり』についてもっと考えていきたい。だからいつか、『法人のお葬式』をやりたいんです」

「面白そうなアイデアが! 会社の解散式みたいなことですか?」

 

「みんなで集まって飲み食いしながら、思い出のムービーを見て『この時楽しかったよな〜』『あいつもいいやつだったな』とか、言い合うんです。『会社の終わり』をポジティブに捉えて、次に切り替えられそうじゃないですか?」

「実際のお葬式がまさにそういう役割ですよね。残された人が死を受け入れて、次に進むための一区切り」

「そうそう、いまは倒産含め、『会社の終わり』がネガティブに捉えられすぎちゃっている。でも、そこから目を逸らすより、もっとポジティブに向き合って、社会全体で考えていった方がいいと思うんですよ」

「人間の『終活』もだいぶ広まってますし、会社の終活ですね」

「解散ありきの会社があってもいいと思います。10年で終わります、とか」

「めっちゃいいなあ。うちの会社もあと5年って決めちゃおうかなと思いました(笑)」

「『そういう会社もあるんだ! 面白いね』ってところから、新しいアイデアや価値観が生まれていくはず。絶対の正解がない時代なので、みんなで対話しながら進んでいければいいなと思います」

 

☆お知らせ

freee出版からは関根さんの著書をはじめ、現在3冊が好評発売中です!

『倒産した時の話をしようか』(関根諒介・著)

『起業時代 創刊号』

『ウルトラニッチ』(川内イオ・著)

 

また、書籍発売に連動したPodcast番組『倒産した時の話をしようか?』もスタート。柿次郎が、作家の土門蘭さんとともにMCを務め、書籍に登場する倒産社長の方々をはじめ、ゲストに話を聞いていきます。

番組URL:https://anchor.fm/freee-publishing

 

すべての経営者と会社員の人に読んでほしい記事!と思ったので、知り合いの経営者に読んでもらった感想も2ページ目でご紹介しています。

いろんな会社があるように、いろんな感想があります。この記事も、何か皆さんのお役に立てば幸いです!

記事を読んだ経営者の感想