
突然ですが、「借金」って怖いイメージがありますよね。
ただし借金にもいろんな種類があって、会社が事業などのために銀行からお金を借りる「融資」も、借金の一種。その土地に必要な新しい事業をはじめたり、人が集まるお店や建物を作ったり……つまり、まちづくりに「お金を借りること」はある意味、欠かせないともいえます。
そして、経営者として大きなお金を借りることができるのは、事業計画の妥当さや、社会への貢献度が大きく関与してきます。つまり融資=借金の金額が大きいほど、社会からの信用度が高いということ……!
僕も長野で会社をやっていて、今後も工務店や宿などやりたいことはたくさん。そのためにはお金も必要。周りのローカル経営者たちの影響もあり、つねづね「2億円借金したい!」と言ってます。そんな時、とある知り合いから連絡がありました。
連絡をくれた、写真左の田中開(たなか・かい)さん。新宿・歌舞伎町のゴールデン街でレモンサワー専門バー「the OPEN BOOK」を営んでいます。ジモコロの過去記事はこちら
「柿次郎さん、僕の知り合いに40億円の借金をしてる経営者がいるんです」
「40億!?」
「人呼んで『人宿町の不動産王』」
「不動産王!? 静岡を牛耳るドンってこと……?」
「そんなダーティーな存在じゃなくて、めちゃくちゃ街に貢献してるすごい人ですよ。静岡の人宿町(ひとやどちょう)ってエリアで、10年間で約100店舗のお店を手がけたり、街を盛り上げまくってるんです」
「10年で100店舗はすごい、本当のまちづくりだ。王に会いたい〜!」
「行きましょう!」
街中にあふれる、創造舎の「S」マーク
「静岡駅から15分くらい歩いてきたけど、ここが人宿町?」
「はい。もともと府中宿(ふちゅうしゅく)という東海道の宿場町があったエリアです」
「なるほど。さっきから気になってるんだけど、あの『S』マークって何なんだろう?」
「そこの看板にも」
「街のいたる所に『S』マークがある!」
「“人宿町の不動産王”の会社、『創造舎(そうぞうしゃ)』のマークですね。このマップを見てください。ここに載っているお店のほとんどは、創造舎が手がけたものなんです。半径数10メートルほどの範囲に約100軒あるそうで」
「この狭いエリアで100軒。他で聞いたことないレベル」
「土地を買って建物をリノベーションして、自社で耐震もやりながら、テナントに入る人も呼んでくる。内装もぜんぶ自社でやって、その後の管理も請け負ってるらしいんです」
「施工から管理まで……マジの全部だ」
「約100軒のうち飲食店が50店舗くらいなんですけど、静岡の名物通りをつくりたいらしく、静岡中の腕のいい料理のオーナー店舗を集めてるんです。僕も何軒か知ってますけど、どこも本当に美味しいですよ。
あ、そこにあるのは築70年の古民家をリノベーションしたお店『人宿町マート』です。八百屋さん、肉屋さん、魚屋さんなんかが入ってます」
「飲食店だけじゃなく、生活に役立つ店もあるんだ」
「お惣菜に、生ビールの店もある」
「地元の『静岡醸造』が直営する『人宿タップルーム』ではクラフトビールが飲めますよ」
地元の養蜂場から仕入れたハチミツを使った「ハニーピルス」というビールをいただきます。うまっ!
「ここのビール、美味しいですよね〜」
「静岡駅も近いのに、ローカル感もあって面白いエリアだな〜。あ、お店の人ですかね。ちょっとお話聞いていいですか?」
「静岡醸造で社長をしている福山康大といいます。ホップマンという芸人でもあります」
「情報量が多い(笑)。福山さんのことも気になるんですけど、人宿町の不動産王に会いに来てまして」
「ああ、山梨さんのことかな。すごい人ですよ。僕は17年前に静岡へ来たんですけど、山梨さんがこの街に関わるようになってから、ガラッと変わりました」
「どんな変化が?」
「僕が移住した頃、このエリアは寂れているというか、薄暗い印象だったんですよ。それが徐々に変わって」
「さっきから街を歩いてても、国内外の観光客らしき人とか、たくさん歩いてますね。賑わってる」
「今みたいになるとは思わなかったですね」
「美味しい飲食店が多いって聞きましたけど、地元の人たちもこの辺りに食べに来るんですか?」
「はい。静岡駅からはちょっと歩きますけど、ちょっと遠出して街を散策したいって人たちが来る感じですね。建物に『S』のマークがあるところは、山梨さんが直接、誘致しているお店なので、まず間違いないんじゃないかな」
「Sマークは一定の審査基準みたいな役割にもなってるんだ! 山梨さんのお墨付き」
「そういう風にも言えると思いますよ。店主同士も知り合いだから、お店の人におすすめを聞いたら、いろいろ教えてくれるはずです」
「知らない街だといいお店を探すのも苦労するけど、Sマークって目印もあるし、横のつながりのレコメンドもある。食べ歩き・飲み歩きしたくなっちゃう街だな〜」
「あっ、いたいた! 山梨さ〜ん!」
「人宿町って創造舎さんの街でしょ」
「山梨さん、探してましたよ!」
「あれが不動産王!? めっちゃ道端の自転車を片付けてたけど」
「ここの放置自転車が邪魔って連絡が来て、対応してたんですよ。というか不動産王なんて誰が言い出したんですか(笑)」
「人宿町で建設設計の会社をやってる山梨洋靖です。王なんて恐れ多いですよ、やめてください(笑)」
「40億の借金はもう、王と呼ぶにふさわしいですよ」
「想像してたイメージよりもうんと優しそうだし、なぜ放置自転車の対応を?」
「放置自転車がある時って、普通は市役所や警察に電話するでしょ。ところが最近は、うちの会社に連絡がくるんです。『自転車が置いてあるんだけど』って」
「もはや創造舎が役所みたいに思われてる。それで山梨さんが出動してるのもすごいな……」
「ちなみに、この辺りで夜中に誰か騒いでても、うちに連絡がきます。ありがたいことに『人宿町って創造舎さんの街でしょ』って認識になってるみたいなんですよね」
「めちゃめちゃ街の人に信用されてるってことですよね。その理由が気になります」
「もともと、人宿町が少し空洞化してたエリアだったことと関係があるんですかね」
「空洞化?」
日本有数の映画館街が空洞化→空地活用でにぎわいを!
「実はこの人宿町界隈って、昔は映画館が13軒もあったんです。『七ぶらシネマ通り』と呼ばれてて、川崎の『ラ チッタデッラ(※)』と並び称されるほど、日本でも有数の映画館街だったんですよ」
※シネコン「チネチッタ」やライブホール「クラブチッタ」を擁する、ヨーロッパの町並みを模した複合商業施設
かつての映画館街の様子。写真左にあるのが「静岡オリオン座」
「13軒はすごい! 静岡にそんなエリアがあったとは」
「それが2011年にすべての映画館が閉館して、シネコンに移転することになりました。市民会議などを行なった結果、映画館の跡地には水道局庁舎が建設されることになったんですが、着工までに約2年間ほどかかるから、その間、大きな空き地ができてしまうわけです」
「もったいないですね。静岡駅近くの中心地に」
「そこで、創造舎を立ち上げて4年目だった僕に、にぎわいを創出する広場を設計してほしいと依頼が来たんです。僕は地元の有志と『アトサキセブンプロジェクト』を立ち上げて、定期的にイベントを開催することで、中心外の空洞化を防ごうとしました」
「期限付きの短期利用ということもあって、映画館の跡地にコンテナを仮設して、街のみんなと毎週末のようにイベントを打っていました。その場所は予定通り2年で終わったんですが、その後は別の場所に移り、アトサキセブン改め『アトサキラーメン&広場』を自主運営することになるんです」
「急にラーメンが出てきましたね」
「というのも、土日のイベントって人は集まるけど、一過性ですぐ終わっちゃう部分もあるじゃないですか」
「たしかに。ハレとケでいうと、イベントは完全にハレの要素ですもんね」
「そうそう。それに、平日に誰もいない状況もイヤだったので、平日はラーメン屋、土日はイベントという形にしようと考えたんです」
「なるほど! ちなみに移転先はどんな場所だったんですか?」
「自社で設計から手がけていた『人宿町離宮』という建物が建つ場所で、設計期間の約2年間、更地になることが決まってたんです。何もしないと寂しいなと。それでいざ始まると、平日のラーメン屋は大盛況。でも、イベント広場の方は逆効果だったんですけど……」
「なにがダメだったんでしょう?」
「はじめの頃は、単独でいろいろイベントをやってたんですよ。そこで好き勝手にやってしまっていて、例えば歩道に椅子や机を並べて、近所の人たちからクレームが入ったり。毎回、警察が来て怒られてました。
今思えば恥ずかしい話ですけど、その時は『街を盛り上げてるのにどうして』と思っちゃってましたね」
「あ〜、盛り上げようと頑張ったのが裏目に」
「ただ、すぐに冷静になって『自分が悪いな』と反省しました。そこからは美術展を開いたり、地域のお神輿に参加したりと心を入れ替えて。そうしているうちに、少しずつ街の人から認められるようになったんです。スーパーマーケットをつくらないかとお話しをいただいたり、商店街のお祭りを復活させることができたり」
「お祭りを復活!」
「その時もゴミ置き場は自社で用意して、街中にゴミが散らばったりしないようにしました。イベント以外のゴミに関しても、僕らが呼びかけた飲食店は油も段ボールも生ゴミも缶も、共同のゴミ置き場を設置して、まとめて回収するようにしたんです」
創造舎が人宿町に設置している、共同ゴミ置き場
「そのほうが近所にも迷惑がかからないし、それぞれの店が個別にやるより安くなるんですよね」
「街をよくするための工夫を、小さなことからコツコツと……。それが今に繋がってるんだなあ」
若者でも店をはじめやすい仕組みをつくる
街のどのお店へ行っても、親しげに会話が始まる
「でも、そこからどうして人宿町で100軒もお店を手がけるようなことに?」
「『SOZOSYA Mビル』というビルを人宿町に建てたのが、ひとつの転機でした。このビルの完成時にオープニングパーティをしたんですが、ほとんど人が来ないし、メディアに全然取り上げられなかった」
「悲しい……」
「振り返ってみると、町内会に話を通してなかったり、テナントもバラバラにオープンするなど、テナント側とのコミュニケーションもきちんと取れていなかったりしたんです。そこで、僕ら創造舎が主役というより、店主を前面に出してプロジェクトを進めようと考えを改めました」
「山梨さんの会社ではなく、店主が主役」
「それを体現したのが、この人宿町のまちづくり『OMACHI創造計画』です。この第一弾として、10店舗を人宿町で同時にオープンさせました」
「おまち」とは、静岡市の人たちの中心市街地の呼称。昔からの繁栄を感じさせる愛着のあるネーミングとして「OMACHI」と銘打った
「おお、反響はどうでした?」
「第一弾のオープニングパーティでは、300名を超える人が来てくれて。テレビ局や新聞社にも取材していただきました」
「一気に変わりましたね!」
「やがて『OMACHI創造計画に混ぜて欲しい』という街の人も出てきました。たとえば『40年ぐらいこの店をやってきたんだけど、もうお店を閉めたいから買ってくれない?』といった相談がくるようになったんです」
「そういう悩みを抱えてる人は地方や郊外に多いと思います。山梨さんたちみたいな会社がいたら、それは相談したくなるよなあ」
「そうやって相談された物件から生まれた例が、“泊まれる純喫茶”をテーマにした『ヒトヤ堂』。若い女性数人で、お店を切り盛りしています」
「さっき前を通って気になってたお店! 人気の出そうなコンセプトですね」
「実際、成功してますよ。宿泊業や飲食業がダメージを受けたコロナ禍でも、一回も家賃を滞納していないし、今やビジネスホテル一棟を丸借りもしています」
「へー! 特に若い子なんかは絶対好きな雰囲気だもんなあ」
「僕ら建設設計の会社としては、そういう志がある人を見つけた時に『物件を買ってもらって、店を始めて欲しい』と思いがちです。でも若い世代ほど、いきなり物件を買うのはハードルが高いですよね。だから『まずは創造舎が買って、リノベーションをして、賃貸で貸す』というスキームにしているんです」
「若い子でもお店を始められるよう、ハードルを下げてるんですね。素晴らしい!」
「あとは『前田直紀陶芸工房』もおもしろいですよ」
「ここは物件の手前が店舗、奥が住居スペースになっていて。オーナーのおばあちゃんが引退されてから、店舗部分はずっとシャッターが閉まってたんです。だけど信頼関係を築いていった結果『店舗部分を貸してあげる』となった。今でも奥にはおばあちゃんが住んでて、出入りするのに工房部分を通っていくんです(笑)」
「ほっこりしますね(笑)。 結果、街の中でいろんな交流も生まれてるんだなあ」
まちづくりの次は村づくり。宿場町を復興せよ!
「これだけの規模のまちづくりを借主や若者想いに続けて行ったら、借主も40億円くらいになりますね」
「実は人宿町では、30億円ほどですね」
「え、じゃあ残りの10億は?」
「実はここから車で15分離れたところで、村づくりをやっていて。そこの借金です」
「街だけじゃなくて、村も?????」
「せっかくなので、そちらもご案内しますよ。行きましょう」
「ということで、移動してきました。ここが村?」
「順に説明しますね。もともと府中宿にある、人が賑わい人が宿る『人宿町』エリア。そして鞠子宿(まりこしゅく)にある、工芸職人の匠が宿る『匠宿』エリアをつなげるため新しく始めたプロジェクトを、『匠宿Craft Valley』と称して進めています」
「匠宿Craft Valleyプロジェクト」
「鞠子宿にはもともと、1999年オープンの『駿府匠宿』という行政主導で運営される工芸体験施設があったんです。そこを我々が指定管理業務として請け、『駿府の工房 匠宿』として2021年にリニューアルしました。それが今いる施設ですね」
敷地内には工房からギャラリー、カフェ、伝統工芸館などさまざまなスペースが
「ショップもかっこいい工芸品がいろいろありますね。気になる!」
「この匠宿を手がけたのをきっかけに、周囲の村作りもやるようになったんです」
「静岡って工芸文脈があったんでしょうか? それこそ家康とか?」
匠宿内にあった、巨大家康像
「まさにそうです。静岡市にゆかりの深い徳川家康が、駿府城の改築や浅間神社の造営をする際に、全国から職人を連れてきたことに由来してます」
「それで現代まで工芸の文化が残ってるんだから、家康パワーってすごい」
静岡に伝わる「駿河竹千筋細工」は、鷹匠を趣味とした家康が、鷹の鳥小屋や餌箱を竹でつくらせたことに端を発すると言われているそう
「村づくりでは、何か目指していることはあるんですか?」
「里山工芸村計画を実行するにあたって、10年で100人の職人を育成する場を創るというミッションを設定しました」
「街では店舗を100、村では職人を100! それって、行政からも何かオーダーが?」
「いえ、静岡市からは特にその辺りの言及はなくて、入場者数を気にして欲しいと言われてたんです。でも僕らとしては、人は絶対に来るから、それよりもとにかく職人を雇って、弟子を育てることを軸にしようとしたんです」
「日本中で伝統工芸の継承は危機に瀕してますからね……。ちなみに、入場者数って実際どうだったんですか?」
「僕らが運営を始めた2021年に5万7000人だったのが、2023年では15万人近く、2024年には20万人ほどになっています。入場者の中の工芸体験者数も、2021年から2倍近くになっています」
「有言実行すぎる」
ショップでは、工房を構える職人さんたちの作品も多数販売されている
「職人を育成する取り組みとしては、静岡・中部圏の各工房に問い合わせて、条件の合う陶芸、竹、漆などの若手の職人さんたちをお招きし、なるべく匠宿に工房を構えていただき、工房に常駐してもらうようにしているんです」
「あ、職人さんが実際に村にいるんですね」
「職人を雇うだけでなく、育成するためにはそうしないといけないなと。僕らとしては、いかにしてでしを集め、技術の伝達や経済的安定をどう確保していくのかを、場を作りながら向き合い続けています」
醸造所にホテルに温泉。村づくりの夢は大きい!
「職人を育成する村づくり、全国の伝統工芸にとってのベンチマークにもなりそうですね」
「これが全容というわけではなく、村作り自体は他にもいろいろやってます」
「なんと!」
「例えば、街で飲んでもらった静岡醸造のビール醸造所を作ったり、シェフを呼んでレストランを作ったり。あとは、この『1HOTEL』ですね」
「これはもともと、匠宿の隣にあったカップルズホテルだったんです。そこが撤退したので僕たちがリノベーションして、犬と泊まれる宿に生まれ変わらせました」
「ちょっと変わった構造だなと思ってました。いわゆるモーテルスタイル?」
「そうです。車から直接、部屋に入れる仕組みなので、それを利用してペットホテルにしたんです。ペット同士はすれ違うとお互いにストレスがかかるので、それが避けられる利点があるんですね」
「なるほど!」
「トリミングサロンやドッグランなども併設してますよ。ペットと一緒に工芸体験もできるので、工芸という村の軸からはぶれないようにしています」
「あとは築150年ほどの古民家を改装して、部屋にプライベートサウナとヒノキの水風呂が付いた『工芸ノ宿 和楽』をつくったり」
「最近では『ふきさらし湯』という温泉施設もオープンしたりしています」
「めちゃくちゃつくってる〜!!! 匠宿は行政が関係しているって話でしたけど、周りの村づくりもそうなんですか?」
「いえ、近隣施設に関しては僕たち主導で手がけています。行政が関わる施設の周りに民間の施設を並べて開発していく官民連携の仕方は、全国でもあまりないみたいですね」
山梨さんは人宿町という人情通りの“人情男”だった
村は広いので、ゴルフ場によくあるカートで案内いただきました。山梨さん自ら運転!
「山梨さんとしては、匠宿エリアを第二の人宿町にしたいんでしょうか?」
「というよりも最終的には、この匠宿エリアと人宿町のエリアを東海道でつなげて、2エリアを一つとして考えていきたい、というのが僕のイメージですね」
「宿場町を繋げて一つに。詳しく聞きたいです」
「泉ヶ谷も人宿町も単体で見たら、都会の街や大規模な観光地には勝てない。ただあわせて見てみるとすごいポテンシャルがあるんですよ」
「ポテンシャル?」
「だって、車で15分の距離で『都市機能』と『大自然の中の工芸村』が併設しているところって、あんまりないじゃないですか」
「シムシティくらい大きい視点で土地を見てる! でも、気軽に行き来できて、両方の機能があるって観光視点で見てもめちゃくちゃいいですね」
村は山に囲まれ、自然や歴史ある建物も多い
「こういう話をすると、僕はスケールの大きなハードづくりばかりしているように見えるかもしれません。でも、一番大切にしているのは『人』なんです」
「人。たしかに。ずっと育てる話をしているような」
「やっぱり『その街にいいやつがどれくらいいるか』が、地方都市の魅力だと思うんです。僕らはハードを作ってるように見えるけど、実は『情熱ある人』を集めているんですよ」
「いい環境をつくると、いい人も自然と集まってくるから。本当の目的は後者なんだ」
「とにかく情熱的な人たちとたくさん関わって、彼ら・彼女らとともに成長していくこと。それが、これからの地方都市を盛り上げていくことにつながるんじゃないかと思います」
おわりに
「いや〜、山梨さんすごかったね。借金額のインパクトもあるけど、それ以上に人柄というか考えてることがすごい」
「山梨さんは高いところから指示を出したりするんじゃなく、自分が路上に繰り出して、そこにいる人たちの目線に立ってまちづくりをしてるんですよね」
「最初に会ったとき、放置自転車を整理してたのがまさにそうだよね」
「しかも、静岡でも人の集まる静岡駅のすぐ近くで、愚直にそれをやっている。僕もいろんな土地でまちづくりに関わる人と会ってますけど、都市型のニュータイプだと思いますよ。まちづくりの考え方も、山梨さん自身も」
「最初に開くんから『不動産王』って聞いたときは資本主義の中で経済合理主義まっしぐらな人を想像したけど……」
「真逆ですね(笑)」
「人宿町の不動産王の根っこにあったのは『人情』だった!」
<お知らせ>
ジモコロの「まちづくり」がテーマの過去記事を再編集し、新規記事などを加えてまとめた書籍『都市と路上の再編集 – LIVE NOW DEVELOPMENT –』が7/1に発売予定! 山梨さんの記事も掲載されています。書籍の詳細や購入方法はこちら。
構成:しんたく
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この記事を書いたライター
株式会社Huuuu代表。8年間に及ぶジモコロ編集長務めを果たして、自然大好きライター編集者に転向。長野の山奥(信濃町)で農家資格をGETし、好奇心の赴くままに苗とタネを植えている。