「元に戻ることはない…」人生初の災害ボランティアで見た景色

2019.10.19

「元に戻ることはない…」人生初の災害ボランティアで見た景色

日本全国に甚大な被害をもたらした台風19号。ジモコロ編集長の柿次郎が住む長野県でも、千曲川の堤防決壊で大きな浸水被害が発生。知人のFacebook投稿をきっかけに、人生初の災害ボランティアに柿次郎が参加しました。募集窓口の見つけ方、準備や装備などを現場での気づきとともに紹介します。

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    2019年10月、日本列島を襲った台風19号。記録的な豪雨による堤防の決壊は、NHKによると59河川・90カ所。住宅の浸水被害は、少なくとも1万3000軒以上だと報じられています。

     

    私が住んでいる長野県も、大きな被害に見舞われました。自宅のある長野市善光寺界隈の被害はほぼなく、家も無事だったのですが……。

     

    台風19号による記録的な大雨の影響で、県内の住宅被害は計8874世帯に上ることが17日わかった。県災害対策本部が同日午前10時時点でまとめた。このうち千曲川の堤防決壊で広範囲な浸水被害があった長野市では推計5086世帯(1万2485人)。

    ※信濃毎日新聞(10月17日 夕刊)より引用

     

    被害状況は日を追うごとに可視化されていて、想像以上に厳しい様子がみなさんの目にも飛び込んできているのではないでしょうか。

     

    Faceboookでボランティア要請を見て動く

    長沼・穂保地区はりんごの栽培が盛んで、農家の被害が目立つ

     

    朝からたくさんご連絡いただきありがとうございます。
    千曲川が大きく氾濫し、家の裏の堤防が決壊してしまいました。
    家族と犬とで昨晩避難して、無事です。

    一番大きく堤防が決壊した地域の生まれなので、家の方にはまだ通行止めでいけませんが、浸水は免れないかなとゆう感じです。

    小さい頃から遊び場だった千曲川。
    決壊したのは昔の話と思っていましたが、こんなことになろうとは思いませんでした。りんごも収穫目前でしたが、全滅してしまいました。。。

    テレビもない状況で不安が大きいですが、とりあえずご報告まで。

     

     

    今回、Facebookに投稿された知人・友人による「ボランティア協力の要請」を目にして、いてもたってもいられず動くことにしました。

     

    知人の寺田菜々美さんが10月14時23時に投稿した内容

     

    生まれ育った大阪での阪神大震災(1995年)、東京で勤務中に体験した東日本大震災(2011年)、母方のルーツである熊本の震災(2016年)など、気づけば自然災害は「自分ごと」になっています。

    これまでジモコロで「災害」にまつわる記事を数多く制作してきたのはそのためです。

     

    【まとめ】知って備えよう!ジモコロの「災害」記事12選

     

    といっても、災害ボランティアをするのは人生で初めて。しかも都会で育ちパソコンばかり触っているもやしっ子です。知識と技術に乏しいものの、現地の方々に迷惑だけはかけられない……。

     

    これまで見聞きしていた情報で「安易にボランティアで現地入りしない」「装備・道具は自分で用意する」「適切な情報を把握しておく」ことがすぐ頭に浮かびました。実際、ボランティアに行く決意をした10月14日時点では、長野県内でのボランティア募集は飯山市のもののみ。

    まずは知人のSOSに応えるべく、長野の友人たちにinstagramのストーリーズで呼びかけました。

     

    集まったのは男5人、女1名。

    ボランティア当日を迎えるまで、各所とやりとりをしていたのですが…

     

    <受け入れ側の声>
    ・人手が圧倒的に足りない、高齢者が多い、男手を求めている

    ・ボランティアを求めているが、とにかく遠慮・配慮している(強く言えない)

    ・一般家屋と農家や工場では、問題の箇所も、必要な道具・スキルも違う

     

    <参加したい側の声>

    ・ボランティア情報が統一されていない。また「現地に迷惑をかけられない」思いもある

    ・どんな装備と心構えをすればいいのか把握できていない

    ・車がなくて動けない学生も多い。現場に車が停められない・道路へ入れない問題も

     

    こんな気付きがありました。県内の大学生や宿で働く友人など、私同様にどうにかしたいと考えていた人は「参加するきっかけ」を探していたみたいです。

     

    ボランティア活動の準備

    まずは現場で迷惑をかけないための準備をします。

     

    <持参・装備したもの>

    ・自分用の簡易食と飲み物

    ・防水素材のジャケット

    ・汚れてもいい上下の服、靴下

    ・頭にタオルを巻く

    ・軍手

    ・アルコール入りのウェットティッシュ

    ・ヘッドライト

     

    感覚的には「登山」の格好&準備で、足元は「長靴」のイメージ。あまり難しく考えすぎるとアレもコレも…と持っていきたくなってしまうことに気づきました。

     

    また今回は長野市のボランティアでしたが、被害のあったどの土地も、日中から夕方にかけて冷え込みが大変です。登山用のインナーを着込めば汗冷えもなく、防寒対策にもなるかと思います(冷えと疲れで風邪をひいたら元も子もないので)。

    過去にジモコロで取り上げているmont-bellの「ジオライン」はおすすめです。

     

    当日は同行者の買い出しを兼ねて、朝イチで近所のホームセンターへ駆け込んで以下の商品を探しましたが、ほとんどが売り切れ状態……。

     

    ・長靴(できれば足底にプレートが入っているもの)

    ・防塵用のマスク(普通のマスクでもOK)

    ・泥かき用の金属スコップ(雪かき用のプラ製も活躍できる)

    ・防水のゴム製手袋

     

    地方在住であれば家にあるかもしれませんが、遠方からボランティアで駆けつけるときは事前準備が安全だと思います。いつ災害が自分に降りかかるかわからないので、落ち着いたタイミングで、みなさんも揃えてみてはいかがでしょうか。

     

    怪我と破傷風、厄介な泥の存在

    床上浸水の家屋におけるボランティア活動は「危険」がつきものです

    釘や金属片、家具などを運ぶ過程で一番気をつけないといけないのが怪我であり、汚れた泥の中にある細菌が傷に侵入すれば「破傷風」の恐れもあります。

    実際、私がお世話になったお家のお母さんは破傷風で手が腫れていたので、「ささくれ」一つでもこまめに除菌するなどしましょう。

     

    また、ボランティアに行った先で怪我をしてしまい、受け入れ側の人に心労をかけないことは意識したいですね。そのために「ボランティア保険」の加入もぜひ。

     

    防犯面でも名前を明らかにする名札は必須、公式ボランティアのビブスなら一目瞭然

     

    正義感がときに重い感情となるように、細心の注意を払って怪我しないよう努める。無理をしすぎず、自分のペースで休憩をとる。重い荷物を運ぶときは男手を集めて対処する。互いに声をかけあって注意喚起をする。

    このあたりは、一度ボランティアを経験しないとわからないノウハウかもしれません。

     

    それにしても……泥でぬかるむ現場で足をすべらす怖さときたら!

     

    初期段階は「男出」と「軽トラ」が大活躍

    私たちがボランティアに訪れたのは長野市・長沼地区。

    県内でも被害エリアが大きかった土地なんですが、10月15日時点で主要道路の泥はほぼ処理されていて、敷地内の家屋・倉庫・納屋などの清掃・片付けがメイン。「荷物運び」「畳はぎ」「ゴミ集積所への運搬」が主な役割でした。

     

    友人の一人で、ジモコロの写真撮影をお願いしている鶴と亀の小林直博くんも助っ人で登場。

    爺ちゃん婆ちゃん×ヒップホップ!? 長野の人気すぎるフリーペーパー「鶴と亀」の制作秘話

    同じく被害のあった飯山市の山奥で代々暮らしていて、消防団としても活動しています。颯爽と訪れた彼の準備万端っぷりと動きのよさときたらもう…!

     

    そして、とにかく大活躍したのが「軽トラ」です。家主の捨てる・捨てないの判断を待って、男手が重い荷物を軒先へ運び、軽トラの荷台へ。パンパンになったタイミングでゴミ集積所までピストン輸送します。

     

    家屋内でのボランティア作業は「指示待ち」になりがち。現場を指揮する受け入れ側の家主にも、大きな負担がかかる様子を感じました。

     

    小林くんが持参した作業道具、一輪車やデッキブラシも大活躍

     

    その点、自前の「男手」と「軽トラ」が掛け合わされば、家の人だけでは難しい力仕事を一手に担うことができ、一心不乱に身体を動かすだけで貢献できる。内と外で役割を大きく分けることで、作業効率も大きく上がりました。

     

    地方に住み始めたら「軽トラが最強」とよく聞いていましたが、災害時のポテンシャルはすばらしい。地方のDIY精神は、そのまま生きる力になる。こういったことを学びたくて長野へ移住してきたので、ボランティアの現場は学びがたくさんあります。早く軽トラ買おう。

     

    泥との格闘! 足に合っていない長靴は負担が大きい

    運動不足の37歳。この前提条件はあれど、今回のボランティア活動で得た一番の気づきは「足に合っていない長靴での作業は膝と腰の負担がデカい」です。

     

    ホームセンターで売っている長靴はS・M・Lのざっくりしたサイズ展開が多く、ジャストで履ける人は少ないのかもしれません。

     

    登山の下山時をイメージしてください。ぶかぶかの登山靴で下り坂を降り続けるとグリップが効かず、膝や腰で身体を支えることに。

    そして前述の通り、床上浸水の現場は泥まみれ。荷物が飛散し、人とすれ違う瞬間も神経を使います。

     

    その状態で重い家具や家電はもちろん、泥水を吸った畳の重量感は想像を超えてきました。ダンボールや本も同様。室内では泥まみれの長靴から綺麗なクロックス(これがまた滑る!)へ履き替えての作業もあったので、絶え間なく膝と腰に負担がかかり続けます。

     

    もし足にあった登山靴が手元にあるなら、登山靴も合わせて活用すると身体の負担が少なく済みそうです。また室内の作業は、足袋式の靴下+滑らずグリップの効くビーチサンダルが適切かもしれません。

     

    私は終盤、爆弾を抱えていた左ヒザが壊れました…(温泉で回復したけど)。

     

    元通りを目指すが、元通りにはいかない葛藤と家族の姿

    今回、私たちを受け入れてくれた「寺田さん一家」はパワフルな両親と娘4姉妹の家族構成。強く明るく、その場の役割をしっかりこなしてくれました。その姿に何度も元気づけられて、普通の日常と錯覚するような笑いに包まれたことも珍しくありません。

     

    父親が全体の指揮をして、母親が室内の清掃や残すべきものを判断する。子どもたち妹たちが遊びはじめたら、長女がしっかりと指示を出す。

    そして思い出のモノを勝手に捨てられそうになったとき、「ちょっと!なんで捨てるのよ〜!」と、本気で名残りを惜しむ感情の揺れを何度も目の当たりにしました。

     

    築50年の家の中に、泥で汚れたモノひとつひとつに、家族の歴史が刻み込まれている。あれもダメかこれもダメか。いや、これは大丈夫なんじゃないのか。

    じっくり時間をかけて判断する余裕がないからこそ、無情にも捨てざるを得ない心境へ変わっていくようでした。

     

    たった一日、たった数時間のお手伝いです。

    当事者の気持ちを理解することはできませんし、これから何ヶ月、何年も続くであろう復旧活動は始まったばかり。被災した家族の現場に少し居合わせることが、こんなにも自分自身の感情を揺らすものなんだなと気づけた、貴重な経験となりました。

     

    作業の目処がついた夕暮れ。寺田家のお父さんが口にした言葉が強く残っています。

     

    「みなさん今日はありがとうございました。おかげさまで作業がだいぶ進んで、自分たちの暮らしが少しずつ元に戻る姿を見て……いや、元に戻ることはないけれど」

     

    あえて言い直した言葉。それでも、自分たちとボランティアの人たち、行政の力を借りながら復興を目指さなければ前に進めません。

     

    災害ボランティアで関わりたい人へ

    台風19号の被害は全国に及んでいて、県単位、市町村単位、そして家単位で求められる作業と役割が違います。私が今回見てきた現場はひとつのケースに過ぎません。三日後、一週間後と時の流れと共に状況は変わります。

     

    <ボランティア参加の大前提>

    ・各市町村のボランティアセンターで正式な申し込みをする

    ・現場のハブとなっている友人・知人に連絡をしてみる

    ・事前の準備・装備は自分で調べて対応する

    ・作業中は怪我をしないよう最大限配慮する

     

    長野県の情報でいえば、他県からのボランティア参加者向けに高速道路無料の仕組みもあるそうです!(事前手続き必須なのでお忘れなく)

    ボランティアの人手はもちろんですが、各自治体や各会社の「寄付」も大きな助けとなります。暮らしを立て直して、安心できるインフラを整えるため、お金は必ず必要。どこにどう寄付するのかは各々の判断でやりましょう。

     

    ※令和元年台風19号緊急災害支援募金(Yahoo!基金)

    【令和元年 台風19号】緊急災害支援金(Good Morning)

    私はこの2つの仕組みで寄付しました!

     

    一緒にボランティア作業をした友人の声

    ボランティア作業に参加した友人の声をまとめました。

     

     

     

    寺田菜々美さんからのメッセージ

    写真左下が寺田菜々美さん

    復興は間違いなく1ヶ月、2ヶ月以上の長期戦になります。今が1番メディアで取り上げられて、ボランティア熱のある時だと思いますが、長い目でじっくり助けに来て欲しいです。

    また、沢山の人が個人や村でクラウドファンディングなど始めていますが、1番被害の大きいエリアはそれどころではありません。

    被害の全容が見えて、助けの声をあげられるようになってから、支援してもらえるとうれしいです。うちも衛生検査などをした上で、生き残ったりんごの出荷を考えていきますので、その時はぜひ!

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    徳谷柿次郎
    徳谷柿次郎

    ジモコロ編集長。大阪出身。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。

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