最高の「おむすび」を握るための“三種の神器”と4つの極意

2019.05.16

最高の「おむすび」を握るための“三種の神器”と4つの極意

日本人の誰もが食べたことのある国民食「おむすび」。今では様々なバリエーションのものが生まれていますが、実は最高の「塩むすび」を作るために簡単にできることがあるのだとか…! 全国でおむすびワークショップを行う「旅するおむすび屋」菅本香菜さんにその秘訣を聞いてきました。

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    グ〜〜〜〜

     

    おむすびの写真を見ていたら、お腹がなってしまい、失礼しました。
    ライターの藤原です。

    最近、おむすびが流行っている気がしませんか?
    雑誌で特集されたり、ミシュランガイドでも「寿司」や「ラーメン」などと並んでジャンルができたり…。

     

    でも、ぶっちゃけ……

    おむすびの美味しさなんて、中の具材次第って思いませんか!?

     

    私の中では、「美味しいおむすび」といえば、コンビニで1個200円超えしている、高級な具材が入っているおむすびです。

    ということは、おむすびをたくさん握っている人に、その人が好きな具材を教えてもらえれば、究極に美味しいおむすびを知ることができるのでは…?

     

    そこで今回は、
    全国を旅しながら、各地の具材でおむすびを握るワークショップを行っている「旅するおむすび屋」の菅本香菜さん(写真右)に美味しいおむすびについて聞いてみることにしました。

     

     

    • ・全国各地に行き、出会った美味しいおむすびとは?
      ・おむすびを美味しくする4つの極意
      ・菅本さんオススメのおむすび“三種の神器”
    •  
    •  

    など、今まで知らなかったおむすびにまつわる話が盛りだくさん。
    美味しいおむすびのヒミツに迫りました。

     

    サザエからオレンジジュースまで、おむすびの具材は無限大!?

    「こんにちは!『旅するおむすび屋』として、全国を回りながらおむすびを握ってるという噂を聞いたんですが」

    「そうですね。全国各地に行って、おむすびを握っています」

    「『おにぎり』じゃなくて『おむすび』なんですね」

    「はい。ある本に、ぎゅっと握るよりも、素材を結びつけるような感覚で作るといいよと書いてあって。それを読んでから、私は『おむすび』と呼ぶようにしているんです。だから『握る』じゃなくて『結ぶ』と言うこともあって」

    「ほんとだ。おむすびって『結ぶ』が言葉が入ってる…」

    「でも地域や人によって、全然表現が違うんですよ。神事に使われていたものを『おむすび』と呼ぶという話もありますし。すごく面白いですよね」

    「あ、全国回っているんですもんね。そういえば『旅するおむすび屋』って、菅本さんがおむすびを握って、食べてもらうってことですか?」

    「それだけじゃなくて、現地の人と一緒におむすびを握ることもありますよ」

    「現地の人とおむすびを一緒に握る?」

    「はい、例えば、これは福島の高校生と一緒に握ったおむすびなんですけど」

     

    「これはしいたけ…ですか?」

    「福島の西会津はしいたけが有名だったから、おむすびの上にのせて、醤油を塗って、焼きおにぎりみたいにしたんです」

    「うわぁ、美味しそうですね」

    「あと、最近はみかんジュースでおむすびを握ったこともありました」

    「みかんジュース!? それ美味しいんですか……?」

     

    「みかんに関するイベントで、『みかんジュースに合うおむすびを握ってほしい』という話があったので、みかんジュースでお米を炊いたんです。バジルで炒めたチキンも一緒に炊き込んで、和風パエリアみたいにしました」

    「え、めちゃくちゃ美味しそうじゃないですか。おむすびって、具を中に詰める以外にそんなアレンジができるんですね」

    「他にも、からすみを振りかけたのも美味しかったです」

     

    「高級食材を惜しげもなく使ってますね…」

    「あとは、新潟産の味の濃い枝豆を使った、ペペロンチーノ風のおむすびですかね」

     

    「すごい!『おむすび』と『ペペロンチーノ』って、国とジャンルを超えたコラボレーション」

    「まだまだあるんですよ」

     

    サザエのおむすび

     

    ベーコンと昆布を合わせた「ベーこんぶ」

     

    しょうがのおむすび

     

    「わー!よだれの洪水がおきてます」

    「どれも本当に美味しくて。この活動をはじめてから、たくさんの具材を知ることができたんですよね」

    「へえ〜〜。じゃあ香菜さんが、一番好きなおむすびってなんですか?」

    「うーん……」

     

    「塩むすびかな」

    「塩むすび!?『北海道の獲れたてのイクラ』とか、贅沢な具材を想像してたんですが…」

    具材や素材にこだわるのも大事だけど、ちょっとしたポイントでおむすびの味は全然変わるんですよ」

    「ホントですか?」

     

    賞味期限は30秒!米×塩×海苔でおむすびの美味しさは劇的に変わる!?

    「おむすびを握る準備をしてきたので、食べてもらえると分かりやすいと思います」

    「いいんですか…ありがとうございます」

     

    「握るときにラップとかは使わないんですね」

    「衛生上の面から、ラップとかビニール手袋を使わなくちゃいけない場面もあるんですけど、いつも手で握っていますよ」

    「ちょっと抵抗ある人もいると思うんですけど」

    「私はあんまり言われたことないな。お寿司屋さんだとそういうの気にする人っていないのに、ふしぎですよね」

    「言われてみると確かに」

    「それに手で握った方が美味しいという説もあります。手の温度の違いとか色々と科学的に研究されているみたいですね」

    「おむすび学……」

    「はい!できました」

     

     

    賞味期限は30秒!

    「30秒!?」

    「まずは炊きたてのお米の甘さや巻きたての海苔の風味を楽しんで欲しいんですよね」

    「握りたてのおむすびなんて、初めて食べるかもしれないです。ちょっと、写真撮ってもいいですか?」

    「そんなこと言ってないで、早く食べてみてください!」

    「いただきますー」

     

    なんじゃこりゃ……!

     

    「いい具合の塩味と共に、海苔から磯の風味がガツンときて、そのあと、丹精込めて育てられたお米の甘さが広がって……口の中で、日本一周しています」

    「ちょっと何言ってるか、よくわからないけど」

    「何個でも食べれちゃいそうです」

    「こうやって出来たてのおむすびを食べる体験って、実はごちそうなんですよね」

    「たしかにごちそう感あります…! でも、どうしてこんな美味しいおむすびが出来上がったんですか?」

    「ちょっとした手間と素材へのこだわりです」

    「ちょっとした手間…?」

     

    4つの手間で日常のおむすびが美味しくなる

    「お米を炊く時の水を工夫するだけで、お米の味が全然違うんですよ」

    「具体的には、何をするんですか?」

    「例えば、お米を炊く時の水の量と温度

    「え!そんなことで、味が変わるんですか?」

     

    「水の量が多いと、お米が柔らかくなりすぎちゃうので、上手におむすびを握れなくなってしまう場合があって。だから水は少なめがおすすめですよ

    「本当にちょっとした手間なんですね。どれくらい少ない方がいいんですか?」

    「約5%くらいですかね。いつもは、1合あたり炊飯器の目盛りより約2mmずつ減らしていくイメージで、やっています」

    「なるほど」

    「ちなみに新米を使うときは、お米の持っている水分量が多いから、もう少し減らしてもいいと思います」

    「ほ〜。知らなかったです」

    「そして、お米を炊く時の水の温度はとにかく冷たい方がいいんです。人によっては、氷を入れて炊く人がいるくらい」

     

    お米を炊くときは、30分ほど水につけてから炊くのが良いそう。水が米に沁みて白くなってきたくらいがグッドタイミング。  炊く前に一旦水を入れ替えるのもお忘れなく!

     

    「えええ!そんなに冷たくしても問題ないんですね」

    「これは新潟のお米屋さんから聞いた話なんですけど」

    「気になります」

    「お米屋さんって、米の味の変化に敏感なんですよね。年間通してみると、5月に少しお米の質が下がるってことに気づいたらしいんです。その理由を突き詰めていったら、5月に少し新潟の水道水の温度が上がってたんだそうです。だから、水温が影響している可能性が高いんじゃないかと思ってます」

    「たしかに寒い地域の方が、お米が美味しいイメージがあるかもしれないです」

    「そして最後は海苔の保管方法のことです。あっ!この写真をみて欲しいんだけど」

     

    「これは……なんですか?」

    「うちの冷凍庫!」

    「ええっ!海苔って、冷凍庫で保存してるんですか?」

    「そう!冷凍庫で保存すると、風味も落ちないし、2分ぐらいで解凍できるから便利なんです。これも、海苔漁師さんに教えてもらったんです」

    「知らなかったです!」

    「冷凍庫から出してすぐに、海苔の袋を開けちゃうと、一気に水分吸っちゃうので、気をつけてほしいです!2分待って解凍されてから開封するように心がけてくださいね」

    「ありがとうございます。それにしても、こんな量の海苔を保存されてるなんて、すごいです……」

    「産地、焼き方によって全然味が違うから、家の冷凍庫が海苔だらけなんですよね」

    「素材へのこだわりがえげつない」

     

     

    【上級編】米・塩・海苔の産地にこだわる

    「門外不出だと思うんですけど、どんな材料を使っているのか、教えてもらえませんか…?」

    「いいよ。日本全国の美味しい食材を伝えるのも、私の役目なんです」

    「やったー」

     

     

    「私が良く使うのは、この辺ですかね…。もちろん、握る地域や具材によっても変えたりするんですが」

    「おむすび米って、どんなお米なんですか?」

     

    「新潟のお米屋さんの『飯塚商店』さんにお願いして、おむすびに合せて、お米をブレンドしてもらっているんですよ」

    「どんなブレンドなんですか?」

    コシヒカリ:こしいぶき=5:5です。季節によって、少しお米の状態が変わるので、配合を変えてくれていることもあります

     

    ※こしいぶき:「ひとめぼれ」と「どまんなか」を掛け合わせた品種で、現在は新潟県内のみで生産されている。詳しくはJA全農にいがたの紹介ページにて

     

    「『コシヒカリ100%』みたいなブランド米なら美味しいってことじゃないんですね」

    「もちろん、品評会があって一般的に『美味しいお米』はあるんですが、その人にとっての『美味しいお米』があっていいと思うんです」

    「なるほど」

    「例えば、九州のお米を食べて育った人の中には、『新潟魚沼産のコシヒカリが、もっちりしているので、重たく感じる』という場合もあるらしんですよ」

    「えええ!同じお米でもそんなに違うんですね…」

    「同じ新潟でも、品種によって食感も大きく違ってくるんですよ。だから飯塚商店さんは、食べる人やつくる料理に合わせて一番美味しいお米をブレンドしてくれます」

    「そうなんですね。言われてみれば、今まで一度もお米屋さんに入ったことがないです…」

    「えーもったいない!店員さんに相談してみると、その人にあった美味しいお米を教えてくれるので、ぜひ行ってみてください」

     

    山口県にある百姓庵の『夏塩』・『秋塩』。それぞれ使い分けるのだとか

     

    「次に塩の話について聞きたいのですが、『秋塩』って季節の『秋』ですよね」

    「はい。季節によって山の状態が変わるので、川を通して、海に流れ込んできた海水を使った塩の味も変わってくるんです」

    「知らなかったです!ちなみに、どうやっておむすびに合う塩を選んでるんですか?」

    「旬の時期に合わせて、塩を使うのがポイントで。なので、お米が収穫される秋の時期に合わせて『秋塩』を使っています」

    「なるほど。米と塩の知識量すごいですね。素材と、その扱い方でこんなに変わるんですね。勉強になりました」

    「もう説明を聞き切ったつもりになってるみたいだけど、実は一番、海苔にこだわりを持ってるんですよ。もう一個、おすすびを食べて欲しくて」

     

    「え、同じおむすびじゃないですか? 食べますけど」

     

    「あれ……?」

     

    「おむすびの味が、全然違う!」

    「そう! 海苔を変えるだけで全然違うんです」

    「海苔が変わってるんですか?見た目からは、全然わからないです」

    「どちらも九州の有明海。しかも同じ漁師さんがつくってるんです」

    「え!?ということは、私の舌がおかしくなったんですか?」

     

    熊本の浦山海苔が作っている2種類の海苔。焼き海苔である『たそがれ』と乾海苔である『かぎろい』。生産方法も、支柱式と浮流式で異なる。焼海苔の『たそがれ』がおむすびにしてからすぐ食べるのがおすすめなのに対して、乾海苔の『かぎろい』は作ってから少し時間をおいたほうが風味が立つのだという

     

    「これは加工の段階で、焼いてあるかどうかの違いなんです。最初に食べてもらったのが焼海苔。これはおむすびに巻いて時間が経つと、お米の水分を吸って、ベチャっとしちゃうんです」

    「だから最初に握ったおむすびの賞味期限が30秒だったんですね。じゃあ今食べたおむすびは…?」

    「はい。乾海苔を使っています。こっちの海苔はおむすびに巻いてから時間が経って、お米の水分を吸ったぐらいがちょうどいいんですよ」

    「海苔って『焼き海苔』だけじゃないんですね」

    「海苔の種類や風味によって、それが最大限生かされるように加工の方法を変えているそうですよ」

    「なるほど……。海苔のことをこんなに考える日がくるとは思っていませんでした」

    「『美味しいおむすび』って考えれば考えるほど、いろんな要素が影響してきてるんですよね」

     

     

    おむすびは握れば握るほどおもしろくなる?

    「塩むすびだけで、こんなに美味しいとは驚きでした」

    「私も、海苔漁師のお母さんに握ってもらった塩むすびが衝撃的に美味しくて……それが、今の活動につながっているんですよね」

    「そんなキッカケがあったんですか。ちなみに、菅本さんっておむすびを握る修行をしたりしたんですか?」

    「いや、していないんです。料理も、一人暮らしをはじめてから、たまに自炊するくらいで。経験はないんですが、おむすびの可能性に気づいて、『おむすび屋』って名乗ってみたんです」

    「そして今では全国でおむすびを握るように……?」

    「そうなんです。じつは最初は、みんなでおむすびを一緒に握るワークショップだけをやっていたんです。私が握って、それを食べてもらうことは無かったですよ。もともとは『おむすびを握る』よりも『美味しい素材を伝える』のが目的だったんで

     

    福島の食材の魅力を東京の人に伝えるべく、菅本さんが企画を行ったワークショップの様子(「東の食の会」主催)。おむすびを握ることを通して、世代を超え、大勢の人が集まりました

     

    「最初はおむすびが目的じゃなかったんですね!」

    「はい。でもたくさん握っているうちに、自分のおむすびを食べてもらう場面が増えていって。握れば握るほど、私自身が、おむすびの面白さに気づいていったんです」

    「おむすびの面白さ?」

    「『おむすび』って素材同士だけではなくて、人と人を結ぶ感覚があるんですよね。これは、他の料理とは違う気がしていて、とっても不思議なんです」

    「素材だけじゃなくて、人と人も結ぶ…」

    「そうなんです。食材や時期によって、いろんな握り方を試したりできるので楽しいんですよ。それぞれにとっての『美味しいおむすび』があると思うので、もしよかったら家で握ってみてください」

    「はい!ありがとうございます。握ってみます!」

    まとめ

    取材の後、自分でもおむすびを握ってみました。

     

    力加減や美味しそうな形にすることは、意外と難しいんです。

     

    出来上がったおむすびは、思ったよりもゴツゴツしていました。
    (自分の性格が不器用だからでしょうか…?)

    でも、おむすびを握ってみることは、とっても楽しかったし、コンビニとは違う美味しさがありました。

    素材にこだわったり、誰かと一緒に握ったりしながら、
    これからもおむすびの世界の深みにハマってみたいと思いました。

    みなさんも久々におむすび握ってみませんか?

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    藤原正賢
    藤原正賢

    1994年生まれ。長野市出身。長野の行政や企業の新しい取り組みを一緒につくっています。

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