52億円かけて宇宙博物館をド田舎に建てた「元・公務員」の目つきを見て

2020.04.02

52億円かけて宇宙博物館をド田舎に建てた「元・公務員」の目つきを見て

予算ゼロで始めた「UFOで町おこし」の一環で、石川県羽咋市に宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」を作る。そこへ本物の宇宙船とロケットをNASAと旧ソ連から持ってくる。さらにブランド米をローマ法王に食べさせて、神子原地区を再生……そんな経歴から「スーパー公務員」とも呼ばれる高野鮮誠さんの正体とは?

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    まるでハリウッド映画!ロケットを輸入セヨ

    「そうそう、ロシアから本物のロケットを買った話もやばそうだったじゃないですか」

    「ああ、そうなんです」

     

    当時はロシアになったばかりで、旧ソ連末期の混乱が残っていた頃。軍人が国の売れるものを売り払って、こっそり懐に入れていたんです。私が買った宇宙船も、その一部だったと思います」

    「え、では軍人たちと交渉を? 冷戦をくぐり抜けた旧ソ連の軍人なんて、めちゃくちゃ怖いんじゃないんですか」

    「そうですね。交渉においても油断ならなくてね。なにしろ最初にロシアの連中が出してきた請求書は、事前に電話で聞いていた金額よりも一桁多かったんですから」

    「吹っかけられた! どうしたんですかそれ?」

    「こちらも騙されないために考えに考え抜いていました。まず、交渉の舞台はアメリカ。ロシアにのこのこ行って、もし交渉が決裂したら、どうなるかわかりませんから」

    「それこそ消されてしまったりとか」

    「そうしてアメリカまで宇宙船を持って来させておいて、相手が吹っかけてきた時に『その値段ならいらない。持って帰ってくれ』と言ったんです

    「……なんで高野さん、ロシア軍人に喧嘩売れたんですか? もしや海外で傭兵とかやってました?」

    「ただの公務員ですよ。でもね、さすがにあの時、軍人が見せた『この若造、殺すぞ』って目は忘れません

    「いやもう、その時点で僕なら降参です」

    「翌朝、再交渉して話をまとめて、大急ぎで宇宙船をトレーラーで運び出しました。でも、イチャモンをつけられて日本の港で止められたら終わり。だから絶対ロシアの奴らの裏をかいてやろうと思って、釜山港から金沢港へ入れたんです

     

    「金沢港についた時は『勝った!』と思いましたねえ」

     

    「旧ソ連の軍人に勝てる公務員、高野さんぐらいですよ」

    「結局、1台1000万円くらいで買えたので格安でしたね。でも、NASAのロケットはほぼタダ同然で貸してもらいました

    「え、そんなことあります? NASAと仲良しだったんですか?」

    「いいえ。まず、NASAは日本へのレンタル自体はやってたんです。でも、基本は1年契約。その申請書類を書くときに、僕は『10 decade』って書いたんですよ。そこへたまたまNASAの政治部長が通りかかって、大笑いされてね」

    「それはなぜ?」

    「10 decadeって『100年』ですから。それをタダで貸してくれ、と言ったんです。意味わかってるのか?と聞かれましたけど、『香港もイギリスが100年借りたでしょう? だから僕らにもロケットを100年貸してください』と。そしたら、いいじゃないか、と」

    「それでいけちゃうんですね!!??」

    「まあ、無茶苦茶なことを言いましたからね」

    「(自分で言った!)僕もそう思います」

     

    馬鹿になってやって、初めてわかることがある

    「いやもう、驚きすぎて疲れましたよ。高野さんのやられてきたことって、普通の人はやろうと思わないことばかりじゃないですか。まず『UFOで町おこし』ってかなり尖ったアイデアだと思うんですが、よく実現できたなと」

    「80年代当時でも、とんでもないと言われましたよ。でもね、私は『競争にならない競争』を作ろうと思ったんです」

    「競争にならない競争?」

    「現代社会は資本投下が多ければ勝てる構造になっています。ということは、強い産業がなく、税収が少ない町は弱い。周りを見て『前例を真似しよう』なんてことをしていたら、絶対に勝てないんです」

    「だからこそ、どこにも前例がないUFOを。高野さんが『UFOで町おこし』を『尖ったプロジェクトだ』と認識されていて、ちょっと安心しました。でも、一見ありえない挑戦をする上で、恐怖心とかはなかったんですか?」

    「やってみないとしょうがない、ですね。やってみて初めてわかることがあるんです。頭の中で考えてる人はいっぱいいますよ。でも行動する人は少ない。馬鹿にならないと行動できないんですよ

    「失敗したらどうしよう、とか思いません?」

    「自転車に乗るのと同じですよ。『こうやったら乗れます』なんて本をたくさん読んで勉強するだけではダメ。転びながら何度も繰り返し乗ってたら、いつの間にか体がバランス感覚を覚えて乗れてるんです」

    「実際にやってみないと身につかないってことですか」

    『知識』という言葉は仏教用語で、五体を使って覚えるって意味があるんです

    「そういえば高野さん、僧侶でもありましたね。『知識』って仏教用語だったんだ」

    「本で勉強するのが『知』、体を使って覚えたことが『識』なんですよ。前者だけ持っていてもダメで、体を使って『知』を『識』に変えることが重要なんです」

     

    「下手に人に聞くよりも、今はGoogleの検索エンジンのほうがものを知ってるじゃないですか。だから、私は『経験則』を持っている人の話しか信用してきませんでした」

    「経験則を持っているかというと、『自分でやってるかどうか』ってことですか?」

    「ええ、初めてのことなのに、やる前からそれがいいのか悪いのかの判断なんてつかないですよ。『UFOの町おこし』をやる前から成功するかどうかわかるのは、預言者しかいませんから」

    「なるほど……あっそういえば! 一つ聞き忘れてました!」

     

    「これですこれ! なんでローマ法王にお米を食べさせたら村が復活するんですか? そもそもどうやってローマ法王に…?」

    「それは……今日は疲れましたから、別の機会にお話ししましょう」

    「ええー! 最後の最後でお預けされた〜〜〜〜!!!」

     

    おわりに

    ということで、高野さんの話はひとまずここまで。ローマ法王のエピソードについては本にもなっているので、気になる方はぜひそちらを!

     

    「誰もが無理だと思うこと」に取り組み、実現させてきた高野さんだからこそ、「やって初めてわかることがある」という言葉に重みが宿ります。

    一歩踏み出すのにためらう人に、高野さんの言葉が届けば幸いです。

     

    ちなみに取材では高野さんに『宇宙の真実』も教えてもらいました(内容は諸事情により書けません……)。やっぱり高野さん、ヤバい人だなあ。

     

    写真:岡山史興(70seeds

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    この記事を書いた人

    友光だんご
    友光だんご

    編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。

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