老舗居酒屋と若い世代による新店から、仙台の魅力を紐解く

 

一心 本店

大好きな定禅寺通にあるスポットとして紹介したいのが、10年以上前から通い続けている居酒屋、一心さん。

 

宮城の美味しい料理とお酒が楽しめて雰囲気もよく、女将さんをはじめお店の方皆さんの対応があたたかくて、お店で飲んでいるときからもう「次、いつ行こうかな」と思ってしまうお店。

 

ゆったりとしたカウンターで、一人で日本酒を飲んでいるときがひたすら幸せ

 

そんな大好きなお店。今回は女将の柳澤寿美子さんに、改めてお店や仙台の魅力についてお話を伺ってみました。

 

一心の女将、柳澤寿美子さん。今年で30周年。居酒屋探訪家の太田和彦氏が「東の横綱」と言ったお店

 

「いつもありがとうございます。改めてなのですが『一心』というお店の名前の由来と、30年営業されているなかでの、お店のこだわりについて教えていただけますでしょうか」

「はい!『一心』は、心を一つにしてお客さんをお迎えする、という意味なんです」

「そうなんですね。そこにはどんなこだわりがあるんでしょう?」

「こだわりとしては、最初に出てくる一心の顔である『つきだし』。お客様に最初にテーブルに座っていただいたあと、それを出すことによって『一心ではこういったものをだします』という意味合いのものを出していて」

 

一心名物のつきだし。この日はガゼウニと鮪とホタテ。味が抜群なのはもちろん、今日は何だろう? という待っているときのわくわく感もいい

 

「うちは近海のものしか使いません。天然の活〆が一番美味しいと思っていて、こだわって使っています。やはり自然の海流を流れているものって筋肉質だったり、旨味もすごく強くて」

「美味しいですよね」

「一心で取り扱っているものは宮城県産酒が多いです。山の食材や海の食材に合わせたお酒造りをされてる蔵元さんもいらっしゃるので、それに合わせて楽しんでいただけるように心がけています」

「なるほど。女将さんが思う、『食』という観点での宮城や仙台の魅力、いいなあ、と思うところはどんなところですか?」

「やっぱり春夏秋冬で魅力的な食材があって、それと一緒に季節の地酒を合わせて楽しめるのがいいですよね」

「季節の美味しいものと飲む日本酒は最高ですよね」

「春は初ガツオや山菜だったり貝類が美味しくて、夏はガゼウニ(殻付きウニのこと。宮城だとキタムラサキウニが多い)、あとはホヤ。ホヤは早い養殖は3月くらいからあって、好きな人は時期によるホヤの味の変化を楽しんでいらっしゃる方もいますね」

 

バクライ(ホヤとこのわた(ナマコの腸)で作る塩辛)。ホヤは鮮度悪いものを食べて「苦手」と思っている人も多いかと思うのですが、個人的にはこれは生のホヤが苦手な人でも楽しめそうな気がする一品。日本酒がめちゃくちゃすすむので注意

 

「秋は秋刀魚や戻りガツオ。冬に近づいてくると、たらきく(たらの白子)。あと、せり鍋も。メカジキも冬が一番脂が乗っていて、せりとメカジキの組み合わせは最高。牡蠣も美味しいし」

 

秋・冬の楽しみ、たらきく

 

一心の牡蠣。生でも焼いても美味しいから、両方頼んでしまう日も

 

「お酒も四季によって、春はあらばしり、生酒などの新酒。夏はかわいらしいラベルの多い夏酒、秋はひやおろしで、冬は燗酒用のものがでるので、普段お店の中で働いているときはあまり実感できないけど、酒を見ると季節がわかります」

「いつ行ってもその時々の美味しいものとお酒が両方あるのが仙台の魅力の一つですよね。仙台の食というと、牛タンを食べて終わりという人もいるかと思うのですが、ほかに『こんな楽しみ方あるよ!』ということは何かありますか?」

「牛タンもいいですが、海鮮だと市場へ行くの楽しいですよね。卸町の仙台場外市場 杜の市場は安くて、楽しい。うちで仕入れている業者さんも入っていますよ。あとは仙台からは少し遠いけど、塩竃の塩釜仲卸市場もいいですよね」

「市場、楽しいですよね」

「仙台も、震災後からいろんなお店が全国から仙台にやって来て食のレベルアップもしていて、牛タンとか和食以外にも洋食なども美味しいお店が増えている気がします」

「最後に、仙台の街のこういうところが好きだなあ、と思うところはどこですか? 好きなスポットとかありますか?」

「ケヤキ並木! 好きです。瑞鳳殿もすっごく綺麗で感動しました。私も元々仙台に住んでいたわけではなく福島から引っ越してきたので、まずは伊達政宗のことを知りたいと思って調べたのですが、格好いいなあって思いました。街のなかに彫刻がいろんなところにあるのもいいし、街に音楽があるのもいいですよね」

「うんうん」

「ジャズフェス(定禅寺ストリートジャズフェスティバル)は今年も中止になってしまったけれど、イベントがない日でも欅並木の遊歩道でジャズ演奏、ホールでは仙台クラシックフェスティバルなど音楽にあふれているし、学都仙台と言われるほど教育の場が多いのも自慢です。誇りに思っちゃう街だな、と住んでいて思います」

「いいですよねえ、仙台。ありがとうございました!」

 

どれもこれも共感しかない女将さんのお話。やっぱり仙台いい街だなあと再確認。

 

一心 本店

〒980-0821 宮城県仙台市青葉区国分町3-3-1 定弾寺ヒルズB1F

 

一心がある定禅寺通をさらに西に向かって歩いていくと、辿り着くのが西公園。市内で最も歴史ある(明治8年に開園)公園で、元々は桜ケ岡公園と名だったのが、仙台駅の東側にある榴岡(つつじがおか)公園に対し西側にあるところから西公園となったとのこと。

 

Googleマップなんかをみてもらうとわかりやすいのですが、すごく広い公園。10.8haとのことなので、東京ドーム2個分以上

 

公園を歩きながら見える、仙台中心部を流れる一級河川、広瀬川。駅中心は大きなビルも多く都会的な雰囲気がある仙台も、少しあるくとこんなのどかな景色があってその両方あるのが住んでいて楽しいなと思います

 

Echoes(エコーズ)

西公園の近くには、2015年に開業した比較的仙台では新しい地下鉄東西線大町西公園駅があり、そのすぐ近くに最近オープンしたのがEchoes(エコーズ)。

 

知人に紹介してもらい調べてみると、自分も好きで何度も泊まっていた東京の蔵前にある「Nui.」、東日本橋・馬喰町の「CITAN」といったホステルを運営するBackpackers’ Japanの子会社である「The Youth」が運営しているとのこと。

 

Echoes。2021年5月下旬オープンとできたばかり

 

緑色が仙台らしさを感じる外観

 

Echoesを運営する株式会社The Youthの代表取締役、佐藤 岳歩さん

 

東京の蔵前「Nui.」東日本橋・馬喰町「CITAN」を運営するBackpackers’ Japan系列の会社がなぜ仙台に? お話を伺いました。

 

「佐藤さんは明治大学を卒業後、東京のBackpackers’ Japanに入社して、社内起業という形で株式会社The Youthを立ち上げたとのことですが、なぜ仙台にEchoesを出店しようと思ったのでしょうか?」

「実は、仙台に出店するきっかけはBackpackers’ Japanの関連会社からお話をいただいたのが始まりなんです。ただ、もちろんそれだけではなく、私自身が仙台の中高一貫校(東北学院中学校・高等学校)出身というルーツがあったのと、The Youthという会社のミッションが『若者と世界をつなぐ』というのがあって」

 

「若者と世界をつなぐ」がミッションのThe Youth。さまざまなイベントも実施している

 

「若者と世界をつなぐことは、もちろん『東京』でも必要だとは思いつつ。東京の場合は、人も場所も地方に比べて数多く存在するために、自分の意志と行動次第で世界とつながることができるのではないかなと」

「たしかに……。東京はそうですよね」

「むしろ僕らは、地方の若い人が、まだ知らない、その街にいたら出会うはずのなかった人と出会うきっかけをつくりたいって思ったんです。だから東京をはじめとする全国の主要都市への出店を目指しつつ、一店舗目として仙台への出店を決めました」

「西公園の近くにあるのもとてもいいなと思ったのですが、ここも紹介いただいたのでしょうか?」

「そうです。ただ、自分たちのコンセプトに合うかどうか、目指していることに合うか、は真剣に検討しました。たとえば仙台駅の西側、いわゆるアーケードがあるエリアくらいまではすでに盛り上がっていて、できあがっている感じしますよね」

「そうですね」

「そこにぼくらが進出したとして、また新しい人の流れができるかもしれないですが、それだったら、まだまだ人の流れができあがっていないところに、新しい人の流れをつくっていくほうが純粋に面白いな、と思ったんです」

「なるほど」

「それで結果的に、街も面白くなっていっていくのかなと考えると、この西公園近くの大町はすごいいい場所ではないかなと」

「このあたりは決して仙台観光に来る方々が多く訪れる場所ではないですよね。でも、実はたくさんいいお店があるエリアだと思います」

「そうですよね。東北大学なども近くて大学へのアクセスがいい場所ということもあって、学生さんたち若い方から、地域のご年配の方まで、幅広い方々が気軽に来てくださっています」

「仙台の魅力を紹介したい、と取材しているのですが、東京で5年過ごしたあと帰ってきて見る仙台は以前と見え方に変化ありましたか?」

「だいぶ見え方が違いますね。実は高校生くらいまでは、正直あまり仙台のイメージが持てないくらいサッカーに打ち込んでいたんですけど(笑)。今だからこそ感じるのは『食文化がすごい』ということ」

「自分も今年東京から帰ってきて改めて思いました」

「どこのお店へいっても美味しいんですよね。最近はワイナリー、ブリュワリーもできていて、東北のなかでも新しいクラフト文化ができているのかな? という楽しさも感じています。成人してお酒が飲めるようになったということもあるのですが、仙台は食文化を楽しむのに本当にいい街ではないでしょうか」

「食好きにはぴったりの街ですよね」

「あと、宮城全体でいうと、よく『都市と自然の共存、共生』といった話がどのエリアでもありますが、仙台はそれに近いなと思います。コンパクトな街で、都市としての機能がしっかりありながら、そこから車を30分走らせれば山にも海にも行けてします。ちょうど先日一人で栗駒山行ってきたんですが、ふらっと行けちゃうのがすごい」

 

取材時、スタッフ同士のやりとりも見ていてほっとするいい距離感

 

料理も絶品。こちらはバターチキンと落花生、ココナッツのスパイスカレー

 

「仙台に来る観光客の方に、『仙台こんな楽しみ方もあるよ』というのありますか?」

「仙台ってこれっていうキラーコンテンツというか、ザ・観光名所、みたいなものがあまりない街なのかなって感じます。でもだからこそ、どこかに行って写真を撮る、というよりも『滞在して街を歩く』ことそのものが仙台での観光の醍醐味なのかな、と思います」

「わかります……」

「食もそうですが、コーヒーの文化もここ最近盛り上がっていて、いろんなところに良いお店があるので、いろいろ巡って自分のお気に入りのお店を見つけるのは楽しいかと思います。あと、もちろんちょっと足を伸ばして温泉へ行くものいいですよね」

「『滞在して街を歩く』ことそのものが仙台での観光の醍醐味というの、すごく共感しました。自分も仙台はいるだけ、何気ない道歩いているだけで楽しい、とずっと思っていたので。最後に、Echoesとして今後やりたいこと教えていただけますでしょうか?」

「『若者と世界をつなぐ』っていうミッションを体現する方法の一つとして、イベントを開催していくことを考えています。例えばワインのイベントを若者と大人たちが混ざってやったり、DJの方を呼んで地元の食を楽しんだり。今は難しい状況ですが、そういったことをきっかけに、大人と若者がつながる場をつくっていきたいなと思っています」

 

夜は夜でまた雰囲気ががらっと変わるEchoes

 

煎茶のジントニック。煎茶の爽やかさと、甘味のバランスが絶妙。飲みながら作業したり、音楽聞きながら読書したりするのもよさそう

 

Echoes

宮城県仙台市青葉区大町2-3-12
https://www.instagram.com/echoes_sendai/?hl=ja

 

佐藤さんが言っていた、仙台にはキラーコンテンツ、ザ・観光名所、みたいなものがあまりない。でもだからこそ、「滞在して街を歩く」ことそのものが仙台での観光の醍醐味。ということにたただた共感。

 

本当、仙台は歩くだけで楽しい街で、自分のほかにもそう思っている人がいてうれしかったです。

 

この記事を見て仙台に行こう、と思った人にもぜひぜひ何も目的つくらず、住んでいるかのように仙台を楽しんでほしいなと思います。

 

牛タンや笹かま、萩の月以外でおすすめしたいお土産

仙台駅を起点として好きな街並みを紹介しながら、好きなスポットを紹介してきましたが、最後に個人的におすすめしたいお土産を3つ紹介します。

 

阿部蒲鉾店の蔵王チーズボール

まず最初に紹介したいのが阿部蒲鉾店の蔵王チーズボール。1935年営業開始で、仙台お土産として有名な「笹かまぼこ」の名付け親でもある歴史あるお店。

 

阿部蒲鉾店 本店。仙台駅内でもいくつかお店があります

 

本店へ行けるならぜひ食べてほしいのがこの、「ひょうたん揚げ」。アメリカンドッグの中身かまぼこバージョンみたいなもので、カリッとした甘い衣とかまぼこ、ケチャップの組み合わせが最高

 

笹かまをお土産として買うのはもちろんいいのですが、個人的にぜひおすすめしたいのがこちらの蔵王チーズボール。

 

去年の10月に発売された新商品で阿部蒲鉾店の人気商品チーズボールと、これまた宮城のお土産としても人気の蔵王クリームチーズをつくる蔵王酪農センターとのコラボ商品。とっても美味しくて、見つけるたびについつい買ってしまいます。

 

 

丸いかまぼこのなかに、甘みのある蔵王クリームチーズがたっぷり入った一品。とっても美味しいです。通販でも販売しているので気になった方はぜひ! 

 

阿部蒲鉾店 本店

〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央2丁目3−18
https://www.abekama.co.jp

 

わたり あら浜のはらこ飯(季節限定)

 

続いて紹介したいのが、旅の帰り道や家に着いたあとに食べる自分用のお土産としておすすめしたい、仙台駅から歩いて10分程度で行ける距離にある「わたりあら浜」さんの、五季飯。

 

1年を5つの季節に分け、それぞれの時季に美味しい食材を使った料理で、今(9月初旬〜12月初旬)は、はらこ飯。

 

ふっくら美味しい秋鮭と、鮮度がいいはらこ(いくら)の組み合わせが完璧。そのまま食べても美味しいですし、宮城の地酒と一緒にちびちび味わうのもおすすめ

 

春のほっき飯、夏のあなごせいろ、冬のかき飯、と季節ごとに楽しめるので、ぜひぜひ全て食べてみてお気に入りの一品を見つけて欲しいです。

 

わたり あら浜 仙台店

〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1丁目10−15
https://www.arahama.jp

 

いたがき本店

最後に紹介するのは、仙台の人なら知らない人がいない青果物専門店の「いたがき」の商品。

 

いたがきは仙台駅内にもお店があるのですが、時間に余裕があれば仙台駅東口にある本店まで行ってみてほしいです。

 

仙台駅の東口の街並み。今回は西口をメインに紹介しましたが、東口にもいいお店たくさんあるので、ぜひ散策してほしい場所です

 

仙台駅東口から徒歩約10分の本店。カフェスペースもあり、その場でスイーツも楽しめます

 

果物や果物を使ったスイーツがたくさん並ぶの店内。お土産として個人的におすすめしたいのが、「フルーツインゼリー」。

 

フレッシュなフルーツがたっぷり入ったゼリーは味はもちろん、見た目も綺麗なのでもらった人が喜んでくれるのではないでしょうか。(フレッシュな分、消費期限は製造日を含め4日間なのでお早めに)

 

季節限定の巨峰(左)と、通年商品のフルーツミックス(右)。ゼリーのなかに新鮮な果物がたっぷり入っています

 

いたがき本店

〒983-0862 宮城県仙台市宮城野区二十人町300−1
http://www.itagaki-jp.com/shop/01/

 

まとめ

とにかく自分が好きな「仙台の街並み」のよさを一人でも多くの人に伝えたいと思いながらおすすめのスポットを紹介してみました。

 

本当にいい街なので、「仙台に行ってみたい」と思ってくれた方がいたらうれしいです。

 

新型コロナウイルスの影響で出歩きづらい時期が続きますが、落ち着いたらぜひのんびり滞在してもらって、今回紹介したスポットだけでなく、「自分のお気に入り」のお店を見つけてみてください!