おやつってだいすきです。ごはんと同じくらい、生活に彩りを与えてくれるもの。旅行もすきです。自分の知らない食文化を知ることができるから。
きっと、全国にはまだまだ知らないおやつがたくさんあるはず。ネットで検索するだけでは出てこない、土地に根付いたおやつも食べ尽くしたい……。
そんな食いしん坊な視点で、ローカルプレイヤーの皆さんにおすすめおやつを聞いてみると、おいしさが増すエピソードと共に教えてくれました。
日本各地のおやつを集めていつか図鑑をつくりたい、そんな新連載です!
おやつを紹介してくれた人:金澤李花子さん
編集者。新潟市上古町商店街の複合施設〈SAN〉の副館長。企画と編集の会社、合同会社踊り場代表。 都内大学卒業後、雑誌『TOKYO GRAFFITI』編集・ディレクションを経験したのち、広告プロダクションにて、企業や自治体のクリエイティブ制作業務に携わる。 2021年9月、古町に複合施設〈SAN〉を立ち上げるため、10年ぶりの新潟へUターン。それを機にフリーランスとなり、企業や自治体のメディア編集業務や情報発信サポート等を行う。 2023年9月からは、SANと並行して、新潟三越跡地のプロジェクトみ〜つを開始。古町の未来を明るく想像できるような企画運営を目指す。2024年春、にいがたまちあそび学校KAIKOU!を立ち上げ、プロデュースを担当。
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おもちときんぴらのマリアージュ。さわ山のごぼう団子
今回おやつを教えてくれたのは、新潟市の上古町で、「SAN」という、古民家を再活用したたのしい複合施設の副館長をしている金澤李花子さん。
そんなSANから10分ほど自転車を走らせると、ひよこみたいな黄色い壁の和菓子店に辿り着きました。李花子さんいち押しのおやつが売っているという、大正初期から続く老舗餅菓子店の「さわ山」です。
ショーケースにずらりと並ぶ、大ふくや笹だんご。どれもおいしそうな餅菓子たちのなかで、李花子さんがおすすめしてくれたのは、聞き慣れないメニュー「ごぼう団子」。
「やはり、米どころ新潟なのでさまざまな団子屋さんはあるのですが、基本的には笹団子を筆頭に、甘い餡子の入ったものが多いんです。でも、この『ごぼう団子』はしょっぱい系! 甘いものはもういらないって時に、本当に嬉しいいただきものです」
調べてみると、さわ山のごぼう団子は、一般的には「きんぴら団子」と呼ばれる、新潟県の一部地域の郷土料理なのだそうです。見た目は普通のお団子ですが、中に入っているのはあんこじゃなくて甘じょっぱい味付けのきんぴらごぼう。
稲作農業を営む人が多い新潟市で、農作業の合間のおやつとして生まれたのだとか。確かに、仕事の合間のおやつには、甘みも塩っ気も、どっちもあったらありがたい。
それにしても、お餅が輝くような白ですね。本当においしそうです。
「その昔は、笹団子の生地できんぴらが包まれていたこともあったそうですが、今はまっしろのしんこ団子に包まれています。餅米でなく、上新粉のおもちなんですよね。ツルッとした餅が本当においしくて、そのなかに歯ごたえのいいきんぴらが入っている。春〜初夏にかけての新ごぼうの時期は、いつもよりごぼう自体が柔らかくて、今年もこの時期が来たんだなとしみじみ感じます」
つるっとした食感のお餅!
地元の方々に愛され続けてきた、さわ山の餅菓子。自分へのとっておきのおやつとして。外せない場面での手土産として。今でも、いろいろなシーンで重宝しています。
「『ごぼう団子』は新潟市の名物として、手土産に喜ばれるのでいつも利用しています。さわ山は、この地域ならみんな知ってる、上等の手土産。いつも人気なので、午前中のちょっとした隙間時間にこっそり買いに行って、午後にSANのスタッフと食べるのが至福の時間です!」
新潟の郷土料理でもあるきんぴら団子を売っているお店は、和菓子職人の高齢化とともに、だんだん減ってきているそうです。
新潟に訪れた時には、ぜひ、ツルツルお餅とシャキシャキきんぴらがマッチしたさわ山の「ごぼう団子」を食べて、新潟の味を体験してみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、さわ山はお餅が売れ残らないように、毎日ちょうどいい量だけをつくっているそう。時期によっては並ぶこともあるので、はやめの時間に買いに行くのがおすすめですよ。
餅菓子店 さわ山
〒951-8023 新潟県新潟市中央区夕栄町4513
イラスト:植田まほ子