【上京直後】まじめな父親とzoomしたら「親のエゴサーチ」が発覚した

2020.05.13

【上京直後】まじめな父親とzoomしたら「親のエゴサーチ」が発覚した

会社に所属しない「フリーランス」という働き方は、親世代にはなじみが薄い人も多いです。そこで、上京&フリーランスになりたてホヤホヤのライターが、父親にインタビュー。「会社に入ってないと心配?」「正直、仕事のことどう思ってる?」など普段聞けない「フリーランスの親の本音」を聞き出しました。

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    こんにちは、ジモコロライターの乾です。

    今年の1月に大阪から上京し、フリーランスの編集・ライターとして活動しています。

     

    不思議なことに、上京した後のほとんどの仕事はローカル出張。ジモコロでも、徳島の藍染職人を取材したり、地元・関西の銭湯を取材したりと、地方の面白いおじさんたちに触れてたくさんの刺激を受けてきました。

     

    大阪で働いていた頃とはまた違う、刺激的な毎日。楽しいし、勉強になるし、もう何も言うことなし。ただひたすらに、仕事を頑張るべし……

    ……そう口ではいうものの、実は心の隅にモヤモヤが。

     

    両親、心配してんだろうなあ……

     

    実は僕、大事に大事に育てられた「箱入り一人息子」なんですよね。

     

    公園に連れて行ってもらった時のこと。ツヤツヤの坊ちゃんヘアーからも、大事に育てられていることがわかります

     

    あの「宝塚歌劇」でお馴染み、兵庫県宝塚市というお上品タウンで育った僕。両親は大阪の会社に勤め、中学校から僕を私学に通わせてくれた「ザ・真面目で優しい親」なんです。

    それなのに、26歳でフリーランスになる!という出たとこ勝負の後ろめたさもあって、両親にじっくりと将来の話をすることもなく、上京してしまいました。

     

    どう思ってるのか知りたい、そして、心配かけてるならせめてちょっとでも謝っておきたい……そんな悶々とした感情を、ある日ジモコロ編集部の先輩方に話してみると、

    「それは取材した方がいいよ!(笑)」

     

    ちょっと面白がられてる感じは気になりますが、これもいい機会。思い切って、両親にzoom取材を申し込みました。

     

    「上京」&「フリーランス」と、心配事ダブルパンチをお見舞いしてしまった僕のこと、父親はどう思っているんだろう。親の本心をくまなく聞いた、緊張のインタビューをご覧ください。

     

    話を聞いた人:いぬい父

    ねずみ年の双子座。大阪の会社に35年勤続し、息子をこの年まで育ててくれた。趣味はドライブとNHKの科学番組を見ること。ギョロッとした目が印象的で、歳をとるごとに西川きよし師匠に似てきました。

     

    真面目な父親へ、近況報告

    とはいえ、父親も今年で60歳。若者やビジネスマンの間で必携ツールとなっている「zoom」も、使ったことなんてありません。

     

    「ズームって検索してみて!『z』『o』『o』『m』で……」

    「たぶん、画面に『参加する』ってボタンが表示されてるから……」

    なんて押し問答すること約1時間。

     

    zoomが開通!! お父さん、ちゃんと外行きの服を着てくれてる!!

     

    「いきなりごめんね! 今日はお父さんに、僕が上京したこととかフリーランスになったことについてどう思ってるのか聞きたくて……」

    「お父さん? どうしたんやはやと、いつも家ではパパって呼ぶのに……」

    「!!」

     

    「最悪や! 26歳の『パパ』呼びは! ちょっとキツイからバレたくなかったのに!!」

    「そうなんか! いいよいいよ、じゃあ今日はお父さんということで……」

    「いいよもう!! いつも通りパパでいいよ!!」

     

    気を取り直して、オンライン取材に進みます。

     

    「早速なんやけど、僕が東京でフリーランスになるって聞いて、最初はどう思った……?」

    「そりゃあ心配やったよ。だって急に言うんやから。『1月末から東京に行く』って言ったの、確か去年の12月とかじゃなかった?」

    「そう……やね……我ながら1ヶ月前の宣言は急やわ。正直ちょっと言いづらくて……」

    「しかも、会社やめてフリーランスになるって。転職したいって話は聞いてたけど、てっきり関西で新しい会社を探すもんやとばかり」

    「そうやんね……心配かけてごめん……ちなみに、僕の仕事内容ってどのくらい知ってるんやっけ?」

    「書いた雑誌は、いつも発売されたら教えてくれるもんな。でもネットの記事はそんなに知らんな」

     

    僕が記事を書いた雑誌を「読んでるよ〜」と見せてくれる

     

    「そうかあ、そうよね。実はネットでもいろいろインタビュー記事とかを書いてて」

    ああでも、歓迎会を開いてもらってたんは見たよ。美味しいギョウザも食べさせてもらって、よかったなあ……」

    「!? なんでそんなん知ってんの!?」

     

    確かに、上京してすぐの頃に歓迎会を開いてもらいました。ギョウザがうまい中華料理屋で……

     

    「いや、それは検索したら出てきたから」

    「検索?」

    「エゴサーチっていうんかな? たまにな、はやとの名前をグーグルで検索してみてるんよ」

     

    「なにしてんねん!!!」

     

    試しに検索してみたら、お世話になっている編集チーム「Huuuu」の週報が出てきました。確かに「上京を祝う『いぬいナイト』を開催〜」の文字が踊っています

     

    「びっくりした……そんな今どきのことしてたんや」

    「ついつい、『親のエゴ』サーチをね……

    「そんなんええから」

    「まあ、良い人たちに囲まれてるみたいで安心したよ。そもそも、はやとは、物怖じせえへん子やったしね」

    「そう?」

    「幼稚園のバスのときなんかもね……」

    「?」

    「初めての幼稚園バスなんか、みんな『親と離れたくない』って泣きじゃくってんのに、はやとはサッサと乗っててな。こっちを振り向きもせんかった。この先に何があるかの方が気になって仕方なかったんやろね」

    「いつの話よ……」

    「小さい頃からずっと、出来るだけ人と関わろうという生き方をしてたと思うんよ。小学校の時も、みんなが怖がる先生とも仲良くなったり」

     

    腕組みしながら、僕も覚えていないような話を思い出してくれる

     

    「……」

    「そうやって振り返ってみたら、人に話を聞きにいく今の仕事も、あってたんかもしれんね」

    「(なんか嬉しいな……)」

     

    フリーランスへの心配

    「それでもやっぱり、フリーランスって働き方は心配してるよ」

    「やっぱりそうなんやね」

    「まあ、パパは古い人間やから……社会に出るとなったら、就職した会社で定年までずっと勤め上げる。そういうのが当たり前と思ってきた世代やから

    「実際、ずっと同じ会社で働いてきたわけやもんね」

    「もう40年近くになるかな。正直、はやとにも自分に合う会社を見つけて、入ってもらう方が安心ではあるよ」

    「うん……」

     

    「やっぱり会社に入るよりは不安定でしょう。フリーランスって個人事業主として働く以上、世の中の影響を一人で受け止めることにもなる。コロナの感染が拡大してる今だって取材ができなくなったりしてるやろうし、この先も何があるかわからん訳やし」

    「そうやね。浮き沈みの激しい働き方やとは思う」

    「個人の能力と社会のニーズが合って、はじめて仕事があると思うんよね。順調な時は良いけど、順調じゃなくなった後にどこまで持ち直せるかは正直わからないでしょう

    「うっ……キツイけど、言うてることはわかるよ」

     

    「ただ、いま僕は会社やめてこっちで働いてみてよかったなとは思ってて。初めて出会う人たちとも仕事できてるし、今までやったことのない仕事も経験できてる」

    「うん」

    「僕も『この先ずっとフリーランスです!』とは宣言できないし、仕事を続けるうちに変わる考えもあると思う。でも今の若いうちに、ライターや編集者としていろんな仕事の人たちと関われるのは良い経験やと思ってるんよ」

    「まあ、最初に聞いた時から、少なくとも3年くらいはフリーでやるんやろうなと思ってたよ。だいたい、何かにきちんと挑戦するには3年くらいの時間のサイクルが必要やからね

    「3年か……それは、パパもそうやったってこと?」

    「そうやね。パパも会社に入って最初の頃は、3年サイクルくらいで違うことをやってた」

     

    「ただ、自分の人生設計は考えてみても良いと思うよ。3年以内に何をする、って決めとかんと、3年なんてあっという間やから

    「うん。そのことはじっくり考えて、また話せたら良いな」

    「会社に入ったら入ったで心配事もあるんやろうけどね。まあ、月並みな話やけど、どこまで行っても親は子供のことが心配やから」

     

    土地の心配、今の心配

    「正直、地元に帰ってきてほしいとかは思ったりするん?」

    「うーん、どうやろう。どこが地元なのかって話もあるしね。別に宝塚に住んでほしいとは言わないけど、1時間くらいですぐ会える場所が安心かなとは思うなあ」

     

    地元・宝塚の街は、大阪や神戸の街からも40分ほどで着く、アクセスの良い街

     

    「宝塚まで1時間やと、関西なら割とどこでもいけるね」

    「やっぱり今の東京の家は、何かあってもすぐに行き来できない距離なのが心配。兵庫の家から東京のはやとのところまで、door to doorで4時間近くかかるんよ

    「4時間か……そう考えたら遠いね」

    「今は県をまたいで行けへんしね。緊急事態宣言(※2020年4月7日発令)が出る前に、電話したことがあったでしょう。リモートで仕事できるんやったら、関西に帰ってきても良いんじゃないかって」

    「あったね」

    「あの時は『自分が関西にウイルスを持って帰るかもしれんから、帰らへんことに決めた』って言ってたね。社会人として、立派な判断ができるようになったなと思ったけど……正直、帰ってきたら良いのにって気持ちもあったよ

    「……」

    「でも、それはあくまで親の気持ちやから。全部の親がそんなわがまま言ってたら世の中ムチャクチャになるもんね。……難しいわ」

    「ありがとうね」

     

    「パパも最近、あんまり外出もしてないんちゃうの。家では何してんの?」

    「いつもなら、休みの日はママと道の駅にドライブに行くんやけど、最近は控えてるよ。近くのスーパーに買い物行って、部屋の中で屋内用のラジコンヘリ飛ばして、録画してた『コズミックフロント☆NEXT』(※NHK BSプレミアムで放送中の科学番組)見ながら昼寝して……って感じかなあ」

    「『コズミックフロント』ってまだやってんの? 僕が高校生くらいの時から見てない?」

    「続編が放送されてるんよ。面白いよ」

    「そっか。いつになるかはわからんけど、この状況が落ち着いたら何がしたい?」

    「パパがちょうど今年で定年やから、1週間くらい休みをとって、ママと旅行でも行こうかと考えてたんよ。あとは、はやとの家に一回遊びに行きたいな」

    「うち狭いから、泊まるのはホテルとかにした方が良いかもね……でも、また遊びにきてよ」

     

    まとめ

    フリーランスになって、そして上京して3ヶ月目にしてようやくチャンスができた父親との対話。最後にヒョコッと顔を出した母も、「好きな場所で頑張ったらいい」と言ってくれました。

     

    「古い人間やから……」と言われた時はちょっと身構えたものですが、想像していたよりもずっと、僕の状況を理解しようとしてくれている父親がいました。これから仕事を頑張って安心させるしかありません。

     

    1本のzoomで、想像していたよりたくさんの言葉を聞くことができました。思わぬきっかけを生んでくれたこの記事も、公開されたら父親に見せようと思います。

     

    僕が連絡するより前に、エゴサーチで見つけているかもしれないけれど。

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    乾隼人
    乾隼人

    1993年生まれ。兵庫県宝塚市出身。関西の出版社で、酒場とかイベント会場をかけずり回ってました→上京しました。飲食店のメニューばかり取り上げるInstagramをやっています。

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