



突然、3つの風景を並べたが、どこの写真だと思うだろうか?
実は、これすべて「東京」なのだ。
「ああ、奥多摩の方はそういう感じだよね」と思った人、多摩は多摩でも違うのだ。これらはすべて、「多摩ニュータウン」で撮影したもの。
え? どういうこと? ニュータウンって、キレイな家がずらっと並んでるところじゃないの? と思った方。
多摩ニュータウン、実は奥深いんです。今回は、そんな多摩ニュータウンを、ジモコロ編集長・友光だんごさんと歩いてみました。
「ニュータウン」連載の記念すべき第1回、お楽しみください。
家族連れでにぎわう多摩センター
谷頭:僕たちが今いるのは、ニュータウンの中心「多摩センター」ですね。

友光:小田急と京王の駅があるから、便利ですよね。来たのは初めてなんですけど。
谷頭:僕もちゃんと降り立つのはめちゃくちゃ久々です。昔、サンリオピューロランドに行ったときに降りたぐらいで。

平日なのにとてもにぎわっているサンリオピューロタウン。多摩センターから徒歩数分のところにある
谷頭:平日なのに、ものすごい人。そして家族連れがとても多い。
友光:駅前、商業施設が多くて暮らしやすそうですよね。住もうかな。
ギリシャ神殿と緑とマンションが混ざる景色
谷頭:車と歩行者も分離されているし。多摩ニュータウン、地形を活かして作られている場所も多くて、今ぼくたちがいる場所は「ペデストリアンデッキ」(※歩行者専用の高架歩道)になっていますが、これも元々の谷の地形に橋をかけている感じみたいです。
友光:向こうに神殿みたいなものが……。

谷頭:「パルテノン多摩」です。多摩にある「ギリシャ」。
友光:文化施設なんだ。今日は休館日で人がいないからか、より厳かな感じですね。
谷頭:あの階段を登ると、広場が広がってるみたいですよ。
友光:上から見ると、街がすごくシンメトリーになってる。

谷頭:圧倒的「作られた街」感……!
友光:そして上のところは……工事中ですね。

谷頭:なんと。しかし、めちゃくちゃ緑が多いですよね。ニュータウンっていうイメージとは違うなあ。
友光:その緑の向こうにマンションがそびえるのが、なんともニュータウンらしいというか。

谷頭:神殿と緑とマンションの夢のコラボ。いろんなものが混ざってる感じですね。
縄文の遺跡に驚く
谷頭:今日、改めて多摩ニュータウンを歩くので、いろいろ調べてみたんです。どうやら、サンリオピューロランドの横に「縄文の村」っていうのがあるらしくて。
友光:縄文……?
谷頭:謎なんですが、まずは行ってみましょう。

友光:マジで縄文土器があった。
谷頭:人生でそうそうないですよ、縄文土器にばったり出会うの。この施設みたいですね、「縄文の村」。

友光:なるほど、東京都の施設なんだ。
谷頭:展示ホールもあるみたい。まずは、「縄文の村」から行きますか。

谷頭:おお、縄文時代! 迷い込んでしまった。
友光:昔の家が!
谷頭:竪穴式住居とかいうんでしたっけ? 中、入れますよ。

友光:めちゃくちゃ暗い……
谷頭:いま、真昼間なのに、ほぼ中見えないですね……火を起こすしかないのか。
友光:中央部にちょっと凹みがある。ここで火を焚いてたんでしょうね。
谷頭:何軒か建ってるんですね。あっちにも竪穴式住居がある。

友光:おお、こっちは中にライトがある。やさしい。

谷頭:結構広いな、都内だったら家賃月10万はくだらないはず。
友光:多摩地域は今や人気ですからね。家賃も上昇していくでしょう。
谷頭:買っておこうかな。

谷頭:あそこにあるのは住居跡ですか。
友光:こういうのが見つかって、住居があったとわかるんですねえ。
谷頭:僕だったら絶対、見過ごすわ。

友光:巨大縄文土器がまたありますけど、これはなんの復元でもないですよね。
谷頭:まあ、雰囲気ということで。
友光:でも結局、多摩エリアには今も昔も人が住み続けてるんですねえ。
谷頭:縄文遺跡からニュータウンへ……。ちょっと思いを馳せてしまいました。
暮らしに根付く団地たち
谷頭:さて、縄文時代に思いを馳せて、またニュータウンに戻ってきました。多摩ニュータウン駅からちょっとだけ離れた「諏訪・永山地区」にいます。
友光:この永山地区は、多摩ニュータウンでも、わりかし古い場所だとか?
谷頭:そうですそうです。多摩ニュータウンって、ほぼ40年近くずっと開発をしていたんです。中でも、諏訪・永山地区は、最初に開発が始まったところで、昔ながらの団地が残っています。
友光:たしかに、「ザ・団地」みたいな建物がたくさんある。

谷頭:建物に数字が振ってあるのが、味ありますよね。
友光:あと、建物の近くに商店が連なっているのも、めちゃくちゃ味がある。

谷頭:賑わってますよね。

谷頭:ここなんか、ちょっとおしゃれな古本屋さんがある。昔の雑誌とかがたくさん売ってあって。
友光:子連れが多いのが目立ちますね。
谷頭:本当に。小学生のプール用品も売っているし、子ども、多いんでしょうね。
友光:車が入ってこないから、親御さんも安心してここに連れてこられますよね。
谷頭:向こうにめちゃくちゃ大きい公園もある。

友光:これ、学校のグラウンドじゃないんですね。よく見たら、野球場とサッカー場が併設してる。
谷頭:どんな広さなんだ。
多摩ニュータウンを見下ろす「防人見返りの峠」
谷頭:資料館でも見ましたけど、多摩地区って結構地形がそのまま残ってるじゃないですか。
友光:そうですね。
谷頭:だから、高台なんかもあって、この近くに多摩ニュータウンが見渡せる場所があるらしいんです。
友光:行ってみましょう!

谷頭:「防人(さきもり)見返りの峠」っていうところらしいんですけど、結構な登山ですね。
友光:本当に。あ、なんか脇に畑みたいなのが見えてきましたよ?

谷頭:めちゃくちゃ畑だ! これ、絶対東京だと思わないな。

友光:向こうには養蜂のボックスが。
谷頭:多摩ニュータウン、「ニュー」と言いながら、色んなものが混ざりすぎている……。
友光:そんなこと言ってたら頂上です!
谷頭:おおお〜!

谷頭:向こうには丹沢が見えてるらしい。山が連なってますね。天気がいいと、富士山も見えるのか。

向こうにうっすら、山が見えるのがわかるだろうか
友光:上からみると、時期によって開発がバラバラなのがよくわかりますね。あのオレンジ色のところとかは、絶対まとまって開発されているし。
オレンジ色の屋根の家がかたまっている
谷頭:団地のところも、かたまってますしね。この景色のよさは、本当に山に登った感があるなあ。
友光:さっきからずっと言ってますけど、東京じゃない感じがすごくありますよね。
イメージの中の「ニュータウン」とリアルな「ニュータウン」
谷頭:というわけで、多摩ニュータウンを少し歩いてみました。「ニュータウン」っていと、どうしてもイメージ的には「無機質」とか「つまらない」って言われがちじゃないですか。
でも、歩いてみると、特にこれは多摩ニュータウンの特徴なのかもしれないけれど、すごく昔から人がここに住んできて、暮らしを営んできている場所なんだ、っていうのがわかりますよね。
友光:団地の中にある商店街もそうですけど、すごく馴染んでいる感じがする。暮らしに密着しているというか。

谷頭:そういう意味で、めちゃくちゃローカルなのかもしれない。
友光:確かに。スタジオジブリの『平成たぬき合戦ぽんぽこ』は多摩ニュータウンを舞台にした映画じゃないですか。あれは、ニュータウンができて人情溢れる古き良き風景が失われてしまった、ってタイプの話ですけど。
谷頭:そこで歴史が途絶えた、という見せ方をしているけど、意外とそうじゃないのかもしれない。
友光:今回からはじまるこの連載では、そういう今のニュータウンの「リアル」が描き出せればいいな、と思ってるんです。
谷頭:たしかにニュータウンってすごく、イメージ先行で語られてきた側面があるかもしれませんね。

谷頭:ただ、僕としては、たしかにニュータウンにはそういう側面もあるけれど、本当にそうなのかな? それだけなのかな? っていう気持ちがずっとあって。
友光:今日歩いて見たとおり、ニュータウンにも、普通の「暮らし」がある。
谷頭:そうですよね。その辺りのリアルをどう描き出すかがポイントなのかなと。
友光:僕も「田舎」と「都会」の間にある「郊外」が気になっていて。ニュータウンって郊外だと思うんですよね。ジモコロは「ローカル」メディアですけど、郊外はあんまり取材してない気がしていて。
谷頭:いわゆる「ローカル」を取り上げられるとき、郊外ってあんまり注目されてこなかったかもしれない。
友光:でも、僕自身が岡山の郊外出身で、今も神奈川の郊外である辻堂に住んでて。適度に自然があって、でもロードサイドにチェーン店とかショッピングセンターがあって、都市と田舎の中間のようなところ。そういう風景に自分のルーツを感じるし、ジモコロで掘ってみたいと思ってるんです。
谷頭:それこそロードサイドやニュータウンの風景に「地元」を感じる人も多いでしょうしね。
「ニュータウンの子どもたち」が鍵になる?
谷頭:郊外とかニュータウンっていうと、かつては「何もない」「日本全国、同じ風景」と言われがちだったと思うんです。
友光:三浦展さんの『ファスト風土化する日本』が有名ですね。ロードサイドの風景が均質になって、コミュニティが崩壊していくことへの危機感が書かれてる。大学生の頃に読みました。
谷頭:こういう批判は、そこに住んでいる人の暮らしをないがしろにしている部分もあるけれど、かつての時代の感覚としては確かにあったんだろうなあ、と思います。
友光:けど、今はニュータウンで生まれ育った世代が30代、40代になってきてるんですよね。その中には無機質に見えるニュータウンでの経験をカウンターにして、ローカルに深く根ざす活動をしてる人も結構いて。そんな「ニュータウンの子どもたち」も気になってます。
空き家問題が顕在化する兵庫県神戸市を拠点に、廃屋をシェアハウスやギャラリーとして再生する西村周治さん。京都の「向島ニュータウン」出身のルーツをインタビューで語っていた
谷頭: 僕も自分の本では、そういう均質なもの、ニュータウン的なものをどのように肯定できるのかを考えていて。それでチェーンストア研究家を名乗りながら、いろいろな活動をしています。チェーンストアを楽しもう! っていうスローガンの下に。
友光:谷頭さんが本のテーマにしてるドンキホーテやブックオフって、まさにニュータウンや郊外のシンボルですよね。
谷頭:そうなんです。僕はニュータウン出身ではないけれど、限りなくそうした「ニュータウン的な景色」に囲まれて育ったので、こういう活動をしてます。同じようにニュータウン出身だったとしても、むしろそれを肯定的に捉えている人もいる。
代表的なところがアーティストのtofubeatsさん。彼は、兵庫県の須磨ニュータウン出身で、インタビューなどでも、自分のルーツとしてのニュータウンを、どちらかといえば積極的に捉え直そうとしています。そして、そのニュータウンから通っていたブックオフの影響も隠さない。
友光:へー!
谷頭:ブックオフで見つけた音楽をリミックスするようにして、新しい音楽を作っているわけで、明確に、ローカルとはまた別のフィールドで活動してる「ニュータウンの子どもたち」じゃないかなと。
友光:面白い。そういえば以前、作家の森見登美彦さんにインタビューしたんですけど、森見さんも奈良の郊外や、万博公園の辺りの風景を原風景に挙げていて。最初、そういう郊外の住宅地を舞台に小説を描こうとしたんだけど、うまくいかなかった。それで、圧倒的に情報量の多い京都という街を舞台にしたら、しっくりきたらしくて。
谷頭:京都という土地の情報量は、たしかにすごいですね。そういう意味では描きやすい街なのかもしれない。
友光:それで、ある種リベンジ的に、小説の技術がついてきてからSFのモチーフを使った上で、郊外の住宅地を舞台に書いたのが『ペンギン・ハイウェイ』らしいんです。
谷頭:想像力がすごく試されているというか。そう考えると、ニュータウンを巡る想像力には二つの流れがあるのかも。
一つは平板なその場所をカウンターにして、それを否定しつつローカルに根差した面白い活動をしている人々。そしてもう一つはそのニュータウン自体を想像力の源泉に変えていくような人々。同じ郊外やニュータウンを舞台にしても、この2つの流れがあるのかもしれないですよね。
友光:そういうイメージの中で揺れ動いていた「ニュータウン」のリアルを、この連載では改めて切り取る、ということですね?
谷頭:それができればいいんですが(笑)。頑張ります!
アイキャッチイラスト:かつしかけいた
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この記事を書いたライター
チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。一見平板に見える都市やそこでの事象について、消費者の目線から語る。 著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)など。執筆媒体として「東洋経済オンライン」「現代ビジネス」「Yahoo! JAPAN SDGs」ほか多数。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。Podcastに、文芸評論家家・三宅香帆との『こんな本、どうですか?』など。













































