「東海三県」は愛知、岐阜、三重……え、 静岡は???

2022.11.22

「東海三県」は愛知、岐阜、三重……え、 静岡は???

「東海三県」は愛知、岐阜、三重。同じ東海地方のはずなのに、なぜ静岡は含まれてないの!? 理由は? ちなみに「中京圏」は愛知県の尾張三河地域、岐阜市を中心とした岐阜県南部、四日市市を中心とした三重県北部の総称なのでここにも静岡は含まれていない。静岡は仲間外れなの……?

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    こんにちは。静岡出身のジモコロライター田中です。

    先日、名古屋へ旅行へ行ったときにホテルのテレビで天気予報を見ていると……

     

    「続いては、東海三県の天気予報です」

     

    東海三県?って初めて聞く括りだな……」

     

    「はい。というわけで以上、愛知と岐阜と三重のお天気でした! 続いて報道フロアから―」

     

    「え……我が静岡は……?」

     

    これが『東海地方』ですよね??

    で、『東海三県』っていうのは―

     

     

    ってか、東海三県ってなんじゃい!!

    学校でも静岡=東海地方と教えられてきたし、インターハイでも静岡県大会を突破したら東海大会へ進出し、愛知、岐阜、三重の高校生たちと競い合ってきました。それなのに、天気予報になった途端にこんな仲間外れみたいな仕打ちをされるなんて……!

    がっくりと膝を落としていると、Twitterのタイムラインにこんなニュースが流れてきました。

    本文を読むと、

    「静岡県も東海地方で愛知県の隣なのに、他の三県とは別なのが少し寂しい」

    だよね! 同意!!

    なんなら、静岡はもっと怒って東海四県にしてもらうべきだとすら思います。

     

    ということで、この記事を書いた記者さんに話を聞くため、静岡県浜松市にある中日新聞社に突撃しました!

     

    静岡県を仲間外れにしないで

    記事を書いたのはこの方。中日新聞東海本社 編集局 報道部の高橋雅人(たかはし・まさと)さんです

     

    「今日はお時間をいただき、ありがとうございます。本題に入る前に、高橋さんのご出身は?」

    「私は岐阜出身ですね……東海三県の」

    「……は?」

    「今は静岡に住んでる静岡県民ですよ!」

    「いいでしょう。まず、高橋さんは『東海三県』という呼び方についてご存じでしたか?」

    「もちろんです。ただ、そこまで強烈に意識することはなかったですね」

    「余裕を見せてきますね……では、なぜあの記事を?」

    「中日新聞の読者投稿コーナーで、静岡県出身の方から『なぜ静岡は東海三県に含まれないのでしょうか?』と疑問が届き、『言われてみれば確かにそうだな』と」

    「どのように調査したのでしょうか?」

    「まず中日新聞誌面で『東海三県』という言葉が使われるようになったタイミングを調べてみました。1950年代頃から使われてきており、テレビの放映開始時期と重なっているので、そのあたりから定着してきたと考えています」

    「え? なぜテレビの放映開始時期が影響するのでしょうか?」

    「その時代にNHKや中京テレビ、CBCテレビ、東海テレビなどの名古屋キー局が、愛知・岐阜・三重をカバーする放送を開始したんですよ」

    「なるほど!! 電波の都合で当時そこに静岡は含まれていなかった……というか、今も含まれてないけど」

    「そういうことです。そのため、地元のニュースや天気予報などで『東海三県』という言葉が使われるようになったのではないかと」

    「確かに……放映されない地域のニュースは流す必要がありませんからね」

    「決してこれだけが理由とは断定できませんが、一因になっていると考えて間違いないでしょうね」

     

    静岡県民の多くは『東海三県』を知らない?

    「『東海三県』と呼ばれるようになった経緯についてはよくわかりました。僕がお話ししたいのは“これから”についてです」

    「え? これから?」

    「静岡県民はもっと『私たちも東海地方だ!』と発信していって、名古屋のテレビ局が放送地域を静岡全域まで拡大するように働きかけるべきだと思うんですよ。情報に格差があってはいけないと思います」

    「確かに、記事にも書きましたが衆院選比例東海ブロックは四県でひとくくりにしていますからね」

    「でしょう? 僕はこのままだと静岡県がどんどんガラパゴス化していく気がしてならなくて。今日も浜松駅からバスに乗ってきたのですが、PASMOもSuicaも使えなかったし……」

    「それ関係あります? と言いたいですが、静岡って確かに独自の文化がありますよね(笑)」

    「笑っている場合じゃないですよ! 特に浜松は餃子が人気だし、2023年の大河ドラマでも注目されそうなのに、いざ来てみたらPASMOもSuicaも使えないだなんて!」

    「ちょっと待ってください。さては田中さんは浜松に住んだことがありますね?」

    「え? はい、まあ学生時代に6年ほど浜松で暮らしていましたが」

    「あくまでも私の主観ですが東海三県問題に強く反応するのは、静岡県でも浜松を中心とした西部地方で生活している人に限られている気がしています。冒頭で紹介した“記事のきっかけを投稿した読者の方”が暮らしていたのも西部地方ですし」

    「へぇ。一体なぜ西部の人が反応するのでしょうか」

    「静岡市をはじめとする中部地方より東側の富士、沼津、熱海、伊豆などの地域では、誰も疑問に感じないような気がするんですよね。当社でも伊豆地方出身の記者がいますが、彼は東海出身というよりも関東出身の意識の方が強いのではないでしょうか」

    「え……ってことは静岡県でも西部地方以外の人たちは『東海三県』と呼ばれていることすら知らない可能性があるってこと……?」

    「そうですね。西部地方の人であっても知らない可能性は高いし、知っていても興味がないと思います」

    「静岡県民! 立ち上がれ!!」

     

    静岡が「東海三県」に入らないと困ること

    「で、でも、だからこそ今回のお話を聞いているんです。静岡にはヤマハやスズキ、タミヤ、はごろもフーズなど日本を代表する会社がいくつもあります。名古屋の会社との結びつきを強くすることで、もっと日本経済を活性化できるかもしれません」

    「確かに名古屋を中心とした『中京圏』というくくりもありますね」

    「ホラ! そこに静岡の会社も入って、一緒に日本を盛り上げましょう。そのための東海四県化です!」

    「ただですね、『中京圏』は愛知県の尾張三河地域、岐阜市を中心とした岐阜県南部、四日市市を中心とした三重県北部の総称で……名古屋市からの通勤圏・購買圏を合わせた都市圏って感じです。どっちみち、静岡市も浜松市も遠いですね」

    「ぐむむ……!」

    「田中さんは、なぜ静岡は『東海三県』に入るべきだとお考えなのでしょうか?」

    「え?  そ、それは……“東海地方”という括りでは4つの県が仲間だったはずなのに、“東海三県”では静岡だけ除け者にされているというのが……なんというか、『おまえ(静岡)では実力不足だ』と言われているような気が……」

    「気が」

    「まぁ、“気がする”という、感覚の問題なんですけど」

    「では実際に『東海三県』に入らないと困ることはありますか?」

    「うーん……あ、テレビとか? 直接の因果関係はないかもしれませんが、静岡で名古屋の放送局が制作した番組が放送され―」

    「あの……大変申し上げにくいのですが……」

     

    TVerってご存じですか?」

     

    「……ええ……知っていますね……」

     

    「インターネットでいくらでも情報格差は埋められる時代です。それに、静岡で生活しているなら、名古屋の情報よりも自分の住む街の情報を知りたくありませんか?」

    「確かに……静岡で生活していれば名古屋のセントラルパークで開催されるイベントの情報は必要ないか……」

    「しかも、静岡県内にはテレビ東京を除く4つの民放の系列局があるわけですから、さまざまな角度から地元の情報を得られるのはかなり魅力だと思いますよ」

     

    ガラパゴスだからこそ育つ文化がある

    「じゃ、じゃあ、先ほどの“静岡ガラパゴス化問題”についてはどのように考えていますか?」

    「確かに、浜松市内を走る遠鉄バスはSuicaやPASMOなどの交通系ICカードは使用できません。しかし、実は遠鉄バスを運営する遠州鉄道は、2001年のSuica誕生直後にICカードを導入して鉄道・バス共通で使用できる『ナイスパス』を開発しているんですよ」

    「えー!」

    「互換性の問題で2022年時点では不便になってしまっていますが、決してイノベーションが起きていなかったわけではないことはご理解いただきたいですね」

    「でも現時点で不便は不便だから何とかしてほしいな……」

    「中部地方を走る静鉄バスでは、東京や名古屋と同じように交通系ICカードが利用できますよ」

    「し、知らなかった……」

    「悪いことばかりじゃないと思うんですよ。先ほどヤマハやスズキなどのメーカーを挙げていましたが、もし中京圏に組み込まれたら少なからずトヨタ(愛知)の影響を受けていたでしょうし、今日のような発展は遂げてこなかったかもしれません」

    「結局、名古屋の牙城は崩せませんからね。名古屋がトップを張っている『東海三県』に、わざわざ飛び込むメリットはないってことか……」

     

    「東海三県」はいずれ死語になるかも?

    「かなり形成が不利になってきてしまった……」

    「でも、すごくおもしろい県民性ですよね。静岡県は地形的に横に長いからか一体感はあまりない。浜松市の人は浜松市、静岡市の人は静岡市への思い入れが強く、お互いにあまり干渉しませんよね」

     

    見かねて静岡の良さを優しくフォローしてくれる高橋さん

     

    「そういえば、そうかもしれませんね。ジュビロ磐田vs清水エスパルスの静岡ダービーと呼ばれる試合も、さいたまダービーほど盛り上がっていない気がする……」

    「静岡自体、遠州(遠江)と駿河と伊豆の3つの国から成った県ですからね。そもそも文化が違うのでお互いへの関心が薄いのかもしれません」

    「高橋さんは、静岡に住んでよかったと思うことはありますか?」

    「もちろんありますよ(笑)。静岡は気候も温暖ですよね。暖かいけど、名古屋や岐阜のように真夏に40℃近くなることは少ないし、逆に大雪が降ることもないので、暮らしやすい」

    「それはそうかもしれませんね」

    「『なぜ東海三県に含まれないんだろう?』と疑問を持つ気持ちも、寂しく感じる気持ちもわかりますよ。仲間外れにされているような気分ですよね」

    「そうです。そうなんですけど……」

    「でも、だからこそ静岡には独自の文化が育ってきている。さまざまな偶然の積み重ねですから、それはそれですごいことだと思います」

    「確かにそうですね」

    「それに、今後よりインターネットで情報が発信される時代になれば、東海三県という呼び方自体死語になっていくかもしれない。だから、そんなに気にしなくていいと思いますよ」

    「そうですね、スッキリしました! ありがとうございました」

    「では、私はここで」

    「あ、このあとはどちらへ?」

    「ちょうど帰省の予定が入っているので岐阜へ帰ります。東海三県の

    「なんじゃい!!!」

     

    おわりに

    もしかしたら、僕は静岡で育ったことにコンプレックスを抱いているのかもしれません。

    でも、今回高橋記者と東海三県問題について話したことで自分の生まれ故郷を好きになった……というよりも少しだけかわいらしく思うようになりました。

     

    それにしても……

    遠鉄バスは早く他の交通系ICカードも使えるようにしてくれ〜!!

     

     

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    この記事を書いた人

    田中嘉人
    田中嘉人

    1983年生まれ。静岡県出身。2008年にエン・ジャパン入社。その後CAREER HACKをはじめとするWebメディアの編集・執筆に関わる。2017年5月に独立。

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