こんにちは。ジモコロライターの田中です。

先日、ジモコロ編集長のギャラクシーと車で取材先から帰っていたときの話です。

 

「ねぇねぇ、さっきから気になってるんだけど、カーステレオから流れてるラジオ、何?」

「ああ、これはラジオじゃなくてPodcast(ポッドキャスト)です。スマホからBluetoothでカーステレオに飛ばしてるんですよ」

「ぽっどきゃすと……? ラジオと何が違うの?」

「え? そう言われれば……最近はトレンド誌でもPodcast特集が組まれたりして確実にブームの兆しを見せ始めてるけど……“ラジオとの違い”を説明できるほど理解していないですね……」

 

というわけでそのままギャラクシーを連れて、東京都千代田区有楽町にあるニッポン放送までやってきました

 

「ニッポン放送ってあの有名なラジオ番組『オールナイトニッポン』を放送しているラジオ局だよね? さっきラジオとPodcastは違うものって言ってたのに、なぜここに?」

「ここには僕なんかよりPodcastに詳しい人がいるので、その人に話を聞いてみましょう!」

 

「こんにちは! ようこそ、ニッポン放送へ!」

 

ラジオブースで僕らを待っていたのは、ニッポン放送デジタルビジネス部にて人気番組『オールナイトニッポンPODCAST』などを担当する澤田真吾さん。

今回は澤田さんにPodcastに関するアレコレを聞いてみたいと思います!

 

Podcastって何なの?

「澤田さん、今日はよろしくお願いします。ニッポン放送ではかなり以前からPodcastに力を入れていたと聞いてますが」

「そうなんです! 最近では各ラジオ局が配信に力を入れていますが、ニッポン放送では2005年から業界に先駆けてPodcastをスタートしています。キャリアは相当長いほうだと思いますよ」

「失礼ながらPodcastのことをあまりわかっていないのですけど……そんなに普及してるものなんですか?」

「Podcastの人気は年々加速度的に高まってますね。少し前に『オールナイトニッポンPODCAST アンガールズのジャンピン』で田中卓志さんが交際宣言をしたところ、Twitterで話題になりました。Podcast発でTwitterを賑わすなんてことは、今までなかったですから」

「オールナイトニッポンPODCAST??? 地上波の放送とは別にPodcast版のオールナイトニッポンがあるんだ???」

「僕もよく聴いてます。澤田さん、今回は音声メディアにあまり触れてこなかった人にもわかるように、まずは『Podcastって何?』というところからお聞かせください」

「いろいろと定義はあるのですが、それを説明すると長くなっちゃうので……超ざっくり言うと“インターネットラジオ”だと思ってください。パソコンやスマホで聴けるラジオですね」

地上波のラジオとPodcastの違いはどのあたりなのでしょうか?」

「地上波のラジオは放送局が制作している生放送がほとんどですが、Podcastは収録された音声データをRSSフィードを通じてがネットに公開されている形がメインです。そのため、ネット環境さえあれば地域や時間などの制限がありません」

「ネットに繋がらないような場所では聴けないってこと?」

Podcastのほとんどはダウンロードできるので、ネット環境がなくても、あらかじめDLしておけば全世界のどこでも、電波が届かないエリアでも聴けます」

「どこでも? ギアガの大穴を通った先、地下世界アレフガルドでも聴けるってこと?」

「理論上は可能です」

 

 

「ラジオを聞く習慣がないのでよく知らないのですが、radiko(ラジコ)とかいうアプリとは何が違うんですか? ダウンロードできないって点が違うだけ?」

※radiko(ラジコ)=スマートフォンやパソコンでラジオが聴ける無料のアプリケーション(一部有料)

「ダウンロードできないのもそうですが、そもそもradikoは放送局制作の地上波ラジオ番組をインターネットで配信しているだけなのでかなり違いますね。過去の番組を聴ける『聴き逃し配信機能』もありますが、さかのぼれる期間も過去1週間と決まっているので」

「??????」

「Podcastはラジオ局、つまりプロの公式番組以外にも一般人が番組を投稿したりできるんですよ。テレビや映像に置き換えてみると、

・地上波のラジオ=地上波のテレビ

└プロ(放送局)が番組を作る

・ラジコ=TVer

└プロ(放送局)が作った番組をネットでも見れる

・Podcast=YouTube

└プロだけじゃなく一般人もコンテンツを投稿している

こんな感じです」

「しかも、Podcastはスマホ1台あれば誰もが配信できるんです。たとえば、今のインタビューの様子をスマホで録音して、音声ファイルをそのままPodcastで配信することも可能です」

「あぁ~! YouTubeみたいに誰もが自分のコンテンツを投稿できる、その音声版がPodcastってことなんですね」

「その通りです! YouTubeはカメラやスタジオ、編集スキルが必要だけど、音声メディアであるPodcastなら初期費用がほとんどかからないから始めやすいですよ」

「ってことはスマホ一台あれば僕でも……」

 

『ギャラクシーのオールナイトニッポン』ができるってこと!?

 

「番組名は再考いただきたいですが、いわばそういうことです」

「『オールナイトニッポン』のパーソナリティやスタッフ、そしてリスナーが血と汗と涙の結晶で築いた歴史にタダ乗りしないで」

 

Podcastの聴き方と澤田さんオススメ番組3選

「そもそもの疑問なのですが、Podcastってどうやったら聴けるんですか?」

「iPhoneユーザーであればデフォルトでApple Podcastというアプリが搭載されていますよ」

 

「そうなの!? え~っと、あっこれかな? 使ったことなかったな……!」

「Androidの方でも、Google PodcastAmazon MusicSpotifyなどのアプリをインストールすれば誰でも無料で聴けます。パソコンの場合は、それぞれブラウザ版もありますよ」

「そのApple PodcastとかGoogle Podcastっていうのが、動画でいうYouTubeやニコニコ動画みたいなことですかね」

「大まかに言うとそんな感じですね。澤田さん、配信プラットフォームごとの違いを教えてもらっても? 聴ける番組に違いがあったりしますか?」

「一部限定配信の番組はありますが、基本的には違いはありません。投稿者はたくさんの人に聴いてほしいので、音声データをつくったら、ホスティングサービスにアップロードし、すべてのプラットフォームに配信できるように申請していると思います」

「え? 動画だと別のプラットフォームに投稿するのは面倒だったりしますが……Podcastだと投稿者は、Apple PodcastとかGoogle Podcastなど、あらゆるプラットフォームに配信するのが一般的なんですか?」

「そんな手間じゃないんですよ。ホスティングサービスによっては配信先として『じゃあApple PodcastとGoogle Podcastと、あとAmazon MusicとSpotifyで!』とチェックを入れるだけなので……基本的には全部に配信する人が多いのではないでしょうか。少なくとも『オールナイトニッポンPODCAST』はほぼすべてのアプリで聞けると思います」

「つまりどのアプリを使っても同じように聴ける。自分が使いやすいものを選べばいいわけですね」

「いろいろ説明してもらったのに大まかにしか理解できてないんですが、まとめると―

・Podcastはインターネットラジオの一形式である

・ラジオ局制作の番組もあるし一般人制作の番組もある

・ダウンロードできるからネット環境がない場所でも聴ける

・聴きたい場合はApple Podcast、Google Podcast、Amazon Music、Spotifyなど好きなアプリを入れたらOK(聴ける番組に大きな違いはない)

って感じでしょうか」

「そんな感じの認識でOKだと思います」

「とりあえずアプリ内で番組をお気に入り登録しておけば、更新のお知らせが届きますよ!」

で、何を聴けばいいの?

「それにしてもPodcastには膨大な数の番組があるようです。何から聴けばいいのやら……」

「興味のあるカテゴリーを掘り下げてもいいし、ランキング機能を参考にしてもいいし、ニッポン放送が主催しているPodcastの祭典『JAPAN PODCAST AWARDS』の受賞番組・ノミネート番組から聴いていくのもいいと思います」

「地上波のオールナイトニッポンもPodcastで配信している番組がいくつもありますよね」

「え? オールナイトニッポンPODCASTだけじゃなく、地上波のオールナイトニッポンもPodcastで配信しているんですか?」

「『ナインティナインのオールナイトニッポン』『霜降り明星のオールナイトニッポン』『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』などは配信しています(一部Spotify独占配信)。権利の関係で番組内で使用した音楽をそのまま使用できないこともあり、Podcast用に編集したものですが」

「ということは、放送から1週間経って、radikoの聴き逃し期間を過ぎてしまっても聴けるってことですか?」

「そういうことです」

「すげ〜! ちなみに、澤田さんが好きなPodcast番組は?」

「ではパッと思いつくものをいくつか紹介しましょう!」

 

歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)

「まずは『歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)』ですね。JAPAN PODCAST AWARDSの第1回で大賞・Spotify賞を受賞しました」

「へえ、歴史がテーマですか?」

「パーソナリティは、世界史データベースを開発する株式会社COTENの代表・深井龍之介さんとメンバーの楊睿之さん、株式会社BOOKの樋口聖典さんです」

「ということは、芸人さんやアナウンサーさんのようなしゃべりのプロではない方たちの番組なんですか?」

「そんなことを感じさせないほど面白いですよ。日本や世界の歴史の中から『諸葛孔明』や『フランス革命』などテーマごとに細かく解説してくれるのですが、教科書では書けないようなディープなエピソードが満載。学生時代、歴史に興味がなかった人でも好きになると思います」

 

英語で雑談!Kevin’s English Room Podcast

「続いては『英語で雑談!Kevin’s English Room Podcast』。YouTubeやTikTokで人気のKevin’s English Room のケビンと英語勉強中のやまちゃんが英語で雑談する番組です」

「全編英語だと聞き取れないじゃないですか」

「全編英語だからこそ聴くんです。実はPodcastって語学学習に向いてるんですよ。少し前に流行ったスピードラーニング的に活用している人は多いみたいです」

「確かに、日本で生活していたら英語オンリーの番組を聴く機会は意外と少ないのかもしれない……」

「YouTubeやTikTokをからめた展開もすごく面白い。それぞれのプラットフォームに合わせてコンテンツを企画しているところは制作者として勉強になります」

 

BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ

「せっかくなので、最後にニッポン放送のPodcastも紹介させてください。『BUSINESS WARS / ビジネスウォーズ』という番組です」

「ビジネスウォーズ?」

「アメリカの大手ポッドキャストネットワークのWONDERY(ワンダリー)が制作した企業間の闘争をドラマ仕立てにした番組です。『任天堂 vs ソニー』、『マクドナルド vs バーガーキング』、『ナイキ vs アディダス』といった有名企業の知られざるバトルが描かれており、日本語版の制作をニッポン放送が手がけています」

「これはおもしろそう……! 池井戸作品好きにはたまらない作風ですね」

「案内役の落語家・春風亭一之輔師匠の語り口もすばらしく、思わず聞き入ってしまう番組ですよ」

 

「ちなみに田中くんはいつも何聴いてるの?」

「澤田さんの後に紹介するのは恥ずかしいですが……じゃあ僕もいくつかおすすめを紹介しますね」

83Lightning Catapult

「ラジオ界で絶大な支持を集める“1983年生まれのラジオスター”のお二人、アルコ&ピースの酒井健太さんと三四郎の相田周二さんが共演する番組です。お二人の妙に説得力のある偏見がたまりません。オープニングの『お悩み相談』コーナーから一気に引き込まれます」

 

ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」

「作詞家・エッセイストのジェーン・スーさんと元TBSアナウンサーの堀井美香さんのトーク番組。スーさんと堀井さんの世間話のような軽妙な掛け合い、リスナーとのやり取りを聴いていると、肩の荷がスッと下りるような感覚になります。号泣必至の回もあり、心のデトックスをしたいときに何度も聴いています。負けへんで」

 

マンガのラジオ

「マンガ大好きなニッポン放送のよっぴーこと吉田尚記アナウンサーが漫画家さんを招いて、アレコレ深掘りする番組です。浦沢直樹さんや弘兼健司さん、石塚真一さんや山口つばささんなどの漫画家さんのキャスティングも豪華。インタビュー記事などの文字情報では伝わりにくい熱量なども感じることができます。漫画好きは必聴です!」

「良いチョイスですね」

「聴いてみよ~っと」

 

スマホ1台でPodcast配信できるってホント?

「先ほど、スマホ1台あればPodcastの配信ができるという話がありました。もう少し詳しく教えてください」

「まずはSpotifyが提供している無料のホスティングサービス『Anchor(アンカー)』をインストールし、アカウント登録してください。ホスティングサービスはたくさんありますが、入り口としては『Anchor(アンカー)』が使いやすいかなーと思います」

 

「あ、これかな」

「音声を録音(もしくは音声データをインポート)したら、BGMを追加したり、不要な部分をカットしたりします。いわゆる編集作業ですね」

「え、アプリ内で編集できちゃうんですか!」

「そうなんです。編集が終わったら、公開ボタンを押して、はい、配信完了です

「え! もう終わり!? マジで簡単すぎるんですけど!!」

「ですよね。しかも、運営元のSpotifyだけではなく、Apple Podcast、Google Podcast、Amazon Musicなどの各プラットフォームにも一斉配信してくれます」

「画面も使いやすいし、これなら本当に誰でも始められる……」

「Podcast制作における悩みのタネが、自由に音楽を使えないことですが……Anchorにはひと通り素材が揃っているので誰でも番組っぽく仕上げられます」

 

「がぜんやる気が出てきたのですが、番組内での話し方や盛り上げ方でアドバイスはありますか?」

「個人的には、変に毒舌を織り交ぜたり、無理して下ネタを言ったりして、ラジオの真似はしなくていいと思います。実際、女子高生二人が雑談してるだけとか、サラリーマンが日々の出来事を喋ってるだけとか、そういうコンテンツが聴けるのってPodcastの良いところではないでしょうか」

「1番組どれくらいの長さが一般的なんですか?」

「『オールナイトニッポンPODCAST』は喋りのプロである芸人さんが出演しているので30〜40分くらいしゃべってもらっています。が、一般の方であれば10〜20分で短くまとめたほうが、聴きやすいと思います」

「トークに自信がない人はどうすればいいでしょう?」

 

「事前にしゃべりたいことをメモにまとめて、友達に話してみて感想を聞くといいですよ。感想を受けて、必要であれば手直しする。プロがやってる地上波のラジオだって、放送前にパーソナリティが構成作家とトーク内容を打ち合わせしますからね」

「確かに、行き当たりばったりでしゃべり始めても、途中で『これなんの話をしているんだっけ……?』とフリーズしそう」

「結婚式の来賓挨拶とかでよく見るよね」

「個人的にはそれはそれで好きなんですけどね(笑)。プロの真似をする必要はないというか、ラジオっぽくしなくてもいいって考えなので」

「楽しそうとは思うんですけど、僕なんかがPodcastやって、聴いてもらえますかね……?」

「まずは自分がしゃべりたいことをしゃべって、SNSでリスナーの反応を集めてコミュニケーションを深めるのがいいと思います。リスナーが新しいアイデアを提供してくれることもあるし、リスナー像が見えると話もしやすくなるので」

「少しでもリスナーがつくまで続けてみるか……」

 

Podcastのこれから

「ニッポン放送では地上波の番組とは別にPodcastを制作しているんですよね。リスナーの耳の取り合いにはならないんですか?」

「全くならないですね。オールナイトニッポンのような地上波の番組をPodcastに出すことで、そこからのリスナーが増えている感覚もありますし。むしろラジオにとってプラスになっている印象です」

「なるほど、Podcastがきっかけでラジオリスナーになる時代か〜」

 

「業界全体を盛り上げるために考えていることってありますか?」

「Podcastって、マネタイズの方法が少ないんですよね。せっかく盛り上がってきているのに、パーソナリティやスタッフに還元できる仕組みがまだまだ足りない。だから、直近の目標としては、マネタイズの仕組みを確立していきたいと思っています」

「マネタイズできるかどうかってメチャ大事ですよね」

「そのための大きな動きが、2022年6月20日にリリースされた『オールナイトニッポンJAM』というサブスクリプションサービスです。月額課金で、くりぃむしちゅーやオードリー、乃木坂46、WANIMA、ファーストサマーウイカさんなどの人気パーソナリティーの過去のオールナイトニッポンを聴くことができるので、ぜひ利用していただきたいですね」

「す、すごい! くりぃむしちゅーのオールナイトニッポンを放送していた時期は深夜にバイトをしていたので、全く聴けていなかったんですよね……! ぜひ聴いてみます! 今日はありがとうございました」

 

おわりに

スマホ1台で飛び込めるPodcastの世界。

さっそく、澤田さんオススメの『歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)』を聴いてみたのですが、めちゃくちゃおもしろくて“一気見”ならぬ“一気聴き”をしてしまいました。

みなさんもぜひ聴いてみてくださいね!

 

(おわり)