スーパーの店内BGM、かっこいいヒット曲がなぜ『ああいう感じ』にアレンジされるの?

2020.09.07

スーパーの店内BGM、かっこいいヒット曲がなぜ『ああいう感じ』にアレンジされるの?

スーパーなどの店内で流れている、ヒット曲のインストゥルメンタル(インスト)バージョン。ジャズ? フュージョン? カラオケverとはまた違うあの曲は、誰が作ってるの?ということでUSENに聞いてみました。なぜ歌(ボーカル)がないのか、あのアレンジにはどんな理由があるのか? 答えが出ました!

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    スーパーに行くといつもなにかしらBGMが流れている。

     

    音声POP(ポップ) | 呼び込み君(ビューサインmini無し)

    呼び込みくんのポポーポポポポ♪だったり、スーパーオリジナルソングだったりもするが、ほとんどは……

     

     

    ではないでしょうか?

    たぶん1週間に数時間はこういったBGMを聴いてると思うんですけど、疑問が1つ……。

     

    こういうBGMってさ……

     

     

    このあまり印象に残らない薄味なBGM。よく考えてみると全国どこのスーパーでも流れているワケだし、最新のヒット曲もいつの間にかインストになってるじゃないですか?

     

     

    『気付こうとしないと、気付かない、この”気にならないBGM”』の存在とその意義が気になってたまらなくなってしまいました。

     

    ということで店内のBGMといえば有線

    ここに聞けばすべての謎が解決すると思い、さっそく運営企業の『USEN-NEXT GROUP』、音楽配信最大手のUSEN様に取材を申し込みました。

     

    ▲取材はZOOMを使用しリモートにて行いました

     

    【登場人物】

    株式会社USEN(USEN-NEXT HOLDINGS)コンテンツプロデュース統括部 制作部。主にUSENで配信されるインスト曲の監修を担当している

    この記事を企画したライター。好きな音楽は速くてガチャガチャしたやつ

    ジモコロ編集長。好きな音楽はロックだが最近はピアノ小曲みたいなものばかり聞いている

     

     

    「よろしくお願いいたします! まずは大前提なんですけど、スーパーで流れてるヒット曲のインストはUSENで制作しているということで間違いないですか?」

    「はい! おっしゃっているのはおそらく弊社チャンネルの内の1つ『USEN Hits インスト』のことだと思われます。弊社の方から主に外部にアレンジを依頼し、私の方でチェックをして配信、という感じですね」

    「ということは、あのBGMの全てに野口さんの息がかかっているということですね!」

    「そういうことになりますね(笑)」

     

    なんとこの野口さんがスーパーのBGMの権化であることが判明!!スーパーのBGM界のラスボスだ!!

     

    ▲笑うラスボス野口さん。もともとは楽曲制作の仕事を目指していたそう

    「そもそも、なぜ店内BGMってインストなんですかね? CD音源そのままじゃいけないんですか?」

    ボーカル入りだと会話のノイズになってしまうからですね。店内で流れるものなので、人と人とのコミュニケーションを阻害するBGMであってはいけないんですよ」

    「ほう、確かに! でもそれだとCDのB面に入ってるカラオケver.とかでもよいのでは?」

    ※ギャラクシーはアラフォーなので『B面』という死語を使っています。オフボーカルver.とかバッキングトラックver.とも呼ばれます

    「1つの店舗に様々な曲が連続して流れることを想定すると、音色や音量・音質はある程度均一に整えないといけません。その時点でカラオケver.をそのまま採用というわけにはいかないんですよ」

    「言われてみれば確かに……」

    「あと、ああいった音源っていうのは曲単品として見ると成り立っていないんですよね。楽器パートはボーカルのメロディを考慮した上でアレンジされていますので、そのボーカルだけ抜いた音源っていうのは、曲というより『ボーカルを抜いた演奏』になってしまうんです」

    「ああ! 確かにカラオケver.はBGMというより歌いたくなってしまいますもんね。だから、スーパーのBGMはボーカルのメロディ部分も鳴っているのか」

    「そういうことです!」

    失礼な質問ですケド…なぜあんなアレンジを?

    「では、少し失礼な質問になってしまうんですけど、あのインストってなんであんな気にならないアレンジになってるんですかね?」

    気にならないといいますと?」

    「あの〜……まぁ、言葉が難しいんですけど。なんちゅーか……まぁ……安っぽい”というか”ダサい”というか……」

    「おい! 取材だぞ! 言葉を選んでくれ!」

     

     

    ▲失礼を承知で侘びながらたずねるの図

     

    「スイマセン! でも『スーパーのBGMっぽい』って揶揄の言葉としても使われるじゃないですか? なぜああいうアレンジをするに至ったのか気になったんですよ!」

    「フュージョンっぽいというか、独特のアレンジですよね」

    ※フュージョン=ジャズを基調にロックやラテン音楽、電子音楽などを融合させた音楽のジャンル

    「あははは(笑)。それにはちゃんと理由があって。店舗で流れるBGMですので、老若男女全ての世代の方が不快に思わない音色を追求した結果、ああいったフュージョン的な音作りが最適なんですよね」

    「なるほど。ギャンギャンのダンスミュージックは歳を経ると聴くのつらいですもんね。あえてオシャレ度を下げることで、万人にとって不快じゃない状態を作ってるのか!」

     

    ▲こちらの失礼な質問にも真剣に答えてくれる野口さん

    ちなみに野口さんの好きな音楽はフュージョンスムースジャズ。そっち系のチャンネルも担当しているとのこと。

     

    「トガりをなくしていった結果が、あのサウンドだと!」

    「はい! さらに言うと、ああいった親しみやすい音色であればあるほど、目の前にあるものを安く感じるという経験則もありまして。簡単に言うと売上向上の見込みが高まるんですよね。店舗側から見てもああいった音色の方が需要が高いんです!」

    「うわ〜! 隠された真実! あのアレンジにそんな意味と意図があったとは!!」

    「USENには大学教授など外部の専門家と音楽効果に関する研究をする部署もありまして、そこでの研究成果やマーケティングデータを検証するなど、結構ロジックで選曲を決めているんですよ」

     

     

    ちなみにその研究結果の一部は音空間デザインラボというサイトにて公開中。『快適な飲食店BGMの音量』『社内BGMによるコミュニケーションの変化』など、様々なシチュエーションとBGMと関する研究結果が載っています。

    様々な志向に合わせたBGMを配信

    「もしかして高級スーパー用のBGMもあったりするんですか?」

    「あります。リッチな雰囲気をお求めのお客様にはボサノバであったりジャズのインストチャンネルをご提案しております」

     

    USENのサイトでは業種毎のおすすめBGMを解説付きで公開している

     

    「わ! そういやそうだ! 高級なスーパーだとボサノバ流れてるわ〜!!」

    「ということは、目隠しでスーパーに入店してもBGMで高級なのか格安なのかが分かるってことですね!?」

     

     

     

    「その確率は高いと思います! ただ、アヤしい人になるのでやらないほうがいいかと……」

    「やる意味もないですもんね」

    「なんで聞いたんだ」

     

    その他にUSENにはアリバイという変わったチャンネルも。わざわざ大阪の道路でフィールドレコーディングをしたそう。一体誰がどんな時に使うんでしょうねェ(ニヤリ)。

    あのBGMは誰がどう作っているのか?

    「アレンジについては理解できました。じゃあ、作っているのはどういった方なんでしょう?」

    「基本的にはスタジオミュージシャンの方ですね。弊社では50人くらいの方とお付き合いがありまして、中には外国の方で某有名ピアニストの右腕という方もいらっしゃるんですよ」

    「え〜! あれ作ってるのって日本人だけじゃないんだ!」

     

    ▲USENが保有するレコーディングスタジオ

     

    「楽曲に関して野口さんの監修が入るということでしたけど、あがってきた楽曲に対してダメ出しもされるということですよね?」

    「そうですね!」

    「どんな注文するのか気になります! 『これもっとダサくでけへん?』みたいなこと言うんですか?」

    「そんな大阪のオバチャンみたいな言い方はしませんけど(笑)、『トゲトゲしさをなくして』という指示はよくしていると思います」

    「その場合、野口さんの中に確固たる『店舗に流れるインストとは?』という定義がないと指示できないと思うんですけど、野口さんが考えるインスト化する上で大事なことってなんでしょう?」

    「大きく分けると3つあります!」

     

    「まず大前提として原曲に忠実』であること。その上で曲の大事な部分を抽出、それ以外の部分を間引く『デフォルメ化』。その2つをクリアした上で、『BGMとして最適か?』という三原則は常に意識しています

     

    「ほ〜! 僕は音楽について詳しくないので分からないんですけど、こういったアレンジにも上手い・下手っていうのは出るんですか?」

    「確かに! 素人からするとクリエイティブさをあまり求められない仕事なのかなと感じてしまいますが……」

    「いやいやいや! これがね個性が出るんですよ! 特にデフォルメ化については『この曲をこの曲たらしめている成分はどこなのか?』を理解して『その成分をどういった音で表現するか?』っていうセンスが問われます!」

    取捨選択だ!」

    「あと、速い曲は店内BGMとしてふさわしくない場合がありますね。だからといってテンポを落としただけだと原曲っぽさが失われてしまう。なのでテンポを落としても疾走感を失わないようなアレンジ力が求められるんです」

    「え、そんなの無理では?」

    「上手い人は音色の選択であったり、音符の置き方であったり……、センスでうまくアレンジしてくれます。アレンジ後の楽譜が送られてきた時点で、美しいのが分かりますから!」

     

    ▲「インスト化にセンスは必要!」と解説する野口さん

     

    何気ないBGMと思われるかもしれないですけど、実は何気ないBGMと思わせるための隠し包丁的なテクニックが込められてるんですよ!」

    「うわ〜、いいこと聞いた! 電撃走りました! 気付こうとしないと、気付かない、この”気にならないBGM”には気にならなくするための技術が盛り込まれていたと!」

    「何を言ってるの分からないですけど、多分そうです!(笑)」

    上手いインストを聴いてみたい!

    「じゃあ、インストアレンジという観点で、野口さん自身でも『これ最高傑作だ!』って思えるものもあるということですよね?」

    「気になる! 聞きたい聞きたい!」

    「そうですね、最近ですとこの2曲は『美しいアレンジになったな〜!』と自信を持っています!」

     

    「なのでもしスーパーなどで聴く機会があれば『ああ! これが原曲に忠実かつ、気にならないためのテクニック総動員した曲か!』と思っていただけると幸いです(笑)」

    「これは聴かねば!」 

    一般の家庭でも有線を聴けたらいいんですけどね……。ま、そんなサービスがあるわけ……」

    「いや、実はSMART USENというスマホアプリがございまして、上記の2チャンネルともこちらで聴けるんですよ!!」

     

    ※USENと同じくUSEN-NEXT GROUPのU-NEXTが提供

     

    「え〜〜〜!! 月額500円でUSENを持ち運べるだって〜〜〜〜!!」

    「……前半の失礼な質問をこれでチャラにしようとしてます(笑)?」

    「バレましたか……」

    「なんとかバランスを取ろうとしたんですが……」

    「見え見えでしたね(笑)」

     

     

    ▲かなり危うい質問にも答えてくれた野口さんに感謝!

     

    「話を聞いていると色んな曲をフュージョン風にアレンジしてるってことですよね? では、もし最初からフュージョンの曲がオリコンに入るくらいヒットした場合、どうアレンジをするんですか?」

    「いや〜、その場合ですと……、原曲がもうフュージョン風じゃなくてフュージョンとして完成されているので……。難しそうですね……。」

    「ということは、野口さんとしてはフュージョンには売れてほしくない……?

    「業務としては……そうかもしれません(笑)。音楽好きとしてはフュージョンのファンなので頑張ってほしいですが……」

    「今後、インスト化が難しそうな曲がヒットしたら野口さんの苦労している顔を思い浮かべたいと思います(笑)。ありがとうございました!」

     

    おわりに

     

    どんな仕事の裏にも仕掛けと工夫と苦労がある

     

    そんな当たり前のことを改めて感じた取材となりました。みなさんも今後スーパーに行った際は「あっ! 『何気ない』と思わされてるな〜〜」とプロの技を噛み締めてみてはいかがでしょうか?

     

    お読み頂きありがとうございました!!

     

    ▲今宵は肉を選びつつインストを”真剣に”聴いてみよう!

     

    ↓下の画像ギャラリーでは、本編には収まらなかったUSENのインスト化にまつわるクイズを掲載中!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    おおきち
    おおきち

    1988年生まれ。ゴッサムシティ(荒川区)で深夜ラジオとインターネットに影響を受け続けている。尊敬する人はふかわりょう。ハイエナズクラブなどにも書いてます。

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