2秒で読める絵本!「パラパラブックス」はなぜ売れるのか?

パラパラ漫画といえば教科書のスミに描くものというイメージですが青幻舎の「パラパラブックス」がすごかった! 作った「もうひとつの研究所」にインタビューして、90万部以上を売り上げるパラパラマンガの秘密を探りました。

 

 

子どものころ、よく教科書の隅に絵を描いて遊んでいた。

 

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こんなふうに、ちょっとずつ変化するイラストを描いて素早くめくると……

 

 

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動く。

みなさんご存知の「パラパラ漫画」だ。

 

小さいころは夢中になったものだけれど、それはもう昔の話。すっかり目にする機会もなくなった。そもそも、紙をさわる機会が減った。

 

しかし、このパラパラ漫画がいま、かなりの進化を遂げているらしい。

百聞は一見にしかず。まずはこのパラパラ作品をごらんいただきたい。

 

 

 

 

 

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https://www.youtube.com/watch?v=pTxdJOEz4_s より抜粋

 

ドカーン!

 

 

すごい。

 

虫が爆発すると、本当に紙に丸い穴が開いてしまうのだ。この仕掛けが見事すぎて、本屋で立ち読み(と言っていいのか)したときに声が出そうになった。すごい。

 

 

ばくだんむし(もうひとつの研究所パラパラブックスvol.3) (Flipbook もうひとつの研究所パラパラブックス Vol. 3)

ばくだんむし(もうひとつの研究所パラパラブックスvol.3) (Flipbook もうひとつの研究所パラパラブックス Vol. 3)

 

 

 

このすごい作品は「パラパラブックス」という絵本シリーズの一作。全国の大型書店を中心に発売されており、累計90万部以上の売上を誇っているとのこと。

 

 

 

「もうひとつの研究所」にインタビュー

 

裏表紙を見てみると、「パラパラブックス」の作品を作っているのは「もうひとつの研究所」だそうだ。

 

研究所……? ラボ……?

 

 

 気になることがたくさんあるので、研究所を直接たずねてみた。

 

 

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某所に存在する「もうひとつの研究所」。作品が棚一面に並ぶ。

 

 

―― いま「もうひとつの研究所」では、「パラパラブックス」シリーズとして、パラパラ絵本を販売しているんですよね。

 

もうひとつの研究所(以下「もひ研」) はい。これまでに11種類のパラパラ絵本を制作しました。

 

―― いくつか見せてもらってもいいですか?

 

もひ研 どうぞ。

 

 

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もひ研 こちらは『むしくいさま』という作品です。「むしくいさま」が「むし」を食べてしまう短い話です。

 

 

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https://www.youtube.com/watch?v=QZvbjPQoBFE より抜粋 

 

 

―― 紙に穴をあける演出、すごい……! 穴を少しずつ大きくしていくことによって、パラパラすると穴が広がっていっているみたいに見えるんですね。

 

 

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もひ研 これは『めからかいこうせん』という作品です。文字通り、目から怪光線が出ます。

 

―― 飛び出す絵本みたいなことでしょうか…?

 

 

 

 

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https://www.youtube.com/watch?v=CZ78fRGk5a8 より抜粋

 

 

―― ……? あ、なるほど! パラパラしたときの「目の残像」が、まるで怪光線みたいに見えるんだ。おもしろい。

 

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―― これ、動画だとあんまり伝わらないかも…! 目で見ると本当に光線っぽく見えるんですよ。

 

 

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もひ研 こちらは『クリスマスの足音』という作品です。シリーズで一番売れたんだったかな。

 

 

 

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https://www.youtube.com/watch?v=Z6OhcKTNFqU より抜粋

 

 

―― ……! これはすごい……! 鈴が隠れてるだけじゃなく、紙の穴の微妙な引っかかりで鈴が鳴るようになってる。

 

 

どうして「パラパラ絵本」なんですか?

 

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「もうひとつの研究所」の工房

 

 

―― 「パラパラマンガ」を描いたことのある人はきっとたくさんいますが、これらの作品は……なんというか、レベルが違う感じがします。「もひ研」さんも、昔からパラパラマンガを描き続けてたんですか?

 

もひ研 最初にパラパラ作品を作ったのは2000年代の前半、デザインアート系の学校に通っていた頃ですね。

 

―― 教科書の隅にパラパラ漫画を描いていてその延長で、というわけではないんですね。

 

もひ研 はい。きっかけは、佐藤雅彦さんが慶應義塾大学の研究室で生徒に課題を出して作らせたパラパラマンガの存在を知ったことでした。

 

 

※佐藤雅彦さん……「だんご3兄弟」「バザールでござーる」などの名フレーズを生み出したクリエイティブ・ディレクター。現在は東京芸術大学大学院・映像研究科教授。教育番組『ピタゴラスイッチ』の監修でも知られる。

 

 

―― それはすごく納得感があります! 佐藤雅彦さんの作るものには「抽象的な概念を視覚的にわかりやすく伝える」というコンセプトがありますよね。「パラパラブックス」にも同じものを感じます。

 

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『動け演算 -16 FLIPBOOKS-』(2000年)のちに生徒が制作したパラパラマンガは製本され発売された。

 

 

もひ研 『動け演算』という作品集で、生徒が作った小さなパラパラ漫画がたくさん収録されているものなのですが、それがとても面白くて。「これはもっと進化できる」と思って作り始めたのが最初ですね。

 

―― 「進化できる」?

 

 

パラパラ漫画は時間と空間が合わさってできている

 

もひ研 パラパラ漫画というのは、時間と空間が合わさった媒体なんですよ。

 

―― どういうことですか?

 

もひ研 紙を何層も重ねて素早くめくると動いて見えるのが、パラパラ漫画の基本的な仕組みですよね。

 

 

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もひ研 つまり、絵を時間軸上に重ねていくことで、空間的な厚みが生まれてるんです。これは他にはない特徴だぞと気づきました。この特徴を活かした、新しい表現がまだ作れると思ったんです。

 

―― 普通のパラパラ漫画なら映像アニメーションでもまったく同じことが表現できますが、「時間」と「空間」という要素に着目すれば、映像では作れないものが表現できるかもしれないと。

 

もひ研 そうですね。たとえば、この束ねた紙の真ん中にズドンと穴を開けてしまう。この穴の大きさをだんだんと大きくしていけば……

 

―― 穴が広がっているみたいになりますね!

 

もひ研 そして、ここが立体作品の特徴なんですが、穴の向こうに次のページの穴が…つまり、未来が見えるんです。その結果「穴の絵」ではなく、ちゃんと深さのある本当の穴が作れる。

 

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―― なるほどー。これは2D映像では作れないですね。「時間と空間が合わさった媒体」という言葉の意味がわかりました。

 

もひ研 「パラパラ漫画」が好きで作っているというよりは、この表現手法でできることの領域を広げてみたくていろいろと試しているんです。

 

―― ああ、たしかにそれは読んでいて感じます。「パラパラブックス」は、絵がかわいく独特の雰囲気があって楽しいですが、驚くような発明が必ずあるのが好きなんです。

 

もひ研 「動け演算」を監修していた佐藤雅彦さんに、私の作品を見てもらったことがあるのですが、そのとき「作品にオチはいらないんだよ」とアドバイスされてハッとしたんです。作品のしくみ自体がおもしろければ、それは見ていておもしろいはずだから、と。

 

―― 先ほど見た「めからかいこうせん」は、まさにそれですね。起きていることは目からビームが出ているだけで2秒で読み終わってしまうのに、紙の残像がビームに見えること自体がおもしろいから何度も繰り返しめくっちゃう。

 

もひ研 佐藤さんは、ふつうの人とはアンテナの張りかたが違っていて、みんなが「わあ、すごいね!」ってところには引っかからない。起こっている現象そのもののおもしろさにこだわっていましたね。

 

 

アイデアを形にする過程

 

 

―― さきほど、パラパラ漫画は時間と空間が合わさった媒体だと聞きましたが、作品の作り方も特殊になりそうですね。こういうパラパラ絵本はどうやって作っているのでしょうか?

 

もひ研 アイデアが出たら、まずは単純な試作品を作ってみます。こういうのですね。

 

 

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―― おお、すごい!

 

もひ研 これは紙がシャッターみたいに開くのがおもしろいなと思って試作品を作ってできたものです。こういうしくみを作って初めてわかったんですが、紙を指で押さえるとズレるんですよ。だから、穴の下にピッタリ絵がくるようにするために、絵の印刷をズラさないといけない。

 

―― アイデアを形にするために、おのずと細部にこだわる必要が出てくるんですね。紙の材質とかも重要になりそうですね。

 

 

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量販店でも買えるエプソンのフォトマット紙

 

もひ研 紙もいろいろな種類を試していますね。試作品を作るときは、エプソンのプリント用紙のかたさが一番しっくりくることがわかりました。商品化されるときの用紙も似た質感のものを使っています。

 

 

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もひ研 構想がかたまったら、まずは紙に鉛筆でラフを描きます。登場するキャラクターの細かいデザインなどを、想像を膨らませながら絵にしていきます。

 

 

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もひ研 これは『まいまいHOME』というパラパラ絵本に登場するキャラクターですね。

 

―― かわいい。

 

 

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もひ研 それから、パソコンに取りこんで、Photoshopという画像編集ソフトで彩色します。そして、After Effectsという動画編集ソフトで、一度アニメ動画を作ります。

 

―― まずデジタルで2Dアニメを作ってるんですか?

 

もひ研 そうです。レイヤーごとにかなり細かく絵や動きを設定しているんですよ。動画ができたらフレームを切り出し、Illustratorというソフトにはりつけて印刷します。できあがったら実際にパラパラしてみて仕上がりを確認し、調整をくわえていきます。

 

―― デジタル・アナログの垣根なく、いろんな手法を縦横無尽に使っているんですね。

 

 

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https://www.youtube.com/watch?v=3eS9Ge3iWiE から抜粋

 

―― ここ、紙がシャッターのように開くアイデアが活かされてますね!

 

もひ研 アイデアを出す段階ではいろいろと手法を考えて10以上も試作品を作ることもあるんですが、最終的にはシンプルな表現になることが多いです。そのほうがおもしろいんですよね。

 

―― ところで、これを商品化して大量生産するのは大変じゃないですか? 穴とか開けてるし、鈴が入ってたりもするし。

 

もひ研 大変らしいです。発行は青幻舎さんという出版社なんですが、紙に穴を開けるためだけに金型を作るんだそうです。穴の形が変わる場合は、それぞれの大きさで別の金型を用意しなくちゃいけない。

 

―― けっこうお金がかかりそうですね。

 

もひ研 元をとるためにはたくさん刷らないといけないし、使える金型の数にも制限があります。最近は売れることがわかってきたので、いっぱい穴を開けられるようになりました。鈴はパートのおばさま方がすごい速さでつけているらしいです。

 

―― 見てみたい……。

 

 

「パラパラ」じゃなくてもいい

 

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店頭設置用のボックスは「もうひとつの研究所」がデザインした特別な品

 

 

―― パラパラブックスのことを知りたいと思ったきっかけに、娯楽の電子化の流れがあります。ほとんどの本を電子書籍で買うようになり「紙であることの意味ってなんだろう」と思ったんです。パラパラ絵本は物体であることに意味がありますよね。映像じゃあまり意味がない。

 

もひ研 そうですね。いま、テレビの中の映像が動くのがあたりまえ、という認識が広がってるけど、パラパラ漫画は手元で紙をめくることで絵が動く。そこが逆に新鮮に感じておもしろいのかもしれません。

 

―― 特に「パラパラブックス」の作品は、紙ならではのギミックがある。だからなおさら物体として所有したくなります。

 

もひ研 「もうひとつの研究所」としては「驚き」の要素というか、変なことやりたいという思いがあります。なので「パラパラ作家」としてでなく、いろんな媒体でいろんな手法を試してみたいですね。絵本やインタラクティブなアニメーションなども作ってみたいです。

 

―― 次の作品がどんな形になるかわかりませんが、「もうひとつの研究所」の新作を楽しみにしています!

 

 

 

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多くの読者を魅了する仕掛けたっぷりのパラパラ絵本は、「パラパラ」だからこそ成り立つアイデアに満ちていた。

ちなみに上記画像の作品は「立体的なパラパラ漫画できないかな」と思って作ったらできてしまった飛び出すキノコ(非売品)。紙の層がキノコになって浮かび上がる。すごい。

 

 

表現媒体としての紙の可能性は、まだまだ眠っていそうだ。

 

 (おわり)

 

 

 

まいまいHOME (もうひとつの研究所パラパラブックスシリーズvol.10)

まいまいHOME (もうひとつの研究所パラパラブックスシリーズvol.10)

 

 

 

 

ライター:ダ・ヴィンチ・恐山

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。作家名義は品田遊。
排水口の掃除やミントガムの咀嚼など、多方面で活躍中。

ブログ→品田遊ブログ
Twitterアカウント→@d_v_osorezan

 

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