「江頭名言」はなぜ作られた?ネットでウケるためには『お重人格』を手に入れろ

2018.03.03

「江頭名言」はなぜ作られた?ネットでウケるためには『お重人格』を手に入れろ

この連載は、ダ・ヴィンチ・恐山が、インターネットにまつわるあれこれについてモニョモニョと歯切れの悪い見解を述べるコラムです。

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    この連載は、ダ・ヴィンチ・恐山が、インターネットにまつわるあれこれについてモニョモニョと歯切れの悪い見解を述べるコラムです。

    バーチャルユーチューバーはギャップ萌えか?

     バーチャルユーチューバーが話題だ。

     

     バーチャルユーチューバーというのは、二次元キャラのモデルを使ったバーチャルなユーチューバーである。なんか頭の悪い説明だがそういうものなのだ。今後はVチューバーと呼ぼう。

     

     ようは架空の人格を演じて動画を投稿する文化だ。ネットには昔からバーチャルアイドルという存在がいたが、Vチューバーはその延長にありつつも人気の加熱ぶりでは史上初ではないかと思う。もう1000人くらいいるらしい。

     

     Vチューバーの動画を見ていると、キャラクター設定に似つかわしくない暴言を吐いたり、アニメ声ではない人間くさい喋りを垣間見せたりした瞬間が非常によくウケている。これは何もVチューバーに限った話ではなく、人間はそういうのが大好きだ。私も好きだ。

     

     ギャップ萌え、という、「不良なのに実は優しい」みたいなアレを好む心理を表す言葉があるが、この場合はギャップ萌えとも少し違う。ある一面だけでコンテンツとして成立させつつ、さらに別のコンテンツをその奥に見出す複雑さがある。それがネットでは特に求められている。

     

    「江頭名言」とお重人格理論

     

     私はこれを「お重人格理論」と呼びたい。お弁当箱ひとつでは物足りない消費者のことを考えるべきなのだ。一段目の人格を楽しんで満足する人はそれでいい。それでも食い足りぬという需要のため、二段目に味の違う人格を詰め込んでおく必要があるのだ。重箱に入った弁当のように。

     

     ツイッターのRTなどで「江頭2:50の名言」を見たことはないだろうか。「生まれた時から目の見えない人に空の青さを伝える時何て言えばいいんだ? こんな簡単なことさえ言葉にできない俺は芸人失格だよ(江頭、談)」みたいなのがネットには大量に流通している。その大半は嘘八百なのだが、これはネットの「お重人格」需要が江頭に二段目の人格を作らせたと考えられる。

     

    「脱いで暴れる型破りな芸人」という人格だけでも、テレビではコンテンツとして成り立つ。しかし、ネットでは誰もが発信者になり得るので、一面的なコンテンツだけでは受動的にしか楽しめない。

     

     そこで誰かが「型破りな芸人を演じる、真のプロ意識を持った芸人」という二段目の人格を考案した。これによって「江頭2:50」というコンテンツは深みを増し、視聴者として情報を受け取るしかなかった人々も能動的に一段目と二段目を行き来する運動を楽しめるようになったのだ。

     

    ネットでウケるにはどうすべきか

     

     Vチューバーは、構造からして「中の人(声優)がキャラクターになりきってアドリブを演じる」という「お重人格」を構成している。一段目にあたる「真面目な委員長キャラ」を演じながら口が滑ってしまっても、それは二段目にあたる「中の人」のコンテンツに吸収され、そちらを豊かにする。失言によってキャラが壊れるということは原理的にないのだ。本当によくできていると思う。

     

     本当にネットでウケたいなら、最低でも二段のお重人格を作るべきなのかもしれない。はじめから二段目を作っておく必要はなくとも、「江頭名言」のような誤解を生む空間を残しておくのは、商売の戦略上わりと重要じゃないだろうか。

     

     たとえばあなたがネットでウケるマンガ家になりたいとする。まずはツイッターに毎日、可愛い猫のショートコミックを載せ、徐々にフォロワーを増やしていく。

     

     数ヶ月も続ければ、あなたは「猫マンガの人」として認知され始めるだろう。だが、これだけでは一面的なコンテンツにすぎない。猫マンガも掃いて捨てるほどある。よほど実力か運がなければ大人気作家にはなれない。

     

     しかし、もしもあなたが毎日激しく筋トレをしていて、全盛期のシュワルツェネッガーのような肉体の持ち主だったらどうだろうか。

     

     そして、いつもの猫マンガではなく、筋肉隆々の自撮りを唐突にアップしたら?

     

     この瞬間、あなたはお重人格を手に入れた。猫マンガというありがちなコンテンツの底に「筋肉」という二重底が出現して、「あの筋肉の人がこの可愛いマンガを描いているのか……」という能動的な楽しみ方をするように仕向けることができるようになったのだ。

     

     そう、ネットでウケるためには、あえて「掘りおこされる余地」を残しておくべきなのである。

     

     

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    疑問呈し蟹「それって、別にネットに限った話じゃなくない?」

     

     うわっ、疑問呈し蟹だ。

     

     

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    「おじさんがさあ、『壇蜜って、けっこう頭いいんだよ』みたいなこと得意げに言ったりするじゃん。あれと同じなんじゃないの?」

     

     あー。いるよねそういう人。同じことだと思う。

     

    「じゃあなんでネットにこだわるの?」

     

     ネットにはそういう「○○って本当は✕✕なんだ」みたいなのを好む土壌が、テレビよりもあるからだね。

     

    「ふーん。あとさ、『お重人格』って言葉、わざわざ作る必要あった? 正直、別に目新しい概念じゃないと思うんだけど。二重人格みたいで面白いから語感を優先して名付けてない?」

     

     それは、はい。

     

    「でも、そもそもさ。お重人格とか言ったって、人間はいろんな性格の側面をもともと持ってるんだから、コンテンツが評価されれば勝手に二段目三段目の掘り下げはされてくもんじゃないの? 江頭さんだって狙ってるわけじゃないでしょ?

     

     …… そうね。

     

    「それをさ、『筋肉をつけてマンガを描こう』みたいな方向でそそのかしても、失敗するような気がするんだけど。狙ってやったことってだいたいバレるし」

     

     うーん、でも、誰もがすごい才能を持ってるわけじゃないからね……。

     

    「でも、マンガを描いて筋肉をつけてなんて、それこそ才能がないとムリじゃない? 本当に才能がある人にとっても、あんまりない人にとっても『お重人格理論』ってあんまり役に立たない気がするんだけど……どう?」

     

     ………。

     

     

    ・ ・ ・

     

     

     言い返す言葉がなくなってしまったので、今回は、このへんで投げることにする。さようなら。

     

     

     

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    この記事を書いた人

    ダ・ヴィンチ・恐山
    ダ・ヴィンチ・恐山

    株式会社バーグハンバーグバーグ所属。作家名義は品田遊。乾電池の購入やドリンクバーの利用など、多方面で活躍中。

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