目の前で人が倒れたらどうする? 消防署で救命講習を受けてみた

2018.12.04

目の前で人が倒れたらどうする? 消防署で救命講習を受けてみた

突然人が倒れた!そんな事態に正しく対処するため、救命講習を受けてみました。救急車が来るまでにやるべき応急処置……人工呼吸や胸骨圧迫(心臓マッサージ)、AEDの使い方なんかを教わりましたよ!熱中症や喉に何かがつまった時、出血などの対処法も。

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    はじめまして。ライターのマッキンと申します。皆さま、いま目の前で人が倒れたら、対処できますか?

    突然の質問で申し訳ありません。でも「人が倒れる」のって、基本的に突然のことですよね。

     

    私は数年前、深夜帰宅中に交通事故の現場に遭遇したことがあります。

    当時19歳だった私は、事故を目の当たりにした恐怖で一歩も動けず、ただ震える事しかできませんでした。

     

     

    幸い、その場に居合わせた大人たちがスムーズに怪我人を保護して、事なきを得たのですが……

    「もしあの場に自分以外誰も居なかったら」

    「人の命が自分の肩にかかったとしたら」

    と考えただけでゾッとします。

     

    救命講習を受けてみた

    訓練用の模型を見てなんだか不思議な気持ちになっていると、本日の講師がお見えになりました。

     

     

    「今回 参加して頂く『普通救命講習』では、座学はもちろん、実技も受けてもらいます。うまくできるようになれば、『救命技能認定証』を差し上げますので、頑張ってくださいね!」

    「よろしくお願いします!」

     

    応急手当の目的って?

     

    「応急手当の目的というのは、大きく3つあります

    1、命を助けること

    2、悪化防止

    3、苦痛の軽減

    ですね」

    「苦痛の軽減と言われても、麻酔薬とか持ち歩いてませんけど……」

    「いえいえ、もっと単純に『声をかけて励ますこと』です。例えば転んで手首を骨折して骨が飛び出てる人がいたとして、周りの人が『これヤバいよ……』なんて言っちゃうと……」

     

    「余計に具合が悪くなって失神してしまうかもしれない。なので『大丈夫ですよ』『もうすぐ救急車来るからね』など、温かく声をかけて安心させてあげましょう

    「ケガとか血を目の当たりにしたら、絶対動揺して表情に出ちゃいそうだな……」

    「119番に通報してから、普通はどれくらいで現場に到着するものなんですか?」

    「都内だと通報から平均7〜8分で現場に到着します」

    ※平均なので、場所によってはもっとかかる場合もあります

    「7〜8分?! 早過ぎません!?」

    「実は7〜8分でも遅いくらいなんです。なぜなら心肺が停止して4分間のあいだ胸骨圧迫(編集部注:我々が心臓マッサージという言葉で憶えているアレです)人工呼吸をおこなった場合、助かる確率は50%ですが、何もせずにいると20%まで下がってしまうから」

    わずか数分が、人の命を左右することになるんですね…!」

    「なので一般市民のみなさんが、(救急車が到着するまでに)いかに早く救命処置をするかが鍵になります!」

     

    ▼応急救護で覚えておきたいことメモ

    ・心肺が停止して4分間のあいだに胸骨圧迫や人工呼吸を行った場合、助かる確率は50%

    ・AEDという電気ショックの機械を使うと、もっと助かる確率は上がる

    ・何もせずにいると、20%まで下がる

    ・「1分でも早く処置する」のがめちゃめちゃ重要

     

    「素人の判断で119番通報するのって、ちょっと躊躇してしまいます。大した怪我じゃなかった時に、救急隊の方に迷惑じゃないんですか?

    「『緊急に病院に行く必要』があって、『搬送する手段がない』と判断した時は、遠慮なく119番して大丈夫です。ただ、通報する前に一瞬様子を見てもいいかもしれませんね。例えば上野公園とかだと酔っ払って寝てる人がいっぱいいるので」

    「泥酔した人、地面で寝ないでほしいな~」

    「どちらにせよ、道端で倒れている人を見かけたら、最初は優しく、だんだん気合を入れて呼びかけてみてください」

     

    泥酔してる人でも、何らかの反応はあるはずです。もしピクリとも反応が無いとか、不自然な呼吸をしている場合は、即座に救急車を呼んでください」

    ※通報時、場所を伝える時は、電柱やジュースの自販機に住所が書いてあったりしますよ!

    「その段階から、応急処置を始めたら良いんですかね? まずは何から?」

    真っ先にやることは……周囲の人を巻き込むことです」

    「え? 胸骨圧迫とかじゃなく!?」

    「自分が処置をおこなっている間に……まだ救急車を呼んでいなければ周囲の人に呼んでもらったり、AEDが設置されてる場所を探してもらったほうが良いです。胸骨圧迫だって、ずっと一人でやってたら、疲れて雑になってしまいます」

    「なるほど。『誰か~!手伝って~!』みたいな感じですか?」

    『誰か』という不特定多数に向けた呼びかけじゃないほうが良いですね。しっかりと目を見て『あなた』とお願いすると、大抵は断れなくて手伝ってくれます。できるだけ優しく、丁寧にね」

     

    ※イメージ図です

     

    「通報して、周囲の人を巻き込んで、それからやっと応急処置という段取りなんですね?」

    「はい。基本は心肺蘇生……つまり胸骨圧迫と人工呼吸を行います」

     

    ・胸骨圧迫

     └30回=1分間に100〜120回程。5センチ沈むまでしっかりと!

    ・人工呼吸…2回

     └思い切り吹き込まずに、ため息くらいの感覚で!

    ↑この2つを交互に行います

     

    ▼胸骨圧迫のやり方

    「え、これを1分間に100回~120回もやるの……? めちゃめちゃ疲れそう」

    「そう、だから一人でやらずに、周囲の人と交代しながらやったほうがいいんです。そして、手伝ってもらっている時は存分に褒めてください。これ、大事です」

     

    「とまあ概要はこんな感じですね。実際にやってみない事には分からないので、人が倒れていることを想定して、シミュレーションしてみましょう」

    「緊張してきた…頑張ります!」

     

    シミュレーション形式で訓練を体験!

    というわけで、今まで学んできたことを実践すべく、「倒れている人を発見し、応急処置を行う」というシミュレーション訓練をおこないました!

     

    ▼応急救護で覚えておきたいことメモ

    ・呼びかけの時に肩を叩く場合、必ず両肩を叩く(体の片側が麻痺している可能性があるから)

     

    ▼応急救護で覚えておきたいことメモ

    ・周囲の人に手伝ってもらう(目を見て「あなた」など名指しでお願いしよう!)

     

    ※気道確保のやり方に自信がなければ、すぐに呼吸の確認を実施してください

    ▼応急救護で覚えておきたいことメモ

    ・10秒間、胸が上下しているか(普段どおりの呼吸をしているか)確認する。わからない時は胸骨圧迫を開始

     

    ※マウスピースがない場合は直接……ということになりますが、人工呼吸に自信がないor直接口をつけるのにちょっとでも抵抗を感じる場合は、胸骨圧迫だけを続けてください

    ▼応急救護で覚えておきたいことメモ

    ・胸骨圧迫30回→人工呼吸2回、を繰り返す

     

    「き、き、きつい〜〜! 2~3セット繰り返したらもう限界! なんだこれ……」

    「そうそう。意外とキツイんです。でも、胸骨圧迫は うまくできていましたよ!」

    「やったー! ありがとうございます!」

    「ちなみに今回は訓練なので広くて平らな床でしたが、実際は狭い作業場だったり、階段だったり、岩の上だったりするので、スムーズに救護できるとは限りません」

     

    お相撲さんが倒れている状況、なに?漫画?

     

    AED(自動体外式除細動器)の使い方

    「胸骨圧迫や人工呼吸に加え、AEDを使うとさらに助かる可能性が高くなります。普段、気をつけて見ていないだけで、実は色んな場所に設置されてるんですよ」

    「AEDってよく話を聞きますけど、正直、使い方がわからなくて怖いんですよね……」

    「AEDの機械には多くの種類が存在してますが、使い方は一緒です。とにかく電源をオンにすると音声ガイドが流れるので、その声のとおりに行動したら、初めての人でも簡単に使えますよ

     

    1、電源をオンにする

     └ガイドの音声が流れ始める

    2、衣服を脱がし、2つのパットを装着する

     └という指示を音声ガイドがしてくれるので、その通りに

    3、AEDが心電図を解析

     └電気ショックが必要か不要か判断して、教えてくれます

    4、電気ショックが必要な場合は、ショックボタンを押す

     └とにかく音声ガイドの言う通りにしたら大丈夫!!「1のボタンを押してください」とか「少し離れてください」とか、細かく指示してくれます

     

     

    「パッドを素肌に貼り付けてください」という指示があったのでパッドを取り出してみると、貼るべき位置がイラストで描かれてました。親切!

     

    「衣服を脱がせた時、汗や水で濡れていたら、効果が弱くなる可能性があるので軽くふきとってくださいね」

    「あのー、女性の場合も衣服を脱がしちゃうんですか…?」

    「公衆の面前なので、女性の場合はある程度 配慮してあげたほうが親切でしょうね。手伝ってくれる女性がいないか探して、周囲を女性で囲むとか。なお、ブラジャーは脱がさなくても大丈夫です」

    ※脱がすのに時間がかかるというのもあります

    ※パッドはブラジャーに重ならないように、素肌に貼りましょう

    「他に何か注意すべき点はありますか?」

    「ショックボタンを押す際は、必ず傷病者に触れている人がいないか確認してくださいってことですかね。電気のショックを与えるわけですから、触れている人も感電してしまうので

    「言われなくても怖いからザザーッと逃げちゃうのでは?」

    「いえ、お子さんが倒れてしまった時の親御さんなど、パニック状態になって離れようとしないことは、あるんです。でも、離れてくれないとAEDが使えないし、使えないと助けられないんで、無理にでも引き剥がしてください」

    「心を鬼にして引き剥がします! 命が助かってから、ゆっくり抱き合ってもらうために」

     

    応急救護は完璧じゃなくていい

    「そういえば、さっきの訓練で脈を取りませんでしたよね?」

    最近の訓練では脈を取らないことになっていますね。消防士や医師は慣れてるのですぐに脈を取れるのですが、素人の方はそうはいきません。『脈、これかな…?』と探している間にも、大事な時間が刻一刻と過ぎちゃうので」

    ※その分、呼吸が普段どおりかしっかり確認しましょう

    「本当はやったほうがいいけど、時間がもったいないからしなくていいってことですか? え、そんなんでいいの?」

    「いいんです! 胸骨圧迫も『30回、圧迫したかな?』とか、気にしなくていいです。29回でも31回でもいい。大体合っていれば大丈夫

    「でも、人命救助って、人の命がかかっているので『完璧にこなさないといけない』というイメージがどうしても拭えないですね…」

    「素人がヘタにやらない方がいいというか、『逆に悪化したらどうしよう』というのが怖すぎる」

    「ちょっと乱暴な言い方ですが、もし胸骨圧迫中に肋骨が折れたりしても、それは後々治るんで、応急処置を躊躇しないでください。だって『脈がない』『呼吸がない』ことよりも、悪い状況はないんですから」

    完璧を目指して何もしないよりは、できることをしたほうがマシってことか」

    「その通り! 人工呼吸も本当はしたほうがいいんですけど……全く知らない人に直接やるのって抵抗がありませんか? 時には口元が血や吐瀉物で汚れていたりもしますから」

    「人命がかかってるんだから、それくらいで戸惑っちゃいけないとは思うんですが……その場で実際に目にすると、正直厳しいかもしれません」

    「確かに…厳しいかもです…」

    「プロじゃないんだから、それが当たり前です。『人工呼吸しようかな?でも、ちょっと厳しいな……』と悩む時間がもったいないので、胸骨圧迫やAEDだけでもいいんです」

    「いいの!?」

    「はい。救急現場では、理想や完璧さなんかより、とにかくできることを素早くやる、というのを最優先してください。救急車でプロが到着するまでの数分間は、それくらいシビアで、現実的です」

    「わかりました! 今度もし倒れている人を見かけたら、学んだことを実践したいと思います。ありがとうございました!」

     

    まとめ

    というわけで無事、救命講習を終えまして、後日、救命技能認定証をゲットできました。やったー!

     

    ※この画像は加工してペンネームを入れましたが、本来は本名でしか取得できません

     

    救命講習を受講したことで少しだけ自信と知識がつきました。もし今後、人が倒れている場に遭遇したら……完璧とまではいかないかもしれませんが、今回学んだことを実践したいです。

     

    で、できるかな……

     

     

    おまけ:応急手当番外編

    他にも色々な応急手当を教えてもらたので、いくつかご紹介しましょう。

     

    ・熱中症

    熱中症になってしまった人がいたら、涼しい場所に避難させ、首の付け根や脇の下など、太い血管が通っている箇所を冷やしましょう。

    ※自販機で冷えたペットボトルを買うと便利

     

    ※意識がなければすぐに救急車を!また、自力で水分補給ができないほど衰弱している場合も、直ちに救急車を呼んでください

     

    ・気道異物除去

    これは腹部突き上げ法(ハイムリック法)と呼ばれるもので、食べ物や嘔吐物が詰まった時に行う救命処置。

    1、片方の手で握りこぶしを作る

    2、傷病者の背後に回り、体を密着させて、みぞおちあたりに手を当てる

    3、斜め上に突き上げる

    ※反応がない人や乳児、妊娠している人には実施NGです!

     

    ・止血法(直接圧迫止血法)

    血が出ている傷病者が対象で、出血量が多い&激しい場合は早急に処置が必要です。

     

    ▼直接圧迫止血

    1、出血している部分に綺麗なガーゼやタオルを当てる(感染症の恐れがあるので手にビニール袋の着用を推奨)

    2、強く圧迫する

     

    ▼間接圧迫止血

    傷口と心臓の間の動脈を圧迫する

     

    ※上図の「間接圧迫止血法」は上級者向けなので、一般市民は直接圧迫止血法で処置しよう!

     

     

    以上です! この記事がいつか、誰かの役に立てば幸いです。

    (おわり)

     

     

    東京消防庁では、心肺蘇生やAEDの使い方、けがの手当など、応急手当が習得できる救命講習を開催しています。

    もしもの時にうろたえないように、大切な人や家族の命を守るために、救命講習を受講してみましょう!

     

     

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    マッキン
    マッキン

    1994年生まれ、沖縄本島北部の田舎ですくすくと育つ。大学卒業後は地元の企業に就職するも、兼ねてより憧れを抱いていた大都会東京への移住を決意し、上京。現在は会社員の皮を被りつつ、ライター活動をしながら趣味で成人向け漫画を描いています。

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