
全国のローカルを旅する編集者の藤本智士です。これまでジモコロでは石垣島など離島を取り上げてきましたが、今回は「高知」のおすすめスポットを紹介します。
きっかけは、NHKで高知を舞台にした朝の連続テレビドラマ小説『あんぱん』がスタートしたこと。高知が大好きな僕としては、これを機に人が殺到する前にもう一度行っておこうと、今年の春頃に向かったわけです。
高知には過去に何度も来ているのですが、今回の旅でも「こんな店がまだあるのか!」という新しい発見がたくさんありました。ということで、これまで訪れてきた数々のスポットと合わせて、僕の「主観で」高知のおすすめをまとめています。
ちなみに高知観光の定番中の定番、「ひろめ市場」と「日曜市」に関してはあえて触れていません。それ以外にも紹介したいところがたくさんあるので、この記事を片手に高知を旅してもらえると嬉しいです!
(しゃべった人:藤本智士/まとめた人:しんたく)
<目次>
⚫︎高知のことを少し知っておこう
⚫︎酒と生食文化の街・高知
⚫︎高知名物・カツオを探せ!
⚫︎美味しいキンメダイを求めて高知の南東端・室戸へ
⚫︎生食以外にもまだまだある! 高知の郷土料理
⚫︎高知市街地の夜は長い
⚫︎居酒屋だけじゃない、〆も豊富な高知市街
⚫︎愛知だけじゃない、いろいろ楽しめる高知のモーニング
⚫︎日本一好きなあんぱんと最高のスイーツたち
⚫︎定食とスパイスカレーに鍋焼きラーメン、まだまだあるぞ高知グルメ
⚫︎氷菓がいっぱい高知県! 君はアイスクリンを知っているか
⚫︎高知の精神性が表れた「良心市」☆記事に出てくるスポットは、最後にまとめてマップで紹介しています!
高知のことを少し知っておこう
僕の場合、高知には飛行機で向かう機会が一番多いです。島根の「米子鬼太郎空港」や鳥取の「鳥取砂丘コナン空港」など愛称を持つ空港が全国にたくさんありますが、人名(キャラクター名)を冠にした空港名は、国内では2003年に名付けられた「高知龍馬空港」が初めてだそう。たしかに高知といえば龍馬ですよね。
高知龍馬空港から市街地まではバスが通っているので、アクセスは比較的良好。ただ、高知はめちゃくちゃ東西に広いので、市街地だけでなく高知全体を観光しようと思ったら、レンタカーは欠かせません。
と、車での旅を進めておきながら申し訳ないのですが、高知は独特な酒文化を持つ土地でもあります。
例えば、「おきゃく文化」。「おきゃく」というのは、もともと土佐弁で「宴会」のこと。しかし単なる飲み会というより、酒と料理を囲んで、親類や友人はもちろん知らない人とも自然に打ち解け合い交流を深める高知独自の文化。
近年は土佐の「おきゃく」としてイベント化したことで、全国的にも有名になってきました。春に商店街を巻き込んで行われるイベントは、商店街にずらっとコタツを並べて、地元・よそ者かかわらずみんなでお酒を飲むというオープンなもの。
さらに「べく杯」と呼ばれるお座敷遊びがあるのですが、こちらはサイコロの出目によって、数種類ある杯のどれかでお酒を飲むというもの。「ひょっとこ」や「天狗」など、ユニークな杯は穴が空いていたり、円錐形だったり、とにかく飲み干さなきゃいけない形になってます。
つまり高知の人は酒好きでオープン。それゆえお酒にまつわるスポットが少し多めですが、お酒を飲まない人にも楽しめるようにしっかり紹介していくので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
酒と生食文化の街・高知
まずはこの春に訪れた際、改めて「高知やばいな」と思ったお店を紹介させてください。それがこの「居酒屋 たけうち」。ここは「竹内酒店」という酒屋さんがやっている、いわゆる角打ちなのですが、ここのシメサバが見た目も味も抜群でこのためだけに高知に来てもいいレベル。
見てくださいこのビジュアル!「ゆのす」と呼ばれる柚子(ゆず)酢に、ひたひたに浸った新鮮なサバたち。「こんなシメサバあるの?」って感じで、これが最高に美味しい。
壁のメニューにも味がある。季節ごとにどんどん変わっていくそう
他のメニューも、どれも美味しいんですが、特に僕は「すじ煮込」の味付けが超絶好みでした。煮込みって、味噌風味のものも多いですけど、ここのは甘さ控えめで醤油しっかり系。
そして極め付けは、この「文旦(ぶんたん)」!
ちょうど文旦の季節だったこともありメニューにあったんですが、角打ちとは思えない丁寧な仕事に、思わず「わーっ!」と叫んでしまいました。
こんなふうに丁寧なおしごとが施された料理に加えて、冷えた純米大吟醸のお酒をたくさん飲んで、お会計は一人あたり2500円くらい。安すぎでした。長年通っているのに、まだこんな店があるのかと改めて高知のすごさを思い知らされました。
続いて紹介するのは「酒亭 どんこ」。こじんまりとした雰囲気の良い居酒屋なんですが、高知の郷土料理が美味しくいただけると地元でも人気のお店で、僕も4、5回は利用させてもらってます。
高知といえば、当然「カツオのたたき」が有名なわけですが、付け合わせとして欠かせないのがミョウガとニンニク。さらにここのたたきにはトマトも添えられて瑞々しさが爆発してました。
写真の奥に小さく見えるのは、先ほども出てきた「ゆのす」
高知のたたきの定番は、ポン酢ではなく塩でいただく「塩たたき」。今では高知県外でも当たり前に見かけるようになってきましたが、昔は「カツオのたたきを塩で食べるの?」とびっくりしたものでした。
そして、 高知に来たら食べてほしいものの一つが「ウツボ」。
ウツボは唐揚げで食べることが一番ポピュラーだと思いますが、淡白で、鶏肉みたいな感じ。ウツボの皮の下にあるゼラチンが加熱されることで旨味が出るらしく、外はサクッと、中はふわりとしていて、とてもいいつまみに。高知の居酒屋にはよくあるので、ぜひ試してみてください。
さらにもう一つ、春から秋にかけて高知でよく見かけるのが、この「ドロメ」。
これはイワシの稚魚なので、要は「生シラス」です。カツオもそうなんですけど、ドロメも見るからに鮮度が命の食材じゃないですか。これも海が近い高知だからこそ。
なので、基本的に高知は生食文化だと思っていいと思います。全国を見渡しても、高知ほど発酵食品が少ない街ってあんまりないんですよ。もちろん地酒はたくさんあるんだけど、東北などと比べると、圧倒的に発酵保存食が少ない。居酒屋のメニューひとつとっても、そうした文化の違いが見えてきます。
高知名物・カツオを探せ!
先ほど紹介しましたが、高知といえば、やっぱりカツオ。どのお店も基本的にカツオは美味しいんですが、なかでも最高峰に美味しいカツオが食べたいという人は、少し西のほうに足を飛ばして 、「久礼大正町市場」の「田中鮮魚店」へ。
お店には新鮮な魚がずらっと並んでいるほか、真向かいの飲食スペースでカツオ料理が食べられます。店主の田中さんはとにかく目利きなので、この店に行ったからには、ぜひカツオの刺身を食べてほしい!
ジモコロの田中鮮魚店インタビュー記事も合わせてどうぞ
ちなみにカツオにちなんだ面白い場所が高知市内に。「仁井田神社」には「かつおみくじ」というものがあります。
おみくじ自体は釣り竿で引くという、なんともかわいらしいスタイル。カツオを食べたあとの立ち寄りスポットとしてどうぞ!
さて、ここで改めて、柚子酢こと「ゆのす」について。先ほどから度々登場している通り、「ゆのす」は高知の料理には欠かせない食材。高知のお寿司は、寿司酢の代わりに「ゆのす」を用いているところが結構あって、酢の物系が苦手な人でも馴染めるようなさっぱりした酸味がとても美味しいんです。
そういった「ゆのす」文化を支えているのが、高知の柑橘たち。
例えば、高知では夏の終わりから秋にかけて、「メジカのシンコ」というのが出回ります。このメジカのシンコに合わせるのが、「ぶしゅかん」という柑橘の果汁。つまり、季節の魚とその時期の柑橘を合わせるという文化が高知にはある。こうした豊かな組み合わせに出合うたびに、高知はいい街だなあと思います。
美味しいキンメダイを求めて高知の南東端・室戸へ
高知はカツオだけじゃなく、実はキンメダイも有名。特に高知県の室戸沖は西日本で最もキンメダイの水揚げが多い地域です。
室戸は高知県の中でもかなり東側。高知市内からはかなり距離もあるのですが、ぜひ足を運んでもらいたいのが「料亭 花月」。
ここでは「室戸キンメ丼」というものが食べられるんですが、もうこれがめちゃくちゃうまい。一生で一度は食べてもらいたい一品ですね。
丼の上に乗っているのはキンメダイの刺身と照り焼き。これだけでも当然美味しいんですが、さらに最後はアツアツの出汁をかけて、お茶漬けに。もうたまらない。
そして、はるばる室戸にたどり着いたからには見てもらいたいのが「むろと廃校水族館」。
ここは文字通り、廃校を活用した水族館。跳び箱を活用した水槽があったり、プールにウミガメがいたりする、すごくユニークな水族館です。
室戸でウミガメの調査をしていたNPO団体が廃校を調査施設として利用しようとしたのがはじまりで、研究施設としての機能も兼ねて水族館を運営しています。だからとても考えさせられる展示も多くて、例えばこちら。
ウミガメの腸から出てきたレジ袋が水槽に入れられていて、うつくしい高知の海をどう守っていくかについて考えさせられる、とてもよい展示。もし室戸に行くなら足を伸ばしてみてください。
ついでに室戸ネタで話しておきたいのが、このポップコーン。
室戸でたまたま入ったお店で、おじさんがこのポップコーンを爆買いしているのを見かけたので興味本位で僕も買ってみたんです。パッケージも可愛いし、お土産にいいかなと思っていたんだけど、気づいたら全部自分で食べてしまうほど美味しくて。
それ以来、見つけたら必ず買うようにしてたんですけど、高知以外ではなかなか手に入らない。だけどある時、無印良品にある「蜜がけコーン」という商品に「室戸沖の海洋深層水使用」という記載があるのに気づいて、食べてみたらまさに同じ味! なのできっと同じもの(笑)。高知以外でも手に入れられることを知って、うれしくなりました。
生食以外にもまだまだある! 高知の郷土料理
高知の郷土料理のお店で、僕がすごく好きなのは「草や」。自分もよそ者なのに、県外から来てくれるゲストのおもてなしに、よく使わせてもらっています。なので僕にとっては「安定の草やさん」という感じですね。
お店の佇まいはもちろん、刺身盛りもとても綺麗。カツオはもちろん、その季節の旬の魚が並んでいて、やっぱり高知の海の豊かさを感じます。
魚以外もおすすめで、こちらは「あか牛のわら焼き」。高知は「土佐のあか牛」が有名なんですが、旨味が強くて、霜降りが控えめだから、冷めてもあんまり脂がベタつかない。だから、わら焼きでサッと焼くのも合うんですね。
そして、これは特別につくっていただいた「田舎寿司」なんですが、この田舎寿司が大好き。
田舎寿司は高知の郷土料理で、写真には「かます」の寿司がドーンと乗っていますが、基本的にはミョウガや椎茸など、山のものをベースにしたお寿司。もちろん酢飯には「ゆのす」を使っているのが特徴です。道の駅などでも見かけると思うのでぜひ食べてみてほしい。
「草や」はお酒も充実。「南」や「久礼」などの日本酒はもちろん、「文佳人」の生しぼりみかんを使ったリキュールも抜群に美味しいですよ
続いて紹介するのは「路傍酒場 玄(くろ)」。
ここで「沢渡茶ビール」というのを飲んだのですが、これが美味しい。「沢渡茶」はもともと「土佐茶」として生産されていたものを、近年オリジナルブランド化したものなのだそうです。
ほかにも室戸ののり天や、神経〆した鯖の刺身など、郷土料理がおいしく食べられる人気店です。
さらに郷土料理系のお店を挙げるなら、「とさ」も好きなお店ですね。
個人的にこの店ですごく感動したのが、焼酎割り。
この焼酎、ぶしゅかんという柑橘が入っていますが、「ぶしゅかんサワー」のようなメニューがあるわけではなく、ただの焼酎のソーダ割りに 、料理や刺身に添えられているぶしゅかんを絞ったもの。この時期は大抵のメニューにぶしゅかんが添えられていたので、常連さんはそれをこうやって焼酎に絞り入れるわけです。まさに高知の柑橘文化ならでは!粋ですよね。
高知の居酒屋でよく見かける食材としては「チャンバラ貝」も美味しいです。
「マガキガイ」というのが正式名称なんですが、高知ではチャンバラ貝と呼ばれる
蓋の部分にあるノコギリ状の爪を振り回す様子が、チャンバラをしているように見えるのが名前の由来だそう。高知県では塩ゆでが定番らしくて、居酒屋でよく出てくる印象があります。
ちなみに地元の人曰く、このお店のことは「裏とさ」と呼ぶそうです。これは高知駅前にある居酒屋『土佐』と区別するための呼称らしく、「土佐」は「表土佐」(※系列店ではなく、別々のお店です)。「表土佐」も名店という話をよく聞くものの、こちらの「裏とさ」が気に入ってしまったので、“表”にはまだ行けていないまま。いつか行ってみたいですね。
高知市街地の夜は長い
お酒が豊かな高知県。当然、高知の市街地にもいい飲食店がたくさんあります。
僕が一人出張のときによく行くのが、「くろもしろも」というお店。カウンターと小さなテーブルが3〜4脚あるくらいのこじんまりとしたお店ですが、高知の酒も豊富だし、料理も地のものをしっかり食べられるから、一人でサクッとってときは重宝します。
手書きのメニューもいい味
「くろもしろも」と同じ通りにある「SIN」もおすすめ。ここも基本カウンターのお店で、甘エビの塩麹漬けなど、酒飲みにはちょうどいいメニューが並んでいます。
そして、ここで偶然、席が隣になった子に連れて行ってもらったのが「ニュースナック シン」。
シンからすぐ近くで、おそらく系列店。「ニュースナック シン」には市の職員や地元の若めの人たちが集まっていて、高知市内のいろんなことがここで生まれている感じがあって、いい場所だなあと思いました。
居酒屋だけじゃない、〆も豊富な高知市街
居酒屋やバーが豊富なら、〆も豊富な高知市内。まずは高知で飲み会後の〆として定着している「屋台餃子」。なかでも1番の老舗が「安兵衛」です。
この安兵衛はもともと屋台のお店から始まったのですが、今は屋台だけでなく「いまどき安兵衛」という店舗式のお店もあるので、気軽に行きやすいと思います。そして、やっぱり美味しいんですよね。
揚げ焼きに近い「焼き揚げ」という高知屋台餃子特有の調理法で、外側のカリッとした歯触りがすごく特徴的な味わいです。また高知県はニラや生姜の生産量が日本一なのですが、そうした素材がふんだんに使われているのも、高知の屋台餃子の特徴ですね。
僕は「安兵衛」のラーメンが好きで、餃子と一緒によく食べます
そして、個人的に高知の〆の定番になっているのが「バッフォーネ」のジェノベーゼパスタ。
僕はこのお店が本当に好きで、友人たちみんなで散々飲んで解散したあとに、まだお店が開いていたら一人で「バッフォーネ」まで行って、このジェノベーゼと白ワインで勝手に一人で〆るくらい好き。
ここのジェノベーゼは本当に美味しいし、決して多いわけではない高知の知人にばったり出会うことも多く、つくづく高知の人に愛されてるお店だなあと思います。高知の夜を味わうのであれば、欠かせないお店かも。
最後に一風変わった〆として紹介したいのが「Walton Bar」。オーセンティックなバーなのですが、僕がついこの店に行きたくなるのは、美味しいクロワッサンが食べられるから。
クロワッサンと一緒に、酒を最後にサッと飲むというのがすごく良くて、何度も行っています。街の中心部にあって行きやすいのも、おすすめポイントですね。
モーニングに日本一好きなあんぱん、カレーにアイスクリン。高知グルメはまだまだあります
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この記事を書いたライター
有限会社りす代表。1974年生まれ。兵庫県在住。編集者。雑誌『Re:S』、フリーマガジン『のんびり』編集長を経て、WEBマガジン『なんも大学』でようやくネットメディア編集長デビュー。けどネットリテラシーなさすぎて、新人の顔でジモコロ潜入中。