毎月約250種が発売! 400億円市場ガチャガチャ業界の「お店は何もしない」システムとは?

2020.09.28

毎月約250種が発売! 400億円市場ガチャガチャ業界の「お店は何もしない」システムとは?

約400億円規模のビジネス市場に成長したガチャガチャ業界。かつてはキン肉マン消しゴムやガンダム消しゴム、そして現在は『鬼滅の刃』が人気だというブームの変化、業界の仕組みや電子マネー決済対応の筐体など新たな潮流について、株式会社ビームの花岡正幸さんに話を聞きました。

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    意を決してなけなしの100円玉を入れ、どの商品が出るかわからないドキドキとともに、いろんな玩具たちをゲットできる「ガチャガチャ」

    子どものころに回したシーンを思い出すだけで、ワクワクがよみがえるほど。

     

    そんなガチャガチャ業界、実は今や約400億円規模の大きなビジネス市場であり、右肩上がりの勢いだ。そしてめざましい進化を遂げている。

     

    人の拳より大きく、プラモデル顔負けのスズメバチ。カプセルに入って販売される、れっきとしたガチャガチャだ。

     

    ついには電子マネー決済対応のガチャガチャまでも登場している。

    しかしこのガチャガチャ業界、ビジネス面でクローズアップされることがあまりない。だからこそ、たくさんの素朴なギモンが浮かんでくる。 

     

    ・勝手に家の前に置いて商売してもいいの?

    ・どんなシステムでガチャガチャ市場は回っているの?

    ・なぜ1つ100円のガチャガチャが減って高額化してるの?

    ・今売れている商品と、歴代最も売れた商品は何?

     

    東京都足立区にある株式会社ビームの花岡正幸さんに、ギモンをどんどんぶつけてみた。

     

    自宅前にガチャガチャ筐体を置いたら地獄?

    1980年創業の株式会社ビーム代表取締役・花岡さん

     

    辰井「まず、ビームさんってガチャガチャ業界の中では、どんな会社なんですか?」

    花岡『メーカー兼卸問屋』ですね。もともと商品開発と製造を行うメーカーだったんですが、大手のおもちゃメーカーによるキャラクター商品などの展開に押され、問屋業もはじめました。各社の商品を、全国の自動販売機を設置する会社(オペレーター会社)さんに卸売りしています」

     

    ビーム公式HPにある流通システムの図。メーカーと自販機設置会社(オペレーター会社)をつなぐ販売代理店にあたるのがビームさん

     

    辰井「ちなみに創業当時はどんな商品を作っていらっしゃったんですか?」

    花岡「昔からあるような、消しゴムやスライムなんかです」

    辰井「古きよきガチャガチャらしい商品ですね」

    花岡「メーカーとしては現在、外部会社から持ち込まれた企画の商品化をメインに、一部はオリジナルで開発を行っています。あと設置業務のお手伝いなど、ガチャガチャのことなら何でもご相談に応じますよ」

     

    ガチャガチャを回して出てくる商品に、「子どものロマン」はかきたてられた

     

    辰井「何でも! ではさっそく相談していいですか? 私、自宅の前にガチャガチャを置く夢があるんです」

    花岡「ああ……個人だと、たぶん新品では業者から筐体を買えないと思います」

    辰井「そうか、残念。となると中古の筐体を探せばいいですか?」

    花岡中身の商品もネットで買って、自前で家の軒先に置くなら可能です」

    辰井「正規のルートだと厳しそうですが、一応できると」

    花岡「はい。ただ……」

     

    花岡すごく大変だと思うので、正直おすすめしません

    辰井「え、なぜですか?」

    花岡「子どものイタズラはもちろん、売れ残った商品がいつまでも置かれている状態になり、在庫が増える一方となる可能性があります」

    辰井「地獄絵図だ。個人で置くのはイバラの道ですね」

    花岡「だから業者で置くほうが、ずっとラクなんです」

     

    お店は場所を提供するだけで、何もしない

    辰井「よくガチャガチャの筐体ってお店の前に置いてありますが、商品を選んだり、補充したりするのは店側の役割ですか?」

    花岡お店の人は基本、何もしなくてもいいんです。設置業者はお店の軒先を借りて無償で置かせてもらい、カプセルの補充や集金などの作業を担当するんですよ」

    辰井「お店側がいろいろやるのかと思ったら、何もしない?」

    花岡「閉店時に、シャッターの内側に筐体を入れてもらうくらいですね」

    辰井「中の商品選びも業者さんにおまかせですか?」

    花岡「はい。ガチャガチャの新商品は、毎月約30社のメーカーから約250種類も発売されていますから

    辰井「すごい数だ。その中から素人が選ぶのは大変ですからね」

     

    まさかの発想にうならされる新商品が、毎月約250種出る

     

    花岡長年やっていれば売れる商品はわかるので、業者側で選別して置きます。ただ、お店の人から『これ入れてよ』と言われたら、場合によって入れることもありますよ」

    辰井「それならお店側はラクですね。ちなみに売り上げはどうなるんですか?」

    花岡「細かい数字は企業秘密なのですが、基本はジュースの自販機と同じ、売り上げの一部が設置しているお店側に入るビジネスモデルです。ガチャガチャのほうがジュースの自販機よりも割がいいですよ」

    辰井「あまり儲からないイメージがあったんですが、意外です」

    花岡「あと、ジュースの自販機は月に3500円くらいの電気代をお店が負担するので、それを乗り越えてペイできるかがカギです。その点、電気を使わないガチャガチャは、基本的にランニングコスト0円なんです」

     

    電気を使わないのに、高機能を実現する最近のガチャ筐体

     

    辰井「何だかいいことずくめに聞こえますね……」

    花岡「ただし、設置できるかはお店の集客力次第ですね。設置会社からすると、無償で置くコストを売り上げで回収しないといけませんから。人通りが多いお店はOKが出やすいです」

    辰井「希望しても、確実に置かせてもらえるわけではないんですね」

    花岡「そうなんです。2000年代前半ごろに一気に設置が全国的に進んで、ガチャガチャ筐体の数が増えました。その結果、どこでも買えるせいで場所当たりの売り上げが落ちたんです」

    辰井「競争の激化がアダに……」

    花岡「それから、設置する場所を厳選するようになりました。売れ行きが悪く不採算の場所からは筐体を引き上げたり、売れる場所に多く集めたりして、儲けを確保したんです」

     

    功労者の「カードダス」が消えたワケ

    辰井「いまどんなガチャガチャが一番売れていますか?」

    花岡「『鬼滅の刃』です。2019年の10~11月ごろから火がついて、ウチでも今年の6~7月は売り上げの4割ぐらいが『鬼滅の刃』関連ですね」

     

    辰井「そんなに……! 僕の子ども時代はガンダム消しゴムが大ブームでしたが、それよりも上ですか?」

    花岡「いや、それはガンダム消しゴムのほうがすごいですね。もっと言うと、その前のキン肉マン消しゴムあたりがブームとしては過去最大かなと思います。なにせ当時のガチャガチャは1回20円でしたから」

    辰井「いまは1回200〜300円が主流ですし、子どものお小遣いで回せる回数が違いますからね」

     

    (Photo by Peter O’Connor)

     

    花岡「そのほかのブームでいうと、『妖怪ウォッチ』の妖怪メダルや『コップのフチ子さん』、カードダスも相当売れたらしいです」

    辰井「ちなみにカードダスって最近見かけませんね?」

    花岡カードダスは、ほぼ消えましたね

    辰井「えええ……子どものころに800枚くらいは集めていた思い出の品なんですが……」

    花岡「当時の設置業者さんはガチャガチャと一緒に補充していきました。全盛期はガチャガチャが売れない分を補ってくれたんですよ」

    辰井「いわばガチャガチャ界の功労者なんですね」

    花岡「ところがトレーディングカード方式のアーケードゲームに押されるなどで、その座を追われてしまったんです」

    辰井「諸行無常だ……」

     

    1個500円の商品も! 高級化するガチャガチャ

    辰井「ちなみにガチャガチャの筐体って、どんな所が作っているんですか?」

    花岡「いまや大手メーカーのバンダイさんやタカラトミーさんくらいしか作っていないんです」

    辰井「なぜほかのメーカーが参入しないんですか?」

    花岡「いま主流の『価格切り替えレバーで100~500円まで値段を変えられる機種』は、技術的に難しくてなかなか作れないんです」

    辰井「昔は100円玉1枚を入れて回す、単純なつくりでしたもんね」

    花岡「だから、色んな会社が作れたんです。ガチャガチャの筐体って電気を使っていないのに、値段を変えられるって実はすごい技術なんですよ。これ一台作るのに、開発費を含めると数千万〜億単位の費用がかかっていると思います」

    辰井「それじゃ小さいメーカーは対抗できないですね」

    花岡「特許や意匠も盛りだくさんなので、類似しないように作るのも小さいメーカーでは不可能ですね」

     

    機構がシンプルだったころの、旧型の自動販売機。1回20円(!)で回せる

     

    辰井「ちなみに、昔よくあった100円のガチャガチャは減りましたね。なぜですか?」

    花岡さらにクオリティの高いものをお客さんが求めたんです。昔のキン肉マン消しゴムのようにシンプルな色使いのものよりも、たくさん色を使ったものに人気が出まして。でもコストも上がったので、値上げするしかないですから」

    辰井「消費者は価格より、質を求めたんですね」

    花岡「そうして200円の商品が増えて、今では300~500円のガチャガチャもおなじみになりました。最近では、キャッシュレス決済ができる筐体も出てるんですよ」

    辰井「すごい、未来は僕らの手の中だ。購買層も上がっていますか?」

    花岡「今や40代の方もよく買ってくれます。大人に売れる商品に『だんごむし』(バンダイ)っていう500円商品がありまして。こちらなんですが」

     

    辰井「おお、でかい……しかも何やらリアルで、妙な迫力ですね」

    花岡「直径約74ミリですから。この状態でカプセルに入っていますが、広げるとこうなります」

     

    辰井「長い(※全長約140ミリ)。カプセルの丸い形に合わせて収納しているわけですね」

    花岡「姉妹品の『スズメバチ』もすごいですよ」

     

    辰井もっとでかい(※全長約150ミリ、全幅約200ミリ)。しかも従来のガチャガチャとは一線を画す完成度だ。これもカプセルに入ってるんですか?」

    花岡「はい、カプセルはそのままスズメバチの台座として流用されています

    辰井「発明だ!」

    花岡「カプセルってふつうゴミになるんですが、バンダイさんでは捨てられるカプセルも商品の一部になるような工夫をされています」

    辰井「地球にもやさしい。ほかによく売れる商品はありますか?」

     

    「ネコです」

     

    辰井「やはり出ましたか、ネコ……! ネコはどの世界でもスーパーアイドルなんですね」

    花岡「ちなみに昔からの定番商品『スライム』はだいぶ減りました。今やどこの会社でも作れるので、希少性がなくなってしまったんです」

     

    ネットでもガチャガチャでも、ネコ人気は強い

     

    “業者側も「ガチャ」を回している”とは?

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    辰井裕紀
    辰井裕紀

    卓球と競馬と旅先のホテルで観る地方局のテレビ番組が好きなライター、番組リサーチャー。過去には『秘密のケンミンSHOW』を7年担当。

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