ジモコロ編集長の「ローカル行脚はラクじゃないよ」 新年の挨拶編 -地元と仕事-

2019.01.11

ジモコロ編集長の「ローカル行脚はラクじゃないよ」 新年の挨拶編 -地元と仕事-

ジモコロ編集長・徳谷柿次郎による連載コラム、今回のテーマは「地元と仕事」。「Uターン/Iターン」「地方創生」「まちづくり」「空き家・古民家活用」など、年々ローカルへの注目は高まる一方、地元の企業と若者を繋ぐ仕組みはまだ不十分。そこで若者に必要なのは「地元を面白がる解像度」? 編集長の新年の抱負も発表します!

人気記事

    新年あけましておめでとうございます。

    2019年は平成の残りカスみたいな数ヶ月を経て、新たな元号の新たな時代に突入してしまうようです。

     

    私自身は昭和から平成へ切り替わった事象自体あまり覚えていなくて、近所のコンビニに行くたびに「あれ、消費税3%の小銭取られる!」と驚きながら偽ビックリマンのアイスを食ってました。あの時代、偽物ばかりだったなぁ。

    ※1989年1月8日から平成へ。消費税3%は1989年4月から導入されています

     

    さて、ジモコロ編集長として今年の抱負を述べたいところなんですが、基本方針はこれまでと変わりません。

    とにかく足を使って一次情報を掴みにいく。流行り廃りに左右されることなく、ローカルに潜在している普遍的な価値観を掘り起こしていきたいです。高頻度の全国移動はもちろん大変なんですが、このスタイルで始めちゃったので後戻りできません。

     

    地元には「仕事」が不可欠

    ジモコロのテーマは引き続き「地元」と「仕事」。

     

    正直、2015年5月にスタートした頃に比べて、社会背景とローカルを取り巻く環境は大きく変わってきています。「Uターン」や「Iターン」の移住促進、国主導で進めている「地方創生」、「まちづくり」や「空き家・古民家活用」などなど……誰しもが一度はこうした言葉に触れているのではないでしょうか。

     

    これまでの取材で積み上げてきた現場の声は、当初の「地元」と「仕事」の印象よりも少しずつ、じわじわと弱くなっている印象すら受けます。あらゆる産業に触れて、土地を見る解像度が上がったからかもしれません。

     

    市民の生活を支えるローカルチェーン店や産業を支える中小企業も人手不足から倒産の危機にさらされ、新規雇用や人材確保の困難さに息も絶え絶えの様子……。長野に移り住んでから、よりそういった話を耳にするようになりました。

     

    人手不足を理由に経営が破綻したいわゆる“人手不足倒産”は年々増えていて、民間の信用調査会社によると去年は、106件に上りました。人口減少の加速で働き手はますます減っていくだけに、今後、状況はさらに厳しくなっていくことが予想されます。 

    引用:NHK NEWS WEB “人手不足倒産” 現場でなにが? 

     

    それこそ新年早々、家で契約しているウォーターサーバーの取扱会社から倒産のお知らせが入っていました。まさかの強制解約。まだボトルが2本残っているのに……。悲しい気持ちになったのは言うまでもありません。

     

    また他にも、その土地で確かな経済と技術を育んできた企業が若者に認知されていない問題があります。

     

    ジモコロ視点で好奇心をくすぐってくれるおもしろい会社はまだまだ強く残っているんですが、SNS含めたメディアの情報が偏っている影響なのか……はたまたローカル側の情報発信の弱さなのか……。

     

    企業と若者を繋ぐ雇用の隔たりは、モーゼの割った海のように大きく広がっているのかもしれません。情報と価値が集まる東京ですら人材不足が問題になっているわけで。

     

    「地元に仕事がないから、上京するしかない」

    全国の若者が都市に集中するのも無理がないんですよね…!

     

    地元をもっと面白がれる「解像度」を上げよう

    ジモコロは全国の「仕事」「文化」、そして「強いおじさん」を面白がる要素が強いメディアです。このあたりは昨年末に発行したばかりの「ジモコロフリーマガジン LPP02」に『日本全国スーパーおじさん列伝』と題したコラムを寄稿しています。

     

    最初のきっかけは静岡で見つけたタケノコ王こと風岡直宏さん。衝動のままにフリースタイル取材をして記事化。「これは絶対に面白い」と謎の自信をタケノコ王から受け取った結果、この記事はジモコロ初の大きなヒットとなりました。こんなにも気持ち良い体験は、ライター編集者人生で初めてだったのかもしれません。

     

    【伝説】クワガタとタケノコで大稼ぎ! 謎の農家「風岡直宏」はなぜフェラーリを買えたのか?

     

    その後タケノコ王は、地上波のバラエティ番組に出演し続けて武井壮とタイマンバトルを繰り広げるほどにスーパーおじさんロードを駆け上っていきました。

     

    地元を面白がる解像度を上げて取材/記事化を続けていけば、マスメディアに繋がる橋渡し役になれる。そんな小さなウェブメディアなりの価値に気づくことができました。

     

    「金がないなら稼げ」元ヒモのマッドサイエンティスト農家が語る人類改造計画

    わたしのパパはヨガきこり

    「俺たち人間は退化しとる」飛騨のウシ飼いが語る”土と内臓”の話

     

    また、この体験は地元=ローカルを見る物差しにもなっています。

    それこそ田舎に行けば行くほどに「こんな何もないところに…」と自虐&謙遜の言葉が地元の人から出がちです。しかし、この「何もないの呪い」にかかった若者たちにこそ必要なのが“地元を面白がれる解像度”なんじゃないかな、と。

     

    その解像度を上げるためには上京して東京の価値に触れることも必要でしょうし、いっそ海外を放浪して多様な文化に揉まれるのも大事でしょう。島国・日本のほっといたら思考がムラ化しちゃう傾向は、とにかく外に出ること、外の価値に触れることが有効だと思います。

     

     

    元々人類は生き永らえるために狩猟採集スタイルで、移り住みながら進化してきました。農業革命、産業革命のおかげで生活は豊かになり、同じ土地で暮らし続ける定住が基本となっています。

    ほら、ベストセラー書籍『サピエンス全史』にそんなことが書いてましたよね? 小麦やべーぜみたいな? こういう話めっちゃ好きなので使いたかったんです。

     

     

    地方も東京も、世界のどの土地であっても、必ずローカルは存在します。

     

    その人その人の生き方によって面白がれるポイントはあちこちに眠っていて、前述の解像度を上げれば「あ!もしかして!」と驚きと発見の連続性のビッグウェーブに乗れます。簡単に言うとタモリになれます。

    道を見て歴史に想いを馳せたり、土の色の変化に気づいたり、草なぎ剛にトークのイロハを教えたりできれば…きっと地元の面白い「仕事」に辿り着けるんじゃないでしょうか。

     

    というわけで、新年の抱負は「タモリになろう」に一応しときます。

     

    【連載一覧】

    「最後の土地は香川県」ローカル行脚はラクじゃないよ!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    徳谷柿次郎
    徳谷柿次郎

    ジモコロ編集長。大阪出身。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。

    徳谷柿次郎の記事をもっと見る

    同じカテゴリーから記事を探す

    オススメ記事

      こちらの記事もオススメ