東京マラソンの裏側に潜入! セイコータイミングチームの仕事を体験した

2019.05.22

東京マラソンの裏側に潜入! セイコータイミングチームの仕事を体験した

2019年、東京マラソンにエントリーし参加費を支払い、あのコースを駆け抜けた出場者たち……。いわば主役とも言えるランナーたちの陰で、タイマーを管理するセイコー(SEIKO)の『タイミングチーム』が活躍していたことをご存知でしたか? 彼らに密着して、東京マラソンの裏側をレポートします!

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    こんにちは、ライターのみくのしんです。ジモコロでは森羅万象、様々な職業を実際に体験してレポートする、『一日職業体験シリーズ』を書いております。

    例えば―

     

    冷凍倉庫での作業や……

     

    とんかつ屋での調理バイトなどです。

    さてさて、第9回となる今回は、一体何を体験するのカナ?

     

     

    ズドドドド……

     

    ドドドドド……!!!

     

    ※セイコーは東京マラソン2019のオフィシャルタイマーです

     

    今回は、東京マラソンを影で支えるセイコータイミングチームのお仕事を体験します! 冷凍倉庫やとんかつ屋から、急にマラソンの大会……? そんな文脈ある?

     

    っていうか、

    タイミングチームってなんぞやー!?

     

    「タイミングチームというのはですね……」

     

    「誰!?」

    「はじめまして。セイコーホールディングス株式会社の塚田です。タイミングチームというのは、陸上競技や水泳など、様々なスポーツの試合でタイムを計るという、大事な役割を担うメンバーの事です!

    「セイコーって時計を作ってるだけじゃなくて……その技術をスポーツの大会などに使用しているんですね」

    「その通りです。ほら、この写真をご覧ください」

     

     

    「セイコー製のタイマー!!!」

    「セイコータイミングチームは、このように国内外問わず、巨大なスポーツの大会を、影で支えているチームです。今回、みくのしんさんには東京マラソンで、タイミングチームとしてのお仕事を体験していただきます」

    「体験取材で、いきなりそんな国際的な大会を手伝うの、めちゃめちゃ緊張するな……それで、当日は何時集合でしょうか?」

    「いえ、準備がありますので前日の朝から2日間のお手伝いになります

    「2日間!?」

     

     

    東京マラソン前日|始業開始からお昼休みまで

    と言うわけで、 今日は3月2日。東京マラソン前日の朝9時半です。明日の東京マラソンは都庁前からスタートします

     

    「おはようございます。まずはこちらのウェアに着替えてください」

    「これは……!」

     

    といって手渡されたのは、セイコーのスタッフウェア。背中の「SEIKO」文字がキマってるゥ~!

     

    どうですかこれ~!? かっこいい~! 普通に販売してくれ~!

     

    「では、そろそろ車が来たので、早速作業のほうよろしくおねがいします!」

    「車?」

     

    ブゥウ〜ン……

     

    続々と車が入ってきて、巨大な駐車場はみるみる「計時車」と書かれた車でいっぱいに……

     

    「この大量の車は…?」

    「コレは明日の東京マラソンで活躍する『計時車』です。ランナーが走ってる最中にタイムを確認するための大きな時計(タイマー)がありまして。それを5km間隔で設置するんですが……」

    「え、マラソンって42.195kmあるから、最低でも8個か9個必要ってこと?」

    「はい。大きな時計をひとつひとつ現場に持っていって、その場で設置作業をすると、時間も手間もかかってしまいますよね? そこで、車の屋根に時計を乗せて現場に駐車することで……いわば車が時計の設置台になるわけですね

    「なるほど……。でも今のところ、屋根の上には時計なんか乗ってませんけど」

    「今から取り付けるので、その作業をみくのしんさんに手伝ってもらいます。タイマーは特注品なので、取扱いには気をつけてくださいね!」

     

    ちょうどスタッフの方が移動させてました。これがタイマー。テレビでよく見るやつですね。結構重そう……?

     

    「ちなみにタイマーの重さは約33kgあります」

    「びっくりした! 突然だれですか!」

    「はじめまして。東京マラソンにおけるタイミングチームのリーダー、内藤です」

     

    タイミングチームはプロジェクト毎にリーダーが立てられます。東京マラソンのリーダーはこちらの内藤さん。よろしくお願いします!

     

    「では、みくのしんさんに手伝ってもらう箇所を説明していきますね」

    「わ、わかりました!」

     

    「まず、タイマーを車にセットするための足を取り付けます」

    「ほうほう…」

     

    「足が付いたら車の上に乗せるんですが……傷つけないように毛布を敷いてから乗せてください。あとはしっかりとボルトで固定したら完了です」

    「余裕じゃん! じゃあさっそくタイマーを運びますね」

     

    「…って重っ! あのー! ちゃんと力入れてますか!? 重い重い重い!」

    「33kgを二人で持つので、単純計算したらひとり16kg程度なんですけどね。どこかにぶつけたら“終わり”だと思うと、実際以上に重く感じちゃいますよね

     

    「ここに足を取り付けるんですよね? コレはマジで簡単

    「めっちゃ手際良いですね」

    楽勝~! で、車の屋根に毛布を敷いて、その上にタイマーを乗せ……乗せ……?」

     

    重い重い重い重い重い!!

    「あ、ちなみにそのタイマーは特注品なので、車一台分くらいのお金がかかってます

     

    「今その話する!?怖い怖い怖い怖い怖い!

    車だってもちろん高価なの気をつけてくださいね

    「今 言うなって!!!」

     

     

     

     

    結局、他のスタッフの人に手伝ってもらいました。あぁ、怖かった

     

    「このタイマーってやけにデカイんですけど、エネルギー源は車のバッテリー? 1.21ジゴワットくらいの電流じゃないと電力が足りないのでは?」

    「見てみます?」

     

    パカッ

     

    え!?単一電池が8本!? こんなもんでいいの??

    「良いリアクションですね。そうです。単一電池8本で動いています。これでつけっぱなしにして丸一日くらい動きます」

    「こんなに大きい液晶にデジタル表示するんだから、半日くらいで電池が切れるんじゃないかと心配しちゃった」

    あ、このタイマーは液晶じゃないですよ? 数字もアナログです

    「え?」

     

    「筒のようなものの前面が黄色、背面が黒で塗られていまして、それがくるっと回ることで数字を表示しているんです」

    「うわ!本当だ!普通にデジタルかと思っていました」

    液晶だと正面に近い角度じゃないと見にくいし、日差しによって視認性が変わってくるので、あえてアナログなんですよ」

    「なるほど~」

     

    すべての車にタイマーをセットした状態。圧巻!

     

    「本番はすべての時計が同期され、誤差なく時間が表示されます」

    「コンマ1秒すらズレちゃダメなんでしょうね。めちゃシビアだな……」

    「さて、スタート地点(新宿都庁付近)での作業は終わったんで、今度はフィニッシュ(ゴール)地点(東京駅付近)に移動しますね。その前に、そろそろお昼なので、ごはんを食べましょうか」

    「もうそんな時間なんですね!やったー!」

     

    お昼休み

    お昼はタイミングチームのみなさんと一緒にごはんを食べました。

    せっかくだから色々聞いてみましょう!

     

    「午前中は意外と真面目にタイマーを取り付けてくれてましたね。ライターさんなので、もっとおもしろいことをしてくれるのかと思ってましたが」

    「それは言わないで」

    「いや、ちゃんと役立ってくれて助かりました」

    「タイミングチームって何人くらい在籍してるんですか?」

    「今日いない人を含めて10人くらいのメンバーでやってますね。コミュニケーションが一番大事なので、少人数で動いてるんです」

    「ということは、タイミングチームに入るのって、かなり狭き門なんですかね?」

    「他の部署に比べてテレビに露出することもありますし、世界陸上などで海外に行って仕事することもあるので、やりがいの面でもかなり人気の部署です」

    「では、ここにいる方は、みんなエリートって事か……」

    「意外と泥臭い仕事なので、エリートって感じではないですけどね~」

     

    「とか言いながらアニメのキャラみたいに照れるじゃないですか。ちなみに試合や大会が無い時はどんな仕事をしてるんですか? みんなで釣りとかしてます?」

    「仕事中に釣りはしません。試合がない時は、会社で企画や開発などをしていますが……正直、いつもどこかで大会があるので。暇な時ってあんまりないですね」

    「忙しいからもう辞めたいってことはないんですか?」

    「いえいえ、スポーツ史に永遠に残る記録に関われるこの仕事は、とてもやりがいがあって大好きです」

    「なんてちゃんとした人間だ……。僕なんて、毎日ただ漫然とポケモンGOをやってるだけなのに」

     

    午後の仕事~(前日の)業務終了まで

    午後からは東京マラソンのフィニッシュ地点、東京駅で作業します

     

    余談ですが、東京駅のこの時計、セイコー製だそうです。他にもテレビの時刻表示なんかもセイコーの仕事らしいです。すごっ

     

    「フィニッシュ地点といえば、東京マラソンを走りきった人しかたどり着けないエリアですよね。僕みたいなモンが何をするんですか?」

    「とりあえずセイコーテントに案内します。中にある機材の説明をしましょう」

     

    これがセイコーのテント。ここでスタッフが様々な作業をします

     

    何やら重要そうな機械が……

     

    昔のSF映画のスーパーコンピューターみたいに、“何か”が印字された紙がジジジ……と出てきました

     

    「これ何ですか? “能力者”のエネルギーを分析中?」

    「違います。フィニッシュ地点やその他のタイマーを制御するためのものです。いわば東京マラソンにおけるタイミングチームの心臓ですね。これをお見せしたかったんです」

    「たくさんのタイマーを制御しているので、この機械が壊れると、タイミングチームにとっては本当に致命的なんです。万が一を考え、予備としてもう一台用意してます。それくらいものすごく大事な機械で……」

     

    トゥクトゥク!イェイイェイ!

    「遊ばないで!」

     

    というところで、一日目の業務終了ー! お疲れ様でーす!

    ちなみにこの巨大なタイマー(車に乗せてたやつより遥かにデカい)は、通称『かまぼこ』と呼ばれています。

    ランナーたちはこれを見てラストスパートをかけたりするそうです。家が一軒建つくらいの値段なんだって……すげっ

     

    「前日の準備はここで終了です。お疲れ様でした! では明日、朝5時に集合でお願いしますね」

    「はい! ……え、5時!? 朝の!?

     

     

    東京マラソン本番当日!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    みくのしん
    みくのしん

    本名、高杉 未来之進(たかすぎ みくのしん)と申します。それ以外の特徴は1mmもありません。1990年生まれ東京育ち、将来は大きい声を出しても良い部屋に住むのが夢です。ご検討の程お願いします。

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