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履歴書の「配偶者 有・無」は何を基準に書けばいいのか、税法上の「同一生計配偶者」「控除対象配偶者」とはどう違うのか——書き始めてから迷う人は少なくありません。
結論から言えば、履歴書の「配偶者 有・無」は民法上の婚姻の有無をベースにシンプルに記入し、税法上の区分は家計の実態や合計所得金額をもとに別途判断するものと整理しておくと、迷いが少なくなります。この記事では、配偶者欄が設けられている理由から、事実婚・別居のケース、扶養家族欄との違いまでを順に整理して解説します。
多くの履歴書には「配偶者 有・無」「配偶者の扶養義務 有・無」などの欄があります。ここでいう「配偶者の有無」は、主に次のような目的で企業側が確認しています。
したがって、「配偶者 有・無」の記入は、税金の「配偶者控除」や「控除対象配偶者」かどうかを直接聞いているわけではありません。まずは「民法上の意味で配偶者がいるかどうか」を端的に答えるのが基本です。
また、履歴書の配偶者欄は選考での差別的な扱いにつながらないように配慮すべき情報でもあります。厚生労働省は「公正な採用選考」の考え方として、本人の適性・能力に関係のない事項で採否を判断しないよう企業に求めています。配偶者の有無だけで合否を決めてはならず、あくまで参考情報という位置づけです。
一般的な市販の履歴書やJIS規格に準じた様式では、配偶者に関して次のような基本項目が設けられていることが多いです。
ここで「配偶者 有・無」は、原則として婚姻届を出しているかどうかを基準に記入します。
一方、「配偶者の扶養義務 有・無」は、税金や社会保険上の「配偶者扶養」に入っているかどうかだけではなく、生活費を主に負担しているかどうかの実態も含めて判断されることがあります。
「扶養家族(配偶者を除く)」や「扶養家族数」は、税法上や健康保険上の扶養関係にある子ども・両親などをどのくらい抱えているかを把握するための欄であり、「配偶者の有無」とは目的が少し異なります。詳細は後半で整理します。
最近は、個人情報保護の観点から、履歴書の様式自体が多様化しています。とくに押さえておきたいのが、厚生労働省が令和3年4月に公表した「新たな履歴書の様式例」です。この様式例では、応募者のプライバシーの要素が高い情報であることを踏まえ、「配偶者」「配偶者の扶養義務」「扶養家族数(配偶者を除く)」の3つの欄が設けられていません。
企業から特に指定がなければ、この様式を使うことで記入自体が不要になります。このほか、次のようなケースも増えています。
このような新様式の場合、「配偶者の有無」を無理に書き足す必要はありません。なお、従来のJIS規格に準じた様式を使うこと自体は今後も問題ありません。企業が独自に用意したフォーマットやエントリーフォームを使う場合は、その指示に従って記入することが前提になります。
なお、様式に配偶者欄がないからといって、「配偶者がいる事実を隠した」と評価されることは通常ありません。求められていない情報は書かなくて構いません。
履歴書の「配偶者 有・無」を考えるとき、出発点になるのが民法上の配偶者の定義です。
民法上、「配偶者」とは、婚姻届が受理されている法律上の夫または妻を指します。恋人・同棲相手・婚約者は、婚姻届を出していない限り、民法上の配偶者ではありません。
このため、履歴書の配偶者欄は、原則として以下のように判断します。
よくある質問として、「離婚・死別の場合、履歴書では『配偶者 無』でいい?」という点がありますが、現在の時点で法律上の配偶者がいなければ『無』と記入します。
過去の結婚歴(離婚・死別)は、履歴書の「本人希望欄」や職務経歴書に書く必要はなく、面接で聞かれた場合に簡潔に答えれば十分です。
「内縁」「事実婚」と呼ばれる関係は、婚姻届を出していないものの、社会的には夫婦同然の共同生活を営んでいる状態を指します。
内縁・事実婚は、民法上の「配偶者」には含まれません。一方で、裁判例や社会保険の運用上は、いくつかの場面で「配偶者に準ずるもの」と扱われることがあります。そのため、「内縁・事実婚は履歴書で『配偶者あり』になる?」という疑問が生じがちです。
原則として、履歴書の「配偶者 有・無」は民法上の婚姻を前提としていますから、
という形が最も無難です。企業側が特別な指示(「事実婚も配偶者として記入してください」など)を出している場合は、その指示に従います。
「配偶者」という言葉は、税法・社会保険の世界では少し違う意味で使われています。代表的なものは次のとおりです。
これらはいずれも、「民法上の配偶者」であることが大前提です。そのうえで、
といった条件を満たすかどうかで、税金や社会保険の優遇の有無が決まります。
つまり、「配偶者→同一生計配偶者→控除対象配偶者」というように、民法上の配偶者のなかで、さらに条件を満たした人だけが「控除対象」として扱われるイメージです。
履歴書では、こうした税法上・社会保険上の区分まで細かく聞いているわけではなく、「法律上の配偶者がいるかどうか」をベースに記入する、という整理をしておくと混乱しにくくなります。
「同一生計配偶者」とは、民法上の配偶者であって、かつ生活費を同じ財布から賄っている関係を指します。国税庁の説明では、「同じ家計で暮らし、日常の生活費を共にしている状態」といった趣旨で解説されます。
ポイントは次の2つです。
「同一生計配偶者の所得58万円以下とは?」という表現を見かけることがありますが、この58万円は令和7年分の所得税の基準です。令和8年分以後は62万円に引き上げられています。また住民税は所得税より1年遅れで適用されるため、同じ「58万円」でも年分と税目によって意味が変わります。
令和8年分以後の所得税では、控除対象配偶者や配偶者特別控除について、
などの要件がよく用いられますが、毎年の税制改正で変わる可能性があるため、最新の数字は必ず国税庁の資料で確認する必要があります。
「『同一生計配偶者』とは同居が条件?」と疑問に思う方も多いところです。実は、「同一生計」であるかどうかは必ずしも同居が絶対条件ではありません。
別居であっても、次のような場合には「同一生計」と認められる可能性があります。
一方で、同居していても、完全に家計が分かれている(生活費を一切出し合っていない)ような極端なケースでは、「同一生計」とは言いにくくなります。
税法・社会保険の判断では、「住所が同じかどうか」だけでなく、
といった実態が重視されます。
履歴書の配偶者欄を記入するときに、「同一生計かどうか」「扶養に入っているかどうか」をどこまで考慮すべきか、迷うことがあります。
ここでのポイントは次のとおりです。
つまり、履歴書の「配偶者の有無」と「扶養義務」の欄は別物です。
たとえば、
といった場合、「配偶者 有」としつつ、「扶養義務 無」とすることも考えられます。
迷う場合は、選考に大きく影響しない範囲の事項ですので、面接時に「記入の前提」を説明するつもりで素直に書くのがよいでしょう。
税金の世界でよく出てくる「控除対象配偶者」とは、所得税法上、配偶者控除の適用を受けることができる配偶者を意味します。
控除対象配偶者になるには、大まかに次の要件があります(内容はイメージであり、細部は国税庁で要確認)。
この「一定額以下」の「○○円以下」という上限は、税制改正によって変わることがあります。
また、住民税は所得税より1年遅れで適用されるため、同じ年に参照する数字が所得税と住民税で食い違うことがあります。「同一生計配偶者の所得58万円以下」という説明を見かけた場合は、それが何年分の、どちらの税の基準なのかを必ず確認してください。
必ず、最新の「所得税」「住民税」それぞれの基準を国税庁や自治体の資料で確認することが重要です。
「控除対象配偶者」と「配偶者控除」は混同されがちですが、次のように整理できます。
さらに、配偶者の所得が一定額を超えた場合には、「配偶者特別控除」が適用されることがあります。これは、合計所得金額が62万円超133万円以下(給与収入のみなら136万円超207万円以下)の配偶者を持つ場合に、段階的に控除額を減らしながら税負担を軽減する制度です。
つまり、
という階層構造になっている、というふうに整理するとわかりやすくなります。
税法上の要件は頻繁に変わるため、「ネットに書いてあったから」「昔の知識で覚えているから」という理由だけで判断するのは危険です。
国税庁のサイトでは、最新の以下の情報が公開されています。
履歴書の記入自体は、ここまで細かい税法の話を直接反映する必要はありませんが、
といった疑問を整理するうえで、国税庁の基準は必ず一度は確認しておくと安心です。
特に転職で年収が大きく変わる場合は、自分や配偶者の税負担・社会保険料・配偶者控除の有無がどう変わるかを、事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。
まず、もっともシンプルなケースである独身の場合の記入です。
と書きます。
履歴書は現在の状況を書く書類なので、「離婚歴があるから『有』では?」と考える必要はありません。また、「近々入籍予定」「婚約中」といった状態でも、現時点で婚姻届を提出していなければ「配偶者 無」です。
どうしても伝えておきたい事情(入籍に伴い遠方へ転居予定など)がある場合は、「本人希望記入欄」などに簡潔に補足します。
内縁・事実婚のカップルが増えている中で、「履歴書の配偶者欄をどう書けばいいか」は迷いやすいポイントです。
基本的な考え方は次のとおりです。
たとえば、
配偶者:無
備考:10年以上同居している事実婚のパートナーあり。生活費は折半。
といった書き方をしておけば、法律上は独身である一方で、実態としては配偶者に近い存在がいることも正確に伝えられます。
一方、健康保険・厚生年金では、一定の条件のもとで事実婚の相手を「被扶養配偶者」として認めるケースもあります。そのため、会社側が「社会保険の手続き上、事実婚の配偶者がいるかどうか」を知りたいという意図で、あえて詳細をヒアリングする場合もあります。
応募要項やエントリーフォームに「事実婚の方はその旨を記載してください」などの指示がある場合は、必ずそのとおりに記入しましょう。
履歴書には、配偶者欄と並んで「扶養家族(配偶者を除く)」という項目があることが多く、「配偶者欄との違い」がよくわからないという声もあります。両者の違いは、次のように整理できます。
つまり、「配偶者の有無」と「扶養家族の有無・人数」は別に考えるべきものです。
さらに、「履歴書の『配偶者の有無』と『扶養義務』は別?」という疑問について整理すると、
といった書き方になります。
特に、転職で年収が上がる場合や、結婚・出産とタイミングが重なる場合には、
という点が、採用後の手続きに影響してきます。
履歴書の段階では完璧に整理できていなくても構いませんが、「現時点の事実」に基づいて正直に「配偶者 有・無」「扶養家族 人数」を記入しておけば、入社時に人事担当者と具体的に確認・調整していくことができます。
まとめると、履歴書の「配偶者 有・無」は民法上の婚姻の有無をベースにシンプルに記入し、税法上の「同一生計配偶者」「控除対象配偶者」や「配偶者控除・配偶者特別控除」は、家計の実態や合計所得金額をもとに、国税庁の基準に従って別途判断するものと整理しておくと、迷いが少なくなります。
(イーアイデム編集チーム)