こんにちは、ライターのむらやまあきです。

先日、顎が痛くて近所の歯医者さんで問診票を書いていたとき、

 

え、このボールペンめちゃめちゃ書きやすいんだけど……

 

と、ちょっとした衝撃がありました。

思わず受付のお姉さんに「これ、すごく書きやすいですね」と言うと、「どこにでも売ってるやつですよ?」とのこと。

 

もしや、優秀な文具ってすぐそばにあるのに、わたしたちはただ見逃しているだけなのか……?!

 

ということで、メディアにも引っ張りだこの文具ソムリエール・菅未里さんに、近所の文具店で買える「実は優秀な文具」を教えていただきました~!

 

話を聞いた人:菅 未里さん

文具ソムリエール。大型専門店の文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具専門家として独立。文房具を紹介するサイト「STATIONERY RESTAURANT」を運営。

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なお、記事後半では誰もが抱える文具のお悩みにもお答えいただきました!

今回の目次

▼プロが選ぶ「どこでも買えるおすすめ文具」

【ボールペン】Vコーンノック(パイロット)

【シャープペン】デルガードER(ゼブラ)

【カッター】マグネタッチ(オルファ)

【ダンボール開梱用カッター】カイコーン(オルファ)

【ハサミ】サクサポシェ(コクヨ)

【修正テープ】ホワイパーパル(PLUS)

【ノート】大人キャンパスシリーズ(コクヨ)

 

▼文具のお悩み一覧

・自分に合うボールペンってどう選んだらいいの?

・左ききが快適に書けるボールペンは?

・シャーペンの消しゴム、逆に汚くなる問題

・万年筆、ずっと憧れてるけど手が出せない

 

では、さっそくお話を聞いてみましょう!

 

「今日はよろしくお願いします。おしゃれ文具店とか、ここでしか買えませんみたいなやつじゃなくて、近所の文具屋さんでも手に入るおすすめ文具を教えてください!」

「わかりました! 文具好きの間では常識だけど、一般的にはあまり知られていない優秀な文具ってたくさんあるので、お任せください!」

「頼もしすぎる!」

 

どこにでも売っている実は優れた文具

【ボールペン】Vコーンノック(パイロット)

 

「ではまずボールペンから。水性ボールペンの『Vコーンノック』です。すごくさらさらとした軽い書き味が特徴で、インクがかすれず最後まで書けます」

「見た目はめっちゃふつうですね。これは見逃しちゃいそう」

「そう、パッと見は目立つデザインではないんですよね(笑)。どこにでも売ってますし。でも文具好きの間ではよく知られている存在です」

「何か特徴があるとか……?」

「ちょっとマニアックな話ですが、水性ボールペンのインクは乾燥に弱いため”キャップ式”が基本なんです。Vコーンも昔はそうでしたが、数年前に待望の“ノック式”が誕生しました」

「へ~! 水性ボールペン界ではちょっとした革命だったんですね。ちなみに、よく水性とか油性って聞きますけど、それによって何が変わるのでしょうか」

インクの種類で筆記抵抗(紙に書いたときの感覚)がかなり変わってきます。水性が一番さらさらと軽くて、ゲルインクが中間でなめらか、油性は硬いのでかなりぐーっと沈み込むような書き心地になりますね」

「今までインクの種類でボールペンを選んだことなかった……」

「書き心地の良さには筆圧や用途も関わってきます。自分に合ったボールペンの選び方は、またのちほど解説しますね」

「筆圧も関係あるんですね!? お願いします!」

 

【シャープペン】デルガードER(ゼブラ)

 

「続いてシャープペンですね。『デルガードER』といって、見た目はいたって普通なんですけど、ひっくり返すと消しゴムがひゅっと勝手に出てきます。消しゴムにキャップがついていないので、サッと文字を消せて便利ですよ」

「シャーペンの消しゴムのキャップってすぐ失くすんですよね~。たしかに、これはすごく合理的」

「あとは、芯が折れそうになるとペン先の金属部分が芯をガードする『芯折れ防止機能』が付いているので、筆圧が強めな人にもおすすめですね」

「高校生のとき、同じクラスの男子が筆圧が強すぎて、常にシャーペンの芯2ケース持ちしてたな……。いつか彼に再会することがあったら、教えてあげようと思います」

 

【カッター】マグネタッチ(オルファ)

 

「カッターのおすすめはオルファの『マグネタッチ』です。日常生活の中で、ちょっとだけ何かを切りたいときってあるじゃないですか。洋服のタグとかお菓子の袋とか、『どこからでも切れます』って書いてあるのに切れない個包装とか」

「うわ~~あるある~~~!」

「そんなとき、こういうプチサイズのカッターがあるとすごく使い勝手がいいんです。マグネットが内蔵されているので、わたしは冷蔵庫にペタッと貼り付けてます」

「レトロなデザインも可愛いですね~。コロナ禍でネット通販する機会が増えちゃったので、ダンボール開けるのにも使えそう」

「ダンボールを開けるのがメインなら、さらにおすすめの商品がありますよ。オルファの『カイコーン』という商品です」

 

 

「何これ……カッターなんですか? どこで何を切るの……」

「先の三角になっている部分を、ダンボールを留めてるガムテープの真ん中にグサッと刺して、ビーッと引くと簡単に開けられちゃいます。金属の刃じゃないから中身を傷つけにくくて安心!

「たしかに普通のカッター(金属の刃)だと、中身に当たらないようにかなり気を使いますね。両側の羽根みたいな部分は何なんですか? 飾り?」

「飾りじゃないです。羽根の部分に梱包ヒモを引っ掛けるとプツッと簡単に切れるんですよ」

「一家に一つあれば困らないですね。買います」

 

【ハサミ】サクサポシェ(コクヨ)

 

「続いて紹介するのはこちらのハサミです。コクヨの『サクサポシェ』

「これハサミなんですか……?」

「コンパクトばさみってたくさん種類あるんですが、余計なアクションが少なくて便利なのがこれですね。キャップの取り外しも必要なくて、バネだけでシャキシャキって切れてスマートです」

 

「豆みたいなサイズのハサミもあるけど、結局小さすぎると使いづらいんですよね。でも柄がしっかりあると邪魔なときもあって。見た目も好きなのでこれを使ってます。カラーも豊富なんですよ!」

「フォルムも丸みがあってかわいいですね。これならペンケースに入れても邪魔になりにくそう!」

 

【修正テープ】ホワイパーパル(PLUS)

 

「『PLUS』さんの文具はわたしもお気に入りのものが多いのですが、修正テープは特におすすめです。修正テープって、昔に比べて結構進化してるんですよ」

「修正テープに関しては若干の苦手意識がありました。修正テープって左から右にぴーって引きながら消すから、該当箇所を通り越して消しすぎちゃった!ってことになりがちじゃないですか」

「これ、まさにそういう人にうってつけなんですよ。通常通り左から右に引いて消すこともできるし、くるっと反転させることで、右から左に押しながら消すこともできるんです。文字の最後から消せば、通り越すのを防げます」

「これもしかして左ききの人にとっても革命的な修正テープなのでは……? わたしは左ききなので今まで修正テープってすごく使いにくかったんですが、反転させてどちらでも使えるなら、左手でも問題なく使える!」

 

「そうなんです! 今まで苦労していた左ききの方にもおすすめですよ。さらに、テープが紙に密着しやすくて、削れにくい構造になっていて機能面でも強力です」

「修正テープはここまで来ていたのか……。これは完全に買いですね」

 

【ノート】大人キャンパスシリーズ(コクヨ)

 

「続いてはこちらのノートを紹介しましょう」

「うわ、キャンパスノート懐かしい! 学生の頃ずっと使ってました」

「キャンパスノートってやっぱり学生時代に使うものというイメージですよね。でも実は数年前に大人向けのシリーズが出たんですよ。それがこちらですね」

「大人向けって何がどう違うんだ……?」

「通常のキャンパスノートは罫線ですが、この大人シリーズは方眼罫やドット罫、無地などがあって、さまざまなシーンで使い分けられるようになっているんです」

「なるほど。たしかに、自由にアイデアを書き留めるときは無地がいいし、図解するときは方眼罫が便利だったりしますもんね」

キャンパスノートって実は優秀で、紙がいいからほとんどの筆記用具と相性が良いんです。学生の頃だって、ボールペンにシャーペン、蛍光ペンと、いろんな種類のペンで書いても裏に滲んだりしなかったじゃないですか」

「言われてみればたしかに!」

「だから紙の品質は保証済みだし、見た目もシックな感じになっているので、ぜひサラリーマンの方たちにも使ってみてほしいですね。しかも安い!」

 

教えてソムリエール! 文具にまつわるお悩み相談会

「というわけで、おすすめの文具をいくつか紹介して頂きました。ではここからは、周りの人たちから集めた『文具にまつわるお悩み』を相談させてください」

「おまかせください!」

 

▼お悩み一覧

・自分に合うボールペンってどう選んだらいいの?

・左ききが快適に書けるボールペンは?

・シャーペンの消しゴム、逆に汚くなる問題

・万年筆、ずっと憧れてるけど手が出せない

 

結局、自分に合うボールペンってどう選んだらいいの?

一番大事なのは、インクとその人の相性です。そこには筆圧用途が関わってきます。改めて、インクの特徴を整理しますね」

 

 

▼油性インク

しっかりとした書き心地、滑りにくい

インクが硬めなので、出足が悪いことも

こんな筆圧の人におすすめ:筆圧強めの人

▼低粘度油性インク

通常の油性インクよりもやわらかくてなめらかな書き心地

筆圧が強い人は滑りやすい

こんな筆圧の人におすすめ:強くも弱くもない中間タイプ

代表的な商品:ジェットストリーム(三菱鉛筆)

 

▼ゲルインク

今のボールペンの主流、なめらかな書き心地、インクの発色がいい

油性に比べるとインクの乾きが遅い

筆圧が強い人は滑りやすい

こんな筆圧の人におすすめ:強くも弱くもない中間タイプ

代表的な商品:サラサクリップ(ゼブラ)

 

▼水性インク

さらさらとした軽い書き心地、腱鞘炎の人も使いやすい

インクが広がりやすいので、和紙や色紙、手帳などの細かい字を書くのには不向き

こんな筆圧の人におすすめ:筆圧弱めの人

代表的な商品:Vコーンノック(パイロット)

 

「筆圧で考えると、【強】油性>低粘度油性>ゲル>水性【弱】って感じですね」

そのボールペンが水性か油性かって、どこで判断したらいいんでしょうか」

「基本的には商品にも書いてありますし、『東急ハンズ』さんや『LOFT』さんなどの大型店舗だと、インクの種類別に棚が分かれてたりします」

「知らなかった……! 筆圧以外だとどういう要素を考えればいいですか?」

“用途”ですね。わたしの場合、細かい文字を書くことが多いので、水性だとインクがじわ〜っと広がってしまいやすい。だからゲルインキボールペンを一番よく使います」

「自分がよく使うシーンも考えたほうがいいと。ちなみにペンを選ぶ要素のひとつとして、値段って重要ですか?

「高価なものはペン本体の素材が良かったり、デザインが良かったり、その人のスタイルを表す宝物としてとっても素敵なのですが……今回は普段使いの文具ということなので、あまり考えなくていいのではないでしょうか」

「高ければ高いほど良いってわけではない?」

「国内メーカーの文具は本当にクオリティが高くて、1本100円台のペンでもすごくいいものがたくさんあります。気軽に買ってガシガシ使ってください!」

「なるほど。あとは店頭で試し書きをして、自分に合うかどうか確認したらいいんですね。素朴な疑問なんですが、試し書きのときって何を書けばいいんですか? わたしは『あああ』とか、丸とか四角とか書いてるんですけど」

おすすめは自分の名前です。一番よく書く文字ですから。ただプライバシーがだだ洩れになってしまうので(笑)、めくって捨てられるタイプの紙ではない場合は、『永』という漢字を書いてみてください。とめ、はね、はらいが全て入っています」

 

左ききが快適に書けるボールペンって存在する?

「すみません、これはわたしの悩みですね。左手で左から右に書いていくと、どうしても“まだ乾いてないインク”をこすって、手が汚れてしまいがちなんです」

「左ききの方、文字を書くときすごく気を遣うって言いますよね。『サラサドライ』(ゼブラ)は比較的使いやすいんじゃないかなと思います」

 

「これはどこが良いんですか?」

「文字が濃くはっきり書けてインクの乾きも早いので、手にインクがついてしまうことが少ないです。左ききでも使いやすいんじゃないかな」

「試してみます!」

 

シャーペンの消しゴム、逆に汚くなる問題

「これもあるあるな気がしますが、どうでしょうか」

「実は、最近のシャープペンシルの消しゴムはサイズも大きくなっていて、わりと消えやすいんですよ。トンボ『MONO』のシャープペンとかいいですよ」

 

 

「えー! トンボってことは、この消しゴムはあのMONOってことですか?」

「はい。誰もが知ってるあの消しゴム、MONOを作っているトンボさんです」

 

 

「『モノグラフ』には、約2.2cmくらいのMONO品質の消しゴムが搭載されています。大きさと長さもしっかりしていて使いやすいので、おすすめです」

「たしかに、MONO品質の消しゴムと聞くと、信頼感ありますね……。かわいらしいパステルカラーやクリアカラーも出ていて、シャープペンを新調したくなりました!」

 

万年筆、ずっと憧れてるけど手が出せない

「初めてであれば、筆記具メーカーのお手頃な価格のものから試すといいと思います。『プレピー』(プラチナ万年筆)は、とにかくお値段が安い! 初心者の方におすすめです」

 

 

「わ、ポップで可愛い。これも万年筆なんですね」

「カラーバリエーションが豊富で可愛らしいのはもちろんですが、この値段でちゃんと高い機能も備えています

「万年筆ってどんなものかなって人にはうってつけですね」

「キャップをきちんと閉めておけば、1年間使わなくてもインクが乾かない『スリップシール機構』を搭載。洗浄の回数が少なくてすむので、お手入れもラクです」

「お手入れがラクなのは、かなりポイント高いですね。これで、しばらく会えていない人にお手紙とか書きたいな~」

 


 

「おかげさまで、これから生活が豊かになりそうです」

「実は文具って、机の上でだけ役立つものじゃないんですよね。いい文具を知っていると、キッチンや玄関などいろんなところが便利になりますよ!」

「『文具は机の上でだけ役立つものじゃない』って名言ですね……。菅さん、本日はありがとうございました!」

実際に近所の文具店に行ってみた

取材後、さっそく近所にある昔ながらの文具屋さんを訪れてみました。

菅さんにおすすめしていただいた商品を探します!

 

お、さっそくコンパクトハサミの『サクサポシェ』みっけ! 小さい文具店だったので取り扱ってるカラーは少なめでしたが(本来は6色あります)、ちょうど欲しい色がありました。

 

『大人キャンパスシリーズ』も発見! 見た目はシックだけど、やっぱり馴染み深さがあっていいなあ。

ちゃんとボールペンの試し書きもしてきました。自分でめくれるタイプの紙だったので、遠慮なく自分の名前で。

あんまり意識していなかったけれど、インクの種類やメーカーによって書き味が本当に違うんだなあ。

 

結論

商品の選び方や注目すべきポイントを知ったうえで文具店に来てみると、めちゃめちゃ楽しいです。昔ながらの小さな文具店でも、安くて良い文具は絶対に見つかる!

それではまたお会いしましょう!

 

(おしまい)