新しい元号は、すでに街が知っているのではないか

2018.08.30

新しい元号は、すでに街が知っているのではないか

普段「サンポー」というメディアで、散歩の記事を発信しているおじさんトリオ(ヤスノリ、村中貴士、ぜつ)。街中にある言葉から、次の元号としてふさわしい(?)ものを探し出します。果たして、どんな漢字が選ばれるのか?

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    いよいよ来年の5月、新しい元号が決まりますね。現行憲法下ではじめて天皇の生前退位・改元が行われる今回は重苦しい空気も無く、巷では新元号の予想ブームに沸いています。

     

    故事成語、良い意味を持つ字、こじつけなど、みんな思い思いの方法で元号を考えているようですが……。

     

    さて、僕たちは散歩おじさん。いつでも答えは街が教えてくれました。新しい元号はすでに街が知っているのではないか、そう睨んでいるのです。

    街には文字がたくさんあります。この中に、次の元号の種が紛れていてもおかしくありません。さあ、街に繰り出して、次の元号を探そう!

     

    平成最後の夏、池袋にある帝京平成大学の前で待ち合わせしました。新しい響きのこの大学も、来年には前年代のものに……。

     

    こんにちは、散歩おじさんトリオです。いつも「サンポー」というメディアで、ふわっとした散歩記事を書いています。

    この記事を書いているのは、猛暑にもかかわらずスーツを着てきた村中(写真左)です。

     

    【登場人物】

     元号の発表といえば小渕恵三さん。今日は小渕スタイルでがんばるぞ。

     街にツッコミを入れるのが得意なおじさん。

     本業はタクシー運転手。

     

    元号を探す散歩、スタート

    「というわけで、平成も終わりますので、今日は新しい元号を散歩で決めます

    「決めます?」

    「平成といえばいろいろありましたね。Hey! Say! JUMPとか」

    「頭にそれ出てきます? 村中さんが平成で一番印象に残ってるの、それ?」

    「あの、元号を探すにしても、知識が僕らほぼゼロなので、せめて一般人レベルに引き上げていただきたいんですけど。そもそも元号って、いつからあるんですかね?」

    元号は大化の改新があった645年からスタート。なので、いちばん最初の元号は『大化』です。実は奈良時代に、『天平感宝』『神護景雲』など漢字4文字の元号が5回あったんですよ』

    「へー、4文字の元号もアリ……」

    「近代の元号では『明治、大正、昭和、平成』を『M、T、S、H』とアルファベット表記することが多いので、マ行、タ行、サ行、ハ行以外の言葉が選ばれるのではないか、と予想されてます。あと、基本的にはポジティブな漢字が使われるはず

    「死とか悪とか、ネガティブな漢字は選ばれない、と」

    「過去の元号を調べると、何回も同じ漢字が使われています。永、元、天、治あたりが多い」

    「そういうパターンが分かってるなら、もうやってるかもしれないけど、AIに選ばせたらいいんじゃないですか」

    「昭和生まれが一番多いから、数の論理でもう1回、昭和にするとか。『第二昭和』とかどう?

    「あー、昭和に戻りたいみたいなこと言ってる人多いから、良いんじゃないですか。本当に昭和に戻ったらどんな顔するだろうな」

    「戻ったら戻ったで文句言う人も出てくるでしょうね。そういうことじゃない! みたいな」

    「実際、そういうことじゃないんでしょうけどね」

     

    そんなこんなで、さっそく元号探し散歩のスタートです。ポジティブで、こうなったらいいな、という言葉を探していきます。

     

    「文字がいっぱいありますね」

    「よく言われることだけど、日本の街は文字が多いですよね。しかも、禁止とか通報とか、ネガティブなワードが目立つな」

     

    「悪いことしてないのにこんなのばっかり目に入ってくると、気が滅入ってきますね」

    上昇とか充足とか無限ピーマンとか、もっとそういうの貼っておいたら景気よくなる気がする

     

    「そういうところでいくと、『地金』って良い言葉じゃないですか?」

    「じがね? じきん?」

    「延べ棒のような金の塊のことですね」

    「めっちゃいいじゃないですか。『地金元年』。んで、年の数だけ延べ棒積んでいきたいですよね。『つみたてNISA』ってそんな感じのやつでしょ?

    「違うと思う」

     

    以降は各自、元号候補を探しました。30分後、“記者会見会場” へ集合です。

     

    さて、ここからは元号発表タイム。各自撮影してきた写真の中から、良いと思った元号を「小渕恵三スタイル」で発表します。

     

    「お、なんとなく見覚えのある場面だ」

    「発表前にちゃんと上下を確認しているところが『小渕萌えポイント』なんですよ。これがやりたくて今回の企画を考えたといっても過言ではない

    「細かすぎる」

     

    元号発表タイム:1回戦

    「新しい元号は、『美久(みく)』です」

    「おお……なんか、それっぽい。これ、元ネタは何ですか?」

    「東池袋の酒場横丁、美久仁小路から2文字取りました。読みは『みくにこうじ』です」

     

    「『久』は、過去の元号でも何度か使われてますね」

    「AKBに一人はいそうな名前だ」(※調べたらHKT48にいました)

    「まさか美久仁小路も自分たちが元号になるとは思ってないですよ。良かったですね」

    「決まってないですけどね」

    「そうだった! フェイクニュースだった! なんか、スーツの人がもったいぶって文字を出したから、元号決まった感覚に襲われる

    「美久仁小路、もうパーティーの準備はじめちゃってますよ?」

     

    「新しい元号は、『絶妙』です。ラーメン屋さんの看板『しびれの絶妙ハーモニー』から」

     

    これも美久仁小路近くの油そば屋さん

     

    「まあポジティブといえばポジティブ」

    「『妙』は『すばらしい』みたいな意味ですよね。女性の名前に使われたり」

    「どんな時代になるんですかね?」

    「ほどよい幸せを手に入れられる時代。一番いいんじゃないですか」

    「ジャニーズからデビューするのはZetsu! Myou! JUMPだ」 

    「Hey! Say! JUMPほんと好きだな!」

    「CDは9万枚くらい売れますよね。10万枚には届かないけど」

    「絶妙な人気を誇るアイドル」

    「息の長いグループになりそうですね」

     

    「新しい元号は、『寝湯(ねゆ)』です。良くないですか?」

    「ぜいたくですね。『寝』も『湯』も、人をダラけさせる漢字だ」

     

    サンシャインシティ近くにある人気のお風呂屋さん

     

    「働きすぎですからね、みんな。時代がこう言ってる、みたいな。『もう寝湯の時代だしな』と」

    「『ええじゃないか』的な」

    寝湯の時代には過労死なんて無いですよ

    「働き方改革だ。形から入って、みんなのマインドを変えるという手法」

    「そういうことです。だいたい、いまも我々は気づかないだけで平成を演じていますからね

    「そう?」

     

    元号発表タイム:2回戦

    「新しい元号は、『鬼金棒(おにかなぼう)』です」

    「3文字で来たか」

     

    これからは強い時代にしていこう、と」

    「『富国強兵』みたいな?」

    「松坂大輔クラスのすごい高校球児が出てきたら、『鬼金棒の怪物』って言われるんですよね」

    「それはもう鬼でしょ」

    「ジャニーズのアイドルは3人組で『Ony! Kana! Bow』。鬼担当、金担当、棒担当がいる」

     

    「Hey! Say! JUMPこだわるなあ。棒担当って何? 細長いやつ?」

    「そう。やけに身長が高いメンバー」

    「それただの悪口でしょ? でくのぼう的な」

     

    「新しい元号は、『忘我(ぼうが)』です」

    「我を忘れる」

    「こういう時代に来たのかな、と」

    超高齢化社会に忘我という字面はドキドキしますね

    「あ、そっち?」

     

    「元はボディケアの看板です。我を忘れて、心地よくなる。癒しの時代ですね

    「忘我の境に入るって言葉は、良い意味にも悪い意味にも使いますよね。どっちだろう」

    新しい元号は忘我です、って官房長官が言ったあと、40分くらい一点を見つめて黙ったら面白くないですか?

    「元号の体現だ」

     

    「新しい元号は、『GAME』です。これはゲームセンターから。官房長官がゲーム開始を告げるシーンってゾクゾクしない?」

     

    国民を巻き込んだデス・ゲームでも始まるんでしょうね。来年はGAME元年か」

    「まじめにツッコむと、『ゲーム元年』はすでにあるでしょ? インベーダーゲームが流行った昭和53年(1978年)あたりが、いわゆるゲーム元年」

    「じゃあ、VRゲーム元年で」

    「無理やりだな」

     

    元号発表タイム:3回戦

    「新しい元号は、『もつ鍋帝王』です」

    「あー、俺も候補に挙げてた」

     

    「カブることあるんだ(笑)。 これ、元号のついでに統治者も変わってないですか??

    「帝国主義が復活するんですよ。で、もつ鍋が主食になるし、もつ鍋屋が国営化します」

    公務員がもつ鍋屋をやるってこと? もつ鍋屋が手堅い職業になるのか」

    「国家公務員になるために、もつ鍋試験を受けるわけですね。もつ鍋一種、もつ鍋二種」

    「帝京もつ鍋大学、もつ鍋学科、もつ鍋ゼミ」

    「ユーキャンでもつ鍋講座が新設されますね。みんな受かりたいから」

     

    「新しい元号は、『COTTON SNOW CANDY』です。歩いてて暑かったので、食べたいなと」

     

    「もはや単なる欲望」

    「ポップな時代になりそうですね」

     

    「新しい元号は、これです」

    「なんですか、これは」

    鳩がなんか知らないですけどすごくいっぱい居て、それで、あっ、こんな時代になればいいな、と思って

     

    「鳩は平和の象徴ですけど、これは絵? マーク? 読み方は?」

    その辺はもう自由に解釈してもらっていい。『鳩の時代』とか言う人もいる」

    「自由選択ですか。プリンス方式ですね」

     

    編集部注:アメリカのアーティスト・プリンスは、レコード会社との契約でトラブルとなり、アーティスト名を変更。シンボルマークとして発表した。読み方が決まっていなかったため、ラジオ局などメディアが困惑。便宜的に「元プリンス」「かつてプリンスと呼ばれた偉大なるカリスマ」などと紹介された

     

    元号発表タイム:4回戦

    「新しい元号は、『ターャジス』です」

    「どういうこと?」

     

    「あー、あのトラックか」

    「あと、『人恋の色褐』もあるんですよね」

     

    「そういえば、もはや当たり前のように横向きに書いちゃってるけど、縦に使うやつだよね。そのホワイトボード」

    「あと、『の』とか助詞はいってきてますからね。元号に助詞

     

    「新しい元号は、『人狼』です。近くに『人狼カフェ』があったので」

    「人狼って、演技しないといけないんでしょ? だましたり、だまされたり」

     

    でも、すでにそういう時代ですよね

    「なに、その示唆に富む言い方」

     

    「新しい元号は、これです」

    読めない。何語ですか?」

    まあ、僕も読めないんですけど

     

    「あー、こういうやつか。『タギング(ストリートアート系の落書き)』でしたっけ?」

    「ポジティブな意味かもしれない」

    「わからない。このわからない時代を生きる、と

    「ついに混迷の時代に突入した、ってことですよね」

    「明、大、昭、平の次はこれですからね」

     

    「役所は相当困りますね」

    「IT関係の人は大慌てですよ」

     

    結果発表

    というわけで、この中からMVPを決めたいと思います。

    新しい元号は、デュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……ジャン!

     

    「寝湯」

     

    「寝湯」に決まりました。

     

    「いいんだ! やったー! なんで?」

    「今まで出た中で、どの時代に生きたいかと考えたら、これかなと」

    「あ、でも、自分で言っといてアレですけど、寝ながら入れるように作られた風呂ならいいですけど、ふつうの風呂で寝るのは本当に危ないですからね」

    元号の下に小さい字で注意書き入れた方がいいですね。『※通常の風呂で寝るのは危険です』とか」

    「元号にそんなスペースありましたっけ?」

    「多分ですけど……そういうのをいちいち言わないのが、寝湯の時代だと思うんですよ

    「おっ? 謎の説得力がある」

     

    なんとなく、いい時代になりそうな気がしました。

     

     

    企画&執筆:村中貴士、編集:ヤスノリ、撮影協力:山川悠

    【参考サイト】平成の次は? 新元号を探る

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    村中貴士
    村中貴士

    編集&ライター。大阪生まれ。路上観察とエッジの効いたイベントレポートが得意。デイリーポータルZ新人賞2017で入選(佳作)。「大阪人っぽくないよね」とよく言われるが、人を笑わせたいという吉本的アイデンティティーが自分の血には確実に流れている、と思う。

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